ババ・ヤガーの頭蓋骨 |
眼窩の奥で炎が燃えている魔法の頭蓋骨。 ロシア民話の大魔女ババ・ヤガーは、人喰いの恐ろしい鬼婆でありながら、 同時にまじめで素直な子供や娘には意外なほどやさしいという、 なかなか面白い存在である。 さらってきた娘が気立てのいい子なら、家事手伝いをさせながらもよくしてやる。 真によき者には助言や魔法の品を授けてくれる。 表題の頭蓋骨も、ババ・ヤガーが人に授けた魔法の品の一つだ。 継母と二人の姉にいじめられていた美しい娘ワシリーサは、 あるとき過って火を消してしまい、ババ・ヤガーのもとに 火種をもらいに送りだされた。 その魔女の小屋に垣根を飾っていたのが、夜になるとひとりでに火が灯る頭蓋骨だった。 ワシリーサが命じられた家事をテキパキとこなしたので、魔女は 柵から頭蓋骨を外し、娘に授けた。 輝く目をしたこの頭蓋骨を継母と姉に見せるや、 その眼窩から炎が噴出し、たちまち三人を焼き殺してしまったという。 (魔道具事典より) |
ファーティマの手 |
イスラム世界で愛用される護符。 開いた手を象どり、手のひらの部分に目を描いたものである。 私見だが、悪意のこもった視線を防ぎ止めるという含みがあるのではないか。 紙に描いたり金属板に打ち出したりして護符にする。 ビーズを連ねて作ったものもある。 人間が携帯するほか、家畜の首に吊るしたり、 自転車や自動車の前・後部につけたりもする。 近年は「ファーティマの手キーホルダー」まで売られている。 ファーティマというのは予言者ムハンマドの娘で、 アリーの妻。 後世のイスラム世界(特にシーア派)では理想の女性とみなされるようになった。 もっともこの護符自体は、「ファーティマの手」と呼ばれる以前から 西アジア・地中海で用いられていたものらしく、 古代カルタゴの遺構からも発見されたという。 地域により「マリヤの手」「五」などともいわれる。 (魔道具事典より) |
ニーベルングの指輪 |
リヒャルト・ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」に登場する 黄金の指輪。 北欧神話のアンドヴァリの指輪(アンドヴァラナウト)をモデルにしているが、 事物を「事象の象徴」として演出す作者の方法論によって、 魔法の道具というよりは「権力の基盤の象徴」として描かれ、 象徴性を考察する必要のある物品となっている。 美しい妖精であるラインの乙女に袖にされた小人の一族ニーベルングのアルベリッヒは、 乙女たちが番をしていたライン川の岩礁の黄金を鍛えて指輪の形にして身に帯びれば、 世界を支配する力が手に入ることを知り、乙女たちから黄金を奪う。 そのためには世俗的な愛と情欲の快楽を捨てなければならなかったが、 アルベリッヒは愛を捨てて権力を選ぶ。 この指輪は人々の心を安定から遠ざける権力の象徴として、 人間同士を争わせ、最後には神々の世界すら崩壊に導く要因になる。 (魔道具事典より) |
グンラウグの剣 |
13世紀にアイスランドで成立した物語『蛇舌グンラウグのサガ』に登場する名剣。 サガの中で主人公のグンラウグは、この剣をおもしろい方法で使って強敵を斃している。 アイスランドの大地主イッルギの息子グンラウグは、強靭な肉体を持つ詩人だった。 イギリスに渡ったグンラウグは、粗野で金に汚いヴァイキングのソーロルムと 決闘することになる。 グンラウグに目をかけるイギリスの征服王ウィリアム(在位1066〜87)は、ベルセルクである ソーロルムの不思議な力(敵の武器をなまくらにする)を知っていたので、 グンラウグに知恵と名剣を授ける。 グンラウグはイギリス王から拝領した名剣の柄の輪に通した紐を 手首に結んで隠し、決闘の場においてソーロルムには 別の剣を見せた。 剣をなまくらにする自分の魔力を信じるソーロルムは無防備のまま 相手の剣を浴びるが、それはグンラウグが隠していた名剣のほうだったために斃されることになったという。 (魔道具事典より) |