■きれいじゃない
乾いた空気が自分の顔の皮膚をよりガビガビでベトベトにさせる。
「どうして、君は彼女に羽を全てあげてしまったんだい?」
「みんながあげろっていうからに決まってるじゃない 色々な理由をつけて」
「でも、彼女を皆は弱いというけれど、君の方がよっぽども哀れだ」
「だって、私、きれいじゃないもの」
「残酷な運命だ」
自分は溜息を吐くと、目の前に猫がゆっくり歩いている。かわいくない。目が真っ白で、所々毛がない。
「きれいだったら、泣いて誰かに慰めてもらうのに」
「街に行くかい? まだ、財布に金はある」
「大きな流れのなかで、私たち負けちゃうよ」
隣から綺麗じゃない嗚咽が聞こえてくる。きっと醜い姿だ。
「これからどうするんだい 自由なんてないけど」
「自由になれるって信じてるから いつかきっと」
ビルの天辺を見た。彼女があげてしまった羽をつけた可愛い猫を抱いた綺麗な子がいた。
絶望しかないが、自由になろうと思ったし、いつかなれる気がした。