【巨人】阿部「王さんみたいに30本打って」引き際の胸中明かす
巨人・阿部慎之助内野手(36)が30日、自身の引き際について胸中を明かした。由伸監督を始め、同年代の選手が数多く引退し「俺も『いつ辞めようか』というのを、最近考え始めている」という。理想形として、王貞治ソフトバンク球団会長(75)を挙げた。「辞めるまでにもう一度、(本塁打を)30本打ちたい。王さんは、辞めた年に30本打っている」。輝きを放ちながら潔く身を引く“王道”を目指すつもりだ。
日本一を目指した仲間であれ、しのぎを削ったライバルであれ、ベテラン選手たちが多数引退したことがショックだった。阿部はこれまで「『もういいだろ』っていうくらい現役をやりたい」と話してきたが、このオフは引き際を意識することが多くなった。
「年の近い選手が辞めていって、俺も『いつ辞めようか』というのを、最近考え始めている。人には、美学があると思う。みんなに惜しまれて辞めるほうがいいのかな、と。もう惜しまれていないかもしれないけど…。辞めるまでにもう一度、(本塁打を)30本打ちたい。王さんみたいにね。王さんは、辞めた年に30本、打っている」
通算868本塁打を誇る世界のホームランキングは、73年に3冠王(打率3割5分5厘、51本塁打、114打点)を獲得した時の打撃を理想とし、進化を求めて常に試行錯誤した。40歳で迎えた80年シーズンに30発。それでも「一年ごとに、理想は駆け足で僕から逃げていった。自分は確実に衰えている。ファンの期待を裏切るだけ」と言い残し、周囲の説得を押し切ってこの年限りでバットを置いた。
阿部は来年3月で37歳になる。近年、打撃成績は徐々に下降しているが、チームの大黒柱として第一線で戦い続けている。12年には首位打者、打点王の2冠を獲得。球界最強打者の地位にまで上り詰めた。王氏が自身を「技術屋」と呼んでいたのと同様、阿部も打撃技術には誇りを持つ。集大成として、30発打って「惜しまれて」引退する。そんな引き際の美学を思い描く。
来年1月は例年のようにグループを組まず、グアム、宮崎で単身トレーニングに打ち込む。故障予防と体のキレを向上させるために、現在の97キロから15キロの体重減量も計画している。「(引退について考えるのは)自分のためだから。自分の中で危機感をあおることにもなる」。過去、現役最終年に30発の大台をマークしたのは、王氏しかいない。とてつもなく高いハードルだが、阿部は本気だ。(尾形 圭亮)