IDEAS + INNOVATIONS
雑誌WIRED最新号
雑誌WIRED最新号
『WIRED』VOL.20
 
NEWS

「小説自動生成プログラムをすべての人の手に」作家、宮内悠介とAI

毎朝自分のためだけに機械が小説を書く――。小説家の宮内悠介が告げたのは、自己を否定しかねない未来だった。物語のオーダーメイドが可能になる世界で、目の前の現実と対峙しつづける彼は中央アジアの干上がった海に向かった。その筆の先に拡がる風景とは。(『WIRED』VOL.19より転載)

 
 
このエントリーをはてなブックマークに追加

INTERVIEWED BY KEI WAKABAYASHI
TEXT BY SAWAKO AKUNE
PHOTOGRAPHS BY KATSUMI OMORI, SHINSUKE KOJIMA (STiLL)

宮内悠介|YUSUKE MIYAUCHI
1979年東京都生まれ。1992年までニューヨークに在住、早稲田大学第一文学部卒。在学中はワセダミステリクラブに所属していた。卒業後世界でバックパッカーをしたあと、麻雀プロの試験を志す。その後プログラマーを経て、2010年「盤上の夜」が第1回創元SF短編賞にて選考委員特別賞(山田正紀賞)を受賞。それを含むボードゲームの短篇をまとめた『盤上の夜』はさらに第33回日本SF大賞を受賞した。その後の短編集『ヨハネスブルグの天使たち』も第34回日本SF大賞特別賞受賞となる。現在『文芸カドカワ』にて中央アジアが舞台の「あとは野となれ大和撫子」を連載中。

小説のなかに国をつくる

わたしはデビューしてから5年ほど。小説と向き合う方法はまだ試行錯誤しているところですので、ことばについて話せることはそう多くないかもしれません。なにせ、いただいた仕事を並行して書くということをしていたのですが、それが自分に向いていないとやっと気づき、順繰りにひとつずつの仕事に取りかかれるようになったのが、まだほんの数カ月前のことでして…(笑)。

初の書き下ろし長編だった『エクソダス症候群』を終え、現在は、「あとは野となれ大和撫子」という長編の連載が始まったところです。中央アジア西部のアラル海の干上がったエリアに、旧ソビエト崩壊前のどさくさで各国の民が集まり国家をつくる。それから20年ほどでその地に内紛が起き、男たちが逃げ去ってしまったために、ハーレムの後宮の女性たちがしかたなく国家をつくっていく、というストーリーで、設定はほぼ現代。

小説のなかでひとつの国家をつくり、歴史を改変していく試みですから、史実や考証は慎重にと、今年の5月いっぱいをかけて一人で中央アジアを旅してきました。

また、いままでにはあまりやってこなかった方法で、執筆のための資料もつくっています。世界や周辺国の実際の歴史と小説内の国のトピックが絡み合う年表、登場人物それぞれのキャラクター設定シート、周辺の地図、建物や登場人物のスケッチ、頻出用語集…。例えばゲームや映画などでは、かかわる人数も多いのでこんな方法で情報共有すると思うのですが、小説では、勢いが削がれる気がしてこれまで最低限で済ませていました。ただ長編を書く場合、つい短編のノリで書いてしまって、人物の心理がぶれたという反省が前作にありまして、今回は自分内共有をやっているんです(笑)。


『WIRED』VOL.19「ことばの未来」
Amazonで購入する>>

「ことば」の未来を考えることで、ぼくらはどんな未来を得ることができるのだろう? 自然言語をめぐる冒険は「コンピューターによる説明」に始まり、「絶滅言語」や2人のデザイナーが交わした「インフォグラフィック文通」、カズオ・イシグロら4人の作家に訊いた「文学のイノヴェイション」まで。予防医学の俊英・石川善樹は自然言語処理界の天才たちに先端研究を訊き、デザインシンカー・池田純一はチャッピーとC-3POからことばと人間の未来を読む。そのほか、OPNとのニューヨーク彷徨にベン・ホロウィッツのビジネス訓、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の舞台裏エピソードを掲載! 特集の詳しい内容はこちら。


 
 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
LATEST NEWS

ARCHIVE

 
SHARE A COMMENT

コメントをシェアしよう