(2015年12月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
新年が手招きする中、本紙(フィナンシャル・タイムズ)は今再び、向こう12カ月間の出来事を予測する恒例の儀式にふける。本紙の専門家と解説者が普段の慎重さを封印し、米国の大統領選挙からサッカーの欧州選手権(ユーロ2016)に至るまで何が起こるかを予想する。
その前に、1年前の予測の結果をざっと見てみよう。
エド・クルックスは原油価格の続落を正確に予測した。原油価格がすでに半値になった年の終わりだけに、これは勇気ある予想だった。
マーティン・ウルフは欧州中央銀行(ECB)が全面的な量的緩和(QE)を導入すると予測し、その通りになった。
クライブ・クックソンは、2015年末までに西アフリカのエボラ出血熱が根絶されるとの予想を的中させた。ギデオン・ラックマンは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナや欧州で別の地域を併合することはないと述べていた。2014年末の時点でそう公言していた向きは多くなかった。
外した予測も1つあった。1年前には、英国の総選挙はハングパーラメント(宙づり議会)に終わると予想した向きが多く、本紙のジョナサン・フォードもその1人だった(おまけに彼は挙国一致内閣が作られるとさえ書いていた)。
これ以外では、本紙は予測の内容ではなく、どんなテーマについて予測をするのかという問題設定でつまずいた。具体的には、「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」の支援によるテロがフランスで発生することを予測できなかったし、ロシアがシリアで軍事行動を取ることも、移民危機が欧州連合(EU)にとって深刻な脅威になることも予測していなかった。2016年にも、まだ本紙の想像を超えている出来事が起こるのだろう。
(James Blitz)
■ヒラリー・クリントン氏は米国大統領選挙に勝利するか。
答えはイエスだ。大統領選は流れがころころ変わる選挙、そして記憶にある限り最も見苦しい戦いになるだろう。クリントン氏は共和党の候補者テッド・クルーズ氏から、性格の面で欠点があるとか米国の敵と対峙したときに弱腰になるといった批判を受けるだろう。多くの有権者が、クリントンという名前を今日の米国の悪いところ――そして堕落しているところ――すべての象徴だと見なすだろう。
だが、選挙というものの勝敗は、まだ中道(あるいは中道の残骸)で決している。クルーズ氏は、ホワイトハウスの主になるには平均的な有権者よりあまりに右寄りすぎるということになるだろう。
世論調査での際どい接戦にもかかわらず、クリントン氏は選挙人団の投票では地滑り的な勝利を収めるだろうし、民主党は議会上院の主導権を奪い返すだろう。しかし、大統領としての第1期は、ひどく2極化したワシントンで始まることになる。「ハネムーン*1」はないだろう。
(Edward Luce)
*1=就任後100日間、議会やメディアが大統領批判を手控える期間のこと