[PR]

 今年の夏は3年に1度の参院選がある。安倍晋三首相が政権に復帰してから3年。国政選挙で勝ち続け、「1強体制」が強まる中で3度目の審判だ。30年ぶりとなる衆参同日選となる可能性も排除できず、選挙結果は憲法改正など、日本政治の行方に大きな影響を与えそうだ。

 ■改憲も視野に/野党共闘カギ

 参院の定数は242。現在、自民は115、公明20の与党135議席で、3年前に過半数を回復した。参院選は3年ごとの半数改選のため、121議席を争う中で与党が過半数を維持するためには、両党で計46議席以上を取らなければならない。

 改選議席は自民50、公明9。仮に自民が2007年の第1次安倍政権で惨敗した際の獲得議席37にとどまった場合でも、公明が改選議席を維持すれば与党が過半数を確保する計算で、勝敗ラインに設定するには低いハードルだ。逆に野党が衆参の「ねじれ」に持ち込むには、07年の時よりも強い勢いで自公を追い込む必要がある。

 自民、民主の両党が政権を争う構図となって以降、選挙全体の勝敗を考える上でカギを握ってきた1人区は32に増えた。

 07年は29の1人区で自民が6勝、民主・非自公系が23勝して「ねじれ」を実現した。今回も1人区で野党が共闘し、自公への対立候補を絞れるかが焦点だ。

 安全保障法制に反対して国会前で抗議した学生団体「SEALDs(シールズ)」など5団体が野党統一候補を支援する動きがある。1人区は農業を主産業とする選挙区が多く、大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)への対策も争点だ。

 ただ、改選議員が当選した6年前は民主党の菅政権。当時、民主が敗北したとはいえ、改選議席は42ある。共産が呼びかける野党共闘のための候補者調整では、現職議員の多い民主が中心にならざるを得ず、選挙までに態勢を整えられるかも勝敗を左右しそうだ。

 12年の衆院選で圧勝して政権に復帰した自民は、13年参院選、14年衆院選と連勝中。内閣支持率は安保法制成立後は下がったものの、なお底堅く推移しており、アベノミクスへの評価も根強い。消費税率を10%に引き上げる際に導入する軽減税率には批判もあるが、導入を求めた公明の主張が受け入れられたため、1人区で公明支持層が自民候補を強く支援する可能性もある。

 このため野党がまとまれないまま、自民が3年前のような勢いを取り戻す展開になれば、自民にとって消費税導入やリクルート事件の影響で惨敗した89年以来、27年ぶりとなる単独過半数も視野に入る。必要なのは自民57議席以上。3年前は65議席を獲得しており、現実味のある数字だ。

 与党は衆院では憲法改正の発議に必要な3分の2をすでに確保している。参院でも、いわゆる「改憲勢力」が3分の2に届くかどうかも焦点の一つだ。

 自民、公明だけで3分の2に届くには両党で86議席が必要。おおさか維新などを加えるとハードルは下がる。自民、公明、おおさか維新の3党は、非改選だけでみると3分の2の81議席を有する。今回3党で同じ81議席以上を獲得すれば、全体でも3分の2に届く計算だ。

 不確定要因は、安倍首相が参院選に合わせて衆院を解散し、衆参同日選に踏み切る可能性が否定できないことだ。同日選は55年体制下の80年、86年と2回しかない。いずれも自民が圧勝している。

 (蔵前勝久)

 ■初の合区/18歳も1票

 参院選では二つの「初めて」がある。

 一つが県境をまたいだ合区だ。「鳥取・島根」「徳島・高知」の2合区を含む「10増10減」の改正公職選挙法が成立。各政党や候補者も対応を迫られている。

 自民は鳥取・島根では島根の現職を、徳島・高知では徳島の現職を公認。公認候補のいない鳥取、高知の両県を「救済する」として、両県ゆかりの候補を比例区で公認した。党本部主導で農政連や郵政など業界団体の票を割り振り、当選をめざす。

 民主は合区対象4県に現職がいなかったり、出馬しなかったりするため、推薦を含め新顔を擁立する方針。新顔擁立を決めている共産との調整が課題となっている。自民が選挙区で候補を出さない鳥取では、同県ゆかりの人物に立候補を打診。事実上の「地域対決」の様相となる可能性もある。

 もう一つの「初めて」が18歳への選挙権年齢の引き下げだ。

 選挙権年齢が変更されるのは、25歳以上から20歳以上に引き下げた1945年以来70年ぶり。18、19歳の選挙運動も認められる。買収など重大な選挙違反は原則として成人と同じように刑事裁判の対象となる。

 18、19歳の計約240万人が新たな有権者となり、全有権者数の約2%を占める。各党とも、高校生など若者にどうやってアプローチするかも課題になる。

 参院選を前に、高校の授業での「政治的中立性」も問題になりそうだ。自民党文部科学部会は3月、主権者教育の勉強会を発足させた。高校教員に「政治的中立」を求める提言をまとめ、7月に首相官邸に提出するなど、すでに18歳選挙に向けた政治的駆け引きが始まっている。

 

 【比例区 改選数48】

 ■自民党(10参 12 13参 18)

藤井基之  68 現(2) 〈元〉文科副大臣

水落敏栄  72 現(2) 日本遺族会長

山谷えり子 65 現(2) 〈元〉国家公安委長

阿達雅志  56 現(1) 〈元〉衆院議員秘書

宇都隆史  41 現(1) 〈元〉外務政務官

片山さつき 56 現(1) 党総務副会長

高階恵美子 52 現(1) 党女性局長

堀内恒夫  67 現(1) 〈元〉プロ野球監督

大江康弘  62 元(2) 〈元〉和歌山県議

畦元将吾  57 新    診療放射線技師

足立敏之  61 新    〈元〉国土交通技監

小川克巳  64 新    理学療法士

唐木徳子  48 新    全特相談役

自見英子  39 新    日医連参与

進藤金日子 52 新    〈元〉農水省課長

園田修光  58 新    〈元〉衆院議員

竹内功   64 新    〈元〉鳥取市長

中西哲   64 新    〈元〉高知県議

藤木真也  48 新    JA組合長

増山寿一  53 新    〈元〉経産省道局長

宮島喜文  64 新    臨床検査技師

山田宏   57 新    〈元〉衆院議員

 ■民主党(10参 16 13参 7)

田中直紀  75 現(3) 〈元〉防衛相

小林正夫  68 現(2) 電力総連顧問

那谷屋正義 58 現(2) 〈元〉文科政務官

白真勲   57 現(2) 〈元〉内閣府副大臣

藤末健三  51 現(2) 〈元〉総務副大臣

前田武志  78 現(2) 〈元〉国交相

有田芳生  63 現(1) ジャーナリスト

石橋通宏  50 現(1) 党副幹事長

江崎孝   59 現(1) 〈元〉自治労役員

田城郁   56 現(1) 〈元〉JR総連役員

難波奨二  56 現(1) 〈元〉郵政労組役員

大河原雅子 62 前(1) 〈元〉都議

川合孝典  51 前(1) ゼンセン顧問

轟木利治  55 前(1) 基幹労連顧問

浜口誠   50 新    自動車総連役員

藤川慎一  52 新    JAM副会長

森屋隆   48 新    私鉄総連役員

矢田稚子  50 新    労組副委員長

 ■公明党(10参 6 13参 7)

谷合正明  42 現(2) 〈元〉経産政務官

浜田昌良  58 現(2) 〈元〉復興副大臣

秋野公造  48 現(1) 〈元〉環境政務官

長沢広明  57 現(1) 党参院国対委長

横山信一  56 現(1) 〈元〉農水政務官

熊野正士  50 新    医師

 ■共産党(10参 3 13参 5)

大門実紀史 59 現(3) 党参院国対副長

田村智子  50 現(1) 党中央委員

伊勢田良子 41 新    党福岡副委員長

岩渕友   39 新    党福島常任委員

奥田智子  47 新    〈元〉埼玉県議

椎葉寿幸  39 新    党千葉副委員長

武田良介  36 新    党長野常任委員

春名直章  56 新    〈元〉衆院議員

 ■おおさか維新の会

片山虎之助 80 現(4) 党共同代表

江口克彦  75 現(1) 〈元〉出版会社長

 ■維新の党

小野次郎  62 現(1) 党政調会長

柴田巧   55 現(1) 党総務会長代行

寺田典城  75 現(1) 党参院会長

真山勇一  71 現(1) 党広報局長

 ■元気

山田太郎  48 現(1) 党政調会長

 ■社民党(10参 2 13参 1)

福島瑞穂  60 現(3) 副党首

吉田忠智  59 現(1) 党首

 ■生活の党(13参 0)

谷亮子   40 現(1) 党副代表

 ■新党改革(10参 1 13参 -)

荒井広幸  57 現(2) 党代表

 

 (33面に続く)