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ゲーマー日日新聞

ゲームという文化を、レビュー、攻略、考察、オピニオン、産業論、海外記事の翻訳など、複数の視点で考えるブログ。

2015年のゲームオブザイヤーを考える

おすすめゲーム

 

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2015年、それは大作と期待作の入り乱れる、まさに激戦の年だった。

ここでは、海外誌などでよく紹介される一年で最高のゲーム、「ゲームオブザイヤー」をゲーマー日日新聞なりの基準と書式でもって決めていこうと思う。

とは言え、単に「最高のゲーム」を決めるのは、いささか難しいし主観的になりすぎる。

そこで、映画業界の権威である数々の賞の形式を模倣し、最高の賞「作品賞」と同時に、ゲームにおける様々な可能性、例えば演技、レベルデザイン、脚本、マルチプレーなどを別に勘案し、それぞれ発表したいと思う。

 

映像賞

Everybody's Gone to the Rapture

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「映像」には無限の可能性がある。人間がかつて見たことのない世界を写し、存在しない世界によって人々を喚起することも出来る。

私がこのゲームを介して、1980年代のイギリスにある田舎町を訪れた時、そこに美を見出した。次世代機「PS4」への期待もあって、むせ返るような緑の表現、孤立するような家々、木々から溢れる光、なるほど素晴らしいグラフィックだと。

しかし、本作の恐ろしさは、その美の中へ我々プレイヤーを取り込んでしまうことだ。プレイヤーは非現実的な発光体を介して物語を進めていく。そこで繰り広げられる、村人たちの物語。

ではそこに、プレイヤーは存在するのだろうか。美しい映像が、落ち着いたFPS視点が、プレイヤーの特等席として歓迎し、そんな疑問をあやふやなまま誘導してしまう。そこに、「リアル」とか「綺麗」とかでは判別できない、本作による映像の真の恐ろしさを感じたのである。

 

ノミネート

Badman:Arkham Knight

既存のイメージと最新技術によるグラフィックスの驚異的なまでの合一による

Dark Souls 2: Scholar of the First sin

多様なアイテムとオブジェクトにも関わらず、驚異的なまでの細部の描き込みを実現し、HD化による可能性を見出したことによる

 

演技賞

Call of Duty: Black Ops 3(テイラー役:Christopher Meloni)

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FPSにおける大御所、『CoD』の最新作は、一見平凡なコンセプトに思える。未来における戦争、ドローンや情報技術、架空の国家などだ。

しかし、その根底に眠るメッセージ、そして危機感とはなんだろうか。高度な技術による戦場の管理は、兵士を従来以上に「戦争の道具」たらしめ、その人格を奪っていく。

『COD:BO3』で描かれる物語は、決して架空の未来における夢物語でなく、むしろ異常なまでのリアリティと、FPS(ゲーム)というメタフィクションに裏付けられた、冷徹な営みである。

中でも、本作においてテイラー役を演じたMeloni氏は、まさしく怪演と評するに相応しい。逞しくも、虚空を見つめる瞳、その「テイラー」という人物は、プレイヤーの印象の中へ容赦なく浸透していった。

 

ノミネート

Her story(Hannah役、Eve役:Viva Seifert)

極めてユニークなコンセプトを実現する多様な表情による

Metal Gear Solid V: The Phantom Pain(クワイエット役:Stefanie Joosten)

言語と戦い続けた一人の戦士としての意志を発揮する演技による

 

レベルデザイン賞

モンスターハンター:クロス(電竜ライゼクス、泡狐竜タマミツネ、巨獣ガムート、斬竜ディノバルド)

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10年以上遊ばれ続けたゲームがある。様々な魅力を持ち続け、ただ「進化」のみを続け、10年以上ファンに遊ばれ続けたゲーム、それが『モンスターハンター』だ。

だが、特に本シリーズを支える魅力は、その高度なアクション、とりわけ「戦っていて楽しいモンスター」を作るレベルデザインに他ならない。

前作『4』や『4G』で追加されたモンスターは俄然素晴らしい。一体のモンスターなのに、何度倒しても、その攻略法はいくらでも思いつく。だがそれが4体も追加されればどうか。

何匹も倒すのだ、何十匹、いや何百匹かも。そのモンスター、その「Level」には、一切の手抜きは許されない、無論「被る」こともだ。だが現状、彼ら4匹の飛竜たちは、それぞれが美しく、勇ましく、そして何より、私を未だに悩ませ続けているのである。

 

ノミネート

Wolfenstein: The Old Blood(ウルフェンシュタイン砦)

ステルス、待ち伏せ、ラッシュ、ロングレンジなどの様々なシチュエーション、そして景観の美しさによる

Bloodborne(旧市街)

為す術のない機関銃の掃射と、獣による待ち伏せという、意外性のある構成による

 

脚本賞

Undertale

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昨今ではゲーム業界においても、優れた脚本を残そうという動きが盛んになっている。しかし、それらはすぐ「ハリウッド式」か「裏切り」そして「これはゲームだ」という自省を促すものなど、少なからず偏り(流行)が見られるように思える。

だが、優れた脚本とは何か考える上で、必ずしも大局的な見方やジャンルに囚われる必要はないのだ。ユーモラスな名前、何気ない会話のやり取り、そうしたものの積み重ねがあって、優れた脚本は完成するのではないか。

『Undertale』は「誰も死ぬ必要のないRPG」として宣伝されている。正直、こんなコンセプトはいくらでもあった。だが、自由度、選択肢、そういった類が、実際のプレイで楽しめたことが、どれだけあったか。

本作の素晴らしい点は、その緻密な文脈と言葉により、プレイヤーが自然と「誰も死ぬことのないよう願う」ことなのだ。脚本はプレイヤーの行動に訴えかけ、やがてプレイヤーと主人公の意志は(同意でなくとも)奇妙な一致を見せる。そこに、プレイヤーの「泣き所」が生まれるのだろう。

 

ノミネート

Hotline Miami 2: Wrong Number

シリーズならではの構成と、映像とゲームコンセプトを土台に、プレイヤーの予想を裏切る展開による

Life is Strange

エピソード形式による、ジュブナイルの揺れ動く心情を描いたことによる

 

マルチプレイ賞

Hearthstorne

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サービスを開始したのは去年の本作だが、新たに拡張パックとアドベンチャーを追加し、その魅力とボリュームを大きく磨いた点から、十分に「新作レベル」に進化した本作。

このゲームを遊んでいてすごいなと感じるのは、プレイヤーたちのイキイキとした表情だ。作品が「作品」のうちに完結することなく、プレイヤーたちのプレイと呼吸により、ゲームそのものに「生きている」ような躍動感を与える。

かつての『League of Legends』、『Counter Strike』にあったそれを、この『Hearthstorne』は紛れも無く持ち合わせている。日々変化するメタゲームに、絶え間なく上下するレート。プレイヤーたちは今日も、切磋琢磨を繰り返す。

無論、今年も素晴らしいマルチプレー作品はいくらでもあった。だが、それらは本当に「生きている」のだろうか。アップデートが多少あっても、既に作品として保存されてしまったのではないか。本作のようなマルチプレーには、まるでその行き先が、栄光が見えないのである。

 

ノミネート

スプラトゥーン

シューターとアクションを掛けあわせ、オールドスクールかつシンプルな駆け引きを再現したことによる

Rocket League

ユニークなアイディアを基に、操作性と難度、マッチメイキングを充実させ、簡潔かつ奥深いゲーム性を実現したことによる

 

企業賞

Bethesda Software

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ゲームを作ること、作品を世に送り、我々の手に届くこと。それは途方も無い旅であり、テクスチャ、サウンド、レベルの作り手は当然として、それを支え、流通や広告を考えるパブリッシャーたち、彼ら全員の貢献によって、初めて成功するのだ。

彼らBethesda Softwareは、常にこの困難に挑戦してきた。全世界に数百万本規模の売上を吐き出すモンスタータイトルを担い、各国のプレイヤーたちからの期待を一身に背負うその背中は、まるで巨人のようである。

彼らはそのプレッシャーから決して逃げることなく、むしろ向き合い続けた。2008年に発売された『Fallout』シリーズが『The Elder Scroll』と決定的に異なるのは、数十年レベルで築き上げたブランドすらなしで、極めて普遍的なテーマを訴え、『TES』以上のファンを獲得したことだった。

『Fallout 4』の発表は、熱狂により迎えられた。そして、彼らは紳士的に、その熱狂から数ヶ月で完成までこぎつけ、あらゆるゲーマーの時間を奪い続けたのだった。

 

ノミネート

Blizzard Entertainment

高度なマルチプレーゲームを複数開発し、現状また将来的にプレイヤーを魅了し続けたことによる

Valve Corporation

オリジナルを追求し続け、独自のハードの開発さえ臨む意欲的な姿勢による

 

作品賞(Game of The Year)

Fallout 4

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プレイヤーの好みは人それぞれとは言え、少なくともこの世で最も巨大なテーマを扱うゲームは「RPG」なのだろうと思う。

テクスチャに満ちた世界を駆け、テクストを介して人々と出会い、アイテムを介してレベルを攻略する。少しずつ築かれる経験は、やがて物語となって人々の記憶に刻まれる。

問題は、それが面白いかなのだ。今では5時間もあればクリア出来るゲーム、同時に、5時間もの間に濃縮したゲームプレイを楽しめる作品が溢れている。そこで「RPG」が生き残ることは難しい。本作はまさしく、その可能性を実現した作品なのである。

本作は架空のアメリカを舞台としたゲームである。だが同時に、本作に眠る魅力、多様な攻略、無数のクエスト、ロケーション、人種、クエスト、これらが象徴するものは、むしろアメリカに眠るその「普遍性」であり、その点で本作は究極的に自由なゲームなのである。

 

ノミネート

Undertale

決してコンセプチュアルなデザインのみに依らず、丹念に構築された世界観とテクストが実現する、稀有なナラティブを発現したことによる

モンスターハンター:クロス

従来までの批判点を克服し、同時にプレイヤー側の自由なアクションを拡張し、合理的かつシリーズ内でも特筆すべき進歩を遂げたことによる

 

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以上、筆者によるゲームオブザイヤーはBethesda Software『Fallout 4』とする。