「blink(1)」のこと
コードネームのような製品名ですが、「blink(1)」は KickStarter 発のカスタマイズ可能な USB デバイスです。接続先の機器やネットワークから所定の情報を受けとると LED 光の色や明滅により人間への通知を行うもので、2012年に製品化され 2013年には IFTTT との連携機能を強化した blink(1) mk2 がリリースされています。
文字の情報は人間が意識的にそこに向き合わなければ伝わらず、音の情報は状況により場の環境を乱す可能性があります。一方、「光」による情報はそれが適度な輝度であれば他の何かを妨げることなく人間の視界へ届き自然に認識され得ます。そのことを応用した例は他にも見られますが、blink(1) もまた光の特性を活かした機器のひとつです。
|
|
|
www.kickstarter.com
|
gigazine.net
|
gigazine.net
|
※詳細なレポートが GIGAZINE 様の以下の一連の記事に掲載されています。
この blink(1)、なかなか楽しそうなので使ってみたいと思いました。ただ、日本国内には今のところ代理店がなく国外のマーケットから購入することになりますが、これが * 微妙に高価 * なのですね。
そこで、一連の機能の中でもっとも興味のあるネットワーク連携部分を自作してみることにしました。どこかで何かがあったら知らせるというのはまさに IoT 向きのテーマであり、また、普段は主にバイプレイヤーである LED が一躍主役となるちょっと面白いケースでもあります。装置は「Wi-Fi 機能つきの小さなマイコン」としてこのところ何かと重宝している
ESP8266 モジュールをメインに構成すれば手近な素材のみでも USB ポートへ直挿し可能なサイズに収めることが可能でしょう。装置へのメッセージング用のソリューションには今回
PubNub を選びました。
PubNub のこと / ESP8266 との関係
PubNub は Pub/Sub モデルのリアルタイムメッセージング機能を主軸とする BaaS です。
2010年のローンチ以来スマホや Web アプリ向けのプッシュ通知サービス等を展開、近年は IoT 方面にも注力しており対応言語・環境の広い有用なプラットフォームのひとつです。サポート対象は現在も拡大中、ちなみに無料枠もなかなかの太っ腹です。
また、GET リクエストベースの REST API セットが用意されており(HTTPS, HTTP)、これを利用すれば他のシステムやデバイスからも PubNub の所定の Channel へ柔軟にメッセージを送ることが可能です。
このように便宜の大きい PubNub ですが、この記事を書いている 2015年12月時点では実は肝心の ESP8266 がまだサポートされていません。でも幸い非公式のクライアントライブラリが公開されていることを知りました。本家の GitHub リポジトリにも fork されていることから非公式ながらも公認の位置づけのようです。
上の記事のとおりこの非公式ライブラリは任意のタイミングでの双方向通信には対応していない(subscribe() 呼び出し後の受信完了前には publish() 不可)ものの、今回想定している装置はもっぱら受信側であるため特に支障はなさそうです。作者の Kurt Clothier さん自身が「can be adjusted for a particular need」と書いているようにライブラリコードは用途に応じ適宜手を加えて利用すれば良いでしょう。
なお、このライブラリは Espressif 社による純正の ESP8266 SDK 向けに記述されています。より扱いやすい Arduino IDE for ESP8266 環境でも利用できるように併せて手を加えることにしました。
試作の動作の様子 (動画:1分11秒 環境音・操作音あり)
下の動画は、作成した装置へ PubNub の Web コンソールからメッセージを送り動作を確認している様子です。各メッセージはそれぞれ一行の REST API 記述に置き換えることができます。
手元での現在の使途
手元ではこの試作を下記の要領で使用中。「光による通知」が想像以上に便利で実用的であることを実感しています。スマートさや表現性は blink(1) に及ばないものの必要になれば好きなようにいじれることが手作りの利点ですね。
- 黄点灯:明日の予報が雨の場合
(IFTTT レシピを利用)
クリックで可読大表示
ありがちなテーマだが実際に使ってみると手放せなくなる。好天続きで何となく油断している折に不意に点灯を目にしたら直ちに予報をチェック。
- 青点滅:高齢者世帯の安否確認装置に反応があった場合
(Parse.com サーバサイドの Cloud Code を利用)
クリックで可読大表示
人を検知すると最短 30分間隔で Parse.com へレポートを送出する自作装置を実家で稼働中。対向するサーバ側コードに試作への通知処理を追加。光れば安心、メールによる通知よりも即時性が高く煩雑感が小さい。
- 赤点滅:特定のユーザからのツイートがあった場合
(IFTTT レシピを利用)
クリックで可読大表示
件数は少ないがいつも非常に有用な情報を提供してくれる某氏のツイートを見落とさないために。
- 緑点滅:所定のブログが更新された場合
(IFTTT レシピを利用)
クリックで可読大表示
とりあえず昨年末 「KLab Advent Calendar 2015」のチェック用に使ってみたらとても快適。
- 管理用 HTML フォーム
クリックで可読大表示
PC・スマホの Web ブラウザから装置へメッセージを手早く簡単に送るために用意。 [ソース]
装置について
外観と構成
クリックで可読大表示
材料
メモ
- blink(1) は PC など対応機器の機能を利用するが今回の装置はネットワーク専用であり通信機能を内蔵しているため USB AC アダプタでも使える
- USB 端子は規格上両端の2本が 5V (500mA) OUT と GND
- フルカラー LED ではなく赤・緑・青・黄の 4つの単色 LED を使用。LED 用の抵抗は現物の発色をみながら「赤 75Ω 緑 75Ω 青 470Ω 黄 390Ω」に
- LED の表示は各色「点灯・点滅」の二種類で合計 8パターン。これは手元での実利用を想定し妥当と判断した数
(複数 LED の点滅時は明滅のタイミングが重ならないようプログラム側で管理)
- 輪ゴムは USB コネクタ外抜け防止用
- エアキャップはタッパ蓋の下に中敷き。LED 光拡散、外観柔和化、USB コネクタとタクトスイッチの圧迫用
- タッパ蓋の上からタクトスイッチを押すと装置がリセットされる。電源接続時と LED 消灯用に使う
プログラムについて
ESP8266 用 PubNub ライブラリ
前述のように現時点では PubNub は ESP8266 を正式にサポートしておらず Espressif 社純正 SDK 向けの非公式ライブラリが公開されているのみです。これに以下の要領で手を加えて使用しています。
- Arduino IDE で利用できるように
- publish() の完了通知用にコールバックを登録可能に
- HTTPS 対応
以下にソースコードを掲載します。ライブラリ「pubnub-esp8266」はファイル一式をローカルの Arduino ライブラリフォルダ下の pubnub-esp8266/ 下へコピーして使います。
(キーワード "DSAS" 部分がオリジナルからの変更箇所)
pubnub.h - GitHub
pubnub.cpp - GitHub
Arduino スケッチ
アプリ側のコードです。Arduino の SimpleTimer ライブラリを併用しています。
LEDMessage.ino - GitHub
作るのは簡単、アイディア次第でとても便利に使えます。
(tanabe)