いよいよ幕を開ける。
(一同)えいえいお〜!えいえいお〜!えいえいお〜!えいえいお〜!
(晋作)稔麿から手紙が来たんじゃと?ハリスの謁見を公方様が許したそうじゃ。
松下村塾では身分の区別なく昼夜を問わず学問を志す者が集い日々議論が繰り広げられていた。
そんな中…。
兄上。
何じゃ?兄上は文をどのようにお考えなんですか?何じゃお前やぶから棒に。
文を塾生のどなたかに嫁がせようなどとお思いではないでしょうね。
えっ?えっ?なるほど!そこのあなた。
はっ?茶話会の日椋梨様のお屋敷まで文に付き添って下さいませんか?私が?この人は塾に学びに来とるんです。
そねぇな…。
変な虫がついては困りますから!寿は椋梨の妻美鶴に文の縁組みを頼むため久坂を連れ椋梨家を訪れた。
実は本日は文の事で奥様にお願いが。
私に?どなたかよいご縁をお世話頂けたらと。
えっ?
(寿)身の程知らずとは承知しております。
それでも文は私のただ一人の妹。
身内に罪人を持つ娘が良縁を得るには並のお引き立てではかないませぬ。
何とぞ椋梨様のお力で。
お願い申し上げます!姉上…。
それから数日後。
(靖)お文さん?今日はどちらへ?文。
本日は椋梨様のお屋敷で催される香の会に参ります。
出かけてまいります。
おう。
後をつけるなど子どもじみた振る舞いはおやめ下さいましね。
誰が追うか。
行ってまいります。
いつも心と裏腹の事をして居たたまれん気持ちになるんです。
幼い頃からそうです。
独りぼっちで。
まことは誰より人が恋しいのに平気な顔をしたり。
どねぇに欲しいもんも「ああ俺には無理じゃ」と初めから諦めて…。
あいつがおらんようになったら…俺はもう…。
久坂。
文。
お前たち夫婦になれ。
文と久坂の婚礼が行われた。
あのちさかった文がのう。
(百合之助)いい住まいが見つかるまでうちにおったらええ。
部屋も空いとる。
やっかいになってしもうてすみません。
君はどうせ塾に来るんやからここなら10歩とかからん。
よければず〜っと。
どうぞ。
お茶碗はこれを使うて下さいね。
何じゃ。
今日のみそ汁は具が多いの。
(百合之助)そうか?あっなるほど。
えっ?文えろう張り切ったんやね。
そねな事一個もありませんけど。
タイのあらまで入っちょる。
寅兄!
(笑い声)お城へ?一体何事でしょう?何のお召しか…。
せわぁない。
ご立派です。
行ってらっしゃいませ。
ああ。
久坂が城から戻ると…。
江戸の稔麿君から手紙が届きました。
メリケンとの条文の草案です。
幕府はメリケンとの通商を始めるようです。
(晋作)メリケンの言いなりじゃ。
(寅次郎)このままではいずれ清国のように日本も西洋諸国の食い物にされてしまう!松陰先生。
一つご報告がございます。
どうした?あ…外します。
いやおってくれ。
藩医として江戸遊学が許されました。
(寅次郎)そうですか!表向きは医者としてでも心は武士として志を遂げに参ります。
行け久坂。
結婚して僅か2か月余りで久坂は江戸へ行く事が決まった。
どうしたん?おなかすきました?お文。
はい。
ちいと話がある。
松陰先生の手前しかたがないと思うたが暮らしてみてよう分かった。
俺はやはり独りの方がしっくり来る。
独りの方が気兼ねのう遠くに行ける。
皆様には俺が言うておく。
お前は…お前に似合う相手を見つけてくれ。
久坂は学びに行くんじゃない。
事をなしに行くんじゃ。
その命を懸けて。
文の志は何じゃ?志…。
お守り?回想
(玄瑞)あん時引いたおみくじ大吉やったぞ。
どねぇなつもりじゃ?私はあなた様のような危なっかしい人が嫁も取らず独りで生きていけるとは到底思えません。
何じゃと?そうでございましょう?真面目でいちずと言えば聞こえはええですが融通の利かん頑固者。
ケンカを売られたらすぐ頭にカ〜ッと血が上って大立ち回り。
そねな事では志を遂げる前につまらん事で命を落とします。
おまけに強情っ張りのひねくれ者。
お前ようもそんだけ人の悪口を!素直に言うたらええんです。
助けてほしい時は「助けてくれ」と。
そばにおってほしい時は「おってくれ」と。
「江戸に行っても思うとってくれ」と。
うぬぼれんな。
うぬぼれます。
お兄様の刀と一緒にこねなもん大事に持っていこうとしとったらうぬぼれます。
人の持ちもんを勝手に見んな!勝手に見ます!女とはそういうもんです。
何なんじゃお前は…。
心配なんです。
私がこの萩にいます!この萩であなたを思うとってさしあげます。
あなたがどれほど遠くに行っても迷子にならんように。
そねなおなごがここに一人おると思うたらあなたはどこにいても独りやないでしょ?嫌やと言うてもそうしますから。
だってもう…志を立ててしまいました。
志?私の一生の志です。
私はあなたと共に生きてまいります。
はあ…。
やっぱり大吉じゃ。
お前は俺の大吉じゃ。
(泣き声)何で泣く?さみしゅうて…。
あなたがこの塾やうちからおらんくなってしまうと思うたら本当に心底さみしゅうて…。
命を大事にしてそれで…必ず…必ずうちに帰ってきて。
ああ。
ああ分かった。
条約締結?
(寺島)ありえん!天子様のお許しもなく条約を結ぶなど正気の沙汰とは思えません!殿様に建白書を差し上げましょう!今すぐ!むだじゃ!建白書は書きましょう。
じゃがそれだけでは足りん。
(亀太郎)ほかに何が?異国に対し決して侵略は許さんという強い意志を見せなければ。
間部。
ご政道に異議を唱える者たちを一人残らず捕らえよ。
一網打尽に致せ。
(間部)はっ!ついに安政の大獄が始まった。
幕府の弾圧は京都にいた久坂の身にも危険を及ぼした。
あの人は…?久坂さんは生死も分からんと。
えっ…。
先生。
事をなす時が来たという事じゃ。
文。
そろそろ夕飯を…。
江戸から稔麿が萩へと戻ってきた。
あっお文さん…。
稔麿さん!
(稔麿)久坂さん…。
あの…あの人は!?江戸へ戻った。
お文さん。
久坂さんは無事じゃ。
文!無事…ご無事で…。
幕府は盾つく者らを一掃するつもりじゃ。
そんくらいでなけりゃ敵としては面白うない。
そうです。
今こそ我々がなすべき事を考えるべきです。
世の動きを見間違うな。
今お前たちが動けば幕府の手は必ず長州に…松陰先生に及ぶ。
(寅次郎)まず討つべきは井伊の命を受け京で志士たちを弾圧する老中間部…。
我々は間部を暗殺すべし。
暗殺…。
(寅次郎)京の間部を殺せば江戸の井伊に大きな揺さぶりをかける事ができるでしょう。
志士たちは必ず奮い立つ。
井伊を討つんはその時です。
(品川)血判状…。
藩のご重役方に差し出すつもりです。
僕と志を共にする者はいますか?無論です。
やります。
やります。
これを私に差し出すという事が何を意味するか分かっておるのか?し…死罪を申し渡されても…。
分かっておるならばなぜこのような愚かな振る舞いをする!?吉田稔麿。
お役を免じる!はっ…。
伊之助。
もうかばいきれん。
稔麿さん。
どうしたん?くたびれた…。
(稔麿)むちゃです。
江戸を見てきたからだけやない。
俺はずっと小役人として勤めてきた。
むちゃです。
先生のやり方で世の中は変えられません。
(滝)梅はもう…。
(文之進)ええから飲め飲め。
文どうした?父上母上兄上叔父上…。
お話がございます。
何用じゃ?聞いてしもうたんです。
寅兄様が塾生の皆さんに呼びかけるんを。
間部老中を暗殺すべしと。
寅次郎!
(滝)文之進様!
(亀)お母さん!
(文之進)どねぇなつもりじゃ!事もあろうに幕府の老中暗殺など!どういう事になるか分かっとるんか!?一家断絶死罪どころの騒ぎではない!この長州の藩の存続さえ危ういんだぞ!何も事を起こせん長州など一度滅びればええんです。
何!?分かっとる。
父の言葉など…お前には届かん。
(梅太郎)父上!旦那様!わしを殺してから行け。
許す事はできん。
寅次郎!父を殺せ!父上もうおやめ下さい!梅兄様!旦那様!大事ない。
ここはどういう場所なんですか?人殺しの算段をする場所ですか?松下村塾は…ここは大事な学舎じゃないんですか?兄上様…。
どうして待てんかった?お前はお家を敵に回してしもうた。
自分の言葉や行いが弟子たちにどのような結果を及ぼすか分からん者は先生と呼ばれるに値せん!松下村塾は藩命により閉鎖となります。
それからもう一つ。
若者らを扇動した罪で吉田寅次郎をいま一度野山獄につなぎます。
松下村塾は閉鎖され寅次郎は野山獄へ再度投獄される事になった。
(桂)久坂。
松陰先生からの手紙じゃ。
先生からですか?
(寅次郎)「藩に邪魔立てされようと僕は老中間部を討つつもりです。
江戸の君たちにも力を借りたい」。
俺は乗らんぞ。
間部一人殺したところで何もならん。
久坂。
分かっとると思うが今は…。
分かっちょります!江戸の久坂と高杉さんから手紙が届きました。
来たか。
高杉と久坂は寅次郎にこの無謀な計画を思いとどまるよう説得した。
寅兄…。
久坂高杉までもこのありさま。
なぜじゃ…。
なぜ分かってくれん!守らねばならんのじゃ。
国を…この国を!旦那様…。
今戻った。
おけがは?京で危ない目に遭われたと聞きました。
お体は大事ありませんか?ああ。
旦那様…。
安政6年4月。
幕府から寅次郎を江戸に送るよう命が下った。
江戸町奉行所よりの呼び出しじゃ。
寅次郎を江戸へ…。
江戸送りの段謹んで承りました。
お知らせありがとうあんした。
一つだけお願いがあるんですが。
肖像画?絵を描いてほしいというんですか?寅が。
(亀)そねな…。
まるでお別れのようじゃあね。
(文之進)そのつもりであろうの。
江戸に呼ばれるからには厳しい詮議は免れまい。
江戸で寅はどうなるんですか?お調べの後は。
死罪になるんでございますか?文。
我らは我らを生きねばならん。
たとえ寅次郎をなくしたとしても。
京都から戻った久坂の呼びかけで萩に残る塾生が再び集まった。
出立は明日の朝です。
夜中までには戻られよ。
福川殿…。
寅兄がもう?兄上…。
ただいま帰りました。
寅…。
・
(梅太郎)亀!亀!水だるが倒れて畑が水浸しじゃ!畝も苗も台なしで…。
おお!ええところに来た!来い!手伝え!えっ?えっ?おお寅。
よう来た。
手伝うてくれ。
畝が崩れてもう何が何やら。
まずは倒れた苗を拾いましょう。
ああげたを脱げ。
泥に足を取られるぞ。
何じゃ言うてるそばから!
(笑い声)兄弟そろうて。
大丈夫か?
(笑い声)けがはないか?よ〜し畝を作り直すぞ。
まず残っちょる苗を拾え。
(梅太郎)はい。
長崎から帰った時も脱藩してこっそり萩に戻った時もこうして流してあげましたね。
そうでした。
そん時聞いた話は全部覚えとりますよ。
へえ!今度はどねぇな話を聞かせてくれるんじゃろうね。
母上…。
江戸ではやりの新しい芝居の話やろうか。
粋じゃという火消しの話。
そうそう。
江戸のおなごの話もそろそろ聞きたいもんじゃねえ。
聞かせてくれますね?はい。
必ず。
必ずお聞かせします。
それまでどうぞ末永くお達者で。
風呂のたき口の横にわらじとかさがあります。
それに路銀も。
どうぞここを出てそのまま遠くへ行ってつかぁさい。
今なら山を越えられます。
文…。
逃げろと言うとるんではありません。
生きてほしいんです。
兄上の志を全うできるどこか新しい土地で。
お前には今まで多くのものをもろうた。
力をもらい叱咤をもらい人をもろうた。
人?伊之助と出会い久坂と出会い高杉と出会い大勢の塾生たちに出会うた。
何もかんもお前のおかげじゃ。
やのに僕はお前に返してやれるもんが何もない。
ですから今ここを出て…。
これは…。
金子が…そしてお前が託してくれたボタオじゃ。
密航の夜僕と金子が生きた証しじゃ。
私はどこにも行かん。
このボタオを連れて江戸へ行く。
至誠を貫きご公儀を動かすと?私は死なん。
再び萩へ戻ってくる。
(寅次郎)約束する。
兄上…。
「至誠にして動かざるはいまだこれあらざるなり」。
(塾生たち)「至誠にして動かざるはいまだこれあらざるなり」。
「至誠にして動かざるはいまだこれあらざるなり」。
江戸送りの日。
萩は雨だった。
先生。
私は…。
文の手を離すなよ。
どねぇした?火が消えそうやないか。
あっちい!熱っ!旦那様火!火が…。
それがええ。
えっ?お前は笑うた顔がええ。
どねな道に迷うてもそれを思い出して戻ってくる者がおるかもしれん。
旦那様…。
(玄瑞)俺はどこにも行かん。
この身はどこにあっても気持ちはいっつもそばにおる。
じゃから寂しそうな顔はすんな。
伊之助は伝馬町の牢へと駆けつけた。
伊之助。
井伊に会いたかった。
大老の井伊様か?今日本国の政はすべて井伊大老の思うままとなっておる。
井伊をおびき寄せその前で思い切り語りたかったんじゃ。
じゃがダメじゃった。
お前の志とはたかだかそれしきのもんか?諦めるな。
お前の魂が不朽となる望みはまだある。
ありがとう…。
お前がおってくれてよかった。
生きろ。
お前らしく。
寅次郎の最後の取り調べが行われた。
(寅次郎)しかし今幕府はこの国の未来を憂えて立ち上がった者たちを次々に捕らえ拷問し処刑している。
徳ではなく力で政を押しつけんとする井伊大老にこの国の未来を託す事ができましょうや!
(井伊)吉田寅次郎。
ならば言おう。
国を混乱に陥れているのはお前たちの方ではないか。
我らはただ我らの思う一歩を踏み出し国を救いたいと思うておるのみ。
その一歩とは攘夷か?草莽の声に耳をお傾け下され!秩序を欠いては国は国でなくなる。
もはやこの国はただ一握りの者たちでは持ちこたえられませぬ!万人が力を尽くし守らねば。
徳をなくした政の果ては亡国にございます。
許さぬ。
もとより命など惜しんではおりませぬ。
(寅次郎)にぎやかですね。
ええ。
今日は生徒さんらがようけ来て。
風呂も何べんも沸かさんと。
風呂か。
ええな。
フフッ珍しい事言うんじゃね。
あれほど風呂を嫌うておるお前が。
今日は疲れたんです。
いろいろあって。
なら早う入りんさい。
すぐにごはんですよ。
(百合之助)滝!ああ滝。
今寅次郎が。
えっ?「腹が減った」と笑顔で。
何じゃ帰ったんかと籠を置いてもう一度見たら誰もおらんで。
寅…。
帰ってきたんですね。
(一同)インジャン!
(2人)ううっ…!
(一同)おお〜!アハハ…!
(一同)インジャン!
(寅次郎)「親思ふこころにまさる親ごころけふの音づれ何ときくらん」。
10月27日。
これを残して寅次郎は…。
(寅次郎)「今私は死を前にして心安らかです」。
「今更誰を恨もうという気もありません」。
「それは命についてこう悟ったからです。
春に種をまき夏に苗を植え秋に実り冬には蓄える。
人にも同じように四季があります。
人の命とは歳月の長さではない。
10歳で死んでいく者は10歳の中に。
20歳で死ぬ者は20歳の中に。
それぞれ春夏秋冬があり実を結んでいる。
私は30歳ですが収穫の時を迎えたと思っております」。
「もし同志の中で私の心を継いでくれる人がいたら私の実は空ではない。
どうか一粒の籾として次の春の種となれますよう」。
幕末の長州萩。
2015/12/26(土) 13:50〜14:35
NHK総合1・神戸
大河ドラマ「花燃ゆ」総集編(1)「後編・松下村塾を守れ!」[解][字][再]
杉文(井上真央)は兄・寅次郎/松陰(伊勢谷友介)の塾に通う久坂玄瑞(東出昌大)と結婚。しかし、井伊直弼(高橋英樹)の安政の大獄により寅次郎は江戸に呼び出され…。
詳細情報
番組内容
杉文(井上真央)は兄・寅次郎/松陰(伊勢谷友介)の主催する松下村塾の久坂玄瑞(東出昌大)と結婚。しかし久坂の江戸留学が決まり、二人は離れ離れに。一方、塾生たちと幕府への批判を強める寅次郎は危険視され、ろう獄に入れられてしまう。兄を取り戻そうと奔走する文だったが、井伊直弼(高橋英樹)の安政の大獄により寅次郎は江戸に呼び出される。井伊と直接言葉を交わしたいと望んだ寅次郎は決死の覚悟で、ある告白をする。
出演者
【出演】井上真央,大沢たかお,伊勢谷友介,東出昌大,高良健吾,北大路欣也,原田泰造,優香,久保田磨希,森永悠希,瀬戸康史,劇団ひとり,佐藤隆太,要潤,大野拓朗,音尾琢真,鈴木伸之,阿部亮平ほか
原作・脚本
【脚本】大島里美,宮村優子
音楽
【音楽】川井憲次
ジャンル :
ドラマ – 時代劇
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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