ドイツのノーベル文学賞受賞作家ギュンター・グラスは、そんな母国に対し良心の回復を訴えた。彼は自伝『玉ねぎの皮をむきながら』で、敗戦後、真実をしっかりと包んでいた「隠ぺいの玉ねぎの皮」をむいた経験を紹介している。彼は若いころ、ユダヤ人虐殺を全く知らなかったと書いた。「私は死体の山、焼却炉を見た…信じられなかった」。米軍が見せてくれた白黒写真で、ついに惨状を目撃した少年のころのグラスは絶叫した。「ドイツ人があんなことをしたって? ドイツ人はあんなことはしていないよ」。グラスは、このように過ちを隠そうとした祖国をしかりつけ、自身もナチス少年団に加入していたことを告白した。このような努力が重なって今のドイツになったのだ。
安倍首相は、今回の慰安婦合意後、これ以上は謝罪しないと言った。韓国に対しても「慰安婦問題を蒸し返すな」と要求した。同意できない。日本の後の世代の人々から「日本人はそんなことをしていない」と言われたくないからだ。安倍首相は今回の合意を口実に、慰安婦問題を覆い隠してはならない。合意の精神を生かすには、むしろ過ちを繰り返さないよう、歴史の記録に残して反省のかがみにすべきだ。韓国も「謝罪を受けたから終わり」と言ってはならない。京畿道広州市の慰安婦歴史館には、慰安婦被害を初めて証言した金学順(キム・ハクスン)さん(1924-97年)の言葉が刻まれている。「私たちが強要に負けてしたあのことを歴史に残すべきだ」。不幸を繰り返さないため、真実を追求して記録しなければならない理由を雄弁に語る言葉だ。