（美輪子）あっ。
あなた。
（富貴子）まあ。
（富貴子）いつかお会いしたわね。
等々力のローズカフェで。
（遥香）美輪子？どうなさったの？ねえ？大丈夫？
（美輪子）会いたかったの。
（美輪子）ずっとあなたを捜してたの。
どんなに捜したか知れやしない。
きっとまたローズカフェに来てくださると思って待っていたのにいつまでたってもあなたは現れないし。
私絶望的になって生きるのが嫌になってたんです。
どうして？どうしてそこまで私を？だってあなたは私の姉ぼたんに似てるんですもの。
ぼたんに？私が？どことなく雰囲気が。
いえ。
こうして見てるとどこもかしこもぼたんにそっくりだわ。
あの後で死んだぼたんが亡霊になって現れたんじゃないのかしらって何度も思ったわ。
でも亡霊なんかじゃない。
確かにあなたと会ったのよ。
ええ。
あのときに。
お名前を聞かせて。
いったいあなたはどういう方なの？名前は…。
西山です。
西山さん？下のお名前は？富貴子です。
フキコ？どういう字を書くの？「富む」という字に「貴い」の富貴子です。
富貴子？あっ。
富貴子って牡丹のことじゃない。
あなたはぼたんよ。
やっぱり死んだ姉の生まれ変わりなのよ。
生まれ変わりだなんて。
お姉さまに申し訳ないわ。
私は美輪子。
ローズガーデンで育った薔薇よ。
私たちは牡丹と薔薇。
そうとしか思えないわ。
そのお姉さまのぼたんというお名前誰がお付けになったのかしら？姉の実母だそうよ。
私たち姉妹は母が違ってて。
薔薇園を経営する家なのに薔薇の花が嫌いだからって反動的にぼたんって名付けたとか。
そう。
それでぼたん。
ひょっとしてあなたご存じ？２年半ほど前に田園調布のうちの家が焼けたことは？ええ。
ええそのことは。
偶然ネットで知ったんだけど。
じゃあ姉がそのときに亡くなったことは？ええ。
亡くなったお姉さま。
その方のお名前がぼたん。
そうなの。
ぼたん。
でもあなたまたどうして富貴子って名前なの？教えてよ。
誰が付けた名前なの？私が生まれた逗子の産婦人科医院のお医者さま。
牡丹の花が大好きで牡丹にちなんで富貴子って名前を付けてくれたの。
そう。
そうなの。
この前あなたとお会いしたとき何だかとっても懐かしい気持ちがしたの。
姉と名前が同じだなんてあのときは分からなかったのに会った瞬間何とも言えず引かれるものがあって。
私もそうよ。
あなたを見てあの歌を聴いて切なくて泣いてしまったんだもの。
やっぱりこうしてあなたを前にしていると涙が出てくるわ。
なぜかしら？とってもあなたがいとしくて。
うれしい。
やっぱりぼたんが目の前に舞い戻ってきてくれたんだわ。
そうとしか思えないわ。
今日はお友達と一緒にネイルアートをしにいらしたんでしょ？皆さん。
いつの間にかお帰りになって。
いいのよ。
あの連中は。
放っておけばいいの。
再会の記念にネイルアートをしてあげましょうね。
本当？まずは左手からね。
お手を拝借。
これは…。
若き日の過ち。
ピアノをたたくから爪は長く伸ばせないの。
大丈夫よ。
短い爪だからこそできるカワイイアレンジもあるのよ。
まずはベーシックケアから始めましょうね。
ええ。
富貴子。
富貴子。
あなたは牡丹。
姉が亡くなって２年半。
こうしてぼたんとまた巡り合えるなんて。
そうね。
私たち不思議な運命ね。
（眞澄）富貴子？「富む」という字に「貴い」の富貴子？そうなの。
ほら。
薔薇の花のアレンジを私の爪に。
奇麗でしょう。
彼女がしてくれたのよ。
富貴子が。
（眞澄）姓は何ていうの？西山よ。
（眞澄）西山！？西山富貴子？
（崑一）西山といえばお母さんの旧姓だよ。
まあよくある名字だけどね。
やっと巡り合えたのよ。
お母さん。
ぼたんの亡霊じゃなくぼたんそのものだったのよ。
私ローズカフェのスタッフに来てもらいたいの。
彼女と一緒ならうまくやれるわ。
（崑一）でも相手は自由が丘でネイルの店を開いてるんだろ？ネイルアートサロンならローズカフェの中でもやれるわ。
うん？話したのかね？そういうことも。
まだそんなことまでは。
今日再会したばかりで私たちもう感激でいっぱいで。
でもアメリカ留学の経験もあるんですって。
ほう。
じゃあ英語はぺらか。
とても見識が広そうだし頼りになるわ。
私たち運命的な出会いをしたのよ。
そうだな。
富貴子ってそうたくさんある名前じゃないことは確かだけどね。
逗子の産婦人科の先生が名前を付けてくれたんですって。
（眞澄）えっ？逗子の産婦人科の先生が？何ていう産婦人科医院なの？そこまでは聞いてないけど。
何でもその産婦人科の先生が牡丹の花が大好きだったんですって。
それで富貴子って名前を。
おやおや。
誰かさんのストーリーに似てきたぞ。
まさか。
ねえ？美輪子。
その人の生年月日は？生年月日？私なんかより４つか５つ年上かしら？たぶん亡くなったぼたんと同じ年ごろだと思うんだけど。
誕生日を知りたいのよ。
お母さん。
それが何か関係があるの？今度会ったら聞いてきてちょうだい。
その西山富貴子っていう人何年何月何日に生まれたかちゃんと聞いてきて。
（神崎）最近テレビを見ないから世の中のニュースが分からない。
えっ？
（神崎）ハハハ。
富貴子さんの心はどこかへ飛んでるね。
ごめんなさい。
（神崎）何だか感激的な場面が展開されてたみたいだな。
ええ。
偶然巡り合ってしまって。
たった一度会っただけなのにずいぶん捜し回っていたらしいの。
私はそっとしておきたかったんだけど。
どうしてかしら？本当は私たち抜き差しならない関係なの。
でもそれを分かってるのは私だけ。
彼女は何も知らないはずなのに。
どうしてかしら？なぜあんなに私を求めるのかしら？あなたには不思議な魅力があるんじゃないのか？そんなものは…。
あるよ。
僕も求めてる。
寝ても覚めてもって言えば大げさだけど。
最近は世の中のニュースなんてどうでもよくなってる。
篤さんはもともとそういう人でしょ？革製品を作ってるときのすごい集中力。
他のことにはまったく関心がないみたいで。
そうはいかなくなったな。
僕の隣に不思議な人がいるんだものな。
不思議な人でごめんなさいね。
最初のころは富貴子さんが隣にいてくれるってだけですっかり安心してたんだ。
でもそろそろその先へいきたい。
あなたがどんな人なのかもっと知りたい。
複雑なのよ私って。
生まれ育ちも心の中もね。
そうかな？あっ。
そのまま。
手を握ったままにして。
（神崎）う…うん。
うん。
篤さん。
私の心をつかまえたままにしてね。
私の生年月日？どうしてそんなことを知りたいのかしら？あなたのことを母に話したの。
そしたらとても気にしてるの。
お母さんが？ねえ？教えて。
富貴子の生年月日。
教えて。
それは…。
秘密。
意地悪ね。
どうして教えてくださらないの？じゃあ美輪ちゃん。
あなたの誕生日は？昭和６２年１２月２８日よ。
えっ。
１２月２８日？あなた本当なの？本当に１２月２８日生まれなの？そうよ。
私だけじゃないわ。
うちはぼたんも同じ誕生日なの。
同じ誕生日？あなたのお姉さまも？だから毎年誕生パーティーは姉妹一緒にお祝いしてもらってたのよ。
ぼたんは昭和５７年１２月２８日。
富貴子。
あなた。
あなたの誕生日は？私は…。
私は…。
あなたも同じなんじゃない？ねえ？そうでしょ？そうなのね？やっぱりあなたはぼたんの生まれ変わりなのよ。
誕生日も同じ。
名前も富貴子でぼたんと同じ。
私たちは運命の絆で固く結ばれてるのよ。
亡くなった姉の代わりに神様があなたを私のところによこしてくださったとしか思えない。
もう離れられないのよ。
私たちは牡丹と薔薇。
ねえ？うちに来てよ。
九品仏のうちに来て母とも会ってくれない？母だってきっと喜ぶわ。
ねえ？私と一緒に来てよ。
ねえ！いえ。
私は…。
あなたの力を貸してほしいの。
ローズカフェの仕事を手伝ってよ。
これまでもスタッフを求めていろんな人に会ってみたけどろくな人はいなかったわ。
あなたとならうまくやれる。
私と一緒にあのカフェを経営しましょうよ。
ねえ？そうしましょ。
それはちょっと私には。
このネイルアートサロンはそっくりそのままローズカフェに移しちゃえばいいわ。
あちらの方が客の種類も高級だしずっと仕事のやりがいがあると思うの。
ねえ？一緒にやりましょうよ。
それは駄目。
そんなことはできないわ。
どうしてなの？こんなに頼んでるのにどうして言うことを聞いてくださらないの？美輪ちゃん。
駄目なものは駄目なのよ。
我慢してちょうだい。
ねっ？美輪ちゃん。
嫌。
嫌。
こうしてようやく運命の絆を手繰り寄せてあなたに会えたっていうのに。
嫌。
嫌。
一緒に来てくれなくちゃ嫌。
あっ。
また後で。
いいのよ。
篤さん。
でも…。
父があなたをぜひうちに連れてくるようにって言ってるんです。
お父さんが？だから今日は一緒に行きましょうね。
いいのかな？美輪ちゃん。
私これから用事があるの。
時間のあるときにまた来てくれないかしら？帰れって言うの？悪いけどそうしてちょうだい。
私たちのスケジュールもあるんだから。
そうなの。
そこまで言うんならいいわよ。
こんな仕打ちをされるなんて。
覚えてらっしゃい！どけっ！大丈夫かな？傷ついてるみたいだけど。
・
（ドアの開く音）どうしたの？美輪子。
今日ネイルアートサロンの富貴子さんと会ったんじゃなかったの？ひどい。
ひどいの。
まるで他人みたいに。
生年月日は聞かなかったの？聞いたわよ。
昭和５７年１２月２８日に決まってるじゃないの。
えっ？本当なの？そうよ！そのくせ冷たいの。
ぼたんだったらあんなひどいことはしないわ。
許せない！昭和５７年１２月２８日。
ぼたんと同じ誕生日。
（伊佐子）こんな小汚い店によく来てくれましたね。
どうぞ。
（神崎）こんな店が好きなんですよ。
気取らなくて温かな感じの。
（伊佐子）もうちっと奇麗に改修できればよかったんだけどあいにく資金不足で。
ハハハ。
（杉彦）どうぞ。
お待たせしました。
杉ちゃん。
あんた感心ね。
（峰靖）役に立ってるよこの子も。
あっ。
私の弟杉彦です。
ほう。
杉彦君。
（伊佐子）弟といってもね富貴子とは血のつながりのない弟なんですよ。
富貴子。
言ってあるの？うちの家族のことは。
まだ何も。
（伊佐子）言っといた方がいいわよ。
そういうことは。
ねえ？でも篤さんってそんなことあまり気にしない人だと思うわ。
（峰靖）そうだ。
そんな感じだ。
篤さん。
私は一応こちらの養女なんです。
赤ちゃんのときからもらわれてきて。
そう。
（伊佐子）だから安心してくださいね。
親には似ない頭も器量もいい娘ですからね。
（峰靖）何もそんなことまで言わなくたってさ。
引いて引いて。
関係ないですよ。
一緒に住んでればそれだけで立派な家族なんです。
（伊佐子）富貴子には苦労ばかり掛けてるんですよ。
よしてよ。
母さん。
（伊佐子）だからこの子をよろしくお願いしますね。
はあ。
どうも。
いきましょう。
お父さん。
（峰靖）ああ。
（伊佐子）あんた。
よかったじゃない。
いい酒飲み相手ができて。
（峰靖）ああ。
（峰靖）いやぁ。
うまい酒だ。
（伊佐子）よかった。
（萌子）それで？あんた会うの？その富貴子っていう子に。
それがどうにも放っておけない気がして。
富貴子っていう名前は逗子の産婦人科医院で付けてもらったそうだし。
生年月日がぼたんと同じだし。
（萌子）偶然にしちゃちょっと気味が悪いわね。
それに西山って姓を名乗ってるし。
（萌子）はっ。
（萌子）そういえばね８月のお盆に横須賀の実家に帰ったらあんたのこと聞きに来た人がいたんだって。
私のことを？うん。
中年すぎの男と２０代半ばの若い女が来て「この家に眞澄っていう人はいなかったか？」って。
えっ？そしてね自分は眞澄の子供だって言ったそうよ。
私の子供？その若い女が？そうなんだって。
不思議なことがあるもんだなと思ってたんだけど。
お母さん。
どうしてすぐに知らせてくれないのよ？そういう重大なことを。
ごめんね。
話さなきゃと思ってるうちに旅公演が続いたりして。
それはいつの話なの？だからお盆に帰ったときに…。
そうじゃなくてその若い女が訪ねてきたときはいつだったのよ？確かことしの春だって言ってたわ。
ことしの春？私怖いわ。
もしその富貴子って子がホントに私の産んだ子だったらどうしよう？でも会ってみた方がいいんじゃない？お母さんも一緒に来てくれる？何だかとっても怖いのよ。
一緒に来てよ。
うん。
2015/12/25(金) 13:25〜13:55
関西テレビ１
新・牡丹と薔薇 ＃２０[字][デ]【走り出す!!情熱の薔薇】
ぼたん（黛英里佳）の死から２年。精神を病むほどの美輪子（逢沢りな）は落ち着きを取り戻し、一方、事件を起こした多摩留（戸塚純貴）の家族のもとには思わぬ人物が現れ…
詳細情報
番組内容
友人に無理やり連れられて来たネイルサロンで、美輪子（逢沢りな）は、ついにぼたん（黛英里佳）に似た女性と再会。号泣しながら、どれだけ会いたいと思っていたか、その女性に訴える。
優しく美輪子の話を聞く富貴子（黛英里佳・一人二役）は問われるままに、美輪子の質問に答える。富貴子がためらいがちに自分の名前を告げた途端、美輪子は衝撃を受ける。
番組内容２
富貴子という名前がぼたんの花に由来していることを知っている美輪子は、この出会いは運命なのだと確信する。
美輪子から富貴子のことを聞いた眞澄（伊藤かずえ）は、胸騒ぎを覚える。富貴子が話したあれこれが、自分の生き別れた娘と共通することばかりなのだ。眞澄は美輪子に、富貴子の誕生日を問うが…。
出演者
吉田富貴子：黛英里佳
小日向美輪子：逢沢りな
牧原世奈子：田中美奈子
小日向崑一：岡田浩暉
浅黄萌子：山口いづみ
瀬尾綱輝：片岡信和
・
小日向眞澄：伊藤かずえ ほか
スタッフ
【企画】
横田誠（東海テレビ）
【原作・脚本】
中島丈博
【演出】
藤木靖之
【音楽】
中川幸太郎
【主題歌】
サラ・オレイン「涙のアリア」（ユニバーサルミュージック）
【プロデュース】
西本淳一（東海テレビ）
大久保直実（ビデオフォーカス）
坪ノ内俊也（ビデオフォーカス）
【制作著作】
ビデオフォーカス
【制作】
東海テレビ
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