デジタルカメラの普及に伴い、写真を撮り、撮られることが私たちの生活の一部になりました。しかしその反面、身近すぎるためか、写真のことについてあまり深く知ろうとしていないのではないでしょうか。本展はアーティストたちが写真というメディアを使いどのように表現するのかを見ることで、「写真」について、また写真と切り離せない関係にある「時間」について考える機会となります。
生と死を見つめる時間
本展は、「そこにある、時間」というタイトルが示すとおり、時間概念を表現する作品が4章の構成で紹介されています。
1章「時間の露出/露出の時間」。写真がどのようなメディアなのかを示す作品を紹介
2章「今日とは過去である」。写真の記録性、過去の時間がテーマとなる作品を紹介
3章「極限まで集中した時間」。シャッターを切る瞬間、現在を捉えた作品を紹介
4章「私の未来は夢にあらず」。未来のビジョンが託された作品を紹介
中━━シリン アリアバディ 車中の女たち1 2005(上段) 車中の女たち2 2005(下段) いずれも 70×100cm Cプリント
右━━ゾーラ ベンセムラ ケニア 2008(上段) アフガニスタン 2009(下段) いずれも 61×85cm Cプリント
展示風景撮影=木奥惠三
中━━曹斐(ツァオ フェイ) 自分の未来は夢にあらず 02 2006 120×150cm Cプリント
右━━ハサン&フセイン エソップ 南アフリカ・ケープタウン(バリエーション) 2009 64×92cm インクジェットプリント
展示風景撮影=木奥惠三
今の一瞬がカメラにより切り抜かれ、記録されることで過去が目の前に表れ、希望が託された姿に未来を見る。各章ごとのテーマが展示された作品に触れることにより、改めて私たちの生きる時間概念を色濃く感じ取ることができます。そして、それは生き死にを見つめ直すことに他ならないのかもしれません。
また、過去・現在・未来を写真作品として切り取る行為は、写真というメディアの特徴を再考するきっかけを、与えてくれます。
被写体と撮影者の間にあるもの
さらに約40組の出品作家の国籍が多岐にわたっていることも、本展の特徴です。アフリカやアラブ、東欧など日本で見る機会の少ない作家の作品を見ることができます。様々な文化的背景を持つ作家たちが、現代美術にそれぞれどう向き合っているのかを発見することができるでしょう。
写真とはなんなのか。なぜ私たちは写真を撮るのか。時間と文化的背景、という二軸において多様な作品を眺めるなかで、被写体と撮影者の間にある絶対的な距離を感じ、ふとそのような考えを巡らせる、展覧会です。
会場:原美術館
住所:東京都品川区北品川 4-7-25
電話番号: 03-3445-0651
開館時間:11:00〜17:00(祝日を除く水曜は20:00まで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日:月曜日
URL: http://www.haramuseum.or.jp