デリバリーサービスを手掛ける飲食店も、一報もなしに料理の受け取りを拒否する「出前ノーショー(No-show、予約のすっぽかし)」に、頭を抱えている。
昨年11月12日午後8時、ソウル市冠岳区奉天洞の中華料理店で働くチョンさん(43)は、酢豚とチャジャン麺(韓国式のジャージャー麺)のセットを入れた金属製のボックスを片手にバイクで近くのオフィステル(住居兼事務室)に向かった。顧客の家に着いて呼び鈴を押すと、出前を頼んだ若者は「他で頼んだから持って帰ってくれ」とつっけんどんに言い放った。家の中には、ピザの匂いが漂っていた。チョンさんは「注文キャンセルの電話もなく、今さらいらないと言われても、どうしろというのか」と問い詰めたが、この青年は「気持ちが変わったんだから仕方がない」とドアを閉めてしまった。結局冷えてしまった酢豚と伸びてしまったチャジャン麺は、生ごみとして捨てられるほかなかった。
デリバリーサービスを専門に行っている飲食店は、一度注文が入るとすぐに料理に取り掛かる。料理を作り始めた後に注文をキャンセルされたり出前の受け取りを拒否されたりする場合、被害はそっくりそのまま飲食店がかぶることになる。
本紙が取材した出前業者のオーナーと出前人、注文代行アプリの運営者は「注文しておきながら数分後に思いが変わったとキャンセルする顧客は一人、二人ではない。キャンセルの電話さえせずに出前が着いてから受け取りを拒否するケースも少なくない、というのがより大きな問題」と話す。
全国15万店の出前飲食店を対象に注文代行サービスを提供しているアプリ「ヨギヨ」側は「注文しておきながら受け取りを拒否するケースが1年に1000件以上も発生している」と現状を指摘する。出前人がすでに出前に出たのに、急に電話でキャンセルする「一方通行タイプ」や、出前人が着いてもドアを開けず電話も取らない「無回答タイプ」、二つのメニューを注文したものの最後になって一つをキャンセルする「二者択一タイプ」など、手口はさまざまという。「ヨギヨ」の関係者は「『注文したが顧客による評価がいまひとつだからキャンセルする』『急に約束が入って出掛けることになったから家に来ても誰もいない』と平気で自分の事情を押し付けてくる顧客を見ると、返す言葉がなくなってしまう」と嘆いた。