大きなうねりは始まったばかり--AWSの2016年

末岡洋子 怒賀新也 (編集部) 2016年01月02日 07時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

大企業による基幹系への導入が増える

アマゾン ウェブ サービス ジャパンで代表取締役社長を務める長崎忠雄氏
アマゾン ウェブ サービス ジャパンで代表取締役社長を務める長崎忠雄氏

 クラウドがハイプサイクルを過ぎてメインストリームに向かっている。クラウドが新しい常識”ニューノーマル”になる”――そう言い続けて9年、パブリッククラウドの草分けで、他の追随を許さないようにも見えるAmazon Web Services。

 イノベーションへの取り組みを止めることはないと指摘するのは、日本法人アマゾン ウェブ サービス ジャパンで代表取締役社長を務める長崎忠雄氏。日本におけるクラウドの2015年の振り返りと2016年の展望を聞いた。製品面について、技術本部 エンタープライズソリューション部 部長/シニアソリューションアーキテクト 瀧澤与一氏にもコメントしてもらう。

――2015年を振り返って、どのような年といえるか?

 ずっと、クラウドは”ニューノーマル”になる、と言ってきましたが、日本の大企業でもクラウド活用が定着してきました。春の「AWS Summit Tokyo 2015」には約1万3000人が来場しました。われわれのサービスラインナップの拡充、日本における顧客事例の増加により、クラウドを検討する企業が増えています。クラウドを使うか使わないかではなく、どこに使うかの視点です。

 加速をけん引しているものに、基幹系、デジタルトランスフォーメーション、IoTの3つがあります。

 まず基幹系。今年の導入事例をいくつか紹介すると、旭硝子がSAPのベースをメインフレームからAWSに移行しました。ファーストリテイリングは全面的に基幹システムを3、4年かけてAWSに移行することを明らかにしました。

 米国では、「re:invent」(年次カンファレンス)で、クレジットカード大手のCapital Oneが登壇し、AWS採用の理由を「セキュリティ」と説明しました。セキュリティを自前からAWSにまかせ、自分たちはより顧客向けのアプリケーション構築などの作業に注力できると述べています。

General ElectricのCIO、Jim Fowler氏
General ElectricのCIO、Jim Fowler氏。 デジテル製造業を目指す

 General Electric(GE)は約9000のアプリケーションを数年かけてAWSベースに全面移行します。Capital Oneは8あるデータセンターを3つに集約するとしており、GEもデータセンターの数を減らすとしています。このようにデータセンターのフルマイグレーションの話があちこちで聞かれるようになりました。

 2つ目のデジタルトランスフォーメーションは”自社顧客との接点をデジタルを通じて強化する”という企業共通の課題ですが、それにあたってAWSをプラットフォームにするという企業が増えました。

 3つ目のIoTでは、われわれはデータの収集、保存、分析、分析の共有や分析に基づくアクションというIoTに必須の4つのパーツをサービス「AWS IoT」として提供します。

 GEはガスタービンにセンサをつけて予防検知を実施しており、日本でも帯広のファームノートが牛の飼養管理に、エコモットは路面凍結対策のロードヒーティングで利用するなど、事例が出てきています。

――サーバ「Amazon EC2」、ストレージ「Amazon S3」などが主力製品だが、2015年伸び率が高かったサービスは何か?

 データウェアハウスの「Amazon Redshift」は引き続き堅調でした。

 これに加え、MySQL互換のリレーショナルデータベースエンジン「Amazon RDS for Aurora」が10月に東京リージョンで正式に利用できるようになり、受け入れが進んでいます。スタートアップのゲーム企業グラニ、毎日新聞社など事例が出ています。グラニは乗り換えにより2200万円近くのコストを削減しました。このように、分析、データベース、データウェアハウス関連はとても順調です。

 背景には、従来唯一の選択肢だったオンプレミスモデルでは初期投資がかかり、運用も大変だったという痛みを生んでいたことがあります。RedshiftもAuroraも、性能はこれまでと同等で、コストは10分の1に下げられます。加えて、使った分だけ払う従量課金です。クラウドの良さは試行錯誤ができることです。

 これまでなかったサービスを提供することで、幅広い顧客から喜びの声、もっと使いたいという声をもらっています。ビジネスの速度が上がる中で、従来のように資金をかけてしっかり検証してやるモデルか、すぐに使えて、少ないデータで検証してそのまま運用可能というフルマネージドのクラウドモデルか――後者が求められていると思います。OracleのExadataで7、8時間かかっていた分析処理が、Redshiftでは数分になったという事例もあります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
データドリブンな経営
情報通信技術の新しい使い方
米ZDNet編集長Larryの独り言
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
田中克己「2020年のIT企業」
大木豊成「Apple法人ユースの取説」
林雅之「スマートマシン時代」
デジタルバリューシフト
モノのインターネットの衝撃
松岡功「一言もの申す」
三国大洋のスクラップブック
大河原克行のエンプラ徒然
今週の明言
アナリストの視点
コミュニケーション
情報系システム最適化
モバイル
モバイルファーストは不可逆
通信のゆくえを追う
スマートデバイス戦略
セキュリティ
ベネッセ情報漏えい
ネットワークセキュリティ
セキュリティの論点
OS
XP後のコンピュータ
スペシャル
より賢く活用するためのOSS最新動向
HPE Discover
Oracle OpenWorld
AWS re:Invent 2015 Report
「Windows 10」法人導入の手引き
北川裕康「データアナリティクスの勘所」
Windows Server 2003サポート終了へ秒読み
米株式動向
マーケティングオートメーション
AWS re:Invent 2014
Teradata 2014 PARTNERS
Dreamforce 2014
Windows Server 2003サポート終了
実践ビッグデータ
VMworld 2014
中国ビジネス四方山話
日本株展望
ベトナムでビジネス
アジアのIT
10の事情
エンタープライズトレンド
クラウドと仮想化
NSAデータ収集問題