地球ドラマチック「ビーバー大活躍!よみがえる水辺」 2015.12.26


北アメリカやヨーロッパの森林地帯に生息するビーバー。
近年科学的な調査によってこの水辺の動物が森の生態系にとって重要な存在である事が分かってきました。
ビーバーは乾いた土地に水をもたらし周囲の環境を変えます。
鋭い前歯で堅い木も切り倒します。
かつて厄介者として嫌われていたビーバーが特殊な能力のおかげでヒーローとして見直されようとしています。
私たちのために働いてくれるんですよ。
水辺を守るビーバーの特殊な能力に迫ります。
ビーバーはげっ歯類というネズミの仲間。
成長すると体長は1m以上にもなります。
森に生息し木の皮などを食べ水辺に巣でもあるダムを作ります。
ビーバーは水中での生活に適した体をしています。
後ろ足には水かきがあり水中を自在に泳ぐ事ができます。
鼻と目と耳は水面から出るように頭の上の方についています。
まるで潜水艇のように水に潜ります。
鼻と耳の弁が閉じ目には透明な膜が張り水中眼鏡のように目を保護します。
大きくて平たい尾をヒレのように動かし素早く移動します。
ビーバーは水をせき止めてダムを作り周囲の環境を自分たちのためにつくりかえます。
このように環境を変える能力は人間以外の動物にはめったに見られません。
北アメリカの開拓が始まった頃ビーバーは至る所にいました。
熱心にダムを作って川の水をせき止めるビーバーは勤勉さの象徴でした。
やがてビーバーの毛皮で作った帽子が大流行し19世紀には乱獲されて絶滅寸前に追い込まれました。
毛皮の需要が減りビーバーは再び増え始めましたが問題も生じました。
ビーバーが築くダムによって洪水が起きているのです。
カナダ中西部サスカチュワン州の農場ではビーバーは厄介者です。
ここはビーバーを捕獲すると報奨金がもらえるカナダでも数少ない場所の一つです。
穀物の畑の真ん中にダムを作るんです。
ネズミの仲間だからね。
放っておくとどんどん増えていくんだ。
問題の後始末に追われっぱなしです。
これ以上ビーバーが増えたらたまりませんよ。
農地の水はけを良くするためにこれまで大金を投じてきました。
なのに状況は逆戻りするばかり。
原因はあの小さな動物なんです。
ビーバーのダムを壊すために爆薬も使われます。
(爆破音)大人のビーバーが4〜5匹いれば一晩であっという間にダムを作ってしまいます。
いくら水路を掃除して泥を取り除いても翌朝にはやり直しなんです。
私たちはビーバーをしとめた人に報奨金を出す事にしました。
毛皮の価値が低くなり捕獲される数が減っているからです。
しかし捕獲して数を減らしダイナマイトでダムを爆破してもその場しのぎにしかなりません。
ビーバーが水をせき止めるのは動物としての習性です。
そして実はこの珍しい習性にこそ人とビーバーが共に生きるための鍵がある事が分かってきました。
グリニス・フッド博士はビーバーが湿地の環境に与える影響を研究しています。
幼い頃母が言いました。
「この辺りの森に昔はビーバーが一匹もいない時期があったのよ」って。
でも今はたくさんいます。
それがきっかけでカナダの湿地帯とビーバーの関係に興味を持ちました。
フッド博士の研究場所はカナダ西部のエルクアイランド国立公園。
ここでは19世紀の半ばにビーバーが一匹残らず捕獲されました。
新たにビーバーが放されたのは1941年でした。
よそから連れてこられた7匹のビーバーが放されました。
以来ビーバーの数はかなり回復しています。
国立公園には詳細な記録が残されていました。
(フッド)ビーバーが住み着いた池の変化を公園のスタッフが観察し地図に書き記したんです。
54年分の記録を分析した結果興味深い事実が浮かび上がりました。
それまで私たちは池の水が増えたり減ったりするのはその年の降水量によるものだと思っていました。
ビーバーは豊かな水に引き寄せられるだけだと考えていたんです。
ところが全く逆でした。
ビーバーがいるから水が増えていたんです。
雨の量にかかわらずビーバーの住む池は水が増える傾向にありました。
私は計算間違いをしていないか何度も確かめました。
結果は驚くべきものでした。
ビーバーが活発に活動している池はビーバーがいない池に比べて9倍の量の水を蓄えている事が分かったのです。
ビーバーの数が増えた事でエルクアイランド国立公園には豊かな湿地帯が広がりました。
(フッド)ビーバーは一体どうやって水を集めるのかその秘密の一つが水中に掘られた水路です。
ビーバーが活動する池の底には深い溝がたくさんあり複雑に入り組んでいます。
池は深いほど多くの水を蓄えられます。
つまりビーバーは自分たちに好都合な深さになるまで池の底を掘り続け周辺からより多くの水を取り込んでいるんです。
水を蓄えるもう一つの秘密はビーバーが作るダムです。
大がかりな土木工事は材料の枝を集める事から始まります。
ビーバーの鋭いのみのような歯は細い幹ならたった10回でかみ切る事ができます。
かみ切った枝を建設現場へと運びます。
水の流れが緩やかな場所に最初の枝を置きます。
そして枝の大きさや形を慎重に選びながら次から次へと枝を集めます。
小さな枝をひとまとめにして泥で固めます。
こうして丹念に作られたビーバーのダムは水をせき止め小さな小川を巨大な貯水池に変えるのです。
2002年この辺りは記録的な干ばつに見舞われました。
ところがビーバーがいる池だけは水が干上がる事がありませんでした。
農場経営者たちもこれには驚きました。
ビーバーが戻った土地では干ばつの被害が少なく地域に一定の水が保たれたんです。
アメリカネバダ州エルコ。
200年前にはビーバーの住む湖や湿地がたくさんありました。
しかし乱獲と牧畜業の広まりによってビーバーと水辺は姿を消しました。
再び緑あふれる土地にするためにスザンヌ・ファウティー博士はビーバーの力を借りようと考えています。
生物学者の友人と調査をしています。
実はビーバーが戻った土地で小川の水が驚くほど増えたという実例があるんです。
その場所を見に行きます。
この農場ではビーバーがいなくなり小川の水が干上がる寸前にまで減ってしまいました。
(エバンズ)測ってみましょう。
(ファウティー)ええ。
(エバンズ)深さはどのくらい?
(ファウティー)最大で3cmね。
ええ変わりなしね。
そして幅はおよそ24cm。
いつもそのくらいよ。
夏は気温が40℃近くになる事もあります。
小川の水が干上がり水が蓄えられる場所はありません。
しかし小川の一部に牛が立ち入るのを制限したところある変化が生じました。
(エバンズ)突然ビーバーが戻ってきました。
それが大きな変化の始まりだったんです。
ビーバーのもたらした効果は絶大でそれまでの景色が一変したの。
乾いた土地に水が戻ってきたのね。
ほら見て。
ああ!しかもこれはほんの一部にすぎないの。
およそ32kmにわたって続いているのよ。
(ファウティー)水辺が広がり緑もある。
すばらしい。
ビーバーの築いたダムがいくつも見えるでしょう。
辺りに木が少なかったためビーバーは泥を積み上げてダムを作りました。
やがて泥の上に多くの植物が育ち補強されたダムによって大量の水が蓄えられました。
すごい。
感動的でしょう。
緑が風にそよいでる。
そして何よりこの豊かな水!
(エバンズ)ビーバーによって辺りの環境は劇的に改善したのよ。
カエルが鳴いてる。
ちょっと前まで考えられない事ね。
しかし乾燥した気候のネバダ州では水は常に蒸発していきます。
一旦よみがえった川も十分な深さがなければ一年を通じて水を保つ事はできないでしょう。
(ファウティー)深さを測りましょう。
(エバンズ)私が記録する。
(ファウティー)まず巣のある場所は36.5cm。
うわ〜!深さ82cmよ。
おっと!気をつけてね。
更に深くなってる。
驚きね!どのくらいある?1.6mくらい。
1.6mも?20年前には幅が60cm深さは5cmしかなかったのよ。
まさに劇的な変化ね。
(エバンズ)全ては水から始まる。
水こそが生命の基本ね。
野生動物の赤ちゃんをたくさん目にするようになりました。
シカの親子や個体数が減っていると言われるカナダヅルの群れも見かけます。
川の水と周辺の緑地帯は多くの生物の命を支えています。
本当にすばらしい変化です。
(ファウティー)重要なのはこの乾いた土地にとってビーバーの住む川は最後の切り札だという事です。
春の雪解け水が消えたあとここは常に水の乏しい土地でした。
けれども小川にビーバーが住み着く事で驚くべき変化が起こりました。
ビーバーたちはダムを作ってせっせと水をため自分だけでなくあらゆる生き物に水を提供してくれるのです。
ビーバーを好きになるか嫌いになるかは立場によって異なります。
ただ眺めるだけなら愛嬌のある動物かもしれません。
しかし家の周りを水浸しにされてしまうとしたら笑って眺めてもいられません。
ビーバーは常にダム作りに励みます。
そこがたまたま排水溝だったら大問題が起きるのです。
小さな動物に振り回されるのは面白くありませんよね。
ビーバーを退治したいと思う人たちの気持ちも分かります。
フッド博士はビーバーが問題を起こしている地域に出向き問題を解決するにはどうすべきか相談に乗っています。
(フッド)ビーバーのダムを取り除く際は排水溝の水の流れに気をつけないと。
水が渦を巻いて枝を吸い込む事があるでしょう。
ええ排水溝の出口に枝がたまっていました。
ビーバーを訓練して問題のない場所にだけダムを作るようにしむけられたらいいんですけどね。
でも残念ながらビーバーが本能のままに振る舞うのを止める事はできません。
しかし中にはビーバーの習性を生かして人間との共存に成功している場所もあります。
カナダのガティノー公園は北アメリカでも有数のビーバーの生息地です。
ビーバーが作るダムはかつては道路や建物を浸水させる厄介な存在でした。
結構深いでしょう。
この辺りにはたくさんのビーバーが住んでいますから。
ミシェル・ルクレールは30年前からビーバーのダム対策に知恵を絞ってきました。
ビーバーを褒めたたえる人もいれば悪者扱いする人もいます。
要するに被害を被っているかいないかの違いです。
ビーバーが悪いのではなく解決策を見つけられない事が問題なのです。
(ビエン)最大の問題は道路の冠水です。
ビーバーのダムが水をせき止め水圧が強くなりすぎると突然ダムが決壊します。
大量の水で道路が冠水し通れなくなってしまうんです。
かつてはダムを破壊する以外対策はありませんでした。
一日8時間一年に82日もビーバーのダムを壊し続けたんです。
大がかりな機械も使いましたよ。
しかし一晩のうちにビーバーがダムを修復している事も度々ありました。
一体どうなっているんだと思いました。
次の日同じ場所にダムがあるなんて。
果てしのない競争根比べです。
勝敗は見えませんでした。
全くね。
公園内の水辺に罠を仕掛け年に1,000匹のビーバーを駆除した年もありました。
(ルクレール)罠に掛かるのがビーバーだけとは限りません。
アオサギやカメカワウソなどさまざまな動物も犠牲になりました。
ですから罠で捕獲する方法はとても嫌でした。
捕獲作戦は効果がありませんでした。
ビーバーを駆除してもすぐに別のビーバーが入り込んできたからです。
見知らぬ土地に入っていったら豪華な別荘が建っていたようなものです。
中は空っぽで居心地は満点。
住み着きたくなるのも無理はありません。
つまりビーバーを立ち退かせても新しいのがまたやって来るだけでビーバーがいなくなる事はないのです。
ある時ルクレールは実験によってビーバーの面白い習性を発見しました。
(ルクレール)まずは水の流れる音を出します。
ビーバーのダムの真上にCDプレーヤーを置きました。
(ルクレール)ビーバーは夜通しこの音に反応します。
何をするかは明日の朝見てのお楽しみ。
翌朝CDプレーヤーは泥に埋もれていました。
水の音がビーバーを刺激したんです。
人間の世界でいえば仕事場で始業のベルが鳴るようなものでしょうか。
同じようにビーバーは水の流れる音を聞くと枝や泥でダムを作りだすんです。
一体なぜでしょうか?水が音を立てているという事はたくさんの水が流れ出している事を意味します。
水が流れ出し池の水位が下がると天敵のクマやコヨーテなどに狙われやすくなります。
その事がビーバーを慌てさせるのかもしれません。
ビーバーは水中に15分も潜っていられます。
深い水に潜る事で敵から身を守るのです。
ルクレールはビーバーの水の音に反応する習性を利用してダムを作る場所を変えさせようと考えました。
そしてある方法を提案しました。
ルクレールのアイデアは奇妙なものでしたが理屈は通っていました。
ビーバーを捕獲しても何ら効果がなかったので試してみる事にしました。
(ルクレール)この小川は結構幅があります。
川の水が排水溝に流れ込む際音は入り口付近で発生します。
するとビーバーはここにダムを作ろうとするわけです。
ルクレールは簡単な方法で水の音が発生する場所を移動させました。
排水溝から5mほど離れた場所に杭を何本か立てて水の音がするようにしたのです。
結果は大成功。
ビーバーは杭のそばにダムを作り排水溝が詰まる事はなくなりました。
その後川の水が道路にあふれ出た事はありません。
かれこれ15年になります。
他にも公園内の池で水があふれそうになっている場所がありました。
激しい雨が降れば鉄砲水が発生するおそれがあります。
水位が高すぎる時には池の水を抜かなければなりません。
ルクレールはビーバーがダムを作る場所にあらかじめ栓をしたパイプを置いています。
あそこにパイプがあります。
ビーバーたちはパイプの上にダムを建設しています。
ふだんはそのままにしておき水位が上がりすぎた時だけ栓を開けて水を放出する仕組みです。
いわば私はビーバーダムの配管工ですね。
ダムに排水溝を設置し必要に応じて水を流します。
ルクレールが考案した装置によって公園内の水辺を計画的に管理できるようになりました。
もしここにコンクリート製のダムを造って水を管理しようとしたら設計から工事に至るまで多くの労力がかかります。
費用も何十万ドルもかかるでしょうね。
しかしビーバーが作るダムにお金はかかりません。
工夫次第でビーバーは人間のために活躍してくれるんです。
全く新しい発想によって豊かな自然が保たれています。
もうビーバーを無理やり捕獲する必要もありません。
アイデア次第で状況は変えられるのです。
ここでうまくいったなら他の場所でもうまくいくはずです。
この知識を広めたいと思っています。
この方法ならビーバーも幸せだしお金も手間もそんなにかかりません。
ねえ。
アメリカワシントン州のカスケード山脈ではビーバーを環境保全に役立てようという試みが始まっています。
若い科学者たちが中心になりビーバーを別の地域から連れてきて水辺の自然を豊かにしようとしているのです。
サケの孵化場もこのプロジェクトに期待しています。
魚の孵化には山からの冷たいきれいな水が欠かせません。
しかしビーバーの数が減るにつれてそうした川が減っています。
この辺りにいるサケの数は最盛期の40%程度です。
それを60%まで改善させるためにはビーバーを増やす事が鍵だと考えています。
この200年間ビーバーが減り続けた結果川幅は狭くなり流れが弱くなって水温が上昇しました。
水辺の自然も損なわれています。
サケが必要としている冷たくて豊富な水をビーバーが再びもたらしてくれる事を期待しています。
ビーバーはビーバーの被害に困っている地域から引き取ります。
まずはつがいをつくらなければなりません。
到着したビーバーは3週間水槽で過ごします。
涼しく過ごせるようにコンクリート製の水槽に布の覆いをしました。
寝床にはおやつのリンゴも置いています。
ビーバーはよだれを垂らすほどリンゴが好きなんですよ。
健康状態に気を遣っています。
弱ったビーバーを放してもうまくいくはずがありませんから。
野生に戻るまで快適に過ごしてもらわないと。
連れてこられたばかりのビーバーはとても緊張しています。
科学者たちは「ビーバーバッグ」という赤ちゃんの産着のようなものを作りました。
これでくるむとビーバーを落ち着かせる事ができます。
私たちはここでビーバーたちをつがいにし繁殖力のある状態で放そうとしています。
これまでビーバーの性別を正確に見分けるには解剖するしかありませんでした。
モネッタたちは尾の付け根にある臭腺を搾りその臭いから判別する方法を考え出しました。
どう思う?オスかな。
オス。
そうね。
オスはディーゼルガスや化学薬品のような臭いがします。
メスは腐ったチーズのような臭いです。
私たちはビーバーをお見合いさせ新たなカップルをたくさん誕生させてきました。
努力が実を結びビーバーが辺りの自然に根づいて何代も続いていく事を願っています。
正しく性別を見分け相性の良いカップルをたくさん誕生させれば実現するでしょう。
水槽の中にはつがい候補の2匹のビーバーがいます。
ウッドラフは2匹が親密になるのを待ちタイミングを見計らって自然の水辺に放す予定です。
土地を再生するためにビーバーに注目する人は増えています。
アメリカコロラド州で牧場を営むマーニー・ジョンソンもその一人です。
小さい頃牧場にはビーバーのダムが12か所もありました。
私はビーバーが大好きでした。
ジョンソンはビーバーをもう一度この土地に戻す事を夢みています。
初めてビーバーと出会ってから81年がたちました。
父がここに入植した頃はたくさんいたんです。
牧場からビーバーがいなくなって残念でなりません。
もう一度会いたいんです。
戻ってきてほしいですね。
(ティッピー)これからすてきな場所に行くのよ。
安心してね。
とってもいい所だから。
なんてかわいいの!ほら見て。
よちよち歩いてる!シェリー・ティッピーは邪魔者扱いされているビーバーを保護し望む人に譲る活動をしています。
ティッピーの本業は動物とは全く関係がありません。
私は美容師です。
テレビが好きでアウトドアには全然興味がありません。
でもなぜか野生動物特にビーバーの事になると夢中になってしまうんです。
それで美容師のかたわらビーバーを保護する活動を続けてきました。
良い引き取り手が見つかるまで自宅の庭でビーバーたちの世話をしています。
よく食べてる。
すっかりここになじんだみたいね。
ティッピーは28年前地元のゴルフ場でビーバーが殺されているのを知り保護活動を始めました。
今や活動は全米に知られています。
(ティッピー)ビーバーは水辺の生態系において「要石」となる存在です。
要石とは橋全体のバランスを支える最も大切な石の事です。
ビーバーは水辺の生態系を支えていていなくなると全体のバランスが崩れてしまうんです。
水辺は常に生命であふれています。
川全体が一つの命となって生き生きと動いています。
川の水を豊かにするビーバーは水辺の生き物にとってなくてはならない存在です。
このビーバーは住宅地の排水溝から救出されました。
(ティッピー)人間は野生動物を追い詰め追い出しています。
このビーバーはようやく生きられる場所を探し当てたのに人間はそれさえも気に入りません。
出ていけと言うなら代わりに平穏に生きられる場所を提供すべきです。
ティッピーは保護したビーバーの家族をバラバラにしません。
さあみんな一緒よ。
家族ごと受け入れる引き取り手を探します。
(ティッピー)カタログから商品を選ぶのとは訳が違います。
保護したのが親子で子供が4匹いたら家族丸ごと受け入れてもらいます。
新しい家までの途中脱水症状を起こさないように細心の注意を払います。
(ティッピー)移動中にビーバーを死なせた事はありません。
万全の対策をします。
(マーニー)ビーバーがついにこの地に戻ってくるんです。
何匹いるかは分かりませんが会うのが楽しみです。
赤ん坊がいればいいんだけど。
(ティッピー)はじめまして!新しい家族を連れてきましたよ。
うれしいですね。
新しい家族が増えるのは大歓迎です。
ビーバーを引き渡す瞬間は一番ドキドキします。
うちでしばらく保護していました。
このメスはオスが交通事故に遭ったので独りです。
歯を見て。
あんなに小さい歯で太い枝もかみ切るなんてね。
親子を捕まえるのは珍しくありませんが大概は父親と子供で母親と子供というケースは私も初めてでした。
子供たちは親からいろんな事を教わるんです。
すばらしいと思いませんか?そうね。
(ティッピー)何が起こるか分かってるみたい。
最初に一番小さなメスを放しましょう。
最高!いい眺めだね。
うれしいですね。
澄んだ小川にビーバーが飛び込むのを見るとわくわくします。
ビーバーがここにダムを作ったら私たちが今立っている辺りまで水辺が広がるかも。
楽しみです。
しかし新天地で天敵に襲われる危険は避けられません。
ここにはたくさんの天敵がいます。
大きな動物に狙われないか心配でたまりません。
でも全てがうまくいくよう願うしかありませんよね。
いつかは人間の手を離れて野生に戻るべきですから。
私はもうじき85歳になりますがまるで少女の頃に戻ったような気分です。
ほんとに懐かしい。
子供時代に見た光景そのままです。
ビーバーが再び牧場に帰ってきてくれて心から幸せです。
一方ワシントン州カスケード山脈のウッドラフたちは新しくつがいとなったビーバーを小川に放す事にしました。
(ウッドラフ)この小川は年々水かさが減って今は幅30cm深さが20cmほどしかありません。
これを豊かな水辺に変える事ができたら理想的です。
ビーバーが一旦ここに住むと決めたらすばらしい変化が起こるでしょう。
ビーバーの巣もあらかじめ用意します。
小川の一角に木や枝を積み上げ巣を作りやすいようにしておきます。
ビーバーにこの場所に関心を持ってもらうためです。
棒をあと2本ほど足そう。
前日までビーバーの寝床に敷いていたワラを入れます。
(モネッタ)臭いがする。
上に丸太を置こう。
(モネッタ)気をつけてそっと下ろしてね。
(ウッドラフ)ビーバーは陸上では動きが鈍く体はまるまるとして臭いもします。
捕食動物に見つかったら簡単に捕らえられてしまうでしょう。
ですから事前に巣を用意しないでいきなり森に放すのはあまりにも危険です。
ビーバーの安全をできるだけ確保する事が重要です。
よし外に出た。
(モネッタ)おいで。
そっちよ。
(ウッドラフ)よし新しい家だよ。
OK。
落ち着いたな。
放す瞬間が一番緊張しますね。
あとはこっそりとその場を離れてビーバーの好きなようにさせます。
新しい場所を気に入って住み着いてくれたらいいのですが。
数日後ウッドラフたちが確認すると新しい巣にビーバーの姿はありませんでした。
付近で捕食動物を目撃したという情報も寄せられました。
これまでに森の26か所でビーバーのつがいを放しましたが用意した巣にとどまったケースは50%以下です。
ビーバーを定着させるのは簡単ではありません。
ウッドラフは前年にビーバーのつがいを放した場所を訪れました。
ここら辺です。
ビーバーの臭いがする。
ああ見て。
ハハハ。
あった!よかった…これを見たかったんです。
2匹はこの場所でダムの数を増やしていました。
(ウッドラフ)ああすばらしい。
4つの池が見えます。
かつてこの辺りには池などありませんでした。
ビーバーたちが小川をせき止めて水辺を作ったんです。
川は深さを増し冷たいきれいな水が流れています。
ダムがフィルターの役目を果たし不純物を取り除いているのです。
たった2匹で成し遂げるなんて。
すばらしい!巣は自動車ほどの大きさがあります。
あそこにいます。
枝を運んでいる。
(ウッドラフ)ビーバーがすばらしい水辺の環境を生み出しているのを見るとまるでクリスマスの朝にプレゼントを発見したような喜びを感じます。
プロジェクトを続けてきてよかったと思える瞬間です。

(フッド)ビーバーは水のある風景を作ります。
北アメリカの水辺はビーバーによって発達しました。
小さな体で大きな事を成し遂げるビーバーには感心させられます。
ビーバーが活躍する水辺では水質が浄化され周辺の生態系が豊かになります。
放っておけばどんどん荒れていくような土地にビーバーはちょっとした奇跡を起こしてくれます。
傷ついた土地を修復し豊かな水辺と生物の多様性を取り戻してくれるんです。
しかしビーバーだけで破壊された環境を修復する事は不可能です。
人間が壊した自然を修復するためにこの小さな動物の力を借りる価値はあります。
ただし私たちが必要としている豊かな水辺を与えてもらうためには人間もビーバーが必要とする環境を提供するべきでしょう。
ビーバーは洪水を引き起こす厄介者かそれとも自然環境を守るヒーローか。
それを決めるのは人間の知恵と工夫次第です。
2015/12/26(土) 19:00〜19:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「ビーバー大活躍!よみがえる水辺」[二][字]

木や泥でダムを作るビーバーは、時に畑や道路を水没させてしまうため、北米ではやっかい者。しかしビーバーの能力を利用して失われた環境を再生させようという試みを紹介。

詳細情報
番組内容
人知れずダムを作り、あふれた水で畑や道路を水没させてしまうビーバーは、北米ではやっかい者扱いだ。しかし近年の調査で、ビーバーのすむ池は干ばつ時でも水量が保たれていることが判明。その能力を川辺の環境再生に生かそうという取り組みが始まった!人間が望む場所にダムを作ってもらう、あるユニークな試みが見事成功。ビーバーのおかげで緑が再生し、姿を消していたサケが戻ってくる川も現れた。(カナダ2013年)再放送
出演者
【語り】渡辺徹

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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英語
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