2015年06月20日

◆ 図書館を有料化せよ

 図書館は、無料が標準だが、有料化した方がいいだろう。ただし学生以下は無料。

 ──

 図書館は本来は、金のない学生や生徒のために、書籍の情報を与えて、学習の役に立たせることだった。この意味で、学校や大学に図書館があることは、何ら問題ない。それが無料であることも問題はない。
 問題は、市中の図書館(その多くは小規模)で、やたらとベストセラーや雑誌などを貸し出すことだ。これではただの「無料の貸本屋」になっているにすぎない。
 これが問題であることは、すでに指摘されている。(林望の主張の要約。)
 図書館が「無料貸本屋」化する原因は、図書館の本の蔵書状況にある。著者は、ある東京都区内にある公共の図書館を例としてあげている。その都区内の図書館10館では、それぞれある時期にあるベストセラーを多数ずつ所蔵していた。具体的な状況は次のようなものである。

  ・ 乙武 洋匡『五体不満足』80冊(10館総計; 以下同じ)
  ・ 大平 光代『だから、あなたも生き抜いて』51冊
  ・ 柳 美里『命』40冊、

 本来なら実際より多くの人がこれらの本を書店で買うはずであった。しかし、図書館がこれらの本を無料で何度も繰り返して貸し出したために、読者は本を買わなかった。著者は、このようなことが原因となって書店の売り上げは減少したと考える。公共の図書館が商売に良くない影響を及ぼすことはあってはならないというのが著者の意見である。
 著者は、図書館があるベストセラーを多数買い揃えることによって良くない状況に陥るのは書籍販売だけではなく、図書館事体も好ましくないが状況に陥ると述べている。それは、ある特定の本を多数購入することによって、他の本を購入するためのお金を圧迫するという状況が生まれるということである。ベストセラーでなくても地味で目立たない良書はたくさんある。しかし、読者の一時的なブームに合わせて特定の本を多数購入すると、それらの目立たない本を購入する余裕がなくなる。その結果、蔵書の幅は狭くなってしまう。図書館は、あまり読み手のいない本を読もうとする利用者のことも考えて選書しなければならない。
( → 図書館は無料貸本屋か

 作家ならば、当然の見解だと言えるだろう。次の見解もある。(図書館が市民に対して、ベストセラーの書籍を寄贈してほしい、という要望を出したこと。)






 この「万城目学」という作家の本が大人気で、順番待ちで、本が足りないが、図書館には買う金がないから、市民から寄贈してもらいたい、というのが、札幌市の図書館が市民に要望したことだ。( → 該当ページ
 それで、作家の方が「冗談じゃない」と抗議の声を上げたわけだ。(ツイッターで。)
 それが、ハフィントンポストで取り上げられた。
  → The Huffington Post
 それを見て、本項で紹介したわけだ。
 私の感想は、「まったくごもっとも」である。これは一種の文化破壊であると同時に、泥棒でもあり、乞食でもある。税金を使って「泥棒」という犯罪活動をしているようなものだし、税金を使って「文化破壊」というテロ活動をしているのも同然だ。
 政府は、ホルムズ海峡の心配なんかをするより、図書館というテロリストを撲滅する方が先決だろう……という皮肉を言ってみたくなる。 (^^);

 ──

 で、それへの対策として、「有料化」という案が生じる。これは、次の4点を狙っている。
  ・ ケチな人が無料貸本屋(= 図書館 )を利用しにくくなる。
  ・ ケチな人も、ほしければ、自分で買うようになる。
  ・ 館内にホームレスがたむろすることがなくなる。
  ・ 図書館は書籍購入費が潤沢になる。


 最後の点については、次の記事が参考になる。
 全国の公立図書館で「雑誌スポンサー制度」の導入が進んでいる。雑誌の購入費を企業やNPOに負担してもらい、カバーに広告を掲載する仕組みだ。7年前に岐阜県内の図書館で始まったとされ、朝日新聞が47都道府県立図書館に問い合わせたところ、350館以上に広がっていた。
 図書や雑誌、CDなどを購入する予算の「資料費」は減少傾向が続いている。1993年度の1館あたり 1617万円をピークに、14年度は 906万円。担当者は「かなり買い控えをしているのでは。図書館らしい蔵書を維持できない金額で、深刻だ」と心配する。
( → 朝日新聞 2015-06-20

 ベストセラーなんかを大量に購入するから、多様な書籍を買う金がなくなる。それでいて市民は、「珍しい学術書なんか要らないから、ベストセラーを買ってくれ」と要望する。で、図書館は、その要望に答えようとして、市民からの奇想を募る。作家としては、図書館に本が売れることもなく、単に読者を奪われるだけだ。踏んだり蹴ったり。かくて、文化の破壊となる。

 ──

 どうも、普通の人は、図書に限って無料供給されるという発想をしているが、これがいかに奇妙であるかは、次のことと比べるとわかる。
  ・ アナ雪のような映画が無料で上映される
  ・ ヒットチャートの音楽が無料で聴取できる
  ・ Amazon で販売している書籍が無料で借りられる。
  ・ ソフトウェアがすべて無料で借りられる。

 こんなことになったら、映画も音楽も書籍もソフトウェアも、商売として成立しなくなるので、その分野のプロは消滅してしまう。とんでもないことだ、とわかるだろう。

 ──

 というわけで、図書館は有料化するべきだ。
 では、どのくらいの金額で? まあ、1回200円でドリンク付きにするのが妥当だ、と思う。ドリンクは、コーヒーまたはファンタ(無果汁飲料)。いずれも原価は格安で、1缶 50円以下。これを自販機に入れて、200円で販売する。缶にはシールが貼ってあって、そのシールを剥がして、図書館の入口で手渡すことで、入館できる。
 なお、この程度の金額ならば払ってもいい、という声は、ネットでも聞かれる。
 「飲み放題とは言わんがワンドリンクつくなら150円」
 「1日200円くらいでいいよ。市立図書館からホームレスが全滅するだろ。それだけの価値はあるぜ」
( → 図書館有料化したら1時間いくらまで払える

 というわけで、この程度の金額なら、無理もないだろう。図書館を有益に利用する人ならば、このくらいの金は払える。図書館をただの暇つぶしぐらいに考えている人は、来なくなる。ホームレスもそうだし、雑誌だけを見に来るような人もそうだ。図書館に知的情報以外を求める人々(一種の底辺層)が来なくなり、図書館が本来の役割を果たすようになる。
 超高額の金を取るならともかく、ある程度の合理的な金を取るならば、余計なノイズ成分が取り除かれるので、図書館はかえって本来の役割を果たせるようになる。



 [ 付記 ]
 「貧しい弱者への福祉はどうなるんだ!」
 という声も上がるだろうが、図書館は福祉のためにあるんじゃない。そこを勘違いしているから、現状ではホームレスなんかが寄せてきて、館内が臭くなって、図書館が本来の役割を果たせなくなる。本末転倒とは、このことだ。



 [ 余談 ]
 ちょっと面白い話。図書館で知り合った女性と結婚した、という心温まる話。
  → 図書館司書だった嫁との馴れ初め
 


 【 関連サイト 】

 次のページが興味深い。
  → 図書館は有料化すべきか論のまとめ(2)〜もし有料化されたとしたら

 他に、下記で情報が見つかる。
  → 図書館 有料化 - Google 検索
  
posted by 管理人 at 19:36 | Comment(13) | 一般(雑学)3 このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
以前、図書館の棚に『失楽園』の上下巻がそれぞれ10冊ずつくらいズラーっと並んでいるのを見て頭がクラクラした記憶があります^^;
Posted by 中島 at 2015年06月20日 20:36
↑ そういうところに限って、本家の方(ジョン・ミルトン作)は、1冊もないんだろうなあ。

 ジョン・ミルトンの「失楽園」はお薦め。
  → http://j.mp/1LpJWxB

 渡辺淳一の方は、川島なお美がいないと、人気は出ないように思えたが。……
Posted by 管理人 at 2015年06月20日 22:11
特定の書籍のみ有料化すればいいのではないかと思う。
Posted by そらめく at 2015年06月21日 18:16
救急車の有料化話と関連していますね。元防衛大臣が「有料化による権利の発生」を危惧してました。図書館にも当てはまりそうです。
結局はモラル破壊が原因なのでしょう。
Posted by きょうとの人 at 2015年06月22日 07:06
>図書館は福祉のためにあるんじゃない。そこを勘違いしているから、現状ではホームレスなんかが寄せてきて、館内が臭くなって、図書館が本来の役割を果たせなくなる。本末転倒とは、このことだ。

ベンジャミン・フランクリンが草葉の陰で泣いてますよ。福祉かどうかは別としても、ホームレスが新聞や本を読んだっていいじゃないですか。もともと貧しい人に本を読ませる仕組みなんですし。ただし席で寝てる奴は即追い出す。

主題については概ね同意。ただ、有料化じゃなくて「ベストセラーも難しい哲学書も一館一冊のみ所蔵」というルールだけで良いのではないかと思います。引用されてる万城目さんの「待てない方は御自分で購入を」でいけるのではないかと思います。
Posted by 井坂 at 2015年08月13日 04:15
> ただし席で寝てる奴は即追い出す。

それ、すごく困るんですけど。じっくり本を読んでいると、1〜2時間後に眠くなることがある。特に、若くて睡眠不足のころは。調べ物の途中で眠ることはしばしば。

> ホームレスが新聞や本を読んだっていいじゃないですか。

 もちろん、いいですよ。ただしそのために小額の金を払ってもらう、ということ。別に、ホームレスには払えないような大金を要求するわけじゃない。「ただの無意味な長時間滞留」を防ぐだけ。
Posted by 管理人 at 2015年08月13日 12:19

>というわけで、図書館は有料化するべきだ。

図書館法では図書館の利用について以下のように定められております。

『第十七条   公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。
 第二十八条 私立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対する対価を徴収することができる。 』

私立図書館であれば可能ですが、
公立図書館の利用を有料化するには、法改正が必要になるかと存じます。



>図書館は本来は、金のない学生や生徒のために、書籍の情報を与えて、学習の役に立たせることだった。

>図書館をただの暇つぶしぐらいに考えている人は、来なくなる。ホームレスもそうだし、雑誌だけを見に来るような人もそうだ。
>図書館に知的情報以外を求める人々(一種の底辺層)が来なくなり、図書館が本来の役割を果たすようになる。

図書館法では「図書館」について以下のように定義しております。
『第二条 この法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、
 レクリエーション等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は
 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。』

上記に従いますならば、
管理人様の言われるところの「知的情報」の提供以外にも、レクリエーション、即ち娯楽、余暇、暇つぶしを求められこれに資することも、
図書館の目的に適うことかと存じます。
Posted by 検校 at 2015年12月31日 09:47
法改正が必要なのはわかっていますが、それより前に、国民・市民の同意を得るのが困難でしょう。多数決で決めるなら、まず否決されます。たいていの人はケチだし、金を取られるとなると反対する人が多いに決まっている。ゆえに、実現性は、最初からありません。したがって法改正が必要となる段階にも達しません。

一般に、本サイトの提案は、実現性のないものばかりです。実現するのは、世の中よりも一歩先の提案ですが、本サイトの提案は、世の中より十歩ぐらい先を進んでいます。これらの提案がすぐに実現するはずはなく、何十年か何百年かたって、世の中が私の提案を理解したころになって、ようやく実現性の問題が生じます。

したがって、現時点で実現性の問題を考えても、取り越し苦労です。それらの問題は、あと何十年かたってから、考えればいいことです。
Posted by 管理人 at 2015年12月31日 13:12

>多数決で決めるなら、まず否決されます。たいていの人はケチだし、金を取られるとなると反対する人が多いに決まっている。
>ゆえに、実現性は、最初からありません。したがって法改正が必要となる段階にも達しません。

>したがって、現時点で実現性の問題を考えても、取り越し苦労です。
>それらの問題は、あと何十年かたってから、考えればいいことです。

 直接民主制ではないのですから、世論の反発イコール否決とは限らないかと存じますが、
図書館の入館に200円程の料金を課すというのは、何十年単位で考えることなのですね。


>一般に、本サイトの提案は、実現性のないものばかりです。
>実現するのは、世の中よりも一歩先の提案ですが、本サイトの提案は、世の中より十歩ぐらい先を進んでいます。
>これらの提案がすぐに実現するはずはなく、何十年か何百年かたって、世の中が私の提案を理解したころになって、
>ようやく実現性の問題が生じます。

 一歩先の提案が実現するなら、それを10回繰り返して十歩先を実現するものなのでは、とも思われますが、
管理人様はこの件にはそこまでのお手数をお掛けになるお積りがないゆえの、十歩先止まりなのかと考えております。

 何十年か何百年先、といいますと、管理人様が去られた後、ブログサービスやクラウドサービスも終了し、
Openブログの内容が全て消失されている頃かもしれません。
もし、未来の人々がご記述とは関係無しに自発的に管理人様と同じお考えに至ることを信じ、
実現性は全て未来に任せて先見を誇られるとすれば、それはとても幸せなお心持ちと、羨ましく存じます。
Posted by kengyo at 2015年12月31日 23:10
>先見を誇られる

別に、先見を誇るつもりはないです。
私は単に「真実は何か?」「正解は何か?」という自分の興味で考えているだけだし。自分で真実や正解を発見できれば、それで十分。
あとは、その結果を、自分のメモ帳に書くかわりに、クラウド上で保存することにして、ブログに書いているだけです。読者はいなくても構わない。Google で検索できるようにするのが大切で、読者の評判は二の次だ。というか、どうでもいい。

ちなみに、パソコンが普及する以前に書いた分は、京大式のカードに書いてあるが、これは公開する予定はない。入力するのも大変だから、カードに書いたまま。

> 未来の人々がご記述とは関係無しに自発的に管理人様と同じお考えに至ることを信じ

それは違うかもね。私の意見が結実することを予想しているわけではないが、結実しないことを予想しているわけでもない。私の見解がきっかけとなって、波紋を生じて、その波紋が大きくひろがることもあるかもしれない。

 ──

あとで思い出したが、私の意見が影響したらしい事例もある。ユニクロの社長の意見を完全に論破して批判したら、ネットで大きく話題になった。それをユニクロの社長も読んだらしくて、ユニクロはその後、方針をすっかり改めた。ブラック企業と批判された、ユニクロ・すき家・ワタミのうち、ユニクロだけはすばやく方針を改めた。私の意見もいくらかは影響したと思える。

http://b.hatena.ne.jp/entry/openblog.meblog.biz/article/15760682.html
Posted by 管理人 at 2015年12月31日 23:27
> 第十七条   公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。

 これだと、「貸出は無料だが、閲覧室の利用は有料」ということは、可能に思える。
 
 あと、どうしても駄目っぽいなら、公立でなく私立(第三セクター)にして、そこに補助金を出す、という形ならOKだろう。
Posted by 管理人 at 2016年01月01日 21:18
>読者はいなくても構わない。Google で検索できるようにするのが大切で、読者の評判は二の次だ。というか、どうでもいい。

だったらコメント機能を無くせばいいのに。もしくは批判されたとき反発もしなければいいのにね。
Posted by あ at 2016年01月01日 22:45
コメント機能を無くせばいいのに・・・というコメントを書く人。
Posted by 管理人 at 2016年01月02日 09:15
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