新しく発表された研究によると、私たちの体から常に発せられ、身体に纏わりついている「細菌を有する空気」は人によって完全に異なり、個人を特定できるほどに特徴的なのだそうだ。
私たちの体内・体外両方に存在するおよそ1兆以上のバクテリアのからかもし出される、「マイクロビアル・クラウド(細菌の雲)」は三つの要素によって成り立っている。①塵、②服に元々あった付着物、③その人物の身体に元々付着していた細菌で、③こそが特に重要なのである。
人が発する空気はその人を特定できるほど多種多様に富んでいた
米オレゴン大学の博士研究員であるジェームズ・ミードゥ博士がJournal Peerに発表したこの新たな研究はまず無菌状態の個室を作る事から始められた。
被験者の服が実験に影響を与えてしまわないように、被験者は皆全く同じ除菌が施された服を渡された。部屋に存在するノートパソコンと椅子は完全に除菌が済まされており、被験者は個室の中でお望みのエンターテインメントを楽しめる空間を作り上げた。
その間じわじわと身体から出る細菌は個室の空調システムにより吸い取られ、別室の収集機へと送られる。
対照実験として誰も居ない除菌された部屋が用意され、そこから収集機に送られる空気も採取された。被験者は3人で、それぞれが除菌された部屋に4時間いてもらい、その後休憩を挟んで更に2時間、部屋に滞在してもらったという。
採取されたサンプルを検証してみた結果、それぞれのサンプルが非常に個性的だったことがわかった。更に新しく8人の被験者に加わってもらい、今度の被験者は1人ずつ、1回の休憩を挟んだ3時間の実験に参加してもらったところ、個性的な細菌の雲は個人認証できるレベルの違いがあったという。
[画像を見る] ミードゥ博士は今回の研究を行うにあたって以下のコメントを残している
「私たちは当初、人間が発する細菌の雲についての研究を行っていました。しかし、それらが個人を特定するに値する個別性を持っている事に気づき、研究の方向性を少し変える事にしたのです」
ジェームズ・ミードゥ博士によると人間が発する「細菌の雲」の中で一番多かったのが、人間の口内から発せられるレンサ球菌で、その次に多かったのが皮膚から発せられるプロピオニバクテリウム属とコリネバクテリウム属だったという。また、女性の被験者の「細菌の雲」には膣から発せられる乳酸菌が発見され、男女の判別にも役立つ可能性を秘めている。
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