イッピン「斬新!丈夫!挑戦する漆〜秋田 川連漆器〜」 2015.12.27


言うてはるんだすか!え?さっきからその話ばっかりして!もっと鉄道やレンガやガス灯や牛鍋の話も聞いとくなはれ!ほんま千代にも見せてあげたいわ。
一日の終わりにはすてきな時を過ごしたい。
そんな水沢エレナさんの夜を演出するのが…。
(氷を削る音)こちらの器。
う〜ん。
鋳物のようなざらっとした質感と銀の渋い輝き。
でも金属でなくなんと漆器。
きょうのイッピン。
800年の伝統ある産地が斬新な器を続々と生み出しているんです。
年間230万人が利用する国際的ホテル。
ここにあるセレクトショップには世界中からえりすぐった品が並びます。
ひときわ存在感を放つ器が川連漆器。
漆器とは思えないカラフルなストライプが外国人を魅了するんだとか。
川連漆器にはもう一つの顔があります。
こちらの保育園では12年前から給食に川連漆器を用いています。
わんぱく盛りの子どもたちが使っても安心。
ちょっとやそっとのことでは壊れない丈夫さも大きな特徴なんです。
質実剛健。
ふだん使いの器からスタイリッシュでモダン斬新な器まで変幻自在な川連漆器の魅力を紹介します。
秋田県の南部にある湯沢市。
川連地区は古来漆器づくりが盛ん。
今も100を超える工房が軒を連ねます。
まずストライプの漆器をリサーチ。
こんにちは。
あこんにちは。
水沢と申します。
よろしくお願いします。
この道35年の伝統工芸士です。
これって何ですか?サラダボウルです。
サラダボウル!これは両面使えるすごい。
サラダ&フルーツボウルといって…。
おもしろい!使わない時だったらこのままで。
あとサーバーをセットできるという…。
すごいすてき。
あ!お目当ての器を発見。
シャープなストライプが印象的。
12年前イタリアのデザイナーと共に開発し海外の見本市で大好評だったそう。
では器づくり見せていただきましょう。
わ!あこれは漆器の香りですか?そうですね。
独特の匂いがすると思うんですけれども。
そうですね。
まずは土台となる木地。
木地にゆがみがあるとシャープなストライプを引くことはできません。
白木のままだと…。
ちょっとザラザラしてると思います。
ザラザラの正体は木が水を吸い上げる管「道管」。
木材には道管が湿気を吸収してしまいゆがむという性質があるんです。
そこで道管を塞ぐんですがまず米のり。
そして漆。
さらに木くずを混ぜてパテ状にします。
これがこくそ。
こくそを塗ると木くずが道管に入り込みゆがみを防ぐんです。
こくそは乾燥すると木地になじんで同化します。
厚く塗るとお椀の形が変わるためできるだけ薄く塗るんです。
こくそを塗る前と後。
顕微鏡写真を比べると道管がみな塞がれました。
こうしてゆがみにくい木地を作ったあと漆を塗り重ねます。
2か月かけて10層。
堅牢さも備わります。
いよいよ仕上げの上塗り。
お椀のベースは青。
あらかじめ顔料を混ぜた色漆です。
まんべんなく厚く塗ると漆の艶やかな光沢が引き出されるんだそう。
むらが出来ないようはけで均等にならしていきます。
おや?佐藤さん塗り終わってもじっと器を見つめていますが…。
へぇ〜。
あ…。
細かなちりでもこのように…。
器のでこぼこにつながります。
取り除くのに欠かせない道具が白鳥の羽根。
軸をとがらせると適度に弾力が出て漆を傷めずにちりを取れるんだそう。
ここにゴミがありますよね。
はい。
あ〜本当だ。
う〜ん。
ですね。
漆には乾きにくく粘り強い性質があります。
ゴミが取れた跡に周囲の漆が表面張力で徐々に流れ込みついにはこのとおり滑らかになるんです。
最後に5色の色漆を使ってストライプを引いていきます。
ここで登場するのがろくろ。
器をセットして…。
(電動ろくろの回る音)90度傾けます。
ここにストライプを引いていくんですが。
そもそも漆の粘り強さは線を引くのには不向きなんです。
そこで混ぜるのがこちら。
これは何ですか?樟脳油です。
洋服の樟脳。
樟脳油はクスノキから精製した油。
漆に混ぜると粘りが弱まり線が引きやすくなるんです。
さあここからが腕の見せどころ。
しっかりと手を固定し筆先がずれないようにします。
僅かな呼吸の乱れが線のゆがみにつながる。
息を止め全神経を集中させます。
ん〜すご〜い!へぇ〜。
技はもうひとつ。
それは樟脳油の調合。
すぐに蒸発してしまうからなんです。
樟脳油が少なすぎるとたちまち乾きかすれた線になってしまい一方多すぎると色漆に含まれた顔料が分離し粉がふいてしまいます。
佐藤さんは漆と樟脳油を絶妙なバランスで調合し美しい線を生み出していました。
これらを5色の全てでやり遂げて初めてシャープなストライプのある器が完成します。
出来ました。
え〜きれい。
世界が認めるモダンな器は正確無比に漆を操る職人の技が作り出していました。
高い志が生み出したイッピンです。
川連漆器の歴史は鎌倉時代に始まります。
この地の武士が自ら鎧の銅やこてに漆を塗ったことがきっかけだそうです。
江戸時代には藩の奨励を受けて地元の木材や漆を使っての食器づくりが盛んに。
中でもお椀は東北中の家庭で使われたと言います。
丈夫さに秀でていたためでした。
川連漆器は今もなお地元で欠かせない存在。
小中学校の給食に使われているほどです。
丈夫な特徴に加え高温殺菌ができる特殊な漆を使用。
(生徒)いただきますの挨拶をします。
(一同)いただきます!若者の漆器離れに歯止めをかける試みで生徒たちに好評なんだとか。
この丈夫なお椀の秘密探っていきましょう。
まずは木の加工。
使うのはトチやカツラなどの広葉樹。
おおまかに切っていくんですが…。
このように1本の丸太を効率的に切り分けます。
ここからお椀を切り出していくんですが方法は2つ。
横木取りは横方向に木目が出る方法。
縦木取りは縦に木目が出る方法。
川連では横木取りが伝統。
この木取りのしかたに丈夫さの秘密が。
縦木取りと横木取り。
同じ大きさに切り出した板に圧力をかけていくと…。
横木取りはおよそ4倍まで耐えられました。
木地はいったん乾燥させます。
水分を減らし割れにくくするためですがその方法にも工夫が。
特別に乾燥室を見せてもらいました。
わぁ〜。
はいどうぞ。
はい。
わぁ〜すご〜い。
木くずを燃やした煙でいぶしながら2か月かけて水分を抜きます。
煙には抗菌・防虫効果があるので木が長もちするようになるんです。
そして仕上げ挽きの作業。
ろくろにセットした木地をカンナで削り出します。
へぇ〜。
型は器の内側用と外側用2種類あります。
型にカンナを沿わせて削っていくと器の形になるように作られているんです。
これが内側の型。
カンナを支点となる器具に通し型に沿って動かすとみるみるお椀に。
次に外側。
こうして型を使って滑らかでゆがみの無いお椀を正確に作っていくんです。
へぇ〜きれい!丈夫な木地が出来上がりました。
これに漆を何層も重ねてさらに丈夫にしていきます。
知恵をしぼって手間ひまかけて使い続けられるだけの訳がありました。
「丈夫なお椀」はさらなる進化を遂げています。
こんにちは。
こんにちは。
あ〜いっぱいある。
老舗…
(善六)よかったら手に持って…。
はい。
大きさもやっぱりいろいろあるんですね。
そうですね。
う〜ん。
ちょっと変わってると思うんですけど。
なんか…。
え!そうなんですか。
力が衰えても漆器が使えるよう地元の職人たちと開発しました。
持ちやすさの秘密は裏側を見ると分かります。
従来のお椀は高台の際がなだらかですが高齢者用の漆器はくぼんでいます。
くぼみに指をかけることで握力が弱くても楽に持つことができるんです。
しかしこのくぼみ作るのは意外にも大変でした。
いったい何があったんですか?くぼみの部分に漆がたまりむらやしわが出来てしまったんです。
そこで専用のはけを作りくぼみの部分の漆をそぎ落とすことにしました。
あれ?かすれてしまっていませんか?でも大丈夫。
器を乾燥させる棚に実は仕掛けがあるんです。
(スイッチを押す音)数分おきに棚を回転させることでくぼみの部分に少しずつ漆がたまり乾くころにはちょうどよい厚みになるようにしたんです。
高齢者用の食器もそうなんですけども他のものも…いつまでも漆器が使えるように画期的なくぼみには思いやりが塗り込められています。
水沢さんが訪れたのは川連漆器が一堂に会するギャラリー。
ひときわ目を引くのはあのイッピン。
う〜ん!ウイスキーにぴったり。
金属と見間違う斬新な漆器です。
職人を訪ねます。
こんにちは。
おじゃましま〜す。
は〜い。
こんにちは。
3代目。
金属のような漆器は伝統の技法を現代に生かそうと3年前に開発したもの。
黒い部分実は結構身近なものを応用したんだそう。
全然発想が湧かなかったです。
一緒ですね確かにええ。
こうやって見ると。
へぇ〜すごいアイデアですね。
では銀色の部分は?銀粉ってこういうシルバー光ってるんですけども。
はい。
粉の状態だと白っぽく見える銀をこれから輝かせていきます。
まず塗りたての漆の上に粉筒という専用の道具で銀粉をまきます。
漆が接着剤となって定着するんです。
粉筒の先端には布が張ってあり指ではたくと適度に粉が出る仕組み。
蒔絵という伝統的な装飾技法です。
続いて漆を粉にした乾漆粉。
黒いざらっとした部分を作っていきます。
器を回す左手と粉をまく右手。
速度と量。
両者の呼吸がぴたりと合わさってはじめてむら無く美しくまくことができるんです。
30分かけてまき終えましたがあれ?銀粉はまだ白いまま。
ここからの作業にご注目。
器全体に黒い漆を塗っていき次にやすりで研いでいくんです。
こうすると銀が輝くというんですが。
銀は粉の状態では独特の輝きがないんです。
表面を研ぎ平らな面を作ることではじめて輝きます。
でも銀は空気に触れると酸化して黒ずんでしまいます。
それを防ぐため透明な漆でコーティング。
そして銀を最大限輝かせるため透明な漆を極限まで薄くしていくんです。
ここで取って置きの道具が登場。
なんと指!研磨剤をつけ指紋を使って表面の漆を徐々に薄くしていきます。
これ指っていうのは特別な感覚というものなんでしょうか?指紋ですか…。
そういう感じですかね。
漆の厚みは目では判別できません。
指先の感覚を研ぎ澄まして銀が最高の輝きを見せる薄さまで削ります。
こんな感じですね。
どうぞよかったら。
いいですか。
わ〜。
見事な輝きです。
伝統の技を駆使してこれまでにない表情を持つ漆器が誕生しました。
攝津さんは今新たな取組みを始めています。
漆かき。
かつて川連では地元の漆を使っていましたが久しく途絶えていました。
攝津さんは去年志を同じくする仲間と漆かきを復活させました。
川連の伝統に連なることでふだん使いの漆器という産地の特色をいっそう深く追求したいと考えたのです。
そういう意味で作ってきましたので…思わず手に取りたくなるようなそしてずっと使ってもらえるような漆器を作る。
川連の職人たちは世界へ明日へ挑戦を続けます。
2015/12/27(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「斬新!丈夫!挑戦する漆〜秋田 川連漆器〜」[字]

これが本当に漆器!?カラフルなストライプのイタリアン・デザインのお碗。金属器と見まごうしゃれたカップ。モダンな器を次々に生み出す秋田の川連(かわつら)漆器を紹介

詳細情報
番組内容
これが本当に漆器なの!?カラフルでシャープなストライプが際立つイタリアン・デザインのおわん。鋳物のようでも銀器のようでもあるしゃれたカップ。今、秋田の川連(かわつら)漆器が、魅力的な器を次々と誕生させている。川連は800年の歴史を誇る東北漆器界の雄。その特徴は、独特の工法が生み出す丈夫さにある。質実剛健なふだん使いの器から、モダンでスタイリッシュなものまで、変幻自在な漆の里の魅力を水沢エレナが紹介
出演者
【リポーター】水沢エレナ,【語り】平野義和

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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