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<鉄道受注>日立、「母国」英で快進撃 世界展開へ着々

毎日新聞 1月2日(土)8時31分配信

 日立製作所は、鉄道の発祥地である英国を足がかりに、世界展開を急速に進めている。世界の鉄道業界は「ビッグ3」と呼ばれる独シーメンス、仏アルストム、カナダ・ボンバルディアの世界大手3社に加え、規模では3社を上回る中国国有大手「中国中車」も海外進出を進めつつある。日立は、90年以上かけて培った日本流のもの作り技術を武器に、世界のライバルを猛追する構えだ。

 日立は、2004年にロンドンと英仏海峡トンネルを結ぶ高速鉄道174両を受注した。この際、納期を前倒しして半年も早い営業運転開始を実現させ、「納品遅れは日常茶飯事」とされてきた英国の鉄道業界関係者を驚かせた。その実績を足がかりに、12~13年にはロンドンと北部、南西部を結ぶ都市間高速鉄道計画(IEP)で866両の大量受注に成功。14年には英北部スコットランドで通勤電車にも受注を広げ、英国での快進撃が続いている。

 14年4月に鉄道事業のグローバル本社を英国に移転し、英国人のアリステア・ドーマー氏を新設のグローバルCEO(最高経営責任者)に据えた。さらに15年2月、イタリアの重電大手フィンメカニカから鉄道関連2社を買収することで合意。世界展開の態勢を着々と整えている。

 15年9月には、90年を超える日立鉄道事業の歴史で初の海外車両工場「ニュートンエイクリフ工場」を英中部ダラム州に開設した。11月に生産を開始した同工場は現在、フル生産に向けた移行期間にあり、17年開業予定のIEP「英国製」車両が少しずつ姿を現しつつある。工場の設計と生産の責任者である与野正樹統括製造部長は、「工場設計にあたってマザー工場である山口県・笠戸事業所を研究して徹底的な改善を施した。長年の技術者の願望をほとんど実現させた」と満足そうに語る。

 英工場の現場スタッフ約500人のほとんどは新規雇用者だが、笠戸で研修した英国人30人と日本人出向者が現場指導者となり、掃除やネジ締めなどの基礎から安全・品質管理を徹底する「日本流もの作り」を定着させていく考えだ。

 日立製作所の鉄道事業の事業規模はイタリア2社を合わせても約4000億円で、売上高8000億円超のシーメンスなど「ビッグ3」の半分程度にとどまる。中西宏明会長兼CEOは、ビッグ3に規模で追いつくことが「当然の目標」と断言する。「イタリア2社を統合していくことで、市場は一気に広がる。(事業規模を)まず6000億円にする。早く1兆円に届かせたい」と意気込みを見せている。【ロンドン坂井隆之】

最終更新:1月2日(土)11時29分

毎日新聞