アーティストの生み出す作品が「表側」ならば、創作の源やプロセスといった「裏側」には何が潜んでいるのでしょうか。
アニメイトTVが贈る新連載シリーズ「表現のリアル」は、アーティストのバックグラウンドやライフスタイルを掘り下げ、私たちがまだ見ぬ一面に光を当てていく対談企画です。
第1回のゲストは、歌手の黒崎真音さん。2010年にメジャーデビュー後、主にアニソンシンガーとして活躍中です。愛称である「ヲ嬢(=オタクなお嬢様)」の通り、アニメや乙女ゲームが趣味であることでも知られています。
聞き手は元宝塚歌劇団員で、現在は舞台やラジオなどでも活動中の花奈澪(はななみお)さん。ゲームやアニメなどにも詳しく、黒崎真音さんが大の宝塚ファンでもあることから、ふたりはプライベートでも親交があります。
■対談の舞台は執事が仕える、あの喫茶店!
「黒崎真音さんの行ってみたい場所で」と決まった今回の対談。黒崎真音さんが希望したのは、東京・池袋にある「執事喫茶 Swallowtail」。執事たちの振る舞いに「惚れた……心を持って行かれた……」と思わず口にするふたりでしたが、おかげで対談も盛り上がりました!
「私は特に秀でたものがなかったし、学生時代も目立つタイプじゃなかったんです。そんな自分でも何かを見つけて進んでいきたいと思っていて、歌に行き着きました」
そう言ってはにかむ黒崎真音さんは、高校卒業後、しっくりこない日々を過ごしていたといいます。その時に出会った一曲のアニソンが黒崎真音さんの人生を変えることに……趣味の話から未来の目標まで、黒崎真音さんと花奈澪さんのトークを全3回に渡りお届けします。
■ニヤニヤが止まらないふたり。『ときメモ』と乙女ゲーの話で盛り上がる
執事さん:失礼いたします。お嬢様方、お品書きをお持ちいたしました。
黒崎真音(以下、黒崎):今、すごくだらしない顔していると思う。
花奈澪(以下、花奈):たしかに。ニヤニヤが止まらない。
執事さん:こちらのページからは紅茶のご案内が続いてございます。常に40種類以上のお茶がございますので、もしお好みのものに迷われましたらば、お気兼ねなくお声かけください。私、お嬢様のお好みのものをご一緒にお探しいたします。
花奈:一緒に探してくれるんですか?
黒崎:わお。すごいね。
執事さん:私は日本紅茶協会が定めます、ティーインストラクターの資格を持っております。お嬢様方のご質問にはちゃんと答えられますように励んでおりますので、お気遣いなくお声かけくださいませ。
本日はこのティーサロンに関しましたお茶「スワローテイル」をご用意しました。ティーカップは、お嬢様のお召し物に合わせましてブルーと、対になりますルビーとで揃えさせていただきました。
黒崎:そんなところまで見てくださっている…! これは惚れてまうやろですよ。
花奈:惚れてまうやろですよ! 紅茶も安らぐ香り。
黒崎:かろやかな感じで美味しい。なんか今すごい癒されてる、私。
花奈:ね。こんな非現実空間があるとは……それにしても、こうして対談でご一緒する日がくるとは思わなかったです。あらたまって聞くのもヘンな感じだけど、真音ちゃんがこの世界に踏み込んだきっかけは、アニメやゲームがもともと好きだったから?
黒崎:きっかけとはちょっと違うんだけど、小学生くらいの時からアニメとか、特にゲームが好きで、お姉ちゃんも2人いて、マンガもゲームも好きだったから影響もすごく強くて……。だから気付いたときには、わりともうオタクだったの。小学生は音ゲーをやっていて、中学生から恋愛シミュレーションゲームに目覚めて。
花奈:私と一緒! え、ギャルゲー?
黒崎:本当!? 最初はギャルゲーだったよ!
花奈:うわ、一緒(笑)! 私は『ときめきメモリアル』の初代から。
黒崎:私も『ときメモ』大好き! 世代的には全然リアルタイムじゃないんだけど、それもお姉ちゃんの影響で本当に大好き! 初代と4が好きで……あのね、大倉都子が好きだったの。幼なじみでヤンデレの……。
花奈:「病み子」じゃん! うわー、病み子だ!
黒崎:そうそう! ある日、急に髪の毛ボサボサで出てきて、うさぎのキーホルダーをズタズタにして(笑)。
花奈:それそれ! 初代だったら、私は鏡魅羅さん好きだったなぁ。
黒崎:私も鏡さん好き! 出会いの場面のところがすごく好きで。ドンとぶつかって、鏡さんがなんだかきわどいポーズで(笑)。
そういうのも覚えているくらい何回も何回もやって、すごい好きだった。私は『ときメモ』で育ったと思うくらい、バイブル的なゲーム。
花奈:恋はすべて『ときメモ』で知ったみたいな。私は全シリーズやったんだけど『(ときめきメモリアル)Girl's Side』も?
黒崎:やってた! 3までやったけど、3の記憶があんまりないんだよなぁ。
花奈:そしたら、私は2の佐伯瑛くんが好きだった。
黒崎:わかる! 私も佐伯くん超好きだった。あの、ほら、海で……。
花奈:ああああ!そう!
黒崎:なんかキレるよね。「もう耐えられないんだ!」とか言って。
花奈:そう(笑)。私、メガネのイベントを超覚えていて。
黒崎:あぁ! あの珊瑚礁ね。喫茶珊瑚礁。
花奈:いやー、すごい。まさかそんなにギャルゲーやっていたとは思わなかったね。
黒崎:やっていたなぁ…。好きな乙女ゲーってある?
花奈:乙女ゲーは『フルハウスキス』とか『緋色の欠片』とか。オトメイト作品も結構やっていたし、あとホストのやつも。
黒崎:『ラスト・エスコート』かな? あれは名作ですからね。
花奈:それそれ! 名作だった。
黒崎:シャンパンコールが最高なんですよ。
花奈:最高だよね(笑)。まさか『ラスト・エスコート』も話題にできる人がいるとは思わなかった。
黒崎:本当に? 私の周りは結構やってたよ。あとは『アンジェリーク』とかも。
花奈:『アンジェリーク』もやってた。あと『遥かなる時空の中で』もたまに。
黒崎:あぁ……『遥か』は宗教上の理由からダメで……。私、『ふしぎ遊戯』って作品がすごく好きで、「朱雀」とか「青龍」とか出てくるんだけど、それと被っちゃって、なんかできなかったんだよね。
花奈:自分のなかの宗教上の理由で(笑)。乙女ゲーで好きな設定はあるんですか。
黒崎:好きな設定。うーん、ヤンデレ?
花奈:あ、もうひたすらヤンデレが好きなんだね。
黒崎:最近目覚めてしまって。その前までは普通に『ときメモ』みたいな学園モノがすごく好きだったんだけど、最近はヤンデレサーチがすごくて。ヤンデレがキャラにいないと、ちょっと、厳しいなぁ……みたいな(笑)。
花奈:やばいです。真音ちゃんがどんどんヤンデレフリークになっていますね。どこに惹かれるの?
黒崎:「いやいや、そんなわけないじゃん!」って言いたくなる設定が出てくるのがおかしくって。でも、それがいいんだよね。
花奈:楽しいよね、ゲームは。
■黒崎真音、ALI PROJECTでアニソンのすごさと出会う
花奈:中学生で乙女ゲーと出会って、アニメを見始めたのはそれよりも後?
黒崎:マンガで読んでいた作品がアニメ化されたら見るくらいだったけど、ハマるのはもう少しあと。アニメは小さな子どもが見るイメージがあったの。
花奈:そうだよね。私も、大人が楽しめるアニメがあることを知らなかった。
黒崎:幼い頃から「歌手になりたい」という漠然とした気持ちがあったんだけど、その夢とアニメやアニソンがまだ結びついていなかった。
花奈:幼い頃ということで、歌のレッスンに行ったり、部活に入ったりしていた? それともただ単に歌うのが好きだって感じ?
黒崎:部活は小中高と吹奏楽に入り、もう今は全然吹けないんだけどトランペットをやっていて。
そして歌に関しては全然習ったことがなくて(笑)。歌が好きかもしれないと最初に思ったのは、小学校の学芸会で主役を決めるオーディションがあったの。
そのオーディションを受け、演技が全然できなくて落ちたんだけど、そのときに先生が「あなたの歌声、すごく好き」と言ってくれて、初めて自信がついたというか、ハッとしたんだよね。
そこからまた友達とワイワイ歌ったりしていたら、やっぱり好きだなって。
花奈:その学芸会のオーディションが歌手・黒崎真音の起源的なところなんですね。
黒崎:話を戻すと「私って本当は何がやりたいのかな?」とジタバタしている時期に、ちょうど携帯電話に『ローゼンメイデン』のゲームが配信されていたから遊んでいたの。
そしたらある日「アニメ化が決まりました」というお知らせが入っていて、よくよく見てみたらその夜が放送日で、久々にアニメを見てみようかなと。
その『ローゼンメイデン』のオープニングテーマを手がけていたアーティストが「ALI PROJECT」さんでした。おそらくALI PROJECTさんは、このアニメをたくさん勉強されて曲や歌詞を書いていたからか、世界観とめちゃめちゃマッチして、すごく感動したんです。
「アニメに対しての愛」というのをそのとき初めて感じられて、「こういう音楽もあるんだ、アニソンすごい!」って興味を持った最初のきっかけですね。
花奈:そうなんだ! そこから、今のお仕事にはどうつなげていったの?
黒崎:そこからいろんなアニメ見るようになり、声優さんやアーティストさんの曲を聴いていったら、まずは「アニソンシンガー」という存在がいることに衝撃を受けたのね。
栗林みな実さんや水樹奈々さん、茅原実里さん、そういったアニメの曲に対して敬意を払われている方々と出会ってから、初めて「アニサマ(正式名:Animelo Summer Live)」でアニソンのライブを見に行ったの。
そしてその方々が歌っているところを見て、ものすごくキラキラして歌っていらっしゃったのと、目の前にいるお客さんがペンライトを振って一緒にステージをつくっているような感じで、本当に一つの生き物が波を打っているような、動いているような感じを体験し、私は完全に恋に落ちた。特に、あの時の栗林さんのパフォーマンスは本当に感動的で、私は一生忘れないと思う。
花奈:お客さんとの一体感って、真音ちゃんのライブを見て一番に感じたところだったな。何よりファンの人がすごく楽しそうで、愛されているんだなって。
黒崎:アニソンをつくっている人たちも素敵だし、それを応援するファンの方々のスタイルもすごく唯一無二なものだなって思うの。
それで「私もこの世界で生きていきたい。自分が憧れた世界や、みんなが見ていて楽しめるような音楽をつくれる人になれたらな」と思い、ライブハウスとかで歌うようになったんだ。
MCではずっと「アニソンシンガーになりたい黒崎真音です」と自己紹介をしながら、経験を積んでいってね。
花奈:そこからチャンスを掴んで、2010年にアルバムでデビューするんだよね。
黒崎:『学園黙示録 HIGH SCHOOL OF THE DEAD』というアニメ作品のエンディングテーマを担当させていただいて、全12話で毎回エンディングテーマが変わるから、12曲収録したという、今思うとなかなかハードな……(笑)。
花奈:すごい! アニメで初めて自分の曲が流れた時って、感慨深かった?
黒崎:いやぁ、泣いたよー。
花奈:泣いた! そりゃ泣くよね。
黒崎:泣きじゃくりだった。「うわー!」とか言って。
花奈:気が気じゃないよね、30分間。エンディングがくるまで。
黒崎:映画館でやった第1話の上映会に行かせてもらったから、お客さんがいるところで一緒に聴かせてもらって……。その時もシビれて、頭が真っ白みたいな感じだったんですけど、やっぱりテレビで流れたときは、信じられないくらい、すごく嬉しかったな。
明日、続きを公開!
【取材協力】
執事喫茶 Swallowtail(スワロウテイル)
http://www.butlers-cafe.jp/
東京都豊島区東池袋3-12-12 正和ビルB1F
TEL:非公開
※「予約制」のため、利用の際は上記公式ウェブサイトよりご予約ください。
執事:椎名
フットマン:伊織
【今回ご提供いただいたお料理】
アンナマリア:
紅茶:スワロウテイル
- スワロウテイル - (ダージリン)
シンブリ農園より届いた、高標高で栽培されたダージリンファーストフラッシュです。ダージリンの系譜を思い出させる、武夷岩茶のような甘くスパイシーな香りが特徴です。若々しさが珍重されるファーストフラッシュの中では珍しいタイプですが、渋みも柔らかく丸みのあるダージリンです。
[取材・構成:松本塩梅、織田上総介]