昔むかし山あいの村に貧しい夫婦が暮らしていました。
大晦日だというのに年越しの支度もできません。
はぁ正月がくるというに…。
本当に何にもないなんてね。
そうだわ。
ん?今まで丹精込めて作っておいたおかせ玉があるわ。
これを町で売ってお米にかえられないかしら?うむそうじゃなやってみるか。
おかせ玉か。
売れるといいんですが。
おかせ玉というのはからむしの茎の皮から糸を作り出して巻いたものです。
おかせや〜おかせ。
おかせ玉おかせ玉はいらんかね。
おかせや〜おかせ玉。
おかせ玉はいらんかね。
おかせや〜おかせ玉いらんかおかせ玉。
さあおかせ玉おかせ玉いらんか。
おかせ玉おかせおかせ玉。
笠や。
ん?笠や笠はいらんかね。
笠や笠や。
おかせおかせ玉。
笠や笠はいらんかね。
おかせ玉はいらんかね。
(2人)ハハハハハハハ。
どうだい品物はさばけたかね?いんや思うようにはなりません。
大晦日の市におかせ玉や笠は無用じゃな。
わしも朝から声をからして歩いておるが一向に売れぬわい。
魚や米などはよく売れてるが。
さあ活きのいい魚だよ。
あっはねやがった!まいどお米に味噌醤油何でもあるよ。
あんな具合におかせ玉が売れたらなぁ。
のうお前さんその売れないおかせ玉を家に持ち帰ってもしかたあるまい。
どうだいこのわしの笠と取り替えっこしないか?えっ取り替えっこ?うん。
実のところわしも売れない笠を持ち帰りたくないのじゃよ。
オラもこのおかせ玉持ち帰りたくないな。
(2人)ハハハハハハ。
決まったな。
へい。
〜お地蔵様。
この雪の中さぞ寒かろうに。
エヘッ。
笠はもうないか。
そうじゃ!フフッ。
おかせ玉はとうとう売れなかったんですね。
それでな笠売りのじいさんの笠と取り替えっこしたんじゃがその笠は地蔵様の頭にかぶせてきた。
まあ笠を持って帰っても今夜の足しにはならなかったんだしお地蔵様にあげてきてよかったですね。
ううんお地蔵さんたち寒そうだったから。
その夜2人はお正月の用意もできないまま早く寝てしまいました。
よんさよんさよんさ。
よんさよんさ優しい家はど〜こじゃ。
よんさよんさ。
ん?今頃何だろう?ん?優しい家はど〜こじゃ。
役立つところにそ〜れ。
(物音)いったい何の音かしら?嬉しいところにそ〜れ。
(物音)ここれは…いったい何じゃろう?よんさよんさよんさよんさ。
お地蔵様。
ん?これは…きっとあのお地蔵様たちが。
うんきっとそうだ。
(2人)ありがとうございます。
よんさよんさよんさよんさ。
お地蔵さんからの贈り物で2人は願ってもないお正月を迎えることができたということです。
昔貧しい農家に夫婦と亭主の母親が暮らしていた。
年の瀬の短い日が傾けば手仕事は続けられない。
さあこのへんにして夕飯の支度をしようかね。
はい今火を。
火をおこすのは簡単ではなかった。
火種はその手間を省くものだった。
灰の中に保存した炭火を次に火をおこすときの火種にする。
煮炊きのあとの火の始末をし火種を絶やさぬようにするのは女房のつとめだった。
もうすぐ大年がくる。
大年の晩は決して火種を消さないでおくれ。
大年とは大晦日のこと。
火種が消えたままで正月を迎え他の家からもらい火をするといい年にならないとされていた。
よくよく頼んだよ。
はい気をつけます。
嫁いできて初めて迎える正月だった。
そして大年の晩がきた。
おい今夜は冷え込む。
早う休むがええ。
はい。
けれど火種が気になった。
(寝息)はっ。
あ〜っ!火種は消えていた。
そうだ…。
火打ち石は宵の口に降りしきった雨が吹き込みすっかり濡れていた。
雨はやんだものの冷たく光る星空の下に家々は寝静まっていた。
《大年のうちに火をもらわないと》けれどとうに夜半は過ぎどの家にも明かりは見えなかった。
《おっか様もうちの人ももったいないほどよくしてくれる。
なのに私のせいでよくないことが起きたら…。
そんなこと…そんなことさせん》あっ。
火がもらえなかったら家を出ていくしかない。
あっ明かり。
女房はのほうに見える明かりに向かって駆け出した。
それは亡くなった人を運ぶ弔いのたいまつだった。
お願いします火を分けてください。
どうか。
分けてやってもいいが頼みがある。
ほれ棺おけが壊れてしもうてのう。
新しいのを運んでくる間中の仏さんを預かってくれぬか?そしたら火を分けてやろう。
わかりましたお願いします。
うむそれ。
(2人)そ〜れ。
あ…。
このまま引いていくかね?それではお気の毒今長持ちを持ってまいります。
男たちは死人を置いてどこかへ消えた。
女房は家から長持ちを運び死人を納めた。
うっ…。
う〜ん。
居心地が悪いでしょうけどもうしばらく堪忍してくだされや。
ハァ間に合った。
納屋に長持ちを隠し囲炉裏に火を移して女房はほっとしたが辺りが白んできても弔いの男は現れなかった。
正月に餅が入った雑煮を食べられる。
ありがたいこっちゃ。
これも働き者の嫁が来てくれたおかげじゃ。
ありがとうさん。
うぅ…。
すみませんこの火は…あ〜ん。
隠し通すことができず女房は夜更けの出来事を打ち明けた。
亡くなった人をあのままにしてはおけません。
どうしたらいいでしょう?案ずるなわしが寺にお連れしよう。
私も一緒に参ります。
これか。
よ〜し。
あの…少し待ってください。
足が汚れていなさってせめて拭いてさしあげましょう。
あっ!これはなんとしたことじゃ。
大年の晩には神々がを通られるという。
福の神があなたの心根に目を留められ福を分けてくださったのじゃろう。
それ以来家はいいことが続いた。
(赤ん坊の泣き声)赤ん坊も産まれ家族も増えた。
そして女房は生涯にわたって火種を絶やすことがなかったという。
昔ある村に茂作と巳之吉という2人のきこりがおりました。
(茂作)巳之吉今日はここまでじゃ。
(巳之吉)なぜじゃ?茂作じいさんもう少しで切り倒せるのに。
吹雪がくる。
茂作じいさんの言ったとおりまもなく辺りは激しい吹雪になり2人は急いで山を下りました。
渡し場に着くと渡し守は舟を向こう岸に置いたまま帰っていました。
2人はとりあえず渡し守の小屋に逃げ込みました。
小屋ごと吹き飛ばされそうじゃ。
なに心配はねえじきおさまるだろう。
しかし吹雪はおさまる気配を見せません。
巳之吉もしばらくして眠ってしまいました。
それからどれくらい時間が経ったでしょう。
ん?雪?小屋の中に白装束の1人の女が見えました。
ボーっと白い明かりを発し眠っている茂作じいさんの前にかがみこんで息を吹きかけていました。
だ誰だ?女はこっちへ身をかがめてきました。
巳之吉は声を出すことができません。
女の吐く息は一瞬で体の芯まで凍りつくような冷たさでした。
お前の命も奪おうと思ったが気が変わった。
今夜のことは誰にも言うでないよ。
もし言えばお前の命はないよ。
女はそう言うとそのまま消えていきました。
明け方になって吹雪はやみました。
小屋へ戻った船頭が凍え死んだ茂作じいさんと気を失った巳之吉を見つけました。
その後巳之吉は体を壊して寝込んでいましたが次の冬にはまた1人で山に入るようになりました。
そんなある日巳之吉は家に帰る途中で1人の旅の娘に出会いました。
あのこれからどちらへ?娘は近頃両親を続けて亡くし遠縁を頼って江戸まで行くつもりだと話しました。
ご両親を一度に亡くされたとはお気の毒に。
そうだ今日はもう日も暮れるでよかったら家で休んでいかれたらよい。
いいえご迷惑をおかけするわけにはいきません。
なに我が家は母と2人暮らし遠慮はいらん。
オラは巳之吉じゃお前様は?お雪でございます。
巳之吉がお雪を連れて家に戻ると母親は喜んで迎え入れました。
さあ食べてくだされ外は寒かっただろう。
これを食べれば体も芯から温まる。
さあ遠慮しないで召し上がれ。
こんなに人に優しくしてもらったことは今まで一度もありません。
巳之吉がこんなに笑顔を見せたのは久しぶりじゃ。
去年茂作じいさんが亡くなってからめっきりふさぎこんでおったで心配じゃったがきっとお雪さんのおかげじゃ。
せめて冬の間だけでも江戸など行かずここにおったらええ。
結局お雪は江戸へ行くのをやめてそのまま巳之吉と夫婦になりました。
そして子宝にも恵まれました。
しかし巳之吉は少しずつ年をとっていくのにお雪はいつまでも若々しく美しいままでした。
やがて母親も亡くなって何度目かの冬がきました。
お前が明かりを受けて針仕事をしているその姿を見るとついあの日のことを思い出すよ。
茂作じいさんを死なせたあの女のことを。
もしかしたら夢だったかもしれないが茂作じいさんと一緒に小さな渡し守の小屋で吹雪が通り過ぎるのを待っていたときのことだ。
気づくと小屋の中に美しい女がいた。
そしてその女がいなくなったとき茂作じいさんはまるで氷のように冷たくなって死んでいた。
あ〜お前様ついに…。
おお雪!あの日のことは誰にも言うなと言ったのに。
あのとき私はお前様の命をとるつもりだった。
けどお前様の目をのぞいたとききれいな心が見えたから命はとらなかった。
でもついにお前様は約束を破ってしまった。
お雪…。
ととさまかかさま。
お前様がいなければあの子たちは生きてはいけません。
子供たちのことは頼みました。
つらい思いをさせないように…。
大事に育ててくださいね。
お雪!それっきりお雪の姿を二度と見ることはなかったそうです。
2015/12/27(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字]
「笠地蔵」
「大年の火」
「雪女」
の3本です。みんな見てね!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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