油井宇宙飛行士の142日〜世界に示せ!日本の実力〜 2015.12.26


夜空にこうこうと輝く星々。
この中に人類がつくったもう一つの地球があります。
あれだあれだ。
あれか。
え〜すごい。
あんな見えるんだ。
信じてくれ。
いつも見てるんだ。
上空400kmを飛行する…15か国が協力して造った人類史上最大の宇宙基地です。
ここで142日間滞在した日本人がいます。
日本人10人目となる宇宙飛行士です。
ISSで私が仕事ができるというのは…油井さんは世界各国の宇宙飛行士と共に数多くの任務に当たりました。
中でも世界が注目したのはISSの危機を救うミッション。
日本の輸送船を受け取る事でした。
宇宙開発の超大国アメリカとロシアが次々と輸送に失敗。
ISSで物資が不足する中最後の望みを託されたのが日本の輸送船「こうのとり」でした。
油井さんは「こうのとり」をロボットアームでつかむ役目。
(拍手)今回私たちは地球に帰還する直前の油井さんにインタビューする事ができました。
宇宙と地球をつないだ40分間の交信。
私と一緒に油井さんに迫ってくれるのはコピーライターの糸井重里さんです。
長年宇宙に憧れてきた糸井さん。
でも自分が宇宙に行く事は考えられないと言います。
油井さんがどんな思いを胸に宇宙にいるのかどうしても知りたい。
今回のインタビューに名乗りを上げてくれました。
油井さんの言葉を糸井さんはどう受け止めるのか。
油井宇宙飛行士の142日間。
他では聞けない宇宙のエピソードが盛りだくさんです。
ロケットが。
ねえでかい。
油井さんにインタビューするため私たちがやって来たのは筑波宇宙センターです。
初めて見ました。
すごいね。
逆光で見るから何か神々しいですね。
そうですね。
昔の人がさ奈良に大仏造ったりなんかしたのともしかしたら同じような事かもしれないね。
奈良の大仏ですか?でかくてすごいものをみんなで見ようというのがさ。
確かに。
ひかれますものね。
ひかれますもん自然に。
自然にひかれますもの。
日本が造ったロケットや実物大の宇宙船に糸井さんも大興奮。
宇宙とか行きたいですか?いよいよ宇宙にいる油井さんへのインタビューが始まります。
ここ?私たちが通されたのは今回のために特別に用意された通信室です。
いよいよ会えますね。
油井さんがいるISSは400km上空。
アメリカ・NASAの協力を得て衛星でつなぎます。
ではつながっているようなので糸井さん呼びかけて頂けますか。
油井さんこんばんは。
こちらからはこんばんはですが。
油井さ〜ん。
いなくなっちゃった。
あっ!バク転のような。
キザな出方を。
油井さ〜んよろしくお願いします。
はじめまして糸井重里です。
こんばんは。
糸井さんどうもよろしくお願いいたします。
今日はお忙しいところわざわざつくばまで来て頂きましてありがとうございます。
NHKアナウンサーの上條と申します。
よろしくお願いします。
面白いな〜。
失礼します。
もう帰還が早くなっちゃったんですよね?残念ですか?そうですね。
10日ほど早くなってしまいましたのでこちらに残された時間もあと僅かでしてそこはちょっと残念ですけれどもまあ一生懸命やって短くなった時間分ぐらいの成果は残したいなと思ってるんですけど。
どうですか?宇宙での暮らしは。
やっぱり非常に快適ですね。
最初は重力がないという事に非常に戸惑ったんですけども例えば物をちょっと放っておくとすぐどこかに飛んでいってしまって物を無くしたりしたんですけれども。
昔例えば天井でね何か仕事をする時は手を伸ばしながらやってたんですけれども。
何でも物はそこらじゅうに置けるしどういう姿勢でも仕事ができるのでそれはやりやすいですね。
へ〜便利な。
油井さんが宇宙へと旅立ったのは7月23日。
日本中が見守る中打ち上げは行われました。
(一同)7654321。
(ごう音)アメリカやロシアの宇宙飛行士と暮らす油井さんの142日間が始まりました。
宇宙での暮らしとはどんなものなのか油井さんに紹介してもらいましょう。
今日は簡単に私がですねどの程度宇宙の環境に慣れてきたのかなというのを紹介したいなというふうに思います。
パッみたいなね。
着地もうまくいってみたいな。
足を使って前に回転する力をつけて自分の重心がその方向に向かってった時に離すと。
小さくすれば速く回転するしね。
皆さんの方に向かっていくと。
ぐるぐるぐるっと。
どうですか。
面白いでしょ。
続いては宇宙での食事です。
レトルトパックのスープ。
あとはこれはロシアの穀物と肉が一緒に入った缶詰ですね。
フードウォーマーって書いてありますけどこれを開けてですねこのサイドは缶を入れて下さいって書いてある方にその缶のやつを入れるようになってます。
これをですね閉めて…。
スイッチを入れると。
これで温め開始ですね。
料理番組と一緒で何分たちましたみたいな感じでやりたいと思います。
えっとようやく40分以上たったみたいですね。
これで非常にあったかいスープと缶詰もあったまっているはずです。
では開けてみましょう。
アチチチチ…。
本当に熱々です。
ちょっと脂が多いですけど宇宙はね本当たくさん食べないとどんどん痩せてってしまうのでこのぐらい脂っこいぐらいでちょうどいいのかもしれませんね。
カロリーを本当にたくさんとらないといけないので。
では食べてみたいと思います。
いただきます。
う〜んおいしいですねこれ。
とても。
これ見えますか?このスープ。
ポテトスープ。
このポテトスープもね塩分すごい少ないんですけど実は非常においしくて。
ゆっくり開けないと飛び散るかもしれない。
このスプーンでねこう…スプーンで触ってる事によって表面張力でフォークにくっつくのでこれでフォークで…。
スープが飲めるわけです。
これ本当おいしいんですよね。
がっつり食べよう。
こんな食べ方をして慌てる場面も。
地上でおいしかったものはおいしいし。
まあちょっと私好き嫌いが多いんですけど地上で嫌いだったものはやっぱり上に来ても嫌いでしたね。
宇宙では毎日のトレーニングも欠かせません。
無重力状態では骨や筋肉がすぐに衰えてしまうからです。
体重を量るのも一苦労です。
最後に油井さんが宇宙の特等席に案内してくれました。
じゃじゃ〜ん!いかがですか?青い地球ですよ。
地球の写真をたくさん撮ってらっしゃいますけれどもそれは何ていうんだろう母なる地球というようなイメージがあるんでしょうか。
そうですねやっぱり最初は自分がすごい感動したんですよ。
宇宙を見て。
宇宙から地球を見て。
地球が本当にいとおしくて何ていうんですかね。
地球にいる時は地球すごく大きかったんですけど私の中では。
でも宇宙から見ると非常に小さくて非常にかわいらしいというか。
その感動を何とか皆さんに伝えられないかなというところで写真に撮って言葉ではなかなか表せないところを写真に撮って送ろうというふうに思ったんですけど。
そういう形で一生懸命撮ってます。
一日のうちに自分というものだけの暮らしの時間というのはどのくらいあるんですか?仕事をするとか…。
平日はやっぱりほとんどないですね。
仕事をするのはやっぱり月曜日から金曜日で土日というのは土曜日は半日仕事で半日休みって感じなんですけどちょっと寝る前に少し自分の時間があってそれをツイッターとかに私は使って何とかこう皆さんに自分の生活であるとか感動をお伝えしたいというふうに思ってるのであまり自分の時間というのはないですね。
つまり職住近接も極まれりという事ですよね。
それってそのつらさはないんですか?そのとおりですね本当に。
ただ私自身ここでの仕事というのは本当にやりがいがあって本当に楽しく仕事をしてますので。
それはいいですね。
あとは地上にいた時の通勤の事とかを考えると…ここは職場と生活環境が一体化してるので通勤の苦労もないですし。
ISSは一体どんなところなのか。
こんな歌でご紹介しましょう。
人類の英知を結集させたISS。
その中で最大の実験施設が日本の「きぼう」です。
ここで地上から託された数々のプロジェクトを担うのが油井さんです。
よいしょ。
無重力状態でしかできない実験を行います。
スリーツーワン。
小型の人工衛星を宇宙に放出するミッション。
地球の温暖化や宇宙の謎に迫ります。
注目を集めるのが新しい薬につながるたんぱく質を宇宙で作る実験です。
地上では重力があるためきれいなたんぱく質を作り出す事は簡単ではありません。
宇宙であれば地上では不可能だった新たなたんぱく質の結晶を生み出す事ができるはず。
ALSや筋ジストロフィーなど難病の治療薬の開発につながると期待されています。
本当に私もその今後のね解析結果というのを非常に楽しみにしてます。
「きぼう」というのは日本全体の財産ですからぜひ利用して頂いて新しい研究を始めて頂ければなと思います。
全然関係ない事聞いていい?私物で持ってったものってどんなものがあります?本とか。
意外に身近なものでやっぱり家族の写真であるとかそれはやっぱり欠かせなくてあとは友達の写真であるとかあとはそうですね…。
油井さんが持っていった折り鶴。
宇宙飛行士になれなかった仲間の夢が託されています。
7年前1年をかけて行われた宇宙飛行士の選抜試験です。
10年ぶりの試験には史上最多の963人が応募。
最終候補に残ったのは10人でした。
ISSと同じ閉鎖環境で1週間を過ごし忍耐力やチームワークリーダーシップが見極められます。
パイロットや医師など多才な候補者たちの中で油井さんはいつの間にかまとめ役になっていました。
閉鎖環境試験最終日の夜。
最後に残ったのが鶴を一人100羽ずつ折って千羽鶴を完成させる課題でした。
ところが油井さんはノルマから程遠い数しか折れていません。
その姿を見た他の候補者が協力を買って出ました。
ライバルという立場を超えみんなで一つの目標を目指す。
候補者たちにはいつしか絆が生まれていたのです。
1週間にわたる閉鎖環境試験が終わりました。
(拍手)10人全員が首からさげていたのは折り鶴でした。
ほんといい仲間って感じですね。
そうですね。
今日までは。
(笑い声)963人の中から最終的に選ばれたのは油井さんたち3人でした。
あれから6年。
かつての候補者たちは油井さんがいる宇宙を地上から見上げています。
そうですよね。
すごいねそれは。
これだこれ!動いてる?あれだって。
分かる?分かる?オレンジ色の。
あれだあれだ。
あれか。
ほら「油井さ〜ん」って。
油井さ〜ん!来週待っていま〜す!「頑張ってね」って。
頑張ってね。
皆さんに宇宙から言える事何かメッセージとかありますか?いやほんとにこうやって応援してもらえると本当にうれしいですね。
やっぱり私選抜試験ね受けた時に思いましたけれども…私ここに来て思うんですけどこれまでの人生振り返ってあと選ばれてからここまで来て思うんですけど…私運よく選ばれましたけど選ばれなかった方々も…それを知ってるがゆえに…やっぱり皆が納得できるぐらいのしっかりとした成果を残してみんなからですね…そういう面でも一生懸命頑張りました。
やっぱり帰ったらですねみんなと飲みながら話をするのを本当に楽しみにしてます。
つくづく仲間とかスタッフとつながってるという実感の強い毎日ですね。
本当に宇宙飛行士の仕事というのは目立ちますけども…思いやりを持ちながらですねやっぱり仕事をするようにしてます。
仲間たちの夢を背負い宇宙での任務に当たってきた油井さん。
ISSの命運を左右する一大ミッションが待ち受けていました。
ISSでは地上から水や食糧の補給がないと暮らす事ができません。
アメリカロシアそれに日本の無人補給船が定期的に物資を届けています。
しかし…。
去年10月以降宇宙開発の超大国アメリカとロシアの補給船が相次いでミッションに失敗。
数か月にわたって物資の補給が滞っていました。
このままの状態が続けば宇宙飛行士を地球に戻すなどISSの運用に大きな支障が出るおそれがありました。
世界が追い詰められる中望みを託されたのが日本の無人補給船「こうのとり」でした。
「こうのとり」をISSで受け取る重大な責任を背負ったのが油井さんでした。
今回とても大事なミッションだったと思いますがそれを振り返って頂きたいんですけれど。
やっぱり「こうのとり」のミッションは私のこのミッションのハイライトでもありましたし。
というのは「こうのとり」が打ち上がる前までにかなりですねやっぱり他の宇宙機関のロケット輸送船の失敗が続いてたんですよね。
ですから宇宙ステーションの物資というのがかなり心細くなってきてまして私がやっぱり宇宙に来た時も物がちょっと不足してる状況だったんですよね。
ですから具体的な例で言うと…水で拭くだけとかそういう形…タオルで拭くだけとかいう状況になってたんですけれども。
あとトイレの部品が足りなかったり…そういう不便を感じながらでしたからやっぱり他の宇宙飛行士もね頑張ってくれよというふうに言ってくれますしそれはうれしいですけれどやっぱりプレッシャーになりますし。
実際それがもし何かがあって失敗すると…日本がISSの命運を握る事になったかつてないミッション。
託された責任の重さを特別な思いで受け止めたのがJAXAの理事浜崎敬さんです。
25年前に宇宙ステーションをやっていた時にこういう時代がやってくるんだよという話をそのころよくたとえ話してたんですけどほとんどね私の友達もふ〜んって聞いてるだけで多分全く絵空事とかですねそういう感じに捉えてたんだと思います。
ISSの計画が始まったばかりの25年前。
浜崎さんはアメリカでNASAとの交渉に当たっていました。
NASAの技術者たちは日本に対し「資金だけ出せばいい」と話していたといいます。
日本がいろんないいアイデアを出したとしても実績がないし本当にそれでできるんだろうかというようなところで無視されてるようなそんな状態。
日本の底力を世界に示したい。
開発したのが「こうのとり」でした。
数千人を超える技術者たちの知恵と情熱を結集させた…これまでの輸送船はISSに衝突する形でドッキングしていました。
しかしISSが衝撃を受ける事になるため課題となっていました。
そこで日本は新たなドッキングの方法を開発。
音速の20倍以上のスピードで飛行するISSに近づきぴたりと並走します。
その「こうのとり」をISSにいる宇宙飛行士がロボットアームでキャッチしドッキングさせます。
これまで4回の打ち上げを成功させてきました。
打ち上げが2週間後に迫った7月末。
NASAの専用機が日本に降り立ちました。
アメリカの物資を「こうのとり」に託すためです。
世界が見守る中「こうのとり」が打ち上げられました。
「こうのとり」は筑波宇宙センターにある管制室の指示でISSに接近します。
ISSと筑波の間をつなぐのはNASAにいる若田光一さんです。
その若田さんの支援を受けて「こうのとり」をキャッチするのが油井さんです。
全てを日本人だけで行うのは初めての事です。
日本の宇宙開発その技術がいかに信頼性の高いものになってるかという事を世界が改めて気づくいい機会になったんじゃないかなと思いますね。
ISSに徐々に近づいていく「こうのとり」。
音速の20倍以上で飛行する輸送船をセンチメートル単位でコントロールします。
いよいよキャッチの瞬間です。
少しでもずれると重大な事故につながるおそれがあります。
失敗は許されない。
油井さんにプレッシャーがかかります。
(拍手)「こうのとり」を油井さんがキャプチャーするところで日本の管制官がチームがそれをコントロールしていてまあNASAでは若田さんがそれを対応して。
それは何でしょうね。
やっぱり頭の中では分かってるんですけど…ミッションが完了した成功したという時のその手応えというかその瞬間というのはどんな感じだったんですか?やっぱりまずはほっとしましたね。
そこまでかなり自分の気持ちを高めてましたしやっぱり失敗は許されないので。
訓練をしていたので私自身…ちょっと例えは悪いですけど私ゴルフとかもするんですけれどもプロゴルファーでも優勝がかかったパットなんかを短いパットでも外してしまったりする事があると思うんですねプレッシャーで。
そういう事があっては絶対ならないので。
本当に世界中が注目してますし非常にばく大な予算がかかってますのでそういう面で仕事ができたという事で本当にほっとしましたね。
でもやっぱりチームとして…そういう面では本当に私やりがいがあって本当にうれしかったですね。
一人に見えるけどこの大勢の油井さんのこう何かハンドリングしてる指先はもうみんなのものですっていうつながり方がすっごくよく分かったんでそれが何かお話でああご本人が一番それを思ってんだなと思ったんですね。
ISSを救った「こうのとり」。
しかし地上に戻る事はできません。
ISSから切り離されると大気圏で燃え尽きる運命です。
「こうのとり」を切り離そうとした時思わぬトラブルが起きました。
「こうのとり」を離して地球に帰してあげる時なんですけれどロボットアームでコマンドを送って離してあげなければいけなかったんですけどちょっとですね離しかけたところで…それはドキッとしましたけれども地上のチームもしっかりサポートしてくれて事なく1周待ちましたけれども…90分待って同じ所でリリースをしたと。
それをツイッターで「駄々をこねていた」というふうにおっしゃってましたよね。
その事ですかね。
「こうのとり」君が駄々をこねていたという。
ほんとに非常に愛着が湧いてしまってきっと「こうのとり」君も離れたくなかったのかななんて自分の中で思いながら…また一緒の時間を過ごしましたけど。
私自身何か分からないんですけど…本当に一生懸命仕事をすればするほど愛を感じてしまうというか…今実験しててもそうですね。
まあ機械なんですけれども…とても機械とは思えなくなってきちゃうんですよね。
それで親しみを込めてそういう言い方になってしまうのかもしれません。
は〜…その辺は宇宙飛行士ならではの発言に聞こえますね。
朝5時過ぎ。
暗闇の中を歩く一人の男性の姿がありました。
あれそうかな。
ああそうだそうだ。
よく見れたな。
お〜い!呼びかけた先にあるのは息子の亀美也さんがいるISS。
油井さんは宇宙で初めて栽培されたレタスに舌鼓。
でも実は野菜は大の苦手。
宇宙から届く油井さんの姿を司さんは楽しみに見守っています。
妻とこれが亀美也ですね。
楽しそうにしてますね。
司さんが撮影した幼い頃の油井さんです。
レタス農家の司さんは跡取り息子の誕生に大喜びしました。
小学生の頃からレタスの収穫を毎年手伝ってくれるようになります。
手際のいい息子を見て司さんは「大人になったらきっといい農家になる」と楽しみにしていました。
ここが亀美也の部屋だったんですけども。
一方の油井さん。
いつか宇宙に行きたいと思いを募らせるようになります。
油井さんは高校を卒業後防衛大学校に入学します。
パイロットになれば宇宙飛行士の夢に近づくのではないかと考えたからです。
卒業後は航空自衛隊のパイロットに。
父親の後を継ぐ事はありませんでした。
戦闘機のパイロットとして空をかける姿は司さんにはまぶしく映りました。
2008年。
10年ぶりに行われた宇宙飛行士選抜試験。
油井さんは迷わず応募します。
そして試験に見事合格。
幼い頃からの夢をついにかなえました。
息子の夢を司さんが初めて知ったのは選抜試験の時。
初めはパイロットを辞めて宇宙飛行士になる事に反対したといいます。
結構格好いい生活してたからさ今さらそんな事考えなくてもいいじゃねえかという事だったんだけど。
うちの子が宇宙飛行士になれるなんて思いも考える事もできなかった。
夢のような話だったからね。
本当よく俺の子どもであんなふうに格好いい生活ができてるなと思って感心しちゃうよな。
俺なんか百姓屋のおやじだしな。
えらい息子が生まれたもんさ。
4年前に妻八重子さんを亡くしひとりで暮らす司さん。
今は油井さんがプレゼントしてくれた愛犬の優ちゃんと暮らしています。
油井さんの帰還が迫ったある日の事。
はいはい。
はいそうです。
おかげさまで元気にしてます。
突然宇宙の油井さんから電話がかかってきました。
今うち。
おいも…もうすぐだな。
何かこの間ツイッター見てたらさえらい長い間着替えしなくても大丈夫のような事言ってたけど本当の話?洗濯しないでなに…。
ああそうなんだ。
まあよかったよかった。
元気でやってて。
はいじゃあじゃあね。
はい。
こちらです。
写真が並んでますね。
一番右が毛利さんですね。
全部やっぱり名前知ってるものですね。
ですね。
歴代の皆さん。
金メダルの選手みたいなもんですね。
いや〜そうですね。
毛利さん僕は後ろ姿を見た事がありますけど小柄な方なんですよね案外ね。
数日で帰ってきてすごいニュースになりましたもんね。
5か月行く時代になるってその時はなかなか思いませんでしたね。
これまで宇宙に行った日本人は合わせて10人です。
最初のうちは宇宙に行くだけで日本中が沸く時代でした。
日本の実験施設「きぼう」が完成した頃からは日本人宇宙飛行士の長期滞在が続きます。
今では日本人が宇宙に行くのは当たり前だと言われるようになりました。
日本がISSに使った予算はおよそ9,000億円。
今も年間およそ400億円が必要だと言われています。
先月行われた国の予算に無駄がないかを検証する会合です。
日本はいつまでISSに参加し続けるのか。
2020年以降どうするのかは今も検討が続いています。
率直に聞きますが日本のこのISSへの参加意義というものも今盛んに議論が行われていますがこういう事を油井さんはどう思いますか?何か訴える事って…。
私自身その議論を聞いた時ちょっと驚いたんですけどもここにいると日本が難しいミッションをやっていてそこで責任を果たすという事に関して…ですから日本が…。
私自身実は大きな夢がありまして日本にはやっぱり…宇宙ステーションで培われてる文化っていうんですかね。
相互理解相互尊重尊敬という文化というのは難しい事に切磋琢磨してやってるからこそ生まれてるわけで…ウクライナ危機やシリア情勢をきっかけに欧米とロシアの対立が深まっています。
世界は新たな冷戦の時代が始まったとも言われています。
その中でISSの新たな価値が見いだされています。
欧米とロシアが同じ目標に向かって協力する。
国際協調の場としての役割です。
日本人宇宙飛行士のグループ長を務める野口聡一さんです。
2度の宇宙飛行と160日以上の長期滞在を経験した野口さん。
各国の思惑が交錯する国際舞台では日本人にしか発揮できない力があるといいます。
第三極として世界中の宇宙飛行士が世界規模で見た時にむしろ日本人でいろんな国の状況をちゃんと分かっていて…中国とも通じるものがあると。
そういう立場で宇宙飛行士の中でも日本人がそういう立場に立つ事でバランスがいいんじゃないかと見てもらえてるんじゃないかと。
ですから三極にいるからこそ…日本にしか果たせない役割。
それを体現したのが若田光一さんでした。
若田さんがISSの船長として長期滞在した2014年。
ウクライナ危機でアメリカとロシアの関係が悪化した頃でした。
当然各国で報道のされ方というのは違いますけれどもねその中でじゃあ今日は一緒に御飯食べようとか言ってね私が声をかけて…我々は政府機関の宇宙飛行士として仕事をしてますのでそういう立場の違いというのはありますけども…そのクリミア紛争の時にね。
その意味をやっぱり食事をしながら考えたりするとやっぱりこういう方向が間違ってないと。
油井さんもアメリカやロシアの宇宙飛行士たちと5か月を過ごしました。
航空自衛隊にいた時パイロットとして日本の空を守っていた油井さん。
ロシアの宇宙飛行士とどのように接していたのでしょうか。
今一緒にいる仲間3人ロシアの方がいると思いますが油井さんは自衛隊にいる頃今とロシアに対する考え方とか何か変化はありましたか?いやもうすごい変化ありましたよ。
自衛隊にいる時というのはあまりいいイメージはなくて入ってくる情報というのはやはり悪い情報しか私聞いてませんでしたのでそもそも私ロシアに最初に訓練で行った時に…実はそんな事はなくてロシアの方々に非常に優しくして頂いて…そこで考え方を変えてロシアの事をもっと知りたいというふうに思ったんですよね。
ですからそれからロシア語も好きになりましたしロシアの文化も学んで。
ですから今本当に心から信頼できる友達というか仲間として一緒に仕事をしてます。
ものすごい実験場みたいなところ人間の文化の実験場みたいなところがあるんですね。
ですから私自身は今地球上ではいろんな問題がありますけれどもそういうところまでも実は広げていく事ができるんじゃないかと思ってます。
私は諦めの悪い人間なので実はこういうところは政治の問題だからとかいってそれは別問題でどうにもできないって諦めるんじゃなくて……という信念を持ってこれからの人生を生きていきたいと思ってるんですけどね。
そしてこちら。
宇宙といってもね広うござんすが…。
火星をすごく意識なさってる。
はい。
結構私気に入ってるんですけどそれを象徴していて。
人類が目指す新たなフロンティア火星です。
太陽の光が届き僅かに大気もある事から地球に最も似ている惑星と言われています。
世界を驚かせる研究成果が発表されました。
火星には今も水があり地表を流れているというのです。
しかし地球からは往復で3年はかかります。
その火星に将来人類を送り込もうというプロジェクトがアメリカを中心に進められています。
月や小惑星を経て最終的に火星を目指す壮大な計画。
達成には国際協力が欠かせません。
次なる計画への参加を検討している日本。
ISSで培った技術とノウハウがあれば今後の世界の宇宙開発でも存在感を発揮できるといいます。
次の時代の国際共同の有人計画を立てる時には…ISSまで行ってしまったらあとは火星は近いですか?そうですね。
まだまだいろんな課題があるというのは実際私自身感じてますけれどもでもその課題が多いというのが分かってるだけでもすごくて…やらなければいけない事だと思ってますので人類全体としてですね。
私も人類…。
それ小学校のね。
火星ね行きたいんですよね。
卒業文集に書かれたんですよね。
本当に月や火星に行きたいというふうに書いていましてその第一歩がやっとここで踏み出せたので。
私以前も言った事があるんですけどお月様にはうさぎがいるんで…ぜひ月より遠くに行きたいなと思ってます。
更に遠くの宇宙へ。
油井さんと一緒に選ばれた新世代の宇宙飛行士たちに期待がかかっています。
航空会社のパイロット出身の大西卓哉さん。
来年6月ごろからISSに長期滞在します。
日本人宇宙飛行士だけじゃなくて宇宙開発って…再来年にISSに長期滞在するのが金井宣茂さんです。
すごくこう「今は俺たちの時代だ」というそういう意識も自分たちの中で強くて先輩たちはもちろんすごいですけども先輩たちに負けてはおられないと。
これからは…次に大西さんそして金井さんと油井さんの同期が続きますよね。
彼らへの何かエールや言葉というのは何かありますか?そうですね私たち3人は新しい宇宙飛行士という事で一緒にトレーニングしてきたんですけれどもやっぱり私自身が思ったのはトレーニングしてきた事というのは本当に土台になって役に立ってるし自分のねバックグラウンドですよね。
要は民間のパイロットでありお医者さんであったというバックグラウンドはずっと役に立つのでここに来たら。
それをやっぱり信じてやってほしいなと。
最後にですねこの5か月を振り返ってあともうちょっと僅かになりました宇宙生活を振り返ってひと言お願いします。
私自身挑み続けて非常に一生懸命やりましたけれどもこれで日本の方々もですね油井さんやってくれたなと思って頂けると私もありがたいなと思ってます。
本当にツイッターにも書きましたけれども…間もなく帰る事になってしまいましたけれどもそういうミッションになっていればいいなというふうに思ってます。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
どうもありがとうございました。
またよろしくお願いします。
無事に帰ってきて下さい。
もうすぐだもんね。
お〜!こういう事ができるからな。
すごいなぁ。
糸井さん宇宙行きたくなりました?インタビューを終えて糸井さんは宇宙飛行士とは何か思いを巡らせました。
どういう人間が理想かという事についてみんな人はそれぞれに考えてるんだと思うんですよね。
だから「聖書」というものがあったりお経というものがあった時にそれは人が生きるという事だとか考えるという事の一つのすごい集合的な意志の固まりみたいなものを作ったわけですよね。
だけど宇宙飛行士というのは書物になってるわけじゃなくて…みんなで作ってみようじゃないかといった答えのような気がする。
だから宇宙飛行士という人間を使ってこういうモデルを作り上げてるという…まさしく一人じゃない人だという事を痛切に感じますよね。
しなくていい事って森羅万象全部しなくていいんですよ。
宇宙の全て人間の全てがしなくていい事だらけだけど既にこんなでっかい事をしちゃってるって事はある人がしなくてもいいと思ってる事が…また別の魅力をみんなが感じてるわけで。
火星とか言わなくてもやめらんないですよこれは。
…と思う。
油井さんを見送ったISSの仲間が送ったメッセージです。
油井さんおかえりなさい!142日間の滞在を終えた油井さんが帰ってきました。
人々の思いの結晶油井亀美也さん。
地球での新たな挑戦が始まります。
油井さん久しぶりの地球どうですか?いや〜本当にすばらしいですね地球も。
宇宙もいいですけど地球も何かいいですね。
この冷たい風もすごい心地いい感じがします。
でも皆さんちょっと寒いかもしれないですけどね。
大丈夫ですかね。
2015/12/26(土) 10:05〜11:18
NHK総合1・神戸
油井宇宙飛行士の142日〜世界に示せ!日本の実力〜[字][再]

国際宇宙ステーションで5か月間滞在した油井亀美也宇宙飛行士。はたしてどのような日々を過ごしたのか?帰還直前の油井さんに糸井重里さんが独占インタビューした。

詳細情報
番組内容
日本人10人目の宇宙飛行士として、国際宇宙ステーションで5か月に渡る長期滞在を果たした油井亀美也さん。日本の無人補給船「こうのとり」をNASAにいる若田光一さんと協力してキャッチするなど、日本の実力を世界に示した。はたして、どのような思いでこの5か月間を過ごしたのか?NHKは地球への帰還の直前に、軌道上の油井さんへの独占インタビューに成功。これまで語られなかった秘話を糸井重里さんが聞く。
出演者
【出演】宇宙飛行士…油井亀美也,糸井重里,上條倫子
キーワード1
宇宙飛行士
キーワード2
油井亀美也

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:1294(0x050E)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: