猫のしっぽ カエルの手・選「山がくれた絆(きずな)」 2015.12.27


京都市の北東山あいにある大原。
11月の終わりここ大原から季節は変わり始める。
里では軒先から冬支度。
この時期朝は零度近くまで冷え込む。
ベニシアさんの庭も静かな時を刻んでいる。
ここで暮らし始めて13年。
ベニシアさんが毎年楽しみにしているのはゆずの収穫。
うん。
このゆずの匂い。
なんかきょうゆず風呂入りたいなぁ。
ベニシアさんが越してくる前からあったゆずの木。
今年は当たり年だった。
すごいたくさん今年。
去年は休みだったから。
植物休むよね不思議な事。
豊かに実った今年のゆず。
何に使おうかと心が弾む。
薪ストーブの柔らかな暖かさが心地よい古民家のキッチン。
ゆずきれいやなぁ。
ベニシアさん取ってきたばかりのゆずの果汁をしぼる。
うん。
匂いがすごい。
きょうは結婚記念日ですから山登ります。
山で結婚式したからだから毎年その日に登りに行く。
17年前南アルプスで結婚式を挙げたベニシアさんと正さん。
以来結婚記念日のある11月はいつも2人で山登りをする。
たっぷりとすりおろしたショウガをお湯にいれポットの中でゆずの果汁とハチミツを混ぜ合わせる。
体が芯から温まるホットゆずを山に持っていく。
ハチミツすごい正好きですよ。
ちょうどいい。
うんおいしい。
夫の正さんも土間で準備中。
山岳写真家の正さんはプライベートで山に行く時もカメラを欠かさない。
まだ気温が上がりきらない朝8時。
家を出発。
なんか山がきれい。
山に囲まれた大原。
だから2人はこの地に越してきたのだ。
きょうは大原の西側にそびえる金毘羅山を歩く。
何度も家族で登った山。
2人は迷いなく歩いていく。
山は針葉樹の緑と広葉樹の色づいた葉が美しいコントラストを描いている。
ベニシアさんきょうは正さんと一緒にクリスマス飾りの材料を探す事にしている。
この時期金毘羅山はまさに宝の山。
なんかタッシー実がある。
あれ何や?柿?
(正)何やろ?なんか柿みたいだけど…。
あっ柿みたいね。
形がちょっと変わってるかもね。
ああ。
あヒイラギある。
ヒイラギ欲しい。
トゲのある葉が欧米でも日本でも邪悪なものを払う厄よけのシンボルとして使われる。
私欲しい。
リースに入れる。
ちょっとだけじゃ葉を頂いて。
うん。
きれいなとこ取ったら。
事前に山の管理人さんに許可をもらったベニシアさん。
少しだけ頂く事に。
日が昇り始めると歩いているうちにだんだんと体が温まってくる。
あ!タッシー赤い実あったよね?あそれ?うん。
うわっ。
転ばないでね。
いっぱいある。
赤い実をつけたシロダモ。
クリスマスの飾りにピッタリ。
先の方が…。
ちょっと…。
僕写真撮るからゆっくり取ってゆっくり取って。
速すぎるんだよねいつも。
はい。
これ取ります。
(シャッター音)
(シャッター音)それ食べてみて。
え〜おいしい?ちょっと1個1個。
食べてみる?鳥さんの気分で。
鳥さん食べるんなら私たち食べてもいい。
苦い?苦くないけど全然うまくない。
(笑い)見つけた!見て。
わぁ〜やっとよね。
もう無いと思った。
結構たくさんあるよ。
このぐらいあったら…。
でもちっこいな本当に。
いやかわいいのよちっちゃいの。
リュックの後ろに入れようか。
うん。
はい。
はい。
2人でたわいのない会話をしながらの山歩き。
何気ない時間。
けれどもベニシアさんにとっては大切な時間。
ベニシアさんが正さんと出会ったのは18年前。
山岳写真家として歩み始めたばかりの正さんはちょっと無口な9歳年下の青年だった。
ベニシアさんは正さんと山歩きをして山の魅力を始めて知った。
日本語の読み書きができないベニシアさんの文章を以心伝心で翻訳し誰よりも美しくベニシアさんを撮影してくれる正さん。
今では公私ともに掛けがえのないパートナーだ。
岩だよこっから。
うん。
怖い怖い。
転げ落ちないように気をつけて。
フフフ。
歩き始めて40分。
この先が2人の一番のお気に入り。
景色いいね。
きょう京都見えるよ。
京都…あホント!森を抜けて大きな岩場に出る。
結構見えるじゃん。
ねっ。
薄曇りやのに。
ねっ。
ここは金毘羅山で唯一大原の里が一望に見渡せる場所。
今年も一緒にこの景色を眺める事ができた。
なんか飲みたい?あなたのために作ったの。
ウフフフフ。
あなんか柑橘系の味。
ゆずとショウガとハチミツ。
うんうまい。
おいしい?うん。
あ…おいしい。
パン。
バナナのパン。
おっ。
これでパンだからバター入れた。
いただきま〜す。
これから先もずっとこんなふうに結婚記念日を祝っていけますように。
おいしいよ。
うん。
なんか力が出てきた。
おなかが減ってたし。
おいしいよね。
山登ったらしんどいけど。
うん。
一番上へ行ったらめったに見えない景色見えるでしょ。
うん。
だからそれがすごいご褒美みたいで。
ベニシアさん山を登るように正さんとの人生を歩みたいと考えている。
ベニシアさんと景色を眺めた金毘羅山の岩場。
正さんはふだん全く違うアプローチをしている。
あ!吉田さん木澤さん。
もう来てた?きょうは山仲間と息子の悠仁くんと一緒にロッククライミングの練習。
まずは正さんが挑戦。
実は金毘羅山。
京都ではロッククライミングの名所として知られている。
特にこの岩場は京都国体のコースにもなった場所。
垂直に近い岩場を着実に登っていく正さん。
九州長崎県で生まれ学校の先生からは正ではなく悪と言われるほどヤンチャだった。
昆虫採集が好きで野山を駆けまわっていた。
虫取りで自然の中に入るのに自然の中は気持ちがいいとか自分に合っているというふうに思うようになったんだと思います。
大学で油絵の勉強を始めたものの自分の道ではないと気づき2か月で中退。
その後8か月にわたりインドネパールを放浪。
しかし自分の生き方を見つける事はできなかった。
帰国後24歳で京都にインド料理の店を開く。
今はオーナーになっているが当時は内装から料理まで一人で店を切り盛りしたと言う。
この店が正さんとベニシアさんの運命を決めた。
カレー屋をやって1年ぐらいたった時に振り返ったら1年間何してきただろうかとか振り返ったら好きでやってる山登りの事しか覚えてないんです。
山登りって1週間に1回しか行かないのにあの時何やったかなぁとか思ったら山の思い出だけは思い出されて休みの日に山行った時はすごい解放的な気分になれてうれしくて山行った時は写真も撮ってたんですねそれは記録のために。
その頃店の客として出会ったのがベニシアさんだった。
正さんはふと相談してみた。
「本当は山岳写真家の仕事をしたいんだ」と。
彼女が「営業した事あるの?」って聞いて。
「え!営業なんかした事ない」って言ったら「あなたがどんな写真撮れるか誰も知るわけないのに仕事が来るわけないやん」って言われて。
「まず営業じゃないの」って言われて思いきって出版社に営業に行ったんですよ。
そしたら仕事がすぐに来て仕事は入るようになりましたねとりあえずは。
正の写真はコンテストに次々と入賞。
今では山岳写真家として世界各国の山にアタック。
執筆もし評価されている。
しかし正さんは2年前滑落事故に遭い生死をさまようほどの大けがをした。
それでも山登りをやめる事はなかった。
まぁ山の中にいる事自体好きなんですけど。
上がっていく時に壁にふさがれてそれでそれを越えて向こうの扉が開くというかそれの繰り返しだったんですけど。
その扉が開くのが面白くてけがをしたから途端にやめるとかそんなのないですね。
山に登りながら人生の壁を越えてきた。
息子の悠仁くんはそんな父の姿を見て育った。
どうもありがとうございます。
悠仁登れるかな?え!絶対やるの俺?小さい時から何度も二人で山に入った。
けれどもロッククライミングは手ごわい。
父さん。
登れる気しぃひんよ。
いやぁきょう一日かかるかもわからへんや。
(悠仁)アハハハ1日かかって…。
腹を減らすのにいいよ。
フフフ。
おっうまいやんか。
そこまで行ったやん。
よっしゃオッケーオッケー。
膝のあたりにのせる。
山に登る事は自分と向き合い自分と闘う事。
その先にあるものを見つけてほしい。
我慢我慢頑張れ!我慢せい!我慢せい!もうちょっと右の…。
そこそこ!
(悠仁)これやな。
オッケーオッケー。
ナイス!ナイス!正さんは言葉でない方法でその思いを悠仁くんに伝える。
ヨッシャ!オイショ!でどうすんのこれ?
(正)ぶら下がっていいよ。
フ〜。
(正)ご苦労さん。
お疲れ!ハ〜疲れた。
疲れたよな。
はい頑張った。
お疲れ〜。
共に山に登る事で家族の絆は強くなっていく。
「山男に惚れるな」という日本の歌があるけれど「私は正と出会って本当に幸せ」。
ベニシアさんはいつも言う。
クリスマスまでもう少し。
ベニシアさんにとってクリスマスとは家族とともに過ごす大切な時間。
だから準備も楽しみながら。
きょうは庭のハーブを使ってリースを作る。
きょうはハーブリースを作るんだけど。
全部後で使う事ができるもの。
だからクリスマスが終わってもそのまま置いといたらハーブが欲しい時リースから取ればいいし。
はい。
じゃ今度タイムを入れます。
10年前庭のハーブでリースを作ろうと思いついたベニシアさん。
料理に必要な時すぐに使えるから一石二鳥。
すごい辛いかもしれない。
ハーブリースのポイントはハーブを新鮮なまま保つために生け花用のスポンジをリースの芯に使うこと。
幅15センチ長さ1メートルの金網でスポンジを包み針金で縫っていくようにして固定する。
これ大変ですよ。
結構大変。
ヨイショッ。
スポンジは水を含ませると軟らかくなるので1分ほど水につけておく。
軟らかくなったら円形にして両端を針金で留める。
そしてつるすためのフックを付ける。
私あんまり器用じゃないから皆さんはもっと器用にできると思うよね。
よし。
さぁこれから楽しいこと!ここから先は生け花のようにスポンジにハーブを挿していく。
これ全部カバーしないとあかんだから短いやつは中とか…。
でもなんかねこういう事するとなんか自分のお母さんがやったクリスマスを守ってる気分になるから。
自分の新しいアイデアも考えて。
クリスチャンではないけれどクリスマスは家族の思い出を紡いでいく大切な行事。
タイムはシナモンと小さなブーケにする。
最後にお気に入りのリボンで飾って出来上がり。
はいこれで出来ました。
庭のハーブで作ったオリジナルのクリスマスリース。
爽やかな香りが部屋中に立ちこめる。
そして正さんと山で取ってきた材料はスワッグと呼ばれる玄関の飾りに使った。
タッシー!はい。
ごめん。
ちょっとこれ重たすぎるわ。
12よし!日が暮れるのが早くなった。
1日歩いて疲れた足。
正さんベニシアさん特製のハーブオイルを使って筋肉をほぐす。
ハーブの優しい効能は山を歩く正さんにとって欠かせない。
ベニシアさんはお風呂の準備。
家を改築する時お風呂をガスと薪両方使えるようにした。
このお風呂は一番贅沢かもしれない。
木であったまると熱さが違う。
どういうわけかな。
不思議だわね。
薪で沸かしたお風呂に入れば眠りにつくまでポカポカ。
そしてきょうはこの時期だけのお楽しみのゆず湯。
心も温まる。
2015/12/27(日) 18:00〜18:30
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手・選「山がくれた絆(きずな)」[字]

冬の装いを始めた京都大原。ベニシアさん、毎年結婚記念日には夫の正さんと夫婦水入らずの時間を山で過ごす。ローズマリーとタイムでクリスマスハーブリースを作る。

詳細情報
番組内容
冬の装いを始めた京都・大原。庭の植物たちの防寒対策をするベニシアさん。クリスマスに向け、ローズマリーとタイムをあしらったハーブリースを作る。山で結婚式をあげたベニシアさんは、毎年の結婚記念日には夫・正さんと山登りをする。夫婦水入らずの時間を山で過ごす。仕事で家を空けることが多い正さん、息子・悠仁くんと久しぶりのロッククライミングに出かける。正さんは山から学んだ経験を、遊びを通じて息子に伝えている。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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