NHKスペシャル 証言ドキュメント▽永田町・権力の興亡 “安倍一強”実像に迫る 2015.12.27


国会近くに用意したインタビュールームに現れた一人の政治家。
自民党参議院議員鴻池祥肇75歳。
国論が二分する中で成立した安全保障関連法。
やめろ!暴力反対!暴力反対!鴻池は特別委員会の委員長としてその採決の中心にいた。
安保法の成立は必要だったとしながらも混乱の中での採決について複雑な思いをにじませた。
安倍一強といわれる今の政治状況。
総理大臣安倍晋三は政治は安定を取り戻したと胸を張る。
強行採決絶対やめろ!一方で政治の場から議論の多様性や幅広い合意形成が失われたとも指摘されている。
こうした声を安倍はどう聞いていたのか。
かつて日米安保条約を改定する際にもですね大きな国民的な反対運動がありました。
PKO法をですね制定時にも反対運動はありました。
そういう中で今回も反対運動がありましたがしかし私はですね時を経れば日米安保改定もそうであったようにPKO法もそうであったようにですね必ずご理解を頂けるとこのように確信をしていました。
一方対抗勢力となるべき野党は路線対立や分裂を繰り返し多弱の様相を見せている。
安保法の成立そして自民党総裁選。
永田町の攻防の裏側で当事者たちは何を考えたのか。
自民党の中で闊達な議論が行われるべきではないか。
選択肢を示すべきではないか。
そういう世論も強くあったですね。
それに応えられるのが自分しかいないという状況にはかなり苦しんだ事は事実です。
政党政治の神髄ともいうべきね政府と与党とのチェックアンドバランスといいますか完全に崩壊してきていると非常に怖い事だなと。
政局における戦闘能力を考えた場合に最も大切なものは結束であると。
政治は結論を出してこそ政治だと。
当然こうした法案を国会に提出すれば世論の支持はこれはやはり下がってくるだろうと。
必要なものについて行う事はやはりしっかりとまあギリギリまで議論してもですね決める時は決めていくと。
我々の力足らずはこれは否めませんね。
ただ最後はこれ数なんですね。
与党に数を与え過ぎると何が起こるかと。
決める政治によって国民の負託にしっかりと応えていこうではありませんか。
圧倒的な数の力を背景に政策を推し進める安倍政権。
一方で問われたのは決める政治の在り方だった。
説明は全く正しいと思いますよ。
私は総理大臣なんですから。
官邸の下請けをやっているんではない。
戦後民主主義の否定にほかなりません!安保法はなぜ成立に至ったのか。
水面下で進んでいたのは野党勢力の分断。
ただいま総裁選への挑戦を断念致しました。
そして対立候補が現れない自民党総裁選。
万歳!
(一同)万歳!日本政治に今何が起きているのか。
2015年の政治攻防から安倍一強その実像に迫る。
(鐘の音)あの戦争から70年。
以来日本は憲法9条の下武力を行使する事なく平和国家の道を歩んできた。
その日本の安全保障政策を大きく転換する事になったのが安全保障関連法だ。
歴代内閣が憲法上認められないとしてきた集団的自衛権の行使を容認する内容が含まれている。
安保法成立に至る攻防。
安倍がその足場を固める事になったのがちょうど1年前去年12月の衆議院選挙だ。
安倍が訴えたのは経済最優先の姿勢だった。
この選挙は私たちが進めてきた経済政策アベノミクスと呼ばれる経済政策が問われる選挙であります。
経済政策が前面に打ち出された26ページに及ぶ自民党の選挙公約。
外交安全保障について言及した部分は1ページ余り。
この年安倍が閣議決定していた集団的自衛権の文言はなかった。
この選挙で与党は圧勝し衆議院で2/3以上の圧倒的多数を獲得。
安倍は数の力を得た事で安保法の成立を固く決意していた。
選挙によってですね支持を得た政党があるいは与党が責任を持って国民の安全を守っていく命を守っていく。
その責任をですねその任期中に果たしていかなければならないと思っていました。
選挙で大きな勝利を得たこの中でですね結果を出さなければいけない。
このほかの法案と違ってですね何かあってからでは遅い訳でありますから。
政府は今年5月国会に法案を提出。
審議は政府与党のペースで進むかに見えた。
ところがその歯車を狂わせる事態が生じる。
国会で自民党推薦の参考人を含む憲法学者3人全てから「法案は違憲だ」と指摘されたのだ。
自民党にとっては予想だにしない衝撃的な事態だった。
自民党がお呼びをしたですね憲法学者の方が違憲であるというお話をされた事はですね大変影響はあったんだろうと思いますがしかし私たちがですねこの解釈の変更は合憲であると。
確固たる考え方信念でありましたから私たちが動揺したという事はございませんけれども残念ながら世論には大きな変化があったと思います。
勢いづいたのは野党。
法案は憲法違反だとして廃案に追い込む姿勢を鮮明にした。
集団的自衛権はいらないんです。
憲法違反ではないなどという詭弁を言い募る事は断じて許されるものではありません。
違憲という事を浮き立たせるという意味はあったと思います。
これは自民党の総理総裁も含めてずっと国会で言ってきた事が突然一内閣の意向で変えられるという事なんです。
それは大きかったですね。
3人の憲法学者の方々がそろって憲法違反という事を明言された事がまた大きく流れを変えたと。
この国会での成立を目指す安倍と廃案を目指す民主党代表の岡田克也。
このころから水面下の駆け引きが激しくなっていく。
焦点はこの時野党第2党だった維新の党の動向。
岡田は維新の党と連携し反対の世論を盛り上げる事で廃案に持ち込みたいと考えていた。
早速岡田は代表の松野頼久ら維新の党の執行部に連携を呼びかけた。
代表は松野さん途中までは江田さんだったんですけれどもこの2人を中心に維新の皆さんとも話し合いをしてなるべく歩調を合わせていこうという事で。
党の中をまとめて下さいというふうに申し上げてきた訳です。
維新の党は安倍政権の政策に是々非々で向き合ってきた。
民主党との共闘かそれとも対案を出して与党との協議に進むのか。
方針は定まっていなかった。
(取材者)代表だった松野さんの考え方という部分はどういう?正直やはり民主党との歩調を合わせるというのを多少優先をされていたと。
ですから対案を出す事についてはね当初は消極でした。
やはり対案を出すとねやっぱり違憲の安保法制に対する追及の時間がなくなるとかその矛先が鈍るとかそういった議論がありましてですね。
これに対し安倍も動いた。
6月14日。
東京都内のホテルを訪れた安倍と官房長官の菅義偉。
そこに姿を現したのは維新の党の橋下徹と松井一郎だった。
安倍は大阪系の2人との関係を生かす事で維新の党を引き寄せ野党を分断したいと考えた。
安倍は政権に復帰する前から橋下らと度々会談し憲法改正などの主張を共有してきた。
3時間に及んだ4人だけの会談。
一体何が語られていたのか。
当事者たちが明らかにした。
橋下さんはですね新しい世代の政治家だと思いますね。
インターネットも駆使をしながら国民に直接訴えていく。
私は正直申し上げてこの橋下さんの発信力に期待をしていました。
あの時食事をしながらいろんな話をしたのですがその中で橋下さんはですね国民の命や生活を守るための法案においてはですね世論の反応が厳しくても対案はしっかりと出すべきであるとそういう考えを示していました。
野党であればね全て反対して少しでも自分たちの支持率上げようというねそういう姑息な部分があるのでそういうものには我々はね一緒に行動は一切しませんと。
そういう野党的な立場には立ってないですよと。
法案について沈黙を保っていた橋下。
会談の翌日から自らのツイッターで発信を始めた。
「民主党という政党は日本の国にとってよくない」。
その多くが民主党への批判だった。
7月上旬。
政府与党が見込む衆議院での採決時期が近づく中維新の党は対案を提出する方針を決めた。
橋下らの意向を取り入れる形となり安倍の思惑どおり野党は分断された。
(取材者)野党でありながら安倍政権の補完勢力になっているのではないかという指摘もあると思うんですけれども。
それを言っている野党の人たちはただ単に与党に反対した姿を国民の皆さんに示して…。
もう自分たちの保身勢力になってますよね。
我々が補完勢力って批判されるんなら皆さん方もまさに自分たちの保身勢力じゃないですか。
7月15日。
衆議院の特別委員会で行われた法案の採決。
民主党議員は廃案を求めて激しく反対した。
一方維新の党は退席。
法案は衆議院を通過し成立に一歩近づく事となった。
戦争法案絶対反対!
(一同)戦争法案絶対反対!衆議院での採決を受け全国各地で高まったのが法案反対の声だ。
怒りというかとんでもない事をしてくれたもんだなと思ってます。
数の力で全てを通そうとしてるのがあまりにもひどい。
安倍政権の支持率は40%を割り込み第2次政権発足以降最も低い数字を記録した。
その安倍に安保法成立に向け超えなければならないハードルが近づいていた。
9月に迫った自民党総裁選だ。
安倍の総裁任期は9月末まで。
一方国会の会期末は27日で審議に充てられると見込めるのは16日ほど。
仮に対立候補が出るとおよそ2週間の選挙戦になる。
審議が滞り安保法成立に重大な影響を与えると見られていた。
「なんとか再選を無投票で決めたい」。
それが安倍陣営の考えだった。
この法案は何としても必要な法案だと。
昨年の12月に衆議院の解散総選挙を断行しまして国民から圧倒的な議席数も頂いておりますので…。
しかし党内には別の思惑もうごめいていた。
注目されていたのが地方創生担当大臣石破茂の動向だった。
石破茂君。
3年前の総裁選。
石破茂君199票。
決選投票では敗れたものの石破は1回目の投票では安倍を圧倒した実績があった。
法案の審議を巡り安倍政権の支持率が下がる中石破の発言はさまざまな臆測を呼んだ。
「何か自民党感じ悪いよね」っていうそういう国民の意識がだんだん高まっていった時に自民党っていうのは危機を迎える。
国民の理解が進んでるかどうかは各社の世論調査のとおりであってあの数字を見てですね国民の理解が進んできたという事を言い切る自信は私にはあまりございません。
石破に近い議員からは立候補を求める声も多く上がった。
元金融担当大臣の山本有二だ。
石破さんの記者会見の発言等を聞いていましても出る覚悟がだいぶ固まってきたのかなと。
安倍総理に対してしっくり来ないという人たちはいます。
そういうものの吸収っていうのは私は案外政党政治では大事な事じゃないのかなと。
安倍総理も一強多弱だとかあるいは党内で専横をふるうだとかいうようなイメージがちょっと強くなり過ぎてる。
それで石破さんという次のバッターボックスのホームランバッターもいるんだという事が示す事ができる。
(取材者)ご自身のご動向が注目されているなという実感はありましたか?それは日々思ってましたよ。
それは。
それが実感できなきゃよっぽど鈍いんでしょうな。
(鐘の音)7月下旬。
山本は突然安倍から座禅に誘われた。
この時安倍から石破の動向について探られるものと山本は考えていた。
しかし座禅が終わっても一向に口を開かない安倍。
耐えかねた山本が自ら切り出した。
(山本)総理に「石破さんは出ますよ」とはっきり申し上げました。
(取材者)その時の総理の反応はいかがだったんですか?何の…もう目の前にハエが飛ぶ以上にもう何にも微動だにせずというかああそうですかというような感じで驚きもしなければ反応は極めてまあ淡々としたもので…。
返ってきた言葉が逆にこっちがうろたえましたよね。
「石破さんは出ませんよ」って言って…。
「そうですか」って言うしかもう言葉ありませんでしたね。
「官邸は党内の情勢を全て把握しているのか」。
山本は安倍のひと言に言葉を失った。
8月に入ると二階派が署名入りの推薦状を持って真っ先に安倍支持を表明。
安倍再選の流れが一気に作られていった。
立候補しても仮に大敗すれば次のチャンスも失いかねない総裁選。
3年前一度は安倍を圧倒した石破だったが今回は立候補を見送った。
その胸の内を初めて明かした。
本当に決断をしたっていうのは総裁選が告示になる1週間ぐらい前だったかもしれませんね。
(取材者)という事はもう8月の末ごろという?そうですね。
そこはねいつまでもグラグラ迷っていてもしかたがない。
私の中では閣僚や党の主要役員でいる間は出ないってのはそれはずっと変わっていないんです。
ですけれどだんだん誰も出ないっていう状況になってきましたよね。
自民党の中で闊達な議論が行われるべきではないか選択肢を示すべきではないかそういう世論も強かったですね。
それに応えられるのが自分しかいないという状況にはかなり苦しんだ事は事実です。
そこのはざまで懊悩があった事は否定はしません。
一方の山本。
立候補を見送った石破に対し今も割り切れない思いでいる。
石破という人間は外交・防衛の専門家ですよ。
そして自他ともに認める論客ですよ。
戦後政治の外交・防衛の一大事の時に本人にとっても私は政治家としての証しを立てるべきだとそう思ったんですよ。
ええ。
それをパスするというのは安倍総理の方が強いという現実が石破さんという人間の大きなプライドを見事にガラスのように打ち砕いてしまうという事が耐えられなかったのかもしれませんね。
石破の立候補見送りで安倍の「無投票再選」が固まりつつあった総裁選。
しかしこの流れになお挑む人物がいた。
拍手でお迎え下さい。
前総務会長野田聖子だ。
(拍手)それでは乾杯!
(一同)乾杯!総裁選の告示まで残り1週間となった9月1日。
後援者や国会議員を前に立候補の決意をにじませた。
総裁選っていうのはただ与野党のように闘ったり罵り合う場所ではなくてそれぞれの中で育ってきた政策を披露し吟味しそして精査していく場所だと思っているので。
総理が白って言ったら白じゃなきゃいけないっていうようなそんな政党でないはずです。
私はそれすら語れない閉塞感をまずは変えなくちゃって事で必死でしたね。
野田は立候補に備え実はパンフレットを用意していた。
総裁選で訴えたい政策が並んでいる。
その中には安保法成立に向けて突き進む安倍の政治手法への違和感も記されていた。
野田が戦いの舞台に上がるためには立候補に必要な国会議員20人の推薦を取り付けなければならない。
無派閥の野田が期待を寄せたのがリベラル派を自認し40人を超す議員を擁する宏池会だ。
その名誉会長古賀誠。
かねてから安倍の政治手法を批判してきた古賀は野田とその思いを共有していた。
戦後70年の平和を守る事のできた安保についてね180度転換する。
大きな議論を一国会で上げるっていうのは到底私の感覚では考えられない。
政党政治の神髄ともいうべきね政府と与党とのチェックアンドバランスといいますか完全に崩壊してきていると非常に怖い事だなと。
宏池会の歴史は長く1960年所得倍増を掲げて総理大臣に就任した池田勇人に遡る。
池田が政権を担う直前。
国会周辺では岸内閣が推し進める日米安保条約改定に反対する激しいデモが繰り広げられていた。
混乱の中で死者が出る事態となった。
安倍の祖父である岸信介は安保改定を見届けた上で退陣した。
その後政権を担った池田は岸の政治姿勢から大きく転換。
野党との協調や派閥間の利害調整に重きを置いていく。
以後宏池会は軽武装経済重視のリベラル派として存在感を発揮。
自民党政治の主流を担ってきた。
宏池会の前会長でもある古賀。
野田支援のため立候補に必要な推薦人の確保に動いた。
必要な人数をね何人かはね自分なりに確保する必要があれば確保しておきたいと。
私の考えている票の読みの中でもね20ははるかに超すなと。
そういう状況だったと。
ところが野田陣営の思惑どおりにはならなかった。
激しい切り崩しにあったのだ。
その一翼を担ったのは外務大臣岸田文雄。
宏池会の現会長である。
有力な総裁候補の一人とも目されている岸田。
今回は立候補を見送り派閥の議員全員に安倍支持を迫った。
宏池会としての結束。
そして宏池会としてこの戦後70年大切な年においてどう責任を果たすべきなのか。
こういった点を丁寧にお話をさせて頂いた。
(取材者)リベラルな派閥として宏池会の存在感を示すべきだとそういった事についてはどう思われますか?そういったご意見も頂きました。
派閥において大事にしなければならないものそれは一つは政策だと思います。
そしてもう一つは政局であると。
すなわち政局における戦闘能力かと思います。
この2つがあってこそこの派閥政策集団は自らの政策を実現する事ができると。
総裁選挙においても宏池会が結束を示す事こそ宏池会が戦闘能力を持っているという事の表れになると考え対応致しました。
切り崩しの現場を野田自身も目の当たりにした。
私の推薦をして下さった方には私とずっと一緒にいて下さったんですけどずっと電話かかってましたね名だたる方たちから。
そういう電話がかかってきたのをあなたも聞きなさいという感じでどういう事をおっしゃってるか全部聞かせて頂いて。
てんびんにかけたら分かるでしょみたいな…。
もうね安倍総裁が勝つの分かってるんだからわざわざ野田を…そんな酔狂な事をしなくてもいいんじゃないですかみたいな。
(取材者)長官は野田さんの陣営に対してはどういった動きをされていらしたんでしょうか?まあいろんな事を言われてますけど私はただ注目して見てるだけだったです。
安倍への対抗勢力が結集されない今の自民党。
その背景として指摘されているのが党の変質だ。
(歓声)きっかけは小泉純一郎。
2005年の郵政選挙では執行部の方針に反対した候補者に公認を与えず更に刺客と呼ばれた対立候補を擁立。
造反議員を次々と落選に追い込んだ。
郵政民営化に反対し公認を得られなかった野田。
頑張ります!頑張ります!頑張ります!無所属で立候補し辛くも勝利した。
(拍手)小選挙区制が導入されて20年。
野田は公認権を握る党執行部に異を唱えにくい風潮が強まっていると感じている。
全国津々浦々自民党であれば同じ意見を言うような政党政治に変われっていうのが小選挙区だったんでそれ自体はまあある訳ですよね。
ただ同じ意見に持っていくためにやっぱり民主的な議論時間をかけたり時には一国会超えるぐらいの党内でのやっぱすごい議論っていうのが前提だったはずだけどそれが実は党の公認権なんかが一部の執行部が持ってるって事を議員たちが思ってしまってそういう人たちが嫌がる事を言うと意見を言うと何か嫌な目に遭うかもしれないっていうそういう心理がすごくやっぱまん延してきたのかなと思います。
頑張ろう!
(一同)頑張ろう!結局党内7派閥全てが安倍を支持。
野田は推薦人を集められず立候補を断念した。
(拍手)安倍!安倍!安倍!当初のねらいどおり安倍は選挙戦を回避し無投票での再選を果たした。
(安倍)9か月前に大きな民意を得て成立をした第3次安倍政権であり今回はですね一致結束して継続は力でもあり9か月前に約束した事を果たしていく事が重要だろうと。
多くの議員の皆さんは…。
今は権力闘争をしている時ではないとそういうお考えだったのではないのかなと思います。
その意味においては大変重要な法案を審議をしている最中でありますから私にとっては平穏な形で総裁選挙を終える事ができた事は本当によかったと思っています。
政治の幅の広さ多様性は大切にしたいと思います。
一方で政治は結論を出してこそ政治です。
最後はしっかり結論を出せるからこそ評論家や学者の方々とは違う。
これが政治だと思っています。
安倍の無投票再選に終わった総裁選。
古賀はリベラル色を掲げた民主党に政権を奪われた経験も安倍への対抗勢力が結集されない背景にあると分析する。
やっぱり下野した事に対してね自由民主党の政策そのものがね大きくね保守色を強くせざるをえなかった。
イデオロギー的なものが先行して国民政党としての一番大事な白と黒右と左両極端なものは常に変わりませんけれども真ん中のグレーゾーンのところが大事なんですね。
ここをつかみ取っていない。
だから国民政党に程遠くなってきているという事が言えるんじゃないかと。
自民党もこれだけ活力を失ったかと。
極めて深刻な党の状況だなと率直に思いますね。
今の自民党を連立のパートナー公明党代表の山口那津男はどう見ているのか。
今の内閣は非常にリーダーシップの強い内閣だと思いますね。
選挙制度の下で野党も経験した中でやっぱり自民党としてのその対応というのは皆さん知恵を巡らせて悩みながら対応されているんだろうと思います。
自民党は大きな政党議員の数も多いですからやっぱり多様な民意がある事に直面してるはずです。
ですからそれをきちんと受け止めてその政権運営の中に反映させていくという努力はもっと活発であっていいと思います。
会期末が迫った9月中旬。
安保法案の審議は参議院で大詰めを迎えていた。
この国会での成立をあくまで目指す安倍。
しかし審議は度々紛糾。
野党の攻勢が強まっていた。
後ろの声が大きすぎてね大事な声が聞こえないの。
委員会の運営を任されていたのが参議院自民党の重鎮鴻池祥肇。
鴻池は法案を成立させる自らの使命を強く意識していた。
一方で野党の主張にも十分耳を傾けながら丁寧な審議を進めたいとも考えていた。
我々参議院は衆議院の下部組織じゃない。
官邸の下請けをやっているんではない。
健全な野党と…その健全な野党が少し体たらくになってくれば特に参議院はしっかりと衆議院の拙速を戒める。
あるいは足らざるを補う。
それから対立してるけれども参議院はできるだけ合意形成に持ってくる。
これ非常に重要な役目だと私は思ってね。
審議が続く中鴻池は官邸にある菓子を届けた。
きっかけとなったのが総理大臣補佐官のこの発言。
この発言は法治国家を否定するものだと野党の強い反発を招いた。
鴻池が送った菓子は官邸に強い抗議の意思を示すものだった。
腹切らせって言って今切らせた方が格好いいぞと。
よう切らせへんのよねみんなね。
だから仲よし官邸団と私は言うんです。
よくありません。
もっともっと厳しい人を中へ入れないと。
一方衆議院の幹部からは野党に配慮した鴻池の委員会運営に対し焦りの声も上がり始める。
幹部が口にしたのはいわゆる60日ルールだ。
法案が参議院に送られたあと60日たっても採決に至らない場合衆議院の2/3以上の賛成で再可決すれば成立するという憲法上の規定。
ただ参議院の存在意義が問われかねないとして異例の手段とも見なされていた。
これは避けなきゃいかんと思った。
政治全体が一番大事な信をなくすという事ですから。
「信なくば立たず」という言葉がありますがねこれはやっぱり避けなきゃいかんと。
どうしても避けなきゃいかんと。
総理は議論する事は当然大事な事だけども決める時は時期が来たら決めるという。
そういう姿勢でこの法案については私たちは見てました。
こうした中採決に向けた環境が官邸によって整えられていく。
少数野党3党の主張を一部取り入れる事で合意。
与党単独採決との批判をかわしうる状況が作られたのだ。
採決のタイミングを図っていた鴻池。
最後の決め手となった出来事が起こる。
横浜での公聴会から国会に戻ろうとした車内。
そこから見た光景だ。
強行採決絶対反対!採決に反対する市民が路上に横たわり車の行く手を遮っていた。
これ以上審議を長引かせれば不測の事態が起きかねない。
鴻池はそう考えたという。
(鴻池)私はね学生時代ちょうど60年安保の時学生だったんです。
女子学生が踏み殺されたと。
騒然となりましたよ日本中が。
だからそれに近い状況に見えた。
これはもうけが人死人が出ては困る。
大事な日本の国の事を考える中でね死人が出るけが人が出るという事は避けなければならないと。
これも委員長の責任であるとこう思いました。
そして9月17日。
鴻池は採決に踏み切った。
戦後日本の安全保障政策を大きく転換する重要法案。
怒号と混乱の中での可決だった。
暴力反対!暴力反対!押すなよこの野郎!押すな!押すなっていうんだよこの野郎!委員長いいんですか?それで!
(鴻池)野党の意見というものを本来もっと耳を傾けるべき事があったかもしれない。
一強強くなってね政治においてですよ…国はあんまりよくならないと思うな。
しっかりした反対勢力がいないと。
いけいけどんどんはいはいどんどん拍手だけ送ってるというような状況は必ず腐ってくる。
腐りますよ。
権力は腐る。
大きな権力ほど早く大きく腐りますよ。
(取材者)決める政治という評価がある一方で異論に耳を貸さないといった一部意見もありますけれども。
政治のあるいは総理大臣の責任とは何かそれを考えるとですねやはり決断を下す事なんですね。
それを人に丸投げしたりあるいは国民の皆さんに投げる丸投げしてはならないんだろうと思います。
たとえ批判があろうとも考え尽くした結果現在と未来を見据えて判断を下していく事こそが私はリーダーの責任だろうと思います。
自民党総裁選での無投票再選。
そして安保法の成立。
永田町の攻防は安倍一強を強く印象づけた。
一方でそれに対抗する勢力を結集しようとする野党の動きも始まっている。
きっかけは共産党が打ち出した戦略の転換だった。
委員長の志位和夫はこれまでの「全ての選挙区に候補者を立てる」という基本方針を見直す事を宣言。
野党共闘のため安保法成立の前からひそかに考えていた構想だった。
これはお盆の頃からいろいろ考えました。
もちろん政党ですから最後まで廃案のためにありとあらゆる知恵と力を尽くすと。
そのためにも野党がばらばらでは駄目だと。
一つにまとまって結束しなくちゃ駄目というこの声はですね痛切に私たちに寄せられました。
ですから私たちそれを聞いてこの声に応えなかったら野党としての責任果たせないなと。
更に今月民主党と維新の党は年明けから始まる通常国会に向けて衆議院で統一会派を結成した。
この巨大与党を許すのかそれとももう一つの軸をしっかりと我々立てますからこの民主党を中心としたこの野党勢力そこに力を与える事でもっと健全な国会での議論とか国民の声に対して耳を傾ける政治というのは実現しますから。
勢力結集に向けた両党の話し合いは半年前から重ねられてきた。
民主党の岡田に対し維新の党の江田憲司は強い調子で決断を迫ったという。
是非岡田さん清水の舞台から飛び降りてね…。
やはりお互いが古い殻を打ち破ってね一つになるんだというねやっぱり覚悟気概を示さなければとても国民の皆さん今の野党に振り向いて頂けません。
それをやったところで振り向いてもくれないような危機的な状況ですよという事をね私は岡田さんに申し上げた。
多弱と呼ばれる状況を克服できるのか。
野党再編への模索が続いている。
2015年安保法を巡って大きく揺れた永田町。
来年2016年の政治はどう動くのか。
夏に行われる参議院選挙を視野に激しくなる民意の奪い合い。
安倍は再び経済最優先を掲げて動き出した。
アベノミクスは第2ステージへと移ります。
目指すは一億総活躍社会であります。
税制改正の焦点となった消費税の軽減税率を巡っては官邸が自民党内の異論を押し切る形で決着。
参議院選挙での協力をにらみ公明党の主張を重視した結果だった。
一方で沖縄の基地問題や原発の再稼働など世論の賛否が大きく分かれる政策も推し進めている。
こうした中野党でありながら野党連携とは距離を置く勢力にも新たな動きが見られる。
(取材者)今後はどうされていくのか?大阪市長を退任したばかりの橋下と安倍は再び会談。
関係の深さをうかがわせた。
戦争法制絶対反対!一方今も続く「安保法反対」の声。
野党はこうした反対運動を行う市民グループとの連携も模索している。
協力を深めながら来年の参議院選挙で野党候補の一本化を目指している。
野党の顔をしていても憲法改正など積極的に自民党と与党と同じ行動をとる。
そういう野党もありますから2/3とれば憲法改正にいきます。
この参議院選挙でしっかりと歯止めをかけて次の総選挙でもう一回政権交代する。
そのために重要な選挙だと思っています。
私は野党時代の3年間当時の政権を見てきて判断を下せないあるいは下さない。
これがいかに国民に大きな損失を与えるか本当に肌で感じていました。
その中で十分に考え抜いた結果かつ議論を重ねた結果ですね判断すべきものは私の責任として判断をしなければならないと思っています。
安倍一強を巡りさまざまな駆け引きや攻防が続く永田町。
日本政治はどこへ向かうのか。
その選択は私たちに委ねられている。
2015/12/27(日) 21:00〜22:00
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル 証言ドキュメント▽永田町・権力の興亡 “安倍一強”実像に迫る[字]

「安倍一強」とも呼ばれる状況になっている日本政治。安全保障関連法の攻防、自民党総裁選でのせめぎ合いなどの舞台裏に政治家たちの証言で迫り、日本政治の行方を探る。

詳細情報
番組内容
戦後70年の節目を迎えた2015年、日本政治は「安倍一強」とも呼ばれる状況になっている。その状況は、なぜ、いかにして生まれ、何をもたらそうとしているのか。国論を二分する中で成立し、最大の政治テーマとなった安全保障関連法をめぐる攻防、そして無投票に終わった自民党総裁選の水面下でのせめぎ合い…。今年の政治をめぐる「攻防・葛藤・決断」のドラマを政治家たちの証言から浮き彫りにし、日本政治の行方を探る。
出演者
【語り】豊原謙二郎

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ニュース/報道 – 政治・国会
ニュース/報道 – 報道特番

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