相棒 season6 2015.12.29


(ヘリコプターの音)
(三浦信輔)年の瀬だっていうのに殺しかよ。

(三浦)うわっ!ひっでぇなこりゃあ。
(伊丹憲一)おいホトケはどうした?
(米沢守)もう搬送されましたが何か?
(芹沢慶二)搬送されたって司法解剖にですか?いえ遺族に引き渡すために所轄署の方に。
何っ!?解剖もしないでなんでだよ?監察医の先生が事件性はないと判断したもので。
何しろ死因は凍死でしたから。
凍死!?何言ってんだお前。
どう見たってこれ…。
あぁこれペンキです。
ペンキ?はいこの現場で作業用に買い込んでおいたそうです。
(伊丹)だったらお前なんでこんなに荒らされてんだ?恐らく死亡した男性は酔っ払って窓を破って室内に侵入したと思われます。
暗かったせいであちこち備品を蹴飛ばしたあげくに寝込んでしまい今朝のこの冬一番の冷え込みで…。
そりゃ間違いなく凍死だな。
(芹沢)ていうか殺しでもなんでもないじゃないですか!通報で駆けつけた所轄署の警官が新人で舞い上がってしまったそうです。
もう…。
んだよ全くの無駄足かよ。
私も深く後悔してます。
あのお2人を呼ぶような事件ではありませんでした。
あぁ?2人?
(伊丹)おーい特命係の亀山〜。
(亀山薫)それしかねぇのかいつもいつも…。
いやよく来てくれた。
あぁ?あんな複雑怪奇な事件俺たちはお手上げだ。
任せた!は?お願いします先輩。
おっ?どうも。
おっ…?なんなんすかね?
(杉下右京)どうやら事件ではなかったようですねぇ。
はぁ?
(伊丹)米沢の野郎何かっちゃ特命呼びやがって。
(芹沢)米沢さんはああいう人なんだからしょうがないですよ。
(三浦)そうだよ。
ねぇ。
先輩もねもうちょっとこう心を広く持った方がいいですよ。
うるせえ!アタッ!危ねぇよ何やってんだよ。
あー…あっそうだソバ買うの忘れちゃったなぁ。
今年もソバですか?そうそうそう。
ん?僕は今年こそは彼女と…。
あーっ!わーっ!びっくりした!
(芹沢・三浦)ああっ!新井田!
(伊丹)毎日毎日手配書の顔拝んでりゃ嫌でも目に焼きついちまう。
間違いねぇ!あれマジで新井田ですかね?捕まえたら総監賞クラスの大物だぞ!
(芹沢)あっタクシー。
ああっ乗っちゃう乗っちゃう!追え!追え追えっ!まさか年の瀬にこんなのが飛び込んでくるとはなぁ。

(芹沢)こんなところまで来て何する気ですかね?遊びに来たわけねぇだろ。
なんか隠しやがった。
取り引きかなんかですかね?って事は仲間が現れるかもな。

(伊丹)ここは俺が見張るから行ってくれ。
(三浦)おう行くぞ。
(芹沢)はい。

(根元尚吾)すいません!それ僕のです。
ちょっと!ちょっと!!
(伊丹)ごめんなさいごめんなさいどいて!
(伊丹)待てコラァ!ちょっとどいてどいて!なんだよおい!
(人々の悲鳴)
(伊丹)てめぇコラッ!なんだこの金は!えぇ!?
(捜査員たち)確保!確保確保!
(伊丹)イテテテテッ!おいっ警察だよ警察!何が警察だこの野郎!それはこっちのセリフだ!公安だよ!こっ公安…?ああっすいませんすいません!すいません!!
(芹沢)三浦さん!
(三浦)逃げやがる!クッソ!
(芹沢)どいてどいて!はいどいてください!どいてどいて!
(人々の悲鳴)
(芹沢)ハアッハアッチクショ…。
逃げられちまったじゃねぇか!知るかよ!
(芹沢)すみませんすみません!公安部が張ってるなんて知らなかったんですよ。
お前ら一緒か!
(伊丹)捜査一課!わかるわけないだろ!わかんねぇだろお前!そこにはねぇぞ〜!
(新井田政彦)お前がエックスか?
(塚原一)お互い顔を合わせずに取り引きしたかったけどな。
つけられたなんて聞いてねぇぞ。
(新井田)つけられた?知らなかったのか?金は置いたぞ!ずっと見てたよ。
捕まった男…誰だ?捕まった男?サツに捕まった男だよ!知らねぇよそんなの!商品だってちゃんと用意したのにな。
金がない以上取り引きは中止だ。
ふざけんなてめぇ!ふざけてんのはてめぇだろ!こっちだって危ない橋渡ってんだよ!それが例のブツか?ダメだね。
金が手に入ってない以上渡せなーい。
(アラーム音)うわあっ!
(爆発音)
(人々の悲鳴)ハァ…はい次。
トカレフTT−33シリアルナンバー048432。
実弾ありです。
ここ5年間の使用履歴はありません。
旋状痕のデータとも一致しませんね。
って事はシロですね?
(角田六郎)悪ぃねぇ正月から手伝ってもらっちゃって。
いえいえ。
ま年末の一斉摘発でとんだお年玉見つけちまったもんだからさ。
旧ソ連製の拳銃がまた大量に出回っているようですねぇ。
摘発しても後を絶たないからやっかいなんだよな。
あっそれよりなんか情報入ってませんか?4日前の爆発事件で。
(爆発音)爆死したのは確か指名手配中の赤いカナリアの幹部でしたね。
あぁ…。
新井田政彦ですよね?
(角田)それともう1人塚原一って清掃員。
命は助かったけどね重体らしい。
清掃員という事は運悪く巻き込まれたのでしょうか?ま公安部も最初はそう踏んでたらしいんだけどねその塚原って奴のアパートを調べたら爆弾の工場だったってわけだ。
(角田)趣味で爆弾を作ってはそれをネットで自慢したりこっそり売りに出したりしてたらしいんだな。
なるほど。
じゃあこの死んだ新井田政彦はそいつから爆弾を買おうとしてた。
そのとおり。
公安部は新井田が組織の協力者に接触するって情報を掴んであわよくば両方とも捕まえてやろうと泳がせたのが裏目に出ちまったんだよ。
いずれにせよ被害者が他に出なかったのが不幸中の幸いでしょうか。
うーん…いや一番の被害者はねあいつら3人かもな。
(三浦)あぁ目が痛くなってきた。
(芹沢)大晦日も元日も休みなしなんて有り得ませんよ。
(伊丹)なんだって俺たちがこんな事しなきゃいけねぇんだ。
(大河内春樹)何か不満な点でも?
(三浦)あっ…いいえ。
いくら指名手配犯とはいえ刑事部長の許可もないままに尾行を行いさらに公安部の捜査を妨害した。
(大河内)本来なら規律違反で懲罰の対象になるところを私の権限でこの任務に就いてもらっている事を忘れないで頂きたい。
それは重々承知しております。
わかっているなら手を動かしてください。
けどなんの仕事をやらされてんですかね?
(角田)いやなんでもね公安部がようやく吐き出してくれた古〜い資料なんかをパソコンに打ち込んでるみたいだけどな。
今回のような事件を過去に起きた爆弾関連の同様の事件と比較検討し分析する事はテロ対策に欠かせない作業ですからねぇ。
そのデータベース作りをされているのでしょう。
うーん分析ねぇ。
でもなんでまた大河内さんが?さぁなんででしょうねぇ。
ま上の方の考える事はわからんね。
うーん…あっ右京さんもうこんな時間です。
おやそうでした。
課長今日の分はここまでって事でいいっすよね?いやまあいいけど…。
なんだお前ら用事か?ええ新年会が少々。
(電話)特命係。
あっえっ…今すぐですか?わかりました。
刑事部長からです。
なんか嫌な予感しません?いいお正月になりそうだね。
紙袋の中に大金が入っていたとは知らなかったわけか。
…はい。
ったくはた迷惑な事…。
ゴミだと思って拾っただけ?
(中園照生)根元尚吾29歳前歴なし。
現住所は北海道。
妻子を置いてこっちに出てきたようだ。
(内村完爾)背後関係も洗ったが組織や爆弾マニアの塚原とはまるで無関係だった。
状況から見て起訴するのは難しいでしょうね。
ならさっさと釈放しちゃえばいいんじゃないですか?そうはいかん。
札幌地検から警視庁に要請があった。
あの根元という男は公判中の事件の重要証人であり速やかに札幌まで護送して北海道警に身柄を引き渡すようにと書いてある。
護送ですか。
あれっ?前にも確か同じような事が…。
ひょっとしてまた俺が?今回は被疑者ではなく重要証人だ。
おまけに札幌地検のたっての希望で護送は2名で行う。
2名って…。
お前たち特命係に仕事を与えるんだ。
ありがたく拝命しろ。
もちろん旅費は出す。
旅費は出す。
もちろん札幌地検が。
(亀山美和子)ちょっとなんで来られないのよぉ!もぉ〜せっかく作ったのにぃ美和子スペシャルお雑煮バージョン。
(宮部たまき)あっ美和子さん美和子さんちょっと…。
はいはいはいはい。
まあ仕事ならしょうがないけどなんで札幌?ん?
(美和子)あっこれこれもう火止めちゃっていいですね。
何もう羽田かい?えっ違うってまさか車?えっ?えぇーっ!
(構内アナウンス)
(構内アナウンス)「13番線の16時20分発寝台特急カシオペア号札幌行きが発車3分前となります」「カシオペア号ご利用のお客様はご乗車になりまして発車をお待ちください」ハハッすいませんかなり怒ってましたよ。
美和子さんですか?いえたまきさんの方が。
はい?相当乗りたかったみたいですこれ。
まあ無理もないっすよね高級ホテル並みの設備で超人気の寝台特急カシオペアなんですから。
人気があるんですねぇ。
でもよく取れましたよね。
正月休みで飛行機も空席がなくあらゆる交通手段を検討した結果たまたま団体のキャンセルが出たそうです。
はぁ〜。
さっ乗りましょう。
こっちですね。
あっ2号車だ。
だいぶ向こうですよ。
(構内アナウンス)「13番線の16時20分発寝台特急カシオペア号札幌行きは発車1分前です」あぁ2号車だ。
右京さん4番ですよ。
あっここですね。
あぁあった。
あっちょっとすいません。
あの手伝いましょうか?
(堂上公江)あぁありがとうございます。
あのご迷惑じゃありません?いいえ。
よろしければこちらもお持ちしましょうか?あぁいいえこれは結構です。
あっここでいいですかね?はいありがとうございます。
(公江)まぁ助かりました。
何しろ一人旅なんて初めてなもんですから。
あお1人なんですか?ええホントは主人と来るはずだったんですけど去年亡くなってしまいましたから。
あぁ…。
お正月は毎年あの2人で旅行してたんです。
今年はやめようかなぁと思ったんですけど主人が乗りたがっていたこのカシオペアが運良く取れたもんですから思い切ってあの人の分まで楽しもうって決めましたの。
立ち入った事を訊いてしまいました。
あいいえ。
そういうわけだからこんなおばさんでよかったら話し相手になってやってください。
はい。
なんか困った事あったら俺たち隣の4番なんでなんでも言ってください。
ありがとう。
では。
はいどうも。
フーッ!スイートじゃないですか!札幌地検も随分張り込んだものですね。
あっ…。
おーっ2階がリビングになってんだ!眺めよさそうだし。
ヘッヘヘヘヘ…。
どうぞ。
札幌までは16時間の長旅です。
刑事の僕たちが一緒では無理もありませんが緊張ばかりしていては持ちませんよ。
別に緊張とか…大丈夫です。
あぁこれは便利ですねぇ。
あぁ俺たちここですよ。
『第九番交響曲』うーん。
いやてっきり駅弁かと思ってたら食堂車のディナーまでついてるなんてラッキーですよね。
ほらエビ入ってますよ。
そのようですねぇ。
これなんすかね?
(目黒美音)いらっしゃいませ。
(ヘッドホンからもれる音楽)
(美音)増田悦郎様ですね。
(ヘッドホンからもれる音楽)
(美音)こちらへどうぞ。
ん〜?ただいまメニューをお持ちしますので少々お待ちください。
(安藤礼治)暑いなぁ。
ちょっと暖房の効き過ぎじゃないか?
(安藤仁奈子)あなたが暑がりなだけよ。
(仁奈子)寒いよりましでしょ?ちょっとトイレ行ってくる。
(仁奈子)ええ?あっすいません。
もう…。
ひろ君嫌いなものあったら言ってね。
(三樹ライナ)なんで国子と食べなきゃなんないの?
(折原国子)しょうがないでしょ。
右京さんあの子どっかで見た事ありません?テレビとかに出てたような気がするんですけど。
向こう側。
僕はそちら方面には疎いものですからねぇ。
三樹ライナですよきっと。
人気モデルの。
おやおや。
そうそうそうですそうです。
(シャッター音)ちょっと勝手に撮らないで!うちのひろ君が何か?食事中に勝手に携帯撮られたくないの。
常識ないわけ?おばさん。
なんですって!?
(国子)すみません。
(ライナ)なんで国子が謝んの?あなた目上の人間に対して言葉が過ぎるんじゃありません?
(津島悟)まあまあまあまあまあまあまあ。
(津島)せっかくのディナーなんですから楽しくいただきましょうよ。
(安藤博貴)もういいってば。
ほら博貴君だって困ってるじゃないですか。
(津島)お料理が冷めてしまいますよ。
さあ席に戻られて。
相手は素人ですよ。
あなたクラスの人が相手にするのももったいない。
あんた誰?
(津島)初めまして。
西麻布でクラブやってます。
VIPルームもあるしお友達もぜひ一緒に。
面白いデザインですね。
切手みたい。
お店に来れば切手だって売ってますよ。
ぜひ遊びに来てください。
なんだったら今夜にでも。
2号車のデラックスの部屋ですから。
チャオ。
バッカじゃない?
(警笛)
(保坂有三)ええもう列車です。
キャンセルがあったみたいで今日の今日でしたけどなんとか切符が取れて…。
あとでまたかけ直します。
8時半ですか。
今どの辺りを走っているのでしょうねぇ?あぁ…あっちょっと…。
すいません今どの辺かわかります?えっ?福島ってもう通り過ぎたんでしたっけ?いや…さあ…。
あどうも。
ハハッ。
マニアっぽいからてっきり知ってるかと思ったんすけどね。
どの辺ですかねぇ?どうして右京さんたちだけがカシオペアに乗れるのかしら?美味しい…。
あっそうだ!盛岡を11時16分に出発するって事は今から東北新幹線に乗れば追いつけるかも。
たまきさんひょっとして隠れ鉄…。
いやいやいやいや違うんだけど一度一度乗ってみたかったのよね。
うはー溜め込んでるし。
ねーえこれいいと思わない?
(美和子)ん!このホテル!えっ知ってるの?だって有名ですもん。
えーとねほら…。
えっ?あっそうだそうだこれ。
これこれ。
なぁに?ほら。
(たまき)仲瀬親洋?
(美和子)うん。
この人通産官僚からホテルの経営者に転身して潰れかけたホテルをいくつも再生してきた平成のホテル王。
洞爺パークホテルもこの人が経営に加わったから超人気になったんですって。
あら全然知らなかった。
私も一度この人インタビュー狙ってんですけどね。
ふ〜ん。
あっ私この人知ってる!
(美和子)うん?
(たまき)羽鳥亮矢。
なかなかいい感じだと思わない?ふ〜んたまきさんこういう子タイプなんだぁ。
根元さんが証言しなきゃいけない事件ってどんな事件なんです?いやそれは…。
やっぱ札幌地検から口止めされてんだ。
なら言えませんか。
昨年の10月に起きた札幌を拠点とする暴力団北洋会の拳銃密売事件でしたね。
えっ右京さんなんで知ってんですか?札幌地検からの要請書に公判番号が記載されていました。
それを元に調べれば容易にわかります。
はぁ…その事件なんですか?…はい。
古い新聞記事にも目を通してみました。
札幌のホテルの駐車場で外国人グループから大量の拳銃を購入しようとした組の幹部と組員が銃刀法違反容疑で逮捕起訴されたとありました。
そうだったんだぁ。
でもなんでそんな事件に根元さんが?その頃そのホテルにリネン係の臨時雇いで入っていたもので。
なるほど。
あじゃひょっとしてその密売現場を目撃しちゃったとか?ええまあ…。
そっかそりゃあ重要証人ですよね。
無事に送り届けてきっちり証言してもらわないと。
よろしく頼んだよ。
おいなんだお前?何見てんだよ?ここにいたのか。
いい機会だちょっと話さないか?覚えてるか?定山渓のホテル。
6歳だったかなぁあん時も正月で寒いのにどうしてもお前が初日の出見るんだって聞かなくて父さんも付き合わされて…。
なんか言われたの?大学で。
えっ?俺の退学の事。
そうじゃないさ。
父さんはお前が何を考えてるかちゃんと知りたくて…。
フッ今まで父親らしい事してこなかったくせに何が家族旅行だよ。
待ちなさい。
私たちは話す必要があるんだ。
出来の悪い学生もそんな目で見るの?えっ?「どうしてわからないんだ」って哀れんでる顔。
博貴…。
これは失礼お取り込み中でしたか。

(パトカーのサイレン)
(争う声)
(ドアの音)あ…失礼起こしてしまいましたか?いえ…なんだか寝つけなくて。
お土産?そう!かわいい恋女房を正月から一人にした罰なんだからちゃんとお土産ぐらい買ってきたまえよ!あのなぁこれ仕事なんだぞ一応。
仕事と私とどっちが大事なの?プッお前酔ってんだろ。
誰かさんのせいで女2人の新年会ですけど何か?あ〜もうわかったよ。
わかったから!
(美和子)「あ〜もうこの際だからね…」たまきさんもじゃんじゃんリクエストしちゃってくださいよ。
うんお願いしちゃおーっと。
えーっとですねタラバガニと…。
はいタラバガニ。
あの高いのダメですからね!あのあぁそっそのぐらい…。
で?うん…。
えっイクラのしょう油漬け?ホワイトチョコ。
はいはい。
まだあんのかよおい。
スープカレーってお前重いっちゅーのそれはもう…。
(ライナ)キャーッ!誰かーっ!!ちょっ…切るぞ!
(ライナ)ヒッ…!どうしました!?あっ!亀山君。
あぁ右京さん。
お亡くなりになっていますね。
(ライナの嗚咽)悲鳴が聞こえたんだけど…。
(公江)どうかしたの?
(国子)ライナ何があったの?警察です。
こちらの部屋で乗客の方が亡くなりました。
えっ…!亀山君。
はい。
(増田)何かあったんですか?あぁ警察のもんです。
(仁奈子)なんの騒ぎ?何かあったの?警察です。
(安藤)どうかしたんですか?2号車で乗客が1人亡くなりました。
(一同)ええっ!?詳しい事がわかり次第報告しますんでとにかく今は部屋にいてもらえますか?部屋にって…。
お願いします。
(国枝宏和)どうしました?何かありましたか?警視庁特命係の杉下と申します。
亀山です。
(国枝)何かあったんですか?ちょっとこちらへ。
失礼します。
はっ!こちらの部屋を利用されていた方で間違いありませんか?はい…。
でもどうして?原因などはまだ不明です。
皆さんご自分の部屋にいったんお戻り願えますか?そう…はい。
あら大変!相当ショックを受けてらっしゃるようです。
部屋に戻ってそばについていてあげてください。
はい。
行こうライナ。
(国子)大丈夫?3号車のデッキで結構です。
乗務員のどなたかを配して他の車両の乗客がこちらに入ってこないようにしてください。
わかりました!あーそれから…もう1つ。
こちらの車両の客が他へ行かないかどうかもチェックしてください。
はい!根元さんも部屋に戻ってください。
はい。
あれ?手袋持って来てたんですか?何かあってはと思いまして…。
じゃあ俺あのこれで…。
まあどう見ても他殺ですよね。
外傷は左胸に1つ。
どうやらこれが致命傷のようですね。
でもここじゃあ検視も出来ませんよ。
助っ人を呼ぶとしましょう。
えっ?
(携帯電話)はいはい…。
おっ杉下さん。
(携帯電話)もしもし。
杉下です。
あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。
非常事態につき年始の挨拶は省かせて頂きます。
今はご自宅でしたか?ええ大晦日からの当直業務を終えてこれから1日遅れの紅白をビデオで観ようとしていたところです。
少々ご協力頂きたい件が生じまして…。
なんでも言ってください。
ただし紅白どっちが勝ったかの結果だけはまだ言わないでください。
あいにく僕も知りませんのでその点はご心配なく。
それよりも…死亡推定時刻の算出方法をお教え願いたいのですが…。
はぁそれでしたら…。
34度5分です。
平熱が36度5分として…およそ死後30分から1時間という事になりますね。
今が午前0時30分ですから犯行は11時半から0時の間って事になりますね。
どうかしました?この列車が盛岡駅を出たのは11時17分。
それ以降はどこにも停車していません。
そうか…降りるチャンスがなかったって事は犯人はまだこの列車の中!次の停車駅は函館のはずですね。
はい。
えー確か4時18分着だったと思いますが。
つまり今から4時間弱の間に犯人が誰かを突き止めれば捕まえる事も可能です。
捕まえるって…。
犯人に逃げ場はありません。
この列車自体が1つの密室。
強いて言うならば走る密室なのですから。
(芹沢)眠くないんですかね?ああでもしないとキャリア官僚は務まんないのかもな。
どうかしましたか?
(3人)いえ…。
(携帯電話)亀…。
特命係の亀山!まさかあけおめコールじゃねぇだろうな。
何があけおめだ!日付変わってもう2日だぞ。
うるせぇ。
用はなんだ?殺しだ!男が1人刺し殺された。
殺し!?おい現場どこだよ?俺たちが行くまで手つけんなよ!来られるもんなら来てみろ。
カシオペアの車内だよ!カシオペア?被害者に前歴がねぇか大至急調べてくれ!言うぞいいか?メモれよー!名前津島悟。
「昭和42年9月16日生まれ」本籍茨城県水戸市赤塚…。
なんでお前新年早々命令してんだよ!もしもし…おい!おお…おい殺しってなんだよ?カシオペア。
(2人)カシオペア!?カシオペア…?亀山君。
はい!ここ!血ですね。
犯人ともみ合った時に引っかいたんですかね?皮膚片が残っている可能性もありますがここでは調べる手立てはありません。
それから…ズボンのベルトにこんな物が…。
ナイフの柄と同じ模様です。
凶器は被害者の物だったんですね。
それともう1つ。
興味深い事がわかりました。
スーツケースです。
中になんか入ってたんですか?いえ着替えと洗面具と仕事関係の書類ぐらいですが問題はここです!こちらは閉まります。
はい。
ところがこちら!閉まりませんね。
ええ。
ダイヤルの番号がズレてしまっていますからね。
それが何か?君ならどうしますか?ダイヤルを合わせてスーツケースのフタを開け中の荷物を取り出した後…!どうってそのままにしておきますね。
だってここには他の誰かが入ってくるわけじゃないんですから。
ええフタは開けたままカギもかけずに置いておいたとしたらダイヤルを動かす必要はない。
にもかかわらず番号がズレている。
妙ですね。
犯人が触ったって事ですか?ええ。
中の荷物を調べた後慌てて指紋をふき取ろうとして番号を動かしてしまった。
そう考えれば納得がいきます。
なるほど。
犯人はこの中から何かを持ち去った!先ほどから探しているのですがねぇ。
見当たりません。
何がです?手帳です。
西麻布でクラブやってます。
あっ!さすがにお休みにはなれませんか?あっ…。
この後どうなるんでしょう…。
列車は停まったりとかはしないんですか?車掌さんの話では明朝函館駅に到着し次第北海道警の鉄道警察隊が乗り込む手はずになっています。
ですからそれまではダイヤ通りに運行されるかと。
そうですか…。
あの…さっきの人はどうして殺されたんですか?それはまだ俺たちが調べてるとこですから。
誰かと間違えて殺されたんじゃないんですか?えっ?どうして…そのように思うのですか?いえ…ただなんとなく。
亀山君。
はい!1号車と2号車の乗客の名前と部屋割りを調べてもらえましたか。
はい車掌の国枝さんに確認取れました。
1号車の2番は空き部屋ですか?ええやっぱり団体のキャンセルが出たみたいですね。
まあおかげで俺たちも乗れたわけですけど。
君が美和子さんと電話で話をしていたのはここ3号車のデッキです。
僕の記憶が正しければ11時半頃から死体が発見された0時15分まで…つまり死亡推定時刻とほぼ同じ時間帯だったはずです。
ええ美和子の奴酔っ払ってて話長くて…。
その間誰もデッキを通ったりはしていませんか?はい間違いありません。
食堂車から見ると2号車と1号車は袋小路です。
死亡推定時刻に出入りした人間がいないとなれば…。
そうか。
犯人は1号車と2号車の乗客の中にいる。
11時半頃から根元さんと僕はずっと部屋にいました。
つまり亀山君を含む僕たち3人は容疑者から除いて構わないでしょう。
123456…789!犯人はこの9人の中にいるとみて間違いありません。
この部屋にお泊まりなのは安藤礼治さん。
奥様の仁奈子さん息子さんの博貴君で間違いないですね?慶徳大学の教授でらっしゃる。
専門は教育学です。
あの津島さんが亡くなった11時半から0時の間皆さんどちらに…?それって私たち疑ってるんですか?失礼じゃありません?これはあくまで形式的な質問です。
皆さんにお訊ねする事なのでご了解ください。
その時刻でしたらここで寝てました。
家内の仁奈子も息子の博貴ももちろん一緒です。
間違いありませんか?ええ。
ひろ君もそうよね。
その時刻に何かこう不審な物音を聞いたりとかは?さあ?私は寝つきがいい方だから何も…。
私も特に…。
僕も別に何も…。
家族旅行へはよく?いえ私が大学の方が忙しいもんで家族揃っての旅行は久しぶりです。
そうですか。
1号車3番保坂有三さん。
ええ。
お仕事は何を?バイトです。
基本フリーターで…。
いやぁこの趣味やってると時間に自由が利く方がいいんで。
かなり熱烈な鉄道ファンでいらっしゃるようですねぇ。
当日切符を手に入れてまで乗り込もうとされるぐらいですから。
え?失礼とは思いましたが携帯電話での会話が耳に入ってしまったものですから。
キャンセルがあったみたいで今日の今日でしたけどなんとか切符が取れて…。
趣味とはいえ1人でスイートを貸し切るなんて結構お金もかかるんじゃないですか?好きでやってるんでこればっかりは…。
いや仲間に言ったらはんかくさいって言われちゃいますけどね。
ひょっとしてご出身は北海道ですか?ええそうですけど…。
「はんかくさい」というのは北海道の言葉でマヌケのような意味だと聞いた事があるものですから。
へぇ〜。
まいったな〜。
なんでもお見通しなんだ。
優秀なんですね。
こりゃ刑事さんにバンカケされたらなんでもしゃべっちゃいそうだ。
ハハッ。
話が逸れてしまいました。
11時半から0時の間どちらにいらっしゃいました?それなら部屋で寝てましたけど。
おやおや寝てらしたのですか?何か?せっかくのカシオペア号です。
あなたのようなご趣味の方は寝る間も惜しんであれやこれや見て回るものだと思ったものですから。
(3人笑い)確認します。
えー増田悦郎さんと弟の二郎さん。
お勤めは何をされているのでしょう?ええ…音楽関係の仕事です。
ほぉ〜二郎さんは?決まった仕事にはついていません。
あーそうですか。
よかったらちょっと…サングラス取ってもらっていいですかね?どうもすいません。
11時半から0時の間は何を?2人とも部屋に…まだ起きてましたけど。
ねっ。
もう1つだけ。
この列車の乗客の中に以前からお知り合いの方はいらっしゃいませんか?いやっ…いるわけないじゃないですか!2号車2番三樹ライナさん。
少しは落ち着かれましたか?ええ。
でご友人の折原国子さん。
はい。
ライナさんどうして津島さんの部屋の前にいらしたのでしょう?たまたま前を通ったらドアが開いてたの。
それだけ。
ではどちらへ行こうとされていたのですか?えっ?この部屋は2号車の2番。
津島さんの部屋は1番です。
1号車の方へ行く用事が何かあったのでしょうか?覚えてない。
トイレにでも行こうとしたのよきっと。
それはおかしいですね。
部屋のトイレを使わない理由はともかく共用トイレは2号車の最後尾。
つまり1番の部屋とは反対の方向にあるんですよ。
あっあの…。
あー何か?私が見てきてって頼んだんです。
夜中に隣の部屋から変な音が聞こえた気がして…怖くて眠れなくてライナに見てきてって。
そうだったわよね。
そうよ!そう…パニクって忘れてたわ。
えー堂上公江さんですね?失礼ですが翻訳のお仕事をされているのでは?あらやだ!どっかでお会いしました?背表紙でお名前を拝見する程度ですが…。
有名な方なんですか?いえいえ…。
無名な作家の地味な詩集とかばっかり。
刑事さんこそよくご存知ねぇ。
あっ質問いいですか?11時半から0時の間はどちらに?こちらで寝てましたわ。
この歳になると朝が早くてその分夜更かしは苦手で…。
そうそう主人は私とは反対で宵っ張りな人でよくケンカになったわ。
こちらはご主人の物ではありませんか?あら!どうしてわかったの?ご婦人がお持ちになるにしてはいささかデザインが無骨すぎます。
ひょっとして思い出の品ではないかと思ったものですから。
あの人写真が大の趣味で旅行の時はいつだってこれにカメラを入れて持ち歩いてましたの。
海外とかにもよく行かれたんですか?ええヨーロッパが多かったかしら。
ロンドンにお気に入りのホテルがあるの。
おや僕も以前ロンドンで暮らしていた事があります。
ちなみにどちらのホテルでしょう?ハイドパークにあるコーディアルホテルよ。
おととしはクリスマスに行ったからツリーがそりゃあキレイだったわ〜!はぁ〜そうでしたか。
(メールの着信音)あっすいません。
あっ伊丹からメールだ。
チッ!なんだよこんだけかよ!なんで返事来ないのよ!
(パトカーのサイレン)うっ!はぁはぁ…。
貴様…!矢島!
(銃声)結局全員アリバイはなしですか。
ええ。
考えてみたら家族とか一緒に旅行してる友人の証言じゃアリバイにはなりませんからね。
それにしてもこの列車にはずいぶんたくさん身分を偽った人が乗り合わせたものですねぇ。
えっ?右京さんなんか気づいちゃったんですか?ん?あっ!羽鳥亮矢さん…ですよね?
(羽鳥亮矢)はぁ…。
どうして?お2人がご兄弟でない事は最初からわかっていました。
食堂車の予約券には増田悦郎さんとあるのにあなたのストラップ。
もらったやつだからはずせなくて。
送り主は三樹ライナさんでしょうか?申し訳ありませんでした。
あなたは羽鳥さんのマネージャーさんですね。
あっはい。
お忍びデートにしては少々目立ちすぎましたねぇ。
カシオペアに乗って洞爺湖のホテルに泊まるってどうしても聞かないから。
彼女にせがまれちゃったんだ。
そのためにあなたはマネージャーの増田さんとライナさんはお友達の国子さんとそれぞれ別の部屋を予約して互いに無関係を装っていた。
不躾な質問で恐縮ですがライナさんが津島さんの死体を発見した時あなたは?この車両の空き部屋に…。
えっ?やはりそうでしたか。
お2人でお過ごしになるには空き部屋はもってこいの場所ですからねぇ。
だからこそライナさんが死体を発見した直後亀山君がこの車両に来た時…。
2号車で乗客が1人亡くなりました。
(一同)えっ!?あなただけが姿を見せなかったわけですね。
この部屋にお兄さんといたっていうのも嘘だったわけだ。
でもその時はずっとライナと一緒にいました。
それがマジなアリバイなんです。
信じてください。
なるほど。
ここなら誰の目にも触れずに2人きりになれますもんね。
あれ?なんだこれ?右京さんあそこにカメラ…。
「ファイルがありません」なんだってこんなもんが?なるほど。
とんだピーピングトムがいたようです。
えっ?有名モデルと人気俳優の密会ならば隠し撮りをする価値はあると狙ったのでしょう。
ああ。
でも何も映ってないって事は録画に失敗したかあるいは…誰かが消した!その可能性は高いと思いますよ。
三樹ライナと羽鳥亮矢!ですが羽鳥さんはこの部屋に隠しカメラがあったなどとは一言も言っていません。
まあそうですけどね。
やはりこの部屋に出入りしたのはあの2人だけではなかったのでしょう。
えっ?亀山君。
被害者の津島さんの部屋からなくなった物を覚えていますか?はいもちろん!手帳ですよね。
ええ。
僕が犯人ならばこの部屋に隠すと思うのですがねぇ。
見当たりません。
なんでこの部屋に隠すんですか?言ったはずです。
ここはまさに走る密室です。
はい。
この列車は新幹線や他の特急電車と同じように客室や通路の窓が開かない仕組みになっています。
つまり列車が走り続ける限り車内から逃げ出す事はおろか手帳のような証拠品を車外に捨てる事も不可能です。
だから誰も使ってない部屋に隠すしかなかった!そう思った犯人はこの部屋にやって来た。
ところが逆にこんな物を見つけてしまった。
この部屋も安全な隠し場所ではない。
そう思って手帳は持ち帰るしかなかった。
つまり犯人はまだ手帳を持ってる!そう考えて間違いないでしょう。
右京さんこうなったら1号車と2号車の乗客全員持ち物検査しましょうよ!手帳を持ってる奴が犯人なんですから。
令状もないのにそれは無茶が過ぎます。
ですけど…。
函館に着けば鉄道警察隊が乗り込んできます。
捜索はそれを待ってからでも遅くはありません。
いやまあそうですけど…。
(ノック)
(ノック)はいどうぞ!あー堂上さん。
ちょっとよろしいかしら?はい。
一緒にお茶でもいかが?お茶ですか?ええあんな事件があったでしょ。
1人じゃ心細くて…。
ちょっとでいいの。
話し相手になって頂けません?せっかくですお呼ばれしましょう。
あーちょうどよかった!僕もお茶が飲みたかったところです!あらそう!よかった!あのもうね支度は出来てるの。
さあどうぞ!じゃあすいません。
(根元)あの!僕もいいでしょうか?ええええどうぞ!あー美味しいです!堂上さんも札幌まで行かれるんですよね?公江でいいわよ。
フフ…。
降りるのは洞爺湖なの。
ここに泊まろうと思って。
主人の古い友人がここにいるの。
あーこちらのホテルですか。
右京さん知ってるんですか?ええ素敵なホテルだとたまきさんが…。
根元さんは北海道の方ですからご存知でしょうか?ええもちろん。
カシオペアに洞爺湖のホテルかぁ。
俺たちにはなかなか出来ない贅沢って感じですね。
何より飛行機だと1時間半の旅を16時間もかけてするというのが一番の贅沢でしょうか。
でもね私飛行機って苦手なの。
私若い頃ちょっと怪我をしちゃって長い事同じ姿勢でいると足が痛むのよね。
その点好きな時に横になれる寝台車はもってこいよね。
あぁーその利点はよくわかりますね。
でもね寝台車で寝るにもコツがあるのよ。
私の場合は列車が進む方向に足を向けて寝るの。
じゃないと列車が急に停まった時コーンって頭ぶつけちゃったりするでしょ。
アハハ…なるほど!アハハ…。
だからそろそろ枕の向きを変えないと。
向きを変えるというのはどうしてでしょう?どうしてって…あら?青森駅で機関車を付け替えて逆に走るんじゃなかったかしら。
そうですか。
へぇー。
ちょっと失礼!あっ失礼!青森に到着するのはいつでしょう?はい。
あと1〜2分で着くはずです。
どうもありがとう。
右京さんどうかしたんですか?僕はてっきりこの列車が密室だとばかり思っていました。
ですが密室にも穴があったんです。
穴って青森に停まる事がですか?時刻表には出ていませんが犯人が知っていればこのチャンスを逃すはずはありません。
急ぎましょう。
あはい!1つ確認したいのですがこの青森駅では人の乗り降りは可能でしょうか?いえそれは無理です。
運転停車ですから車両のドアは開きません。
じゃあ誰も降りられないんですね?ええ。
では物はどうでしょう?車内から荷物が持ち出されるという事は?それなら食堂車のゴミは降ろすはずですが…。
どうもありがとう。
すみません!ゴミはどこですか?ゴミ?なんですか?警察です!今捨てようと思ってこちらです。
ちょっと失礼!何か?後で。
説明してる暇ない。
右京さんあった!ありました!これなんですかね?麻薬でしょうね。
亀山君顧客名簿ですよ。
破られた跡があります。
血でしょうか?青森で進行方向が反対になるんですね。
ええ。
1つお願いがあります。
はいなんでしょうか?1号車と2号車の乗客を全員食堂車に集めて頂けますか。
はいわかりました!右京さんなんかわかったんですか?ええこれでようやく事件も折り返せたようです。
(国枝)一体何を始める気です?函館に到着するまであと2時間と少し。
本来ならばそれを待ってもいいのですが皆さんも一刻も早く真相を知りたいとお考えでしょうから無理を言ってお集まり頂きました。
あの真相って…。
津島悟さんを殺害した犯人が誰かという事です。
一体誰なのよ!
(仁奈子)この中に犯人がいるの?やだ怖いわ。
まず最初に注目すべきはこの列車の1号車と2号車に乗り合わせた乗客の何人かが様々な理由から身分を偽って乗車されていたという事です。
亡くなった津島さん…。
表向きはクラブの経営者でありながら裏ではこんな商売をされていました。
合成麻薬の売買です。
津島さんは札幌にも店を持たれていました。
おそらくこの旅行もこれらの品々をさばくのが目的だったのでしょう。
あなたが津島さんの部屋を訪ねたのはこれが目当てだったのですね?
(津島)お店に来れば切手だって売ってますよ。
ぜひ遊びに来てください。
なんだったら今夜にでも。
LSDを染み込ませたペーパーアシッドの事を隠語では切手と言うそうですね。
(羽鳥)まさか…。
興味本位からでしょうか。
あなたは津島さんを訪ねてこれを分けてもらおうと思いついた。
(ノック)ちょっといるんでしょ。
ライナお前マジでそんなもの…。
やってないわよ。
聞いた事があっただけ。
第一買う前にこんな事になったんだから。
(悲鳴)刑事さん信じてください!僕とライナはずっと一緒に…。
わかったわかったから落ち着いて座って。
もう1人正体を隠していた人がいました。
仲のいい女友達のフリをしながら…こんな仕掛けをされていた方が。
あなたの持ち物ですよね?お忍びデートにアリバイ役として同行する事になったあなたはどこかでライナさんと羽鳥さんの密会の証拠を撮ろうと狙っていたのでしょう。
そしてこの列車に空き部屋がある事を知ったあなたは…。
そこにビデオカメラを仕掛け…。
展望室の隣の部屋空き部屋みたいだよ。
ライナさんたちが行くように仕向けた。
どうして?どうして国子がそんな事を?やっぱりわかってないんだ。
その無神経さが許せないのよね。
えっ?
(国子)ちょっとくらい美人で人気があってお金も稼いでるからって人の事付き人みたいにアゴでこき使って。
この旅行だってそうじゃない。
自分が男と会うのに人を利用してありがとうの一言もないんだから。
だからってこんな事する?ネットにでも流したら面白い事になったはずなのに失敗しちゃったわ。
残念!今回の事件は走行中の寝台列車という特殊な場所で起きました。
いわばここは走る密室です。
それゆえに犯人の迷走が始まったと言っても過言ではありません。
亀山君。
はい。
これらの品は津島さん殺害の現場から犯人が持ち去った物です。
おそらく犯人は津島さんが麻薬の売人である事を知られるとまずい立場の人間だった。
つまり麻薬の顧客?その可能性は高いと思います。
いずれにせよ犯人にとって犯行の証拠となる品々です。
すぐにでも処分したい。
しかし車内では危険すぎます。
出来れば車外に持ち出したい。
個室の中の死体です。
終点の札幌まで見つからない可能性が高い。
終点までならば途中でいくらでも処分する事が出来ます。
函館・札幌間の停車駅でホームに降りてゴミとして捨てる事も可能でしょう。
でもその犯人の思惑が狂ってしまった。
ええ。
午前0時15分…。
札幌はおろか函館よりはるか手前のこの辺りで…。
ライナさんが津島さんの死体を発見してしまった。
(悲鳴)犯人のもくろみは大きく狂ってしまいます。
列車が函館に着いてしまえば鉄道警察隊が乗り込んで当然1号車と2号車の客室の捜索や個人の持ち物検査が行われる。
それを恐れた犯人はとりあえずこの証拠の品を車内に隠そうと必死になったはずです。
それを…このビデオカメラが目撃していたのです。
自分が映っている事を恐れた犯人は映像を消去した後やむなくこれら証拠の品々を持ち帰るしかなかった。
そして青森駅で降ろされる事になっていた厨房のゴミに紛れ込ませ捨てようとしたのです。
あった!ありました!
(亀山の声)あいにく俺達が見つけちゃいましたけどね。
犯人って誰なんです?津島さんが麻薬の売人である事を知りなおかつ殺害する動機のある人間…。
顧客の中にいると考えるべきでしょう。
この手帳ですがどうやら顧客リストのようです。
ここ…。
破いた跡と血痕が付いています。
もし犯人が犯行の後にこのページを破いたのだとしたらここには犯人の名前があったと考えて間違いありません。
でもそれじゃ…誰だかわからないじゃないですか。
いえ指紋が採取出来ればすぐにわかりますよ。
ですがその必要もないと思いますよ。
あなた方お2人がこの食堂車で津島さんと最初にお会いした時ライナさんの「あんた誰?」という問いに対して津島さんはこのように答えました。
はじめまして。
西麻布でクラブやってます。
つまりお2人は津島さんとは初対面だった。
(国子)当たり前でしょ。
顧客リストに載っているという事は犯人は津島さんと既に顔見知りでなければなりません。
それに該当する人物が1人だけいました。
ここに名前が載っていたのはあなたですね?あの食事の時津島さんはあなたにこう言いました。
ほら博貴君だって困ってるじゃないですか。
お母様はあなたの事を終始「ひろ君」と呼んでいましたがそれがヒロシなのかヒロアキなのか面識のある人間でなければわかりません。
初対面ではなかったのですね?冗談言わないで!
(仁奈子)うちのひろ君がそんな麻薬の売人なんかと知り合いな訳ないでしょ!おい。
最近高校を退学になられていますね?未成年でありながらいかがわしいクラブに出入りしていたとすれば退学になった理由も津島さんのような方と知り合いであった理由も納得がいくのですがね。
違うのよ…。
友達が悪かったの。
ひろ君は悪くないの!仁奈子!
(博貴)僕は…僕は…。
もういい!私が…私がやりました!やはりあなたでしたか。
え?暖房が効きすぎていましたか?暑いな…。
ちょっと暖房の効きすぎじゃないか?津島さんの右手の爪には犯人を引っ掻いたと思われる痕跡が残ってました。
失礼します。
あなた…。
何があったか話して頂けますね?全て私がしました。
博貴には罪はない。
(安藤の声)11時半頃目が覚めると博貴の姿がなかった…。
(津島)こんなとこで会うなんて奇遇だよな。
(津島)ほら。
(博貴)もうやめたんだ。
(博貴)学校だって退学になったし…。
だから退学祝いのサービス。
これ金いいから。
アッハハハハ…。
(安藤の声)喫煙と素行不良で退学させられたと聞いていたが麻薬まで手を出していたとは…。
(博貴)どけよ。
渡しなさい。
(博貴)何が?父さん見てたんだ。
渡しなさい。
戻ってなさい。
母さんには黙っとく。
でも…。
定山渓には行くからな。
えっ?お前と母さんと3人で。
家族旅行なんだから。
何があっても行かなくちゃいけないんだ。
さあ戻ってなさい。
(ノック)はい。
(津島)お父さん…。
お願いだ。
息子にはもう近付かないでくれ。
このとおり…。
何を言い出すかと思えば。
警察には通報しない。
君のしている事には目を瞑ろう。
だからもう息子には会わないでくれ。
うるせえんだよ!おやじ!あんた大学の先生やってんだって?気取りすましたインテリってやつ?そういう奴が一番嫌いなんだよ!出てってくれよ。
おい出てけよ。
あんたの息子マスコミに売ったっていいんだぜ。
なんだと!?おい!おい出てけよ。
オラッ。
おいおやじ博貴も馬鹿だと思ったらよおめえはもっと馬鹿だな!アッハハハハ…。
どけよほら。

(刺す音)
(安藤の声)頭ん中が真っ白になりました。
(安藤の声)気が付くと…。
あの男が麻薬の売人と知れれば博貴が疑われる…。
そう思って私は手帳と麻薬も持ち出しました。
ところが思いのほか早く津島さんの死体が発見されてしまった。
(安藤の声)空き部屋なら隠しておけると思ったんですが…。
(安藤の声)あんな物が仕掛けられてたんじゃ車内に隠しておけない…。
そう思いました。

(ため息)まんまとひっかかってしまいました。
刑事さん…全て私1人がやった事です。
(博貴)どうしてだよ?なんでこんな事…。
俺なんかのためになんだって父さんが人殺しなんか…。
(博貴)麻薬やって退学んなってこんなろくでもない俺のためにどうして父さんが…。
わかんないのか?何が!?もし君がもっと重い罪を犯したとしてもお父さん君を守ろうとしたはずだ。
(博貴)え?それが親っていうもんなんじゃねえのかな。
ちゃんと向き合えばわかったはずですよ。
お父様はあなたの事を決してろくでもないなどとは思っていなかった事を。
警視庁の杉下と申します。
亀山です。
北海道警鉄道警察隊の榎本です。
出来る限り現場は保存しておきました。
ご協力感謝致します。
それと…犯人を見つけておきました。
は?
(榎本)お2人も聴取がありますのでご同行願います。
(博貴)はい。
母さん!
(榎本)大丈夫ですか?
(仁奈子)ひろ君…。

(駅アナウンス)「カシオペア号はあと3分ほどで発車です」「6番乗り場のカシオペア号はあと3分ほどで発車です」
(警笛)爆発現場の残留物の組成表を。
寝るな!!
(芹沢)はい!はいはいっ。
なんすか!?なんすか!?爆発現場の残留物に関するデータを出して下さい!
(芹沢)あ…はい!わかりました。
(芹沢)はい。
出ました。
(大河内)問題は爆薬の方より燃えカスの成分。
(伊丹)うわ〜読めねえ。
(大河内)「paperbush」ミツマタの事です。
(大河内)こっちが磁性インク。
磁性インク?紙幣?お札ですか?爆発の際に大量の紙幣が同時に燃焼した痕跡と見て間違いないでしょう。
爆発には爆弾マニアの塚原も巻き込まれたんですよね?だったら塚原が受け取った爆弾の代金じゃ…。
覚えてないんですか?
(大河内)死亡した新井田政彦が用意していた現金は…。
それ僕のです。
ちょっと…ちょっと!
(大河内)塚原の手には渡っていません。
なのに爆発現場には大金があった…。
塚原のアパートに残っていた薬品の量から見て常時複数の爆弾製造が可能だったはずです。
まさか…。
(大河内)塚原が新井田より前に別の人間と既に取引を終えていたとしたら…。
爆弾がまだ他にあったって事ですか?その可能性は看過出来ません。
(警笛)いやあすっかり雪ですね。
はい温かいお茶。
どうも…。
結局徹夜になっちゃいましたね。
札幌に着くまでに少し眠れたらいいんですけどね。
あの…。
さっき俺…。
逃げようとした。
大丈夫。
右京さんには内緒にしとくから。
え?俺もね前やった事あんだよ証人ってやつ。
えっ?まあ俺の場合仕事柄当然なんだけどさ。
でもやっぱりね裁判の前の晩とか緊張して眠れなかったりやんないで済めばいいのになとか思ったりしてさ。
まあプレッシャーっていうか…うん…。
逃げたくなる気持ちもわかんないじゃないよ。
でも…ね?逃げても何も始まんないんじゃない?
(田所周一)この中にいますか?この人です。
間違いありませんね?はい。
刑事さんあの…。
何?あ…いや…。
お茶ありがとうございました。
おお。
いいんですよっ。
あら。
刑事さん。
ギリシャ神話ですね?言葉が過ぎたエチオピアの女王のお話でしょうか?うふふ…。
残念ながらカシオペアは出てこないの。
それより御用はなあに?よろしいですか?どうぞ。
一言お礼をと思いまして。
青森駅で停車する事をあなたに教えて頂かなければ解決する事は出来ませんでした。
あたしの手柄じゃないわ。
優秀な刑事さん…。
ホント澄ました顔して何もかもお見通しなんだから。
あなたの前ではどんな嘘も隠してはおけないみたい…。
嘘…ですか?あたしがついた嘘もとっくにばれてるんでしょ?あ…いえ。
僕が気付いたのはほんの些細な事です。
ロンドンのハイドパークにあるコーディアルホテルは10年以上前に取り壊されています。
おととし行かれたというのは何かのお間違いではないかと。
それだけ?なにより長年ご主人と連れ添ったはずのあなたの指には指輪もその跡もなぜか残ってはいない。
ご主人が亡くなられたのはもう随分前の事ではありませんか?おそらくそれも結婚される前。
ああさすがね…。
すごいわ刑事さん。
失礼しました。
無意味な事を詮索するのが僕の悪い癖です。
悪いと思うなら…少し私の話に付き合ってもらえる?僕でよろしければ。
もう30年以上も前の話よ。
あたしと主人…。
ううん…。
正確には恋人ね。
もちろん結婚の約束はしていたけれど。
2人共二十歳そこそこの学生だったしお金もなかったし…。
指輪の一つも買ってはもらえなかった…。
でも旅行にはよく行ったわ。
あの頃はこんな豪華な列車はなかったけれど。
星の好きな人だったから…。
星…ですか?ええ。
写真が趣味っていうのは本当よ。
でもね天体写真ばっかり。
真っ暗な丘の上で一晩中星の写真を撮るの。
付き合わされるこっちはたまったもんじゃなかったわ。
ご病気だったのでしょうか?ううん…。
事故。
突然だったわ…。
明日…。
ううんもう今日になるのね…。
33年も前の1月2日。
今日がご主人のご命日…。
でもってあたしの誕生日。
時間って止まるのね。
忘れようと心に決めて何度も時計を進めようとしたわ。
でもダメなの。
あたしの中の時計は33年前のあの日で止まったまんま。
何も動かないしどこにも行けない。
まるで持ち上げても持ち上げても転がり落ちてしまう岩みたいに…。
『シシュポスの岩』ですね。
あなたと話せて嬉しかったわ。

(警笛)北海道警察組織犯罪対策課の田所と申します。
警視庁特命係の杉下と申します。
亀山です。
どうもご苦労様でした。
さあ行きましょうか。
根元さん。
では我々はここで。
あいやお2人にも道警本部の方にお越し頂くようにと連絡が入ってます。
連絡とはどなたから?警視庁の大河内監察官からです。
さあご一緒にどうぞ。
大河内さんがなんの用ですかね?想像もつきませんがとにかく行ってみる事にしましょう。
お願いします。
こちらです。
さぁ。
こちらをお使い下さい。
どうもありがとう。
(携帯電話)杉下です。
急なお願いで申し訳ありません。
杉下警部に見てい頂きたい物があります。
了解しました。
確認します。
なんですか?どうやら例の爆発事件で新事実がわかったようです。
新事実?届いたようですね。
ちょっとお待ち下さい。
どうかしました?「paperbush」…?
(携帯電話)大河内です。
「杉下です」杉下警部です。
爆発した爆弾以外にも別な爆弾があったと監察官はお考えなのですね?ええ。
ただ更なる分析を続けているんですがまだ確証を得るには至っていません。
(三浦)塚原の自宅の通話記録には不審な通話はありません。
クソッ。
どこを捜せば証拠が出てくんだ…。
取引のあった東京アトラクションズの監視カメラの映像を全て送って下さい。
今送ります。
大河内さん気になる事があります。
爆弾マニアの塚原一が…。
すいません。
それ僕のです。
ちょっと…ちょっと!新井田と取引を行おうとしたのが8時。
それより前の塚原の動きを見てみましょう。
ちょっとこれを…。
あ…消えちまった。
この先は監視カメラの死角です。
同じ映像の5分後を見て下さい。
(芹沢)同じじゃないですか。
いえ。
ワゴンの上を見比べてみて下さい。
(三浦)おっ!ゴミを回収して回ってるはずなのにゴミが減ってるぞ!爆発した爆弾とほぼ同じサイズです。
間違いありません。
あの夜あの場所で爆弾はもう一つ取引されていたんです。
公安一課の若松課長を…。
大河内です。
東京アトラクションズ内に別の爆弾が残っている可能性があります。
爆弾処理班を至急向かわせて下さい。
大河内さん!はい。
現場から持ち出されたのだとすればゆくえを捜すのは極めて困難です。
重体で入院中の塚原一が意識を取り戻し次第尋問出来るようにお願いします。
了解です。
春日警察病院に向かって下さい。
(3人)はい!えらい事になってきましたね…。
大変です。
どうしました?証人の根元尚吾が姿を消しました。
えっ!?そこにいたんですけど…。
目を離すなと言っただろうが!すいませんでした。
右京さん俺のせいです。
はい?根元さん函館駅でもこっそり逃げようとしたんです。
でもてっきり証言台に立つのが怖くなったせいだと思ったから俺右京さんにも内緒にするって…すいません!そうですかでも君は誤解しています。
え?証人になるプレッシャーだけで根元さんが何度も逃げ出すとは僕には到底思えません。
何度も?考えてもみて下さい。
札幌地検の公判の証人である根元さんがどうして東京で着のみ着のままで身柄を保護されなければならなかったのか。
あっ!前にもここから逃げ出したのではありませんか?はいお恥ずかしい話ですが相手が被疑者でも容疑者でもない以上鍵をかけて閉じ込めておくわけにはいきませんからね。
あなた方は根元さんに何を証言させようとしているのでしょうか?公判がまだ行われている以上お話しするわけには…。
事件の概要を見る限り逮捕された組員も幹部も拳銃密売事件の現行犯逮捕のはずです。
仮に根元さんがそれを目撃していたとしてもその証言にはそれほどの重要性は感じません。
いやそれは…。
なのに札幌地検は彼を重要証人としてわざわざ2人がかりで護送までさせた。
彼の証言にそれだけの価値がある事は十分推測可能です。
根元さんを連れ戻すためにも彼が何を目撃したのか話してはいただけませんか?ご存じだとは思いますが根元尚吾は拳銃の売買が行われたホテルのリネン係をしてました。
ええだからこそ駐車場で取引現場を目撃しちゃったんですよね。
(田所)いえいえ重要なのは彼がその取引の直前に目撃した人物なんです。
その人物から北洋会の幹部に拳銃の購入資金が渡されたんです。
その人物って誰なんですか?名前を訊いても教えてもらえそうにありませんね。
札幌地検がマークする大物でしょうから。
拳銃密売事件の公判で金の出所を追及しながらその人物の名前を根元さんに証言させる。
それが札幌地検の狙いだったのでしょう。
そういう事ですか…。
だとするならば彼が逃げ出した理由も想像に難くありません。
ひょっとして脅されてたとか?車内でもかなり怯えていました。
もっと早く気づくべきでした。
亀山君。
はい。
僕とした事が!どうしました?根元さんがカシオペア号で戻ってくるのを知っていたのは?摘発にかかわったうちの課員ならほぼ全員知ってます。
それが何か?その中にここ両日出勤していない人間はいませんか?あっ!藤井巡査長なら昨日から休んでますけど…。
写真はありませんか?えーっと…。
これです。
亀山君。
あっ!
(田所)それがどうして藤井だと?なんてこった!やはり警察官だったんですね。
やはりって?津島さん殺害時のアリバイを調べた時彼はこう言いました。
こりゃ刑事さんにバンカケされたらなんでも喋っちゃいそうだ。
そうか「バンカケ」!職務質問を示す隠語の1つです。
それに彼は当日予約なしで乗り込んできました。
護送の話を耳にして急いで上京し乗り込んだのでしょう。
なんのために?根元さんを見張りながら隙あらば張り付いて脅しをかけようとしていたのかもしれません。
どういう事ですか?どうして藤井の奴が?その藤井という刑事は根元さんが目撃した人物と通じその命令で動いているのでしょう。
まさか。
この道警にそんな人間は…。
道警本部勤務の刑事ならば…。
「証言をすると命はない。
助かりたかったら逃げろ」…。
そう脅迫する事もたやすいはずです。
おい藤井に連絡取れ。
はい。
ダメですつながりません。
根元さんには奥さんと子供さんがいるはずです。
ええ洞爺湖の方で自宅を改装して喫茶店をやっています。
根元さんひょっとしてそこに?根元さんは脅迫されています。
その脅迫がいつ家族の方に向かってもおかしくない。
だとするならば家族の安否を確かめるために行く可能性は高いと思いますよ。
車!車お願いします!はい!
(根元大地)ねえパパどうして帰ってこないの?
(根元雪美)お仕事がうまくいったらちゃんと帰ってくるわよ。
(大地)ほんと?だから大地もそれまではいい子でいないと。
大地重くない?うんママも大丈夫?大丈夫。
どうも。
いやいや…。
あなた…。
うっ!
(雪美)お腹すいたね。
(大地)うん。
これパパの?ああすいません警察の者です。
あの根元さんの奥さんですか?はいそうですけど。
あのこのマフラーは?あそこに落ちてましたけど。
(大地)あそこだよ。
ご主人のマフラーですね?そうだと思います。
ここです。
あの一体何があったんです?あの人が帰ってきたんでしょうか?ああそれはあの…。
亀山君。
争った跡がありますね。
実はご主人東京で見つかりまして。
我々2人が…。
警視庁の杉下です。
田所さんをお願いします。
(電話)はい田所です。
洞爺湖周辺に使われていない別荘か何かはありませんか?別荘ですか?例の藤井という刑事がよく知っている場所のはずです。
ちょっと待ってください。
おい去年の洞爺の強盗傷害のヤマは…。
藤井も担当でした。
ありました。
去年の8月洞爺湖のレストランで強盗事件が発生してそのレストランのオーナーが怪我をしましてね。
それ以来休業しているレストランがあります。
その場所がどこか教えていただけませんか?了解しました。
おい住所は?はい。
わかりました。
どうもありがとう。
亀山君行き先の見当はつきました。
はい。
とにかく奥さん落ち着いて。
ご主人は必ず俺たちが連れ戻しますから。
お願いします。
行きましょう。
連絡します!
(カラスの鳴き声)亀山君。
どうしてあなたがここに?ふっ…参ったよ。
本当は列車の中で脅しかけるつもりだったのに殺しが起きて身動きがとれなくなっちまったもんだからさ。
え?ふんっ安心しろよ。
とって食おうなんて思っちゃいねえよ。
しばらくはここにいてもらう事になるけどな。
ただし逃げようなんて思わねえ事だ。
ろくな事にはならねえからな。
(物音)オリャー!コノヤロー!
(銃声)アイテッ!確保!刑事さん。
もう逃げなくても大丈夫ですよ。
手後ろ!立て!おい出るぞ!大丈夫ですか?はい。
雪美。
(大地)パパ!あの…俺…。
バカ!え?どこ行ってたのよ?心配したんだから!ご…ごめん。
よかった…。
え?怪我がなくてよかった。
あなたが無事で…よかった。
パパ!雪美…。
(根元)大地…。
(根元)ごめんな。

(携帯電話)杉下です。
東京アトラクションズ内を徹底捜索しましたがやはり爆発物は発見されませんでした。
すでに運び出されたものかと…。
爆弾を売った塚原の方からは何か?まだ意識は取り戻していません。
アパートのパソコンからも取引先のデータは消去されていました。
そうですか。
ですが監視カメラとは別に園内に常設されていた防犯カメラの映像を入手しました。
亀山君の携帯電話に送っていただけますか?わかりました。
(メールの着信音)来ました。
ここ。
あっ。
ストップ!大河内さん画像38秒右側にキャリーバッグを持った人物がいます。
そのキャリーバッグを拡大して大至急再送願います。
来た。
このカメラケース!僕たちは爆弾と共に長い旅をしてきたようです。
どういう事なんですか?監察官どうもありがとう。
亀山君行きましょう。
行くって?洞爺パークホテルです。
はい!カシオペア号の中でわからない事が1つだけあります。
それは安藤教授がいつどうやって青森駅でゴミが降ろされるのを知ったのかという事です。
たまたま前から知ってたとか?それでしたら手帳や麻薬を空き部屋に隠す必要はありません。
最初から厨房のゴミに紛れさせてしまえばいい話です。
そっか…じゃあ空き部屋に隠すのを諦めたあとどこかで青森なら捨てられる事に気づいた。
あるいは誰かが教えた。
それが公江さん!彼女にとって車内で起きた殺人事件は迷惑この上ないアクシデントでした。
こちらの部屋で乗客の方が亡くなりました。
決して逃げる事の出来ない車内で殺人が起きたまたま乗り合わせた僕たち警察が捜査を始める。
さらに迷惑な事に9人の容疑者の中に彼女も含まれてしまった事です。
函館駅で鉄道警察隊の捜査員が乗り込めば捜索や身体検査が行われる。
その前に爆弾をどこかに隠そうとしたはずです。
状況はまるで犯人と同じだったわけか。
ええ。
彼女もまた安藤教授と同じ道を選んだ。
その時公江さんは安藤教授が犯人だと知った。
ええ。
ですが彼女にとって根本的な問題は何も解決してはいませんでした。
このまま犯人がわからないまま函館に着けば捜査員の手によって大規模な捜索が行われる。
それを防ぐために彼女は一世一代の大芝居を思いついたのです。
さらに僕たちをお茶に誘い…。
あら青森駅で機関車を付け替えて逆に走るんじゃなかったかしら。
そうですか。
何気ない話のふりをして青森駅でも列車が停まる事を僕たちに伝えたんです。
ちょっと失礼。
あっ!あっ失礼。
あっ青森に到着するのはいつでしょう?って事は安藤教授に証拠を捨てさせてさらに俺たちにそれを見つけさせたって事ですか。
だからこそ安藤教授はこう言ったんです。
まんまと引っかかってしまいました。
いやでもどうしてあの公江さんが爆弾なんか…。
(携帯電話)杉下です。
公安部の古い資料の中に堂上公江の名前がありました。
やはりそうでしたか。
どうして公安部なら残っていると思われたのです?33年前…爆弾…。
おおよその見当はつきました。
恋人の名前は藤北寛。
今度の自然保護学会は28か国の人々が参加する事になりました。
(仲瀬親洋)ほうそれは素晴らしいですね。
オープニングパーティーですが…。
はい。
400人ほど集まる予定なんです。
うんうん。
それでしたらこの会場をセレモニー用に直す事も出来ますよ。
ああこれはちょうどいいスペースですね。
仲瀬さんのご協力にはほんとに感謝してます。
ユーアーウエルカム。
サンキューベリーマッチ。
失礼します。
お孫さんが予定どおり到着されるそうです。
ああそれはよかった。
どうもありがとう。

(神楽)
(神楽)なっ…何をするんだ!?やっと会えたわね。
こ…これは!?待ちなさい!近づかないで!ああっ!あなたが彼に作らせたのとはだいぶ違うかも知れないけど逃げようとしたらその瞬間押すわ。
警察だ!みんな逃げて!爆弾だ!出て!外に出て!離れて!ああ…!やめろ…やめてくれ!
(公江)来ないで!あなたのご主人が亡くなられたのは33年前。
それを聞いて思い出すべきでした。
あの季節を…。
『TheEnd』混沌とする大きなうねりの中武装をエスカレートしゲリラ化した極左グループの中には爆弾というおぞましい武器に手を出す者も現れました。
そんな中都内の学生向けアパートの1室で33年前の1月2日爆発事故は起きました。
死亡したのはその部屋の住人当時帝都理科大工学部の学生だった藤北寛さん。
あなたのご主人ですね?記録によればその事故に巻き込まれて負傷した女子学生が1名いたとあります。
若い頃に怪我をされたとおっしゃっていたのはその時の事ですね。
誕生日だったのあの日は。

(爆発音)公安部は当然背後関係を徹底的に洗いましたが藤北さん自身特定のセクトには所属していませんでした。
彼は工学部の優秀な学生私は英文科の学生ただそれだけ。
ではどうして爆弾を作ろうとなどしたのでしょう?脅されていたのよこの男に。
彼の実家や大学にバラすって…。
私の事…子供が出来た事。
(医師)申し上げにくいのですが堂上さんあなたのお子さんは今回は諦めてください。
嘘ですよね…?嘘ですよね!?
(看護師)堂上さん。
(公江の声)許せなかった。
この世の中の全てが許せなかった。
何よりも許せなかったのはあの人を脅して爆弾を作らせようとした男が捕まりもしないで逃げおおせた事!名前も身分も明かさずに接触していたのでしょう。
当時の公安部も依頼した活動家の存在には気づいていたようですが特定には至りませんでした。
つまりそれが…。
33年の時を経てあなたはようやくその男を見つける事が出来たのですね。
ええ。
(テレビ)「さて今日は73年に通商産業省に入省されて以来海外を中心に幅広いキャリアを積んでこられ今やホテルの再生王として話題の仲瀬親洋さんにお伺いしたいと思います」「早速ですが一度は経営が破綻したようなホテルをよく再建しようと思いましたね」
(仲瀬)「ええまあ…そうですね」「一度破綻したホテルをですね再建するという事はですね…」
(公江の声)一度だけ…藤北と会っているのを見かけた事があったわ。
(藤北寛)もう少し待っててくれ。
(藤北)それじゃあ仲瀬さん…。
(公江の声)「ナカセさん」ってあの人は呼んでいた。
そして手の傷だけははっきり目に焼きついていたわ。
必死になってあなたの事を調べたわ。
藤北が死んですぐにセクトから遁走して大学に復学…官僚になって今や時代の寵児ですって?見事な転身ぶりよね。
頼む…こんな事はやめてくれ。
30年前の話じゃないか。
頼む許してくれ!私だって忘れようと思った。
でもね…大きすぎるの。
あの日失ったあの人と…あの人から授かった命。
私の時間はまだあの時のままなの。
これでやっと…。
やっと私も…あの人たちのところにいける!
(恵)おじいちゃん!来ちゃダメだ!恵!はあ…はあ…!
(芹沢)で塚原とはメールでやり取りをしたわけですね?ええそのとおりよ。
(中園)素直に自供しているようです。
この分なら送検も早いでしょう。
何か?公安部がまるで掴んでいなかった2つ目の爆弾をうちで見つけて回収したんだ。
これで少しは鼻を明かせるな。
ですが見つけたのは特命係では…。
なんの事だ?今回は大河内監察官以下捜査一課が尽力した結果だろ。
違うのか?はっそういう事でしたら…。
こいつは春から縁起がいいな。
(小野田公顕)聞きましたよ。
正月早々災難だったね。
で頼みって何?ほう…出来なくはないけど。
うん…うんいいですよ。
でそういう事を頼むからにはお土産くらいは用意してあるんでしょうね。
北海道だからそりゃあ毛がにでしょ。
「仲瀬開発暴力団に不正融資」「仲瀬社長ら逮捕」!
(仲瀬)よろしく頼んだよ。
根元さんが目撃したのは仲瀬社長だったんですね。
ええ根元さんちゃんと証言出来たんだ。
「天網恢恢疎にして漏らさず」でしょうか。
(電話)特命係。
「米沢です準備が整いました」どうもありがとう。
すぐそちらに。
長年勤めてますがここに入るのは初めてです。
しかし秘密主義の公安部がよく許してくれましたね。
お土産のかにが功を奏したようです。
あっ。
お探しのものはこちらのようですね。
引き取り手がいなかったんでしょう。
遺品が丸々残ってるようですね。
長官も喜んでましたよ。
君には少し借りが出来ましたね。
少し…ですか。
ん?不満なの?日本は今度未曾有のテロの脅威にさらされます。
なのに警視庁と各府県警本部の公安部と公安調査庁が別々の活動をしている現状は決して好ましくありません。
だから合衆国並みの国家安全保障局を作りたい。
君の持論はわかってる。
僕だっていろいろ便宜は図ってるじゃない。
一昨年の暮れの一件だって君に任せてあげたじゃない。
まあ君が指揮官よりも分析官の方が向いてるとわかっただけでもよしとしましょうか。
新組織の青写真作りは進めさせていただきます。
何から始めるつもり?まずは人集めかな。
君の事だからあの2人にも声を掛けるんでしょ。
それはまだ白紙の段階ですが…。
私なら官房長よりうまく杉下を使えると思います。
それは無理だね。
(ドアが開く音)杉下さん…。
よくいらしてくだすったわ。
お茶を淹れておもてなし出来ないのが残念だけど。
今日は僕の方にお土産があります。
え…?ご主人の部屋で見つかったものです。
見覚えはありませんか?いいえ。
そんなもの…どうして?お誕生日でしたね?ならばプレゼントだったのでは?え…!?指輪を買うお金はなくてもこれなら手が届いたのでしょう。
そう…あの人が…。
あるいは指輪の代わりだったのかもしれません。
これです。
あっ…!あの人がこれを?あなたが悲しみに心を閉ざし強引に時間を止めようとされても星たちはこうして動いているんですね。
今までもそしてこれからも。
この星ご主人そのものじゃありませんか。
あなたの中の時計をまた動かす時がきたのではありませんか?あっ…。
お待たせしました。
いいえ。
でもたまきさんたちはお待ちかねですよ。
4日遅れの新年会ですからね。
ええ。
あっタクシー拾いましょうか?いえ今夜はさほど寒くありません。
歩きませんか?はあ…いいですけど。
ちょっと星を見たい気分なんです。
星…ですか?カシオペアはどこにあるかご存じですか?ああ俺知ってます。
北極星のすぐ近くにあるんですよ。
2015/12/29(火) 14:55〜17:30
ABCテレビ1
相棒 season6[再][字]

#10SP「寝台特急カシオペア殺人事件!上野〜札幌1200kmを走る豪華密室!犯人はこの中にいる!!」

詳細情報
◇出演者
水谷豊・寺脇康文・長山藍子・永島敏行・柏原収史・鈴木砂羽・高樹沙耶・神保悟志・岸部一徳 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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