(鳥居勘三郎)
14年前京南町の小室神社で1人の青年が殺害された
近くに住む豆腐店店主佐藤勝治の暴走族風のバイクが走り去ったという証言に基づき所轄は暴走族関係を中心に捜査した
しかし有力な手掛かりは得られず事件は迷宮入りし時効まであと3か月まで迫っていた
そして…
(佐藤勝治)ああ…。
(リポーター)「ただ今萩原氏が現れました!」
(萩原慎一)「京都市の再開発をより強力に進めたいと思っています。
お願いします」
(リポーター)「萩原さん計画の詳細について…」珍しいね。
仲良く並んで。
(七尾洋子)36歳で国政のホープ。
おまけにイケメン!
(おたま)女なら誰でも憧れますわ。
政治家なんて本性はわかんないよ。
男の品格っていうのはね顔に出るんです。
あっそう。
(おたま)この方独り身なんですのよ。
んっ?でもおたまさんには関係ないんじゃない?失礼な!私はまだまだ現役です。
毎朝豆乳をいただいて元気いっぱい。
今さら無駄な抵抗はやめましょ。
まあ!ねっ!
(カメラのシャッター音)
(会沢桂子)死斑はまだありません。
死後硬直が始まりかけてます。
詳しくは検視待ちですが死亡推定時刻は午前4時から5時半の間だと思われます。
頭蓋骨骨折重度の皮膜下出血が見られます。
凶器はかなり強固なものですね。
(吉川新平)例えば石とか?うん…。
(兵藤兵吾)この液体はこの割れたコップの中身?そのようですね。
(兵藤)毒物が混入してないか調べてくれ。
成分解析かけます。
(兵藤)あと…ゲソ痕は?
(桂子)見てください。
(吉川)これってガイシャが何かこうやって地面かいたような感じですよね?相当苦しかったんだろうなぁ。
気の毒に…。
(高岡俊介)ちょっと待ってください!入らないで入らないで!
(佐藤紗枝)父なんです!父なんです!お父さん…。
お父さん…!お父さん…お父さん…!
(茅野太一)ガイシャは佐藤勝治64歳。
左京区京南町で豆腐店廿日屋を経営しています。
(星野康夫)正面から鈍器のようなもので額を一撃され脳挫傷を起こして死亡。
凶器は見つかっていません。
(吉川)娘さんによりますとガイシャは店を開ける前に現場となった神社にお参りするのが日課だったそうです。
(村井信治)お参りに来た神社で事件に巻き込まれたそういうことだな。
所持品のほうは?ガイシャがいつも身につけていたという懐中時計がなくなっているという娘さんの証言があります。
流しの強盗殺人の可能性もあるな。
目撃者はいないのか?目撃者は。
死亡推定時刻が午前4時半と早かったので今のところはまだ。
(桂子)課長!現場の液体の分析結果出ました。
豆乳です。
午前4時半の豆乳…。
ちょっと…その神社って小室神社?
(吉川)そうです。
何か気になることでも?サンキュー。
(村井)資料課の妄想劇場に付き合う必要はないって!早くみんな聞き込みに行こうよ。
午前4時半の豆乳…午前4時半の豆乳…。
午前4時半の豆乳…。
午前4時半の…あっあった!「小室神社暴走族抗争殺人事件」。
14年前同じ小室神社で岸田健吾っていう青年が殺害された。
その時間がちょうど4時半。
近所で豆腐屋をやってる佐藤さんの証言によると…。
朝の4時半ですか?ガラの悪そうな若いのが言い争いしとってねぇ。
それからすぐに暴走族っぽいのが逃げていきました。
ああ…このヤマあと3か月で時効ですね。
あっ!目撃者を装ってた佐藤勝治が実はホンボシで何者かが復讐のために…!?いや佐藤さんはすぐ捜査から外れた。
なぜですか?ガイシャの右手中指の爪にホシのものと思われる皮膚片があった。
血液検査の結果A型。
佐藤さんはB型。
うーん…でも14年前と同じ神社しかも同じ午前4時半に唯一の目撃者が殺されたんですよね?おみやさんきっと何かありますよ。
桂子さんちょっと…。
はいはい!はーい。
何か気になります?割れたコップから指紋とれた?はいガイシャのものだけですが。
ということはガイシャが豆乳を入れたコップを持ってたってこと?そういうことになりますね。
これ何?ガイシャが土をかいたものです。
いや…相当苦しんだのねぇ。
うーん…どうでしょう?いや…ほぼ即死に近い状態だったんです。
つまり意識はあっても朦朧としてたはずなの。
こんなに強く土をかく力がどこから出たのかものすごい不思議。
お父さんのこと大変でしたね。
刑事さんにはもう全てお話ししたはずですが…。
いえ私達刑事じゃなくて過去の事件の資料を整理する資料課の人間なんです。
過去の?14年前同じ神社で殺人事件がありましたよね?ええ。
あの事件が何か?いいえ。
お父さんいつも何時頃神社にお参りになるんですか?3時頃です。
仕事に取り掛かると店を空けられないので。
3時!お豆腐屋さんの朝って早いんですね。
豆乳って簡単にいいますとふやかした大豆を搾って作るんですよね?つまり豆腐を作る第一段階の工程。
豆乳って何時ぐらいにできるんですか?午前4時過ぎでしょうか。
このあたりバイパスが通るかもとは聞いてたけどこんなに反対する住民がいたなんて…。
(クラクション)危ない…!佐藤さんは反対派のリーダーだった。
何か変だよねぇ。
何がですか?だって刑事課は佐藤さんがお参りに来る途中事件に巻き込まれたっていう判断だけどお参りに来るのは3時。
豆乳ができるのは…?4時?いったんお店に戻ったってこと?ひと仕事してでき上がった豆乳を持ってまた神社に来た。
そして午前4時半佐藤さんは何者かに殺された。
ええ?そんな時間になぜ戻ったのかしら?何やってるの?イタッ!びっくり…あれ?張り込みです。
おみやさんは?いや…おみくじ引きに。
うん。
(高岡・茅野)またそんな…。
(高岡)茅野さん。
(茅野)岸田!
(茅野)待て!おい待て!こら岸田!岸田!
(茅野)待てこら!岸田!
(岸田省吾)ああっ…!
(茅野)待てこら!岸田…!
(省吾)離せボケ!逃げられないと思うよ。
何やねん…。
ううっ…!
(高岡)おとなしくしろ!「やかましいねん」弟?14年前殺害された岸田健吾の弟?
(兵藤)そうです。
岸田省吾28歳。
(兵藤)ガイシャの懐中時計を質入れに来て…。
9万円。
これ純銀製。
「2000FromS」これ何?お嬢さんの紗枝さんが2000年にプレゼントしたんじゃないでしょうか?
(茅野)「何で逃げたりした?」「お前らが追っかけるからやろ」「お前が被害者の懐中時計質入れしたからだよ」もろうたんや!あの豆腐屋の親父さんに。
目撃証言?目撃というか早朝の散歩中だった夫婦が神社のほうから歌が聞こえたっていうんですよ。
歌?
(兵藤)ええ。
「憧れの街」とか「雨のペンダント」とか。
そんな歌詞やわ!何か懐かしい感じの。
歌聞いたっていつ?午前4時半頃だっていうんですがね。
岸田省吾とガイシャつながりましたよ。
開発反対派リーダーのガイシャの家に嫌がらせと思われる着信が度々ありました。
朝の早い豆腐屋に夜中の電話はこたえたろうな。
他にも反対派住民宅の窓ガラスを割ったり落書きしたり。
地上げ屋の手先か?「憧れの街」「雨のペンダント」…。
現場で聞こえてた歌って何なんだろ?ええ〜?まさかそれずっと考えてたんですか?結局刑事課は事件には関係ないって判断しちゃったのに。
(小池仁美)「憧れの街」…京都を表すのにピッタリですね。
女将さん喪服にガラスの飾り物なんかする?ガラス?ちょっと奇妙な感じしますねぇ。
普通は真珠やないかと。
何それ?紗枝さん喪服にガラスの飾り物つけてた。
それが雨のしずくみたいに光ってた。
そんなとこ見てたんだ?おみやさんって。
(福島雅人)親父さんちょっと…。
(福島重夫)うん?何や?それにさ岸田省吾佐藤さんのことを「豆腐屋の親父さん」って呼んでた。
もろうたんや!あの豆腐屋の親父さんに。
嫌がらせしてる相手にさ「さん」付けで呼ぶかな?ああ…親しみを込めた相手に使いますよね。
洋子明日豆腐買いに行こう。
おはようございます。
お豆腐買いに来ました。
(紗枝)あの…お売りできるようなものは…。
試作品で申し訳ないんですけどよかったら。
あっじゃあ…。
これ借ります。
いただきます。
いただきます。
うん…。
うんおいしい。
やっぱり少し違いますよね?いいんです。
やっぱり父と同じ味は出せません。
ちょっと…。
紗枝さん岸田省吾のことはご存じですか?ええ。
昔はよく父がお店で豆乳を飲ませていました。
最近は?気に掛けていたみたいです。
夜寝る前に父はいつも電話線を抜いていました。
岸田省吾君にそうしろって言われたからって。
すいません散らかったままで。
随分熱心に運動してたんですね。
あっイケメン議員!ごめんなさい…。
道路開発の陣頭指揮を執ってる人ですよね。
反対派の方にとっては天敵なのに…。
いえ…。
黄昏…憧れ…。
『黄昏のビギン』…かけていいですか?ええ。
(カセットテープ)「親父さん…」「もうおいしい豆乳はでき上がりましたか?」これって回転数変えられたっけ?いや…。
借りていいですか?どうぞ。
岸田省吾を釈放ですか?午前4時半のアリバイが立証されたんだ。
やむを得んだろう。
4時前に豆腐屋を訪ねたその足で女のアパートに転がり込んでました。
証言の裏も取れました。
でもガイシャの懐中時計を岸田が盗んだかもしれないじゃないですか。
本件の容疑は窃盗じゃなくて殺人だ。
被害届が出ていない以上これ以上の拘束は無理だろう。
もうパソコン見すぎて目がショボショボ…。
ホントだ目がちっちゃ〜い!オラッ!事件解決のために頑張ってる私にそういうことを言いますか…!うう…。
おみやさ〜ん!ランチごちそうしてくれたら元気になれそう。
あららら…強引…キャッ!このテープ復元して。
ランチの前に。
はい!洋子ランチ。
はーい。
オラーッ!何じゃそりゃ〜!!訊きたいことがあるんだけど。
話すことなんか何もないわ。
君佐藤さんにだけは嫌がらせしなかったよね。
夜に電話線抜くようにって言った。
佐藤さんのことを「親父さん」って慕ってた。
そんな君にさホントのこと訊きたいんだけど。
親父さんの口癖は「あの時俺がもっとしっかり見ておけば」やった。
お兄さんの事件のこと?俺はその気持ちに付け込んで金せびってたんや。
(省吾の声)そやけど親父さんは俺のことを1回も責めへんかった。
それどころか俺がバカやるといつも尻拭いしてくれた。
最後にはあんなに大事にしてた時計を俺みたいなクズのために…!この時計なわしにはもう必要なくなったさかい。
持っていけ。
そやけどこれ…親父さんが一番大事にしてたものやんか。
もうええのや!ははっ…もうええねん。
持っていけ。
俺はきれいに足洗うたんや。
親父さんのために。
そう。
4日前偉い先生が反対派住民への嫌がらせはやめろって命令してきたらしくて。
タイミングもよかったんや。
1つ訊きたいんだけどこの時計裏に「FromS2000」ってあるんだけどこの意味わかる?2000年に大事な友人からもろうたってあれは俺の希望や言うていつも自慢してたよ。
俺の希望?この計画は私の悲願です。
市内から抜ける渋滞の解消交通の利便性もさることながら安心安全な町づくりの実現を目指す大きな一歩になることは間違いありません!反対!道路開発反対!帰れー!
(佐藤)反対!反対!断固反対だ!えっ?そんなことがあったなんてどこにも…。
同じ京都出身やいうたかて萩原は若い時だけやさかい町つぶして道路通そうなんて平気で思いつくんと違いますか?渋滞かて京都の名物や。
いざとなれば抜け道もありますしね。
抜け道?京とうふ廿日屋の前の道路は中都大路へ抜ける通り道になってるんだよね。
ホントだ。
14年前の事件の朝もここを通った運転手さんがいるんだろうな。
こんにちは。
はい。
今日はお豆腐作らないんですか?お店たたむことにしたんです。
まだ何か?この前の道トラック随分通りますよね?ええ。
抜け道になっているから危なくて…。
でもお父さん最後まで道路開発に反対なさった。
この町の人達は寄り添い合って支え合って暮らしているんです。
そんな人達の居場所を勝手に奪うのは許せないというのが父の言い分でした。
もう1つ伺っていいですか?岸田省吾懐中時計のことを…。
あれは俺の希望や言うていつもそうやって自慢してたよ。
懐中時計を贈ったSって誰ですか?あの時計は私が贈ったんです。
あなたが?あっ桂子さん。
あっおみやさん!例のカセットテープ復元しましたよ。
劣化が激しかったからこれが限界です。
もう〜逃がさない!徹夜で頑張ったの徹夜で!うん…ラーメンつけ麺あれイケメン?んっ?あははは…!あっすいません!あははは!おみやさん!
(カセットテープ)「いつも僕に新鮮な豆乳を飲ませてくれる京南町一番のお豆腐屋の親父さんへ」「ありがとう」「現在時計の針は4時半を指しています」「親父さんもう起きてらっしゃるでしょうか?」「京南町のお豆腐屋の親父さんに贈ります」「午前4時半の友人さんからのリクエストちあきなおみさんで『黄昏のビギン』」「雨に濡れてたたそがれの街」「あなたと逢った初めての夜」「ふたりの肩に銀色の雨」「あなたの唇濡れていたっけ」「傘もささずに僕達は歩きつづけた雨の中」「あのネオンがぼやけてた」
(紗枝の泣き声)「中学時代の憧れの君ずっと思い続けて時が経ち10年ぶりの同窓会での再会」「迷わずプロポーズしてゴールイン」「憧れの君は今や僕の妻という…」すいません。
「ああ〜とっても幸せな南区のピーターさんからいただいた…」14年前のはがきなんて見つかるかなぁ?大丈夫です。
私達資料整理のプロですから。
あった。
えっ?すっ…すごい!差出人の住所や氏名書いてませんね。
どういう人が投稿するんですか?交通情報がメーンの早朝ドライバー向けの番組なんです。
だからドライバーさんが多いみたいですよ。
あっ…『黄昏のビギン』だ。
14年前から人気なんだ。
あっいえねついこの間もリクエストがあったんですよ。
曲をかける時間指定までしてあって…。
あっ!これだ。
「Sへ初志貫徹」。
「『黄昏のビギン』を是非四時半にお願いします」。
「匿名希望」。
「佐藤勝治」!午前4時半にSから歌をプレゼントされていた佐藤さんが14年後午前4時半に同じ歌をSにプレゼントしていた。
でも初志貫徹って…。
あの日は市場が休みだったんで自分は何も…。
ああ…。
朝の4時半ここを通る業者さんってわかります?雅運送とか京町通運とかうちみたいに青物市場に出入りする業者だと…。
どうもありがとう。
もう飲めないんですね。
えっ?親父さんの豆乳1杯30円で飲めました。
いつも仕事頑張れよって声を掛けてくれて…。
(社長)14年前の履歴書ね…。
入れ替わりが激しいからなかなか…。
社長14年前いうたら…。
あっ!ああ…。
そうやったそうやった。
ここへ入れておいたんやここへ。
ええとええと…。
これや。
まじめでええ子やったからまた戻ってきてもらおう思うて取っておいたんや。
そうしたらまさかの大出世!社長さんも応援しているんですね。
(社長)はい。
うちの誇りですわ。
はははは…。
(受付係)お名前が見当たりませんね。
鴨川東署の七尾署長の代理で来ました。
拝見いたします。
失礼いたしました。
どうぞ。
先生今度うちが開発する健康ランドなんですけどねひとつよろしくお願いします。
あっすいません!大丈夫ですか?大丈夫ですか?気をつけて。
ありがとうございます。
すいません。
先生どうも。
失礼ですがあなたは?鴨川東署の鳥居っていいます。
…といっても資料課ですが。
部下の七尾です。
パンフレット拝見しましたが議員になるまで随分苦労なさってますね。
ああ…。
うちは母子家庭でした。
でも母は僕が中3の時に過労が元で…。
大変でしたね。
あの頃弱かった僕らを守ってくれる人は誰もいませんでした。
守ってくれる人がいれば母は死なずに済んだかもしれない。
ならば僕がなろう。
僕は全ての弱者の光になろうと決めたんです。
では…。
失礼します。
京南町…。
どうしてああいうところを再開発なさるんですか?僕や母のような暮らしをもう誰にもさせたくないからです。
そのためには町全体を潤わせなければなりません。
先生は京南町をよくご存じなんですか?いえそういうわけでは。
でも先生は学生時代に雅運送でトラックのドライバーをしてらしたのでは?あっパンフレットにはありませんでしたが。
あっいえ…。
社長さん今も応援してましたよ。
アルバイトは数え切れないくらいやりましたから。
(秘書)先生。
こちらへ。
『黄昏のビギン』いい曲ですよね。
紗枝さん?目と目を見交わすおかしなおかしな2人か…。
おみやさんそれ何?兵さん?やっぱりあなたでしたか。
殺された再開発反対派のリーダー佐藤さんと推進派の国会議員のあなたと14年来の知己っていうか固いきずなで結ばれてたんですね。
これ14年前のはがきです。
ラジオ局に届きました。
リクエストされたのは『黄昏のビギン』。
宛て先はお豆腐屋の親父さんへ。
プレゼンターは午前4時半の友人。
お豆腐屋の親父さんって佐藤さんでしょ?午前4時半の友人ってあなたですよね?それとこれ8年前…2000年に佐藤さんに贈られた時計です。
裏に「2000FromS」ってあります。
この「S」は萩原慎一のS。
つまりあなたのS。
あなたが贈った時計ですよね?ちなみに2000年あなたが初当選した年でもあります。
…だとしたらどうだと言うんです?先生あの日豆乳を飲むことできなかったでしょ?いや飲めなかった。
14年前殺害された岸田健吾の中指の爪に加害者の皮膚片が入っていたんです。
血液検査の結果それはA型。
先生もA型。
DNA鑑定の必要ありますか?ありません…。
あの頃僕はヘトヘトになりながら学費を稼ぐためにドライバーの仕事をしていました。
(ブレーキ音)アホ!何して…!気ぃつけんかい!大丈夫ですか?すいません!大丈夫じゃないわい!狭いところでスピード出しやがって。
すいません!ちょっと…。
ちょっと…ちょっと来いよ。
はい。
飲め。
えっ?これ飲んで目ぇ覚まして運転せえ!はい…。
いただきます。
うまいっす!
(萩原の声)運送の途中で出会った豆腐屋の親父さん。
それから僕は毎朝お店に立ち寄るようになって…。
もし僕にも父がいたらきっとこんな感じなんだろうなと思えるほどあの人はやさしくてあったかかった。
でも貧しい僕にはその恩に報いるすべがなかった。
だから…。
早朝のラジオ番組を通して歌を…。
ええ。
佐藤さんが一番好きな歌だって紗枝ちゃんが教えてくれたから。
(萩原)佐藤さんすごく喜んでくれて…。
(ラジオ)「ちあきなおみさんで『黄昏のビギン』」「雨に濡れてたたそがれの街」紗枝ちゃん…。
テープが擦り切れるくらい何度も何度も私に聞かせたんです。
萩原さんは父の…私達家族の自慢でした。
そしてあの朝が来たんです。
(クラクション)大丈夫ですか?危ないですよ。
(岸田健吾)俺のことはねたな!?自分でぶつかったんじゃないですか!うるさいわい!はねたやろこら!大丈夫そうですね。
何するんだ!どけよ!ちょっと!待て!
(萩原)待てよ!おい!
(2人の争う声)ああ…。
あっ…。
ああ…。
お前…。
行け!行け!佐藤さんはあなたの犯行の証拠を全て消し去った。
そして目撃者として事件が暴走族の抗争であるかのように偽証した。
僕は怖かった。
自首しよう…何度もそう思いました。
でもできなかった…。
佐藤さんの顔を見ることも紗枝ちゃんに別れを告げることもできず逃げてしまった…。
そのことで紗枝ちゃんをずっと苦しめたと思う。
だけど佐藤さんが偽証という罪を犯してまでくれたチャンスを無駄にはできないと思ったんです。
佐藤さんに報いるためにも僕は政治家になるべく全力を注ぎました。
そして初当選した年にあなた佐藤さんに懐中時計を贈った。
贈り主の名前はなかったけど父はすぐにわかったみたいでした。
もちろん私も。
(紗枝の声)この8年間本当に父はあの懐中時計を大事にしていました。
父はずっと萩原さんを応援していました。
市議選に出馬した時も国政に打って出た時も…。
萩原さんが夢をかなえる度に本当にうれしそうで…。
そしてあなたと佐藤さんは再会した。
佐藤さん!はじめまして。
私京都市左京区の京南町で豆腐屋を営んでおります…。
よしてください!水くさいじゃないですか。
知りません!私あんたのこと何も知りません。
今日初めて会うたんですから。
本日は今京南町で進められております道路開発に反対の陳情に伺いました。
お願いします。
(萩原の声)それは不幸な再会でした。
14年前の事件を隠して初対面を装ってくれた佐藤の親父さん。
その親父さんと僕はいつの間にか対立する立場になっていた。
(萩原)佐藤さんならきっとわかってくれるはずです。
開発を推進することがこの町を救う唯一の方法なんです。
これが現実なんですよ。
現実!?現実はなこの町の人間はみんな寄り添うて助け合うて暮らしてんねや。
この町でしか生きられん人間かておるのや!何でそれがわからんねんお前は!
(萩原の声)佐藤の親父さんはあの神社に来るよう言いました。
(ラジオ)「続いてのおはがきです」「Sへ初志貫徹」「『黄昏のビギン』を4時半にお願いします」「…とのこと。
それではSさんへのリクエストちあきなおみさんで『黄昏のビギン』」「雨に濡れてた」わしはなお前のことを息子のように思うとったんや。
お前が…弱い人達のために世の中を変えたい。
そのお前の言葉を信じとったんやわしは。
けどお前は結局この悪い思い出の残る神社を道路開発で消してしまいたい…そう思ってただけやねん。
お前今これ飲めるか?飲めへんやろな…。
(萩原の声)僕は慌てました。
そして混乱した。
佐藤さんがその足で警察に行ったら…。
14年間おびえ続けていた罪への恐怖が私を…。
親父さん。
親父さん!親父さん…。
仕方なかった。
僕には使命がある。
社会を変えるためにやるべきことがまだまだたくさんあったんです。
萩原さんあなた勘違いしてる。
佐藤さんの殺害現場に捜査の重要な手掛かりとなる犯人の靴跡がなかったんです。
どうしてだと思います?つかの間意識を取り戻した佐藤さんは最後の力を振り絞ってあなたの靴跡を消したんです。
そうです。
14年前必死になって証拠隠蔽しようとした時と同じように。
佐藤さんは最後まであなたをかばおうとしていたんです。
あなたからもらった懐中時計佐藤さん「俺の希望」って言ってました。
偽証してまでかばったあなたに弱い人達の未来を託したんです。
だから殺されかけてもあなたを守ろうとした。
佐藤さんにとってあなたは「俺の希望」なんです。
親父さん…。
親父さん!萩原さん紗枝さんあなた達本当に愛し合ってた。
深く愛し合ってた。
2人を結びつけたのはお父さんですよね?
(紗枝)どうぞ。
ありがとう。
「たそがれの街」「あなたの瞳夜にうるんで」「濡れたブラウス胸元に雨のしずくかネックレス」「こきざみにふるえてた」紗枝さんあなたお父さんの遺志を継いでこの古き良き町を守り続けてください。
萩原さんあなた罪を認めて佐藤さんの供養をしてください。
あなた達の恋は真剣でした。
今は切なくて苦しくて寂しくて…。
胸の中が悲しくて…そんな気持ちだと思います。
ですが今のあなた達には時間がありません。
こんな時には思いっきり抱き合うんです。
それしかありません。
さあ…。
どんな罪を犯した人にも希望を見出そうとした父の気持ち大事にしたいんです。
父が残してくれたお豆腐を作りながら。
私待ちます。
この町で。
頑張ってください。
これお父さんの懐中時計。
ありがとうございます。
ねえおみやさんあの懐中時計のお金どうしたの?僕が質屋さんから出してきた。
さすがお金持ち!うんおいしい!まあプリプリでおいしゅうございますね。
ねえ!おたまさんと正反対。
まあ!あなたの体そっくりよ。
ペラペラのペッタンコ!憎たらしい…!私脱ぐとすごいんです。
ほらほら!見ろ見ろ!ポン酢ちょうだい。
ポン酢…。
ほらほら!どうだ!
おしゃべりあるき目です
ご覧ください色鮮やかなステンドグラス
2015/12/28(月) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
おみやさん6[再][字]
【第6話】14年前の午前4時半に起きた殺人事件!そのとき目撃証言をした豆腐屋の主人(長門裕之)が、同じ場所・同じ午前4時半に殺された!辺りには豆乳がこぼれていて…!?
詳細情報
◇番組内容
京都鴨川東署資料課の窓際課長・鳥居勘三郎(渡瀬恒彦)が、部下の七尾(櫻井淳子)と迷宮入りした難事件に挑む!
◇出演者
渡瀬恒彦、櫻井淳子、七瀬なつみ、不破万作、林泰文、片桐竜次、小野寺丈、一條俊、相本久美子、菅井きんほか
《ゲスト》長門裕之、田中実、小島可奈子、西興一朗
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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