「アートシーン」です。
今日は「日曜美術館」放送開始40年を記念して始まったキャンペーン「みつけよう、美」についてお伝えします。
このキャンペーンは全国100以上の美術館と協力しましてさまざまな名作の魅力をより深く皆さんにお伝えしようという試みなんですよね。
20年30年当時の映像を見ているとそれぞれの時代感というのがしっかり写っているのが今見るととても新鮮な驚きを感じられますよね。
あと作家が自ら動きながら語っていく姿に出会えるというのがこの「みつけよう、美」の醍醐味だなって感じます。
そうなんですよね。
このキャンペーンではまさにNHKの美術番組がこれまで長年撮りだめてきた映像を活用しまして各地の美術館の所蔵品の魅力を深くお伝えしています。
それでは「みつけよう、美」ご覧下さい。
キャンペーンでは全国各地の美術館で所蔵作品とその作品にまつわる映像を一緒に展示しています。
その中から3つご紹介しましょう。
まずは…地元出身の日本を代表する彫刻家舟越保武が作品に用いた秘策を明かします。
(石を彫る音)
(舟越)もうほとんど出来てる。
これでいいようなもんですけどこれから細かい手品みたいな仕事がね。
それがあの…出来上がってからそれが自分で楽しみなんですね。
ほとんど分からないけどある光を当てた時にちらっとこう…陰りと言いますかね。
少〜し陰がチカッと動くようなそういう仕掛けをこれから砥石を使ってねこんなとここう少〜しやるんですよね。
これどうも冷たい色だなと思って。
ちょっとネズミ…グレーだけども青っぽい感じがありますよね。
(斉藤)そうですねちょっと。
なんか冷たいもんだから何とかしなきゃならないと。
仕上がってから見たらそばに飲みかけの紅茶があったんです。
それがもう何日も置いてあってだんだん濃縮されて濃い紅茶になってるんです。
それを塗ってみたんですよね試しに。
そしたらああなった。
(笑い声)
(舟越)学生たちにはこれは秘密だと言って。
でも結局白状するんですけども。
こういうものでもこうちょっとさびがありますね。
こういうとこへやすりをかけると赤いさびの粉が。
それをこうほっぺたにこうなすりつけるの。
(斉藤)ああ〜…。
それだけで本当にねあれもそうなんですが赤い色じゃなくて鉄さびがほっぺたと唇にちょっと付いてるだけなんですよね。
(斉藤)それは手のひらで擦り込む?
(舟越)汚すっていうか全部同じ均一じゃなくて出っ張ったとこが少し汚れたのが自然ですわねものがあるっていう事は。
実在感みたいなものが…感じられますね。
福井に生きた前衛芸術家小野忠弘。
大胆な抽象画や廃品を活用したジャンクアートが生まれる現場の記録です。
(小野)わぁ〜っと!
ストーブ一つない冷えきったアトリエ。
メリケン粉をまぶした白絵の具をキャンバスに投げつける。
画家の気迫がアトリエにみなぎる
よいっしょ!
福井県三国町に住む小野忠弘さん74歳。
彼は戦後の現代日本美術を代表する前衛画家として国際的にもその名が知られている
よいしょっしょっ!よいしょ!よいさぁっ!しゃっ!
(小野)アントニオーニの映画なんてな5〜6人しか入ってなかったよ。
俺毎日幸福だよ。
ここで野良猫のツラ見てても。
嫌われてるけどね。
見てて面白いよ。
こんな面白いものが世にあろうかと思って。
小野さんは毎朝近くの越前海岸に出かける。
岩肌にくっつくフジツボをはじめ岸に上がった流木やウキなど気に入ったガラクタを拾い集めてくる。
それらのものたちが小野さんの作品の重要な素材となる
このロープがいいやな。
これ。
ハハハハハッ!
海岸をあさったあと毎日のように近くの廃品回収業の店に顔を出す。
小野さんとこの店の主人とはもう20年来の友達である
(小野)なんか変なものに対する興味があるね。
ああいうものはねなんかこう…大変キラキラと僕のハートをね揺すぶるね。
人間が使い古して捨てられていくようなものに対するね。
これはまあ廃虚感覚とつながるだろうけどね。
その廃虚感覚僕らが今住んでる下に長年の歴史があると思うんだよね。
縄文あるいは石器時代とか。
それからミゼラブルなものが好きだね。
貧乏くさいものが好きだね。
まあ僕らも貧乏くさかったんだけどさ。
暗くってねなんか陰惨な生活をしてるみたいなね。
そういうものの中にちょっと紛れ込んだ生活してみたいって気持ちはあるね。
「貧しき者よ幸いなれ」って言葉。
僕は非常に適当な言葉だと思うな。
最後は…国宝の志野茶碗にまつわる物語です。
国宝志野茶碗「卯花墻」。
三角に歪めた口には緋色がすばらしい発色を見せています
白い釉薬の下からは力強く描かれた四つ目垣が浮かび上がります
高台を削ったへらのリズムの見事さは他に例を見ません
釉薬をかけた時の陶工の指の跡も面白みを増しています
志野茶碗の中でも第一の名作です。
卯の花が咲いた垣根のようだという銘には片桐石州の歌が添えられています
美濃焼の作家である加藤卓男さんの工房を訪ねました
ろくろできれいに整えた形をわざわざひねったりへらで削って歪ませていきます
なぜこんな手間をかけて崩していくのでしょうか
この志野という材質土薬ですね。
これは非常にぼてっとしたですね中国や朝鮮の焼き物とは違う材質感があるわけですね。
そういう材質に合わせるにはですね形がこうきちっとした成形ではなしに歪んだ方がこう…うまく合うそういう点があるんではないかと。
この二つを私は考えておるわけですけどね。
例えばろくろでまっすぐに作りますわね。
そのまま釉薬をかけますとねやっぱり何となく志野のムードってのが出ないんですねやっぱり。
妙な感覚的な問題なんですけども。
歪んでみるとやっぱいかにも志野という感じ形と材質感の調和というものがねうまくいく。
そういう事を私は考えるわけです。
志野が生まれた時代新しい桃山文化をリードしたのはわび茶の発想でした
室町時代のお茶が広い書院で唐物を集めて楽しまれたのに対しわび茶は小さな草の庵が舞台となります。
千利休が建てたという待庵は広さ僅か2畳。
壁も粗壁がそのままむき出しになっています
茶室の変化に伴って茶道具もそれまで珍重された中国製のものから日本のものに変わっていきました。
それも完全な形をした天目茶碗よりむしろいびつに歪んだものが喜ばれるようになったのです。
利休の高弟山上宗二は次のように書き残しています。
「総じて茶碗は唐茶碗廃り当世は高麗茶碗瀬戸茶碗今焼の茶碗なり。
なりさえよくそうらえば数寄道具なる」
志野はそういう新しい流れの中で茶道具として取り上げられていったのです
このキャンペーンの映像は放送でも紹介しています。
ではまた次回。
2015/12/27(日) 20:45〜21:00
NHKEテレ1大阪
日曜美術館 アートシーン ▽日曜美術館40年「みつけよう、美」第五回[字]
今年、放送開始40年目を迎えた日曜美術館。それを記念して「みつけよう、美」と題したキャンペーンを展開。貴重な映像記録を活用した取り組みを紹介します。
詳細情報
番組内容
日曜美術館は1976年に放送が始まりました。放送開始40年を記念し、今年「みつけよう、美」と題したキャンペーンを展開しています。全国100を超える美術館とコラボレーションし、さまざまな名作の魅力を、番組が記録してきた貴重な映像で紹介します。今回のアートシーンでは、3つの美術館の所蔵作にまつわる懐かしい映像をお届けします。
出演者
【司会】井浦新,伊東敏恵
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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