【北京=永井央紀】中国国営新華社は1日、中国人民解放軍が12月31日に「ロケット軍」「陸軍司令部」「戦略支援部隊」の3組織を新設したと伝えた。習近平国家主席が設立大会に出席し、各司令官を任命した。習氏が主導する建国以来最大とされる軍改革が具体的に動き出した。
ロケット軍は弾道ミサイルを扱う。従来は「第2砲兵」という名称だったが、これを「ロケット軍」に改名し、陸海空軍と同列の地位に引き上げた。習氏はロケット軍について「中国の戦略抑止の核心になる。国の安全を守る礎だ」と意義を強調した。
ロケット軍は戦略核兵器も担当する。国防省の楊宇軍報道官は1日、今回の組織改革の影響について、「核の先制攻撃をしない政策は一貫している。中国は自衛のための必要最低限の核戦略しか保持しない。核戦略は従来と何も変わらない」と説明した。
中国軍にはこれまで陸軍司令部が存在しなかった。軍全体が巨大な陸軍のような組織になっており、その中の一部として海軍や空軍の司令部を置く編成になっていたためだ。今回の陸軍司令部の新設には、海空軍と同列の扱いにして陸軍偏重主義を見直す意味がある。陸海空軍を一体的に運用する現代戦に対応するためだ。
新華社や国防省は「戦略支援部隊」については具体的な内容を明らかにしなかった。習氏も「国の安全を守るための新型戦力だ」と述べるにとどめた。サイバー攻撃や宇宙の軍事利用を担う部隊が含まれるとの見方がある。
新組織の司令官人事には軍掌握を加速させたい習氏の思惑がうかがえる。陸軍司令官には李作成成都軍区司令官が任命された。1979年の中越戦争に参加した経歴があり、2015年7月に習氏が軍最高位の上将に昇格させたばかりだった。ロケット軍司令官には第2砲兵司令官の魏鳳和氏が横滑りした。魏氏も習氏が中央軍事委員会主席に就任した直後の12年11月に上将に昇格させた人物だ。
戦略支援部隊の司令官に就いた高津・軍事科学院院長は1つ下の職位である中将だが、習氏によって今後、昇格される可能性が高い。
ロケット軍、習近平、新華社、中国