(鳥居勘三郎)
4年前のクリスマスイブの前日宮大工の作業場が全焼する火災が起きた
鎮火した現場から宮大工の棟梁竹本雄三の妻紀美子の遺体が発見された
検視の結果頭蓋骨陥没の跡が見られたことや遺体が煙を吸い込んでいなかったことなどから捜査本部は何者かが被害者を殺害した後火をつけたと判断
宮大工の棟梁に任意で出頭を求め取り調べた
だが棟梁は事情聴取の最中に持病の心臓発作を起こして倒れ入院
帰らぬ人となった
その結果棟梁の犯行だったかどうかあるいは別の何者かによる犯行なのか明らかにされないまま事件は迷宮入りとなった
そして…
(松木久幸)あなたのような人を白いカラスと…。
うわっ…!無理だって〜。
(七尾洋子)おはよう!何なに?今朝のケンカの原因は何?
(おたま)まあまあ聞いてください。
この私がヨーロッパに行くっていうのにおぼっちゃまは反対なさるんです。
だってこの歳で1人でパリに行くって無理だよ。
言葉だって話せないんだもん。
パリ!?それはすごい冒険。
「あなたの燃える手で」ああアラン・ドロンと一緒に歩きた〜い!おたまさんおたまさんおたまさん…!近場の温泉で手を打ってよ。
付き添うから。
仕方ない…。
まあ近場の温泉にまけておきましょうか。
では。
「タンタンターンタンタンタンタンタンターン」あらら…。
おたまさんの作戦勝ちだ。
おたまさん最初からパリへ行く気なんてなかったんですよ。
ダダこねておみやさんを旅行に連れ出すのが目的だった。
ああ〜。
まんまと引っかかっちゃって。
そういうこと。
えっ?あっまあいいや。
付き添うの洋子だから。
(村井信治)現職の刑事に対するこの事件は警察への挑戦とも受け取れる。
全署員を挙げて犯人検挙に当たってくれ。
(一同)はい!ねえねえ…。
特別警戒態勢って?
(会沢桂子)大変なの。
大原署の現職刑事が昨日の夜石橋の上から突き落とされて意識不明の重体なの。
何ですって!?
(高岡俊介)事件当夜は傷害事件が解決した後刑事課で一杯やったそうなんですが松木刑事は外せない用があると言って先に帰宅したそうなんです。
(吉川新平)ちなみに彼は誠実な人柄ですごい読書家だそうです。
(星野康夫)問題はこれなんですが…。
これがどうかしたのかね?
(高岡)ガイシャが所持してました。
あのちなみにこれ何ですか?ちょっと青年知らないの?これは墨つぼです。
(高岡)アイテッ。
墨つぼ?
(桂子)大工道具の一種で木材に線を引く時に使うものです。
ちょっと…ちょっと見せて。
やっぱり焦げてる。
間違いない間違いない。
(咳払い)とかくデカは人に恨まれる仕事だ。
怨恨を中心に物盗りの可能性も含めて…。
墨つぼ墨つぼ墨つぼ…。
墨つぼ墨つぼ…。
あった。
「宮大工棟梁夫人殺害事件」。
思い出した!確か4年前のヤマですよね?「捜査責任者松木久幸」。
えっ?このヤマ突き落とされたデカが取り調べたヤマなの?洋子くず餅食べに行こう。
その前にあの墨つぼの写真撮っておいて。
おみやさんが引っかかったわけは?まず謎が多かった。
その1殺された竹本夫妻2か月前から別居してたんだがその別居が事件の原因だと思って捜査本部は何度も訊いた。
だが頑として答えなかった。
その2は?竹本棟梁はその夜墨つけの作業をするといって作業場に残ったんだが鎮火された殺人現場に墨つけに使う際の墨つぼが見つからなかった。
その墨つぼがさっきの墨つぼかもしれないのね。
そうなるとこの2つのヤマはつながる。
(岡部玲子)わかりました。
ご要望を取り入れた設計図を来週までに持ってきます。
必ずこの町家を鈴木様が喜んでくださるお住まいにしてみせますから。
(鈴木)楽しみにしていますわ。
そんならよろしく。
よろしくお願いいたします。
えっと…すいません竹本百合子さんですよね?鴨川東署の鳥居っていいます。
実はあの…4年前あなたのお母さんの事件を担当していた刑事が昨夜傷害事件に遭いまして意識不明の重体なんです。
(竹本百合子)それって松木刑事のことですか!?はい。
(玲子)百合子ちゃん!申し訳ありません。
4年前の事件のこととなるとまだああして耳をふさいでしまうんです。
設計事務所の代表の岡部さん?はい。
彼女の雇い主っていうよりは親代わりです。
親代わり?百合子ちゃんの母親の紀美子とは美大の同級生で親友だったんです。
ああ4年前の被害者のお友達…。
でもね刑事さん実は私もあの事件には振り回された口でもうあんまり思い出したくないんですよ。
できればご容赦願えないでしょうか。
あっそれ誤解です。
私達刑事じゃないんです。
あの…資料課という部署にいて過去の事件の資料を整理するのが仕事なんです。
な〜んだ。
じゃあたぶん出世とは無縁の部署ですね。
おっしゃるとおりなんですがちょっといいですか?これ昨夜松木刑事の現場に落ちてたものなんですが亡くなった竹本棟梁の墨つぼじゃないですか?どうでしょう?私の仕事は建築デザインですから宮大工の道具については暗いんですよ。
お役に立てなくてごめんなさい。
ここは竹本棟梁最後の仕事場でもある。
あっ墨つけやってる。
へえああして使うのか。
早瀬さん?早瀬さんですよね?
(早瀬達彦)ええ…。
あの竹本棟梁の下で副棟梁をやっておられた。
ええ。
私鴨川東署資料課の鳥居っていいます。
資料を読んでまして竹本棟梁の後を早瀬さんがお継ぎになったのを知りまして。
ここの大修復は棟梁の生涯の夢でした。
この場所で亡くなる直前の棟梁に後を頼むと言われたんです。
(玲子)棟梁現場ですよ。
(竹本雄三)ああ…ああ…。
早瀬後は頼む…。
修復を…。
お父さん?お父さん!お父さん!!そこに設計事務所の岡部さんもいらしたんですか?岡部さんは棟梁の夢の一番の理解者でした。
修復にかかる浄財を集めるために檀家さんの間を走り回ってくれたのも岡部さんです。
そうですか…。
あっこれ見ていただけますか?
(早瀬)墨つぼですね。
これ棟梁のです!間違いない!これをどこで!?4年前の事件を担当した松木刑事が持ってました。
何であの刑事さんが持ってるんですか?目下捜査中です。
あのホントに古いことで申し訳ないんですが4年前棟梁ご夫妻はどうして別居なさったんですか?結局性格の不一致じゃないですか?棟梁は仕事一筋の堅物でしたけど奥さんは旅行だのカラオケだのが好きな派手好きの人でしたから…。
この竹本百合子の周辺を徹底的に洗え!
(一同)はい!兵さん兵さん。
(兵藤兵吾)はい。
はい?どこから竹本百合子の名前が出てきたの?課長が持ってたあの手帳が松木刑事の自宅から出てきたんですよ。
そこのカレンダーに竹本百合子の名前が頻繁に出てくるんですよ。
ええっ?見たい。
えっ?見たい!コピーなら何とか…。
ねえおみやさん松木刑事は4年前のヤマをまだ調べてたんじゃないですか?だから百合子さんに会っていた。
でも百合子さんは強引な取り調べで父親を死に追いやった松木刑事を恨んでいた。
それで昨夜松木刑事を突き落とした!そうですよね?相変わらず大胆な洋子の推理。
けどどうだろう?うーん…。
手帳のコピーです。
おおありがとう。
今度おごりまーす!ありがとうございます。
ズラーッと人の名前。
100人以上ね。
竹本棟梁が生きてた時にかかわった人達の名前だな。
切り出す木材を育ててる山の持ち主から瓦職人修復事業にかかわった人達…住職さんの名前もあるよ。
だとしたらこっちは4年前のクリスマスイブの前日に彼らがいた場所…つまり彼ら全員のアリバイ?たぶんね。
やっぱり彼宮大工棟梁夫人殺害事件を調べてたんだ!大原署の松木刑事はおみやさんパートツーですね。
過去にこだわり徹底的に捜査する。
ええ〜?向こうは現役でしょ?おみやさんより優秀なんじゃない?おーい。
あっ…ああっ!やっぱり百合子さんの名前が度々出てくる!これは?最後のページですね。
「白いカラス」…どういう意味?白いカラス…聞いたことあるな。
イソップだったっけな?黒いカラスはもともと白かった…。
よっしゃ!そのカラス私調べさせていただきます。
おお〜すごい楽しみ。
その代わりイブのディナーは私と。
私も!メッ!メッ!こんにちは。
鳥居さん。
度々どうも。
早瀬さんに会って来ました。
お元気でした?ええ。
あのお寺の修復作業に熱中されてました。
それでわかったんですけど…。
嘘ついたでしょ。
えっ?あなたあのお寺の修復事業の浄財を集めた方だ。
そんなあなたが宮大工の道具に暗いなんてあり得ない。
見破られました?ふふっ…。
さっきもお話ししましたけど4年前に棟梁がひどい取り調べ方をされて亡くなってるでしょ?あれ以来警察苦手になっちゃって。
本当にひどい取り調べだったんでしょうか?松木刑事職務をまっとうしようとした誠実で熱い刑事だったんではないでしょうか?私はそうは思いませんけど。
その松木刑事度々百合子さんに会ってますね?ええ。
棟梁の月命日にお墓で毎月。
でも向こうの目的はお墓参りっていうよりは百合子ちゃんに会って事件のことをあれこれ訊くことだったんです。
4年も経つのにしつこくって彼女帰って来る度にため息ついてました。
あれは事実だ!
(玲子の声)それで私見かねて…。
警察だからって女性相手に声を荒げるなんて最低です。
あなたは黙っててくれ。
百合子さんいつまで逃げていても事件は解決しない。
全てを明らかにして真実にたどり着くのがお父さんとお母さんの供養になるんじゃないか?棟梁を殺したあなたにそんなこと言う権利あるの?俺はあの事件を担当した。
権利よりも義務がある。
松木刑事が言ってたその事実って何ですか?百合子ちゃんが訊かないでって言うのでそのままにしておきました。
あああの…竹本棟梁ご夫妻の別居の理由がいまいちはっきりしないんですけど…。
私は聞きましたよ本人に。
えっ?紀美子はこう言ってました。
別居!?こんな時に何を言うの?もうすぐ棟梁の夢だったこのお寺の修復工事が始まるのよ。
(竹本紀美子)私には関係ないわ。
そんな…。
よく言うでしょ空の巣症候群って。
百合子を育て上げてからね急に何もかもがむなしくなっちゃって。
むなしく…?うん。
うちの人には仕事がある。
あなたにも仕事がある。
でも私は子育て終わってからもうやることなくなっちゃったのよね。
でも…!自分らしい生き方を探してみたいの。
ふふっ…。
こんな歳でね自分らしいなんて笑われるかもしれないけど。
中年女性の自分探し?何か曖昧ですね。
私はわかる気がしましたけど。
最後に1つ訊いていいですか?ホント最後にしてくださいね。
仕事させてください。
ホントに1つ。
聞いたことあります?「白いカラス」。
それをどこで?ご存じなんですね?まいったな…。
今頃そんなことを言ってる人がいたなんて。
4年前百合子ちゃんがそう呼ばれたんです。
えっ…百合子さんが?あの頃彼女ホント大変でね。
母親は殺されてそのうえ父親が犯人だって言われ揚げ句にその父親まで死んでしまう。
お通夜が終わって次の日の朝私達の前に現れた彼女はひと晩で髪が真っ白になっていた。
ショックが大きかったんでしょうね。
もうかける言葉もなくって…。
黒い喪服に白い頭髪…。
職人さんの1人がつぶやいてました。
「まるで白いカラスだ」と…。
もうこれで解放していただけますね。
さっ仕事仕事!ひと晩で髪が真っ白になるなんて…。
白いカラスは竹本百合子だった…。
今日何出てくるの?
(福島重夫)宮崎で獲れたカラス貝の酒蒸しですわ。
おお〜。
(福島雅人)はいどうぞ。
松木刑事の手帳には白いカラスがホシだと…。
カラス貝って真っ黒じゃないんだ。
おみやさんのんびり食べてていいんですか!?んっ?何深刻な顔してるの?だって竹本棟梁の姿を見て育った百合子さんなら墨つぼが職人にとってどれだけ大切かもわかってるわけでしょ?たぶん。
考えたくはないけどこういうことじゃないですか?あの百合子さんが母親を殺し作業場に火をつけて墨つぼだけを持って現場から逃げた。
そしてそれに気づいた松木刑事を突き落とした。
けどさ母親を手にかけるっていうのは強烈な動機が必要でしょ。
何か心当たりあるの?ううん今のところはさっぱり。
結論を急がなくていいんじゃないの?おかみさん。
おかみさんなんかも自分探しやるわけ?ふふふ…それは若い者のすることと違います?なあ。
ですね。
(小池仁美)いいえ!おばさんかて迷いはあります。
もっと別の人生があったんやないかって…。
私なんかもこの歳になって思いますもん。
いやそれが別居の原因になってる夫婦がいるんだけど何か不自然で…。
(仁美)そうですやろか?中年女性ってお腹の中にマグマが渦巻いてるさかい時々爆発するんです。
ええっ?恐ろしいですなぁ!ははは…。
白いカラスか…。
(高岡)おみやさん。
松木刑事の容体はどう…?依然意識不明のままです。
医者は何て言ってるの?お願い助かって…。
私…母を殺した犯人も見つからないのに…。
(泣き声)百合子さん?
(泣き声)落ち着きました?はい…。
百合子さん何のために病室にいらしたんですか?あなた松木刑事のこと恨んでましたよね?なのにお見舞いなんて…。
岡部さんの話によりますとあなた墓地で松木刑事と言い争いしてたそうですね。
ある事実を認めろとかって。
その事実って何です?もしかしてご両親の別居と関係あることですか?今ベッドにいる松木刑事が苦労して集めた情報です。
もしものことがあると彼の努力は無駄になります。
言います。
母には…。
君のお母さんには若い恋人がいた。
お母さんの行きつけの美容院にいる坂本という38歳の美容師だ。
そんな…!2人で神戸へ旅行もしている。
昨日宿泊したホテルへ行き裏を取ってきたよ。
従業員も2人の顔を覚えていた。
(百合子)私そんな母は想像できなくて岡部のおばさんにも黙ってずっと否定してきました。
まさかあなた…。
ちょっと失礼。
おみやさん。
動機が見つかったわ。
彼女は4年前浮気をしている母親が許せなくて殺害して火をつけた。
そして…。
いやいや。
結論を急ぐなって言ったでしょ。
竹本百合子さん。
松木刑事の傷害事件に対して伺いたいことがあります。
(高岡)署までご同行願えますか?一昨日の午後9時から11時までの間あなたはどこで何をされてました?本屋で本を読んでいました。
本屋で2時間も立ち読みですか。
長すぎませんかね?建築関係の本を読んでいると夢中になるんです。
その時間大原署の松木刑事が石橋から突き落とされている。
あなた彼のことよくご存じですよね?刑事さん。
(兵藤)はい。
ホントに刑事さんですか?はい。
竹本百合子がここに連れて来られたと聞きました。
どういうことなんですか?あの…。
鳥居さん!百合子ちゃんがなぜ!?松木刑事に対する傷害容疑で今事情を聞かれてる。
そんな…。
ちょっとちょっと…。
あの人ホントに刑事さんですか?4年前のことも調べられると思う。
4年前の?もしかして百合子ちゃんが疑われてるんですか?彼女が犯人のはずないでしょ!はい。
私は彼女が生まれた時から知ってます。
彼女は本当に心のやさしい子です。
突き落とすとか殺すとか…そんなことができる子じゃありません。
僕もそう思います。
彼女松木刑事のお見舞いに来てました。
お見舞いに?涙流して必死に祈ってました。
もしかして…。
(茅野太一)兵さん本屋の防犯カメラに竹本百合子が映ってましたよ。
(星野)竹本百合子はシロですね。
兵さん百合子さん連れて帰ってもらっていいね?はい。
どうぞ。
(桂子)おみやさん白いカラス発見。
白いカラスの正体ならわかってますよ。
あれま。
話聞かせて。
はい。
白いカラスはギリシャ神話の中に登場してました。
ギリシャ神話なの?はい。
わかりやすく絵にしてきましたから見てくださいね。
はい。
その昔カラスはこのように白い羽を持ち澄んだ声で鳴く美しい鳥でした。
さてその頃太陽の神アポロンは…こちらアポロンです。
この女性を愛していた。
がしかしこの女性が結婚するという話をこのカラスがアポロンに告げ口いたします。
で怒ったアポロンこの女性を焼き殺してしまった。
いやひど〜い。
ホントひどい。
でもさすがにアポロンも反省いたしました。
で告げ口したカラスが悪いと悟りこのようにカラスの羽を真っ黒にしてしまいましたとさ。
以上。
(鳥居・洋子)ふ〜ん。
じゃあ白いカラスは密告者のことなの?百合子さんじゃないってこと?待って。
だとしたら百合子さんのお母さんに恋人がいるって誰かが竹本棟梁に告げ口した。
洋子それすっごい推理。
百合子ちゃんあなた松木刑事のお見舞いに行ったそうね。
私はあなたが私と同じ気持ちでいると思ってた。
あの刑事を恨んでると…。
でもホントは違うんじゃない?鳥居さんが言ってたわ。
彼は誠実で熱い刑事だって。
だとしたら毎月会ってるうちに惹かれるようになったとしても不思議じゃないわよねぇ。
ごめんなさい!いけないことだってわかってるけどあの人事件の真相を君のためにもつかみたいって本当に熱心だったの!それでいつの間にか…。
そう…。
本当にごめんなさい!謝ることじゃないわよ。
好きになっちゃいけない人を好きになっちゃうことってあるもんだから。
百合子ちゃんの恋を邪魔するものは今にきっと全部なくなるわ。
だから真っすぐ進みなさい。
坂本さんお客様です。
(坂本純平)はい。
(坂本)またその話ですか。
紀美子さんとは神戸へ旅行に行った仲でした。
そのことを紀美子さん以外に知っている人は?だからそれ松木って刑事に先週話しましたよ。
というと知ってる人いるんですか?あっちでばったり会ったんですよ。
紀美子さんの美大時代の同級生っていう女性に。
それってもしかして岡部さん?
(携帯電話)あっ失礼。
兵さん?岡部さんから預かりました。
開けていいですね?はい。
竹本棟梁の遺品だ。
竹本棟梁と岡部さんそれから紀美子さんですね。
えっ…?何か変ですね。
竹本棟梁が肩を組んでるのは岡部さん。
紀美子さんは少し離れてる。
まるでこの2人が恋人だったみたい。
すす…。
ええっ?どうして?岡部さんが竹本棟梁を撮った写真ですね。
4年前の12月23日…事件のあった夜。
待って。
どうかした?わかった。
急ごう。
岡部さん。
鳥居さん…。
行李確かに受け取りました。
4年前の12月23日あなた竹本工務店の作業場にいたんですね。
このクリスマスパーティーの写真ここに写ってるあなたの袖に黒い1本の線が写ってます。
これ墨つけの際の糸の跡ですよね?行李の隅にすすも付着してました。
あそこに墨つぼを保管してあったんですか?話してください。
ここで亡くなった竹本棟梁のためにも本当のことを全て話してください。
4年前のあの晩別居してた紀美子が戻ってきたんです。
(携帯電話)紀美子…?紀美子!帰ってきたの?今まで棟梁とお話ししてたの。
別れようって言われると思ったけど棟梁黙ってたわ。
(玲子の声)その1か月前に私見たんです。
出張で神戸へ行った時でした。
迷いに迷って棟梁に…。
(玲子)棟梁紀美子のことだけど…。
うん?ううん。
いいわ何でもない。
岡部さんらしくないなぁ。
言いたいことはスパッと言うのがあんたの性分やろ。
(玲子の声)伝えました。
いくら告げ口しようったって私達夫婦は変わらないのよ。
私前のようにここに戻って暮らすわ。
あなたがあの男の人ときっぱり別れるなら私ももう何も言わないわ。
あなたわかってないわ〜。
うちの棟梁みたいにね仕事のことしか頭にない亭主は話してても退屈で仕方ないの。
私これからも彼に会うわ。
そのぐらい楽しみがなきゃやっていられない。
そんな…!
(玲子の声)棟梁はあの墨つけの作業をとても大切にしていました。
木を切り出すのも図面を引くのも大事な仕事だ。
だけど一番気が張って力がみなぎるのは墨つけの時だと。
でもあそこには墨つけの途中の木が置き去りにされていた。
あれを見てわかったんです。
棟梁の気持ちはどうしようもなく乱れてるって。
悩み苦しみながら黙って耐えている。
そんな棟梁を思うとたまらなくなって…。
何が自分探しよ!あなた最低よ!妻としても母親としても失格よ!それあなたの嫉妬でしょ?わかってるのよ。
あなた20年前のことずっと覚えてるんでしょ。
そうよあなたは棟梁の恋人だった。
それを知ってて私は棟梁に近づいた。
結果棟梁は私を選んだ。
確かにあなたは美大時代からとても優秀だった。
今でもバリバリ仕事をこなしてる。
でもう〜ん…女としてはどうかしら。
あなた魅力に欠けてるのよ。
女としての魅力がないの。
だから棟梁は私を選んだ。
今だってそうよ。
あなた棟梁の仕事を手伝って役に立ってると思ってるかもしれない。
でも竹本が必要としてる女は私なの。
(玲子の声)胸が苦しくなりました。
手に入らないものを追い続けてきた自分の人生が惨めで情けなくて…。
さあこれからもうまくやっていかなくっちゃ。
あなた最低よ!!何するのよ…!
(紀美子)邪魔しないでよ!!
(玲子)キャーッ!!
(紀美子)痛いじゃない!何するのよ!
(玲子)キャーッ!
(玲子)あっ!キャーッ!
(紀美子)ああっ!紀美子…?紀美子!?紀美子!?紀美子!!あっ!
(玲子の声)あの時はっきり思いました。
こんな女死んで当然だと。
(百合子)所長遅いよ!早く早く!
(玲子の声)でも百合子ちゃんの笑顔を見た瞬間後悔しました。
自首するつもりでした。
でも棟梁に疑いがかかりその棟梁が亡くなってあれを見た時今私が捕まって紀美子の浮気や棟梁との破局を知ったら百合子ちゃんは本当に壊れてしまう。
そう思ったんです。
それであなたはこの4年間まるで母親のように百合子さんを見守り続けた。
私のような女にでも母性ってあるんですね。
百合子ちゃんがかわいくてかわいくて仕方なかった。
自分の娘のように。
やっぱりあなたでしたか。
あと1か月待ってください。
そうしたら自首します。
それはできない。
あなたみたいな人を白いカラスと…。
(玲子の声)あと1か月だったんです。
1か月で棟梁が執念持って取り組んでた宝蔵の大修復が完成するんです。
早瀬後は頼む…。
修復を…。
棟梁に代わってそれをこの目で確かめたかった。
だから…。
あなたそれほどまでに竹本棟梁のことを…。
(百合子)玲子おばさん…。
百合子ちゃん…。
今ならわかるの。
4年前のあれはあれで紀美子の精一杯の自分探しだったのよね。
でもあの時は理解できなかった。
好きになっちゃいけない人を好きになってた私の目は曇ってたの。
そのせいで紀美子を…。
そして棟梁も…。
そのうえあなたが愛した人まで…。
許して…。
バカなことするな。
生きて償え。
竹本棟梁ならそう言うでしょう。
それにあなたは女性としての魅力に欠けるとは思わない。
犯した罪を別にすればあなたは素敵な女性です。
鳥居さん…。
(足音)おみやさん病院の松木刑事が意識を取り戻しました。
もう命の危険はないそうです。
よかった。
よかった…。
玲子おばさんよかった…。
(百合子の泣き声)百合子ちゃん…!
(2人の泣き声)ごめんね…ごめんね…!
(泣き声)ごめんね…。
(2人の泣き声)ごめんね…。
事件はもう解決しました。
あなたは事件の関係者彼は刑事っていう関係じゃありません。
新しいスタートです。
これお父さんの墨つぼ。
真っ白な気持ちであなた達の人生設計1本の線きれいに書いてください。
岡部さんもそれを望んでます。
松木さん終わったわ…。
聞いたよ。
今までよく頑張ってきたな。
(泣き声)最初は憎んでた。
でもだんだん…。
憎まれてると知りながら君の顔が見たかった。
月命日を心待ちにしていた。
刑事失格だな。
禁じられた愛か…。
この4年間しんどかっただろうなぁ岡部さんも百合子さんも。
女性ってさ一途にずっと耐えると人間としての深みが増すんだね。
はいはいわかってます。
どうせ私にはそういった人間的な深みがないって言いたいんでしょ〜?いやいやいやいや…洋子のミーハーでさ始終元気で何か食べるとすぐ幸せっていう性格好きだよ。
ちょっとそれ全然褒めてないじゃない!いや褒めてるつもりだけど。
怒ったぞ〜!待てー!
おしゃべりあるき目です
今日は私ではなくかまいたちの2人がきよっさんのお供
2015/12/29(火) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
おみやさん6[再][字]
【第7話】4年前、宮大工の棟梁夫人が火事で焼死した。この事件を追っていた刑事も命を狙われ意識不明に…。刑事の手帳に書かれていた『犯人は白いカラス』の意味とは!?
詳細情報
◇番組内容
京都鴨川東署資料課の窓際課長・鳥居勘三郎(渡瀬恒彦)が、部下の七尾(櫻井淳子)と迷宮入りした難事件に挑む!
◇出演者
渡瀬恒彦、櫻井淳子、七瀬なつみ、不破万作、林 泰文、片桐竜次、小野寺丈、一條 俊、相本久美子、菅井きんほか
【ゲスト】藤真利子、遊井亮子、池田政典
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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