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 「日本で最も美しい村」連合。そんな思い切った名前の団体が結成10年を迎えた。7町村で始まり、現在は全国60の町村・地域に拡大した。知名度が上がって、訪れる人も増えたという。今後は、少子高齢化が進む中で美しい村をどう維持していくかが課題だ。

 雄大な丘の風景で知られる北海道美瑛(びえい)町。市街地には「日本で最も美しい村」連合のマークを記した看板や旗が並ぶ。美瑛駅近くの喫茶店の男性店主は「日本一だなんて最初は照れくさかったけど、今では町の誇りだよ」と笑う。

 美しい村連合は2005年、美瑛町の呼びかけで始まった。当時は「平成の大合併」で小さな町村が地図から消えていた時期。人口減と高齢化の波も押し寄せていた。連合の会長も務める浜田哲町長は「自然や文化といった地域資源をどう守るか。危機感を持ち始めた時期だった」と言う。

 モデルは1980年代にフランスで始まった取り組みだ。小さな村々が集まって景観や文化を観光資源として守る方法を研究し、多くの観光客が来るようになった。視察した浜田町長は「最も美しいと宣言することで誇りと活力が生まれていた。日本でもできると思った」と振り返る。

 日本での加盟条件は人口がおおむね1万人以下。町村のほか、地域単位での加盟も可能だ。ただ守るべき景観や文化が明確にあるか、住民が保全活動をしているかなどの審査があり、人口に応じて年数十万円の会費もかかる。5年ごとに再審査もあり、加盟のハードルは低くない。

 それでも加盟数は右肩上がりだ。最初は7町村だったが、今年も6カ所が加わり全国60団体に。加盟希望も後を絶たない。

 人気の理由は知名度とブランド力。「一度聞いたら忘れない」という名前のインパクトもあり、後藤秀俊事務局長は「景観や文化の保全に熱心というイメージが全国的に定着した」と言う。妻籠宿(つまごじゅく)の景観を守る長野県南木曽(なぎそ)町や、照葉樹林がユネスコのエコパークになった宮崎県綾町など、加盟団体の先進的な事例がニュースで紹介されることも多く、元々地味だった町村にも観光客が訪れるようになったという。

 加盟することで、行政や住民に意識の変化を生む効果もある。美瑛町は企業や住民で協議会を作り、観光地のゴミ拾いなどを始めた。加盟を機に景観条例を作るなど、保全に本腰を入れる自治体も多い。