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過去最大96兆7218億円 来年度予算案を閣議決定
12月24日 10時28分

過去最大96兆7218億円 来年度予算案を閣議決定
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政府は24日、一般会計の総額が過去最大の96兆7218億円となる来年度予算案を閣議決定しました。新たな借金となる国債の発行額を抑えたものの、歳入の3分の1以上を国債に依存する厳しい財政状況が続きます。
政府が24日午前に閣議決定した来年度予算案は、一般会計の総額が96兆7218億円と今年度の当初予算を3799億円上回り、過去最大となりました。
このうち『歳出』は、「社会保障費」が高齢化を主な要因に、今年度より4412億円増えて31兆9738億円となりました。
また、「公共事業費」がほぼ横ばいの5兆9737億円、「防衛費」は5兆541億円と初めて5兆円を超え、「ODA=政府開発援助」は、5519億円と17年ぶりに増加しました。
このほか「地方交付税」は今年度より2547億円少ない15兆2811億円、国債の償還や利払いに充てる「国債費」は過去に発行した国債の残高が増えていることから今年度より1614億円増え、23兆6121億円となりました。
一方、『歳入』では、「税収」が好調な企業業績などを受けて今年度より3兆円余り増えて57兆6040億円となり、平成3年度以来の高い水準を見込んでいます。
また、新たな借金となる国債の新規発行額は、今年度より2兆4310億円少ない34兆4320億円に抑えました。
これにより歳入全体に占める国債の割合は、今年度より3ポイント近く低下しますが、それでも35.6%に上り、歳入の3分の1以上を国債に依存する厳しい財政状況が続きます。
政府は、この来年度予算案を年明けの通常国会に提出することにしています。

歳出の主な内訳

「社会保障費」は、今年度より1.4%、金額で4412億円増えて、31兆9738億円となりました。
財政健全化のため社会保障費の伸びを5000億円程度に抑えるという方針に沿う形となりました。
「公共事業費」は、防災・減災対策やインフラの老朽化対策などを進めるため、今年度とほぼ横ばいの5兆9737億円。
「文化、教育、科学技術関連予算」もほぼ横ばいの5兆3580億円でした。
「防衛費」は今年度より1.5%増えて5兆541億円と、初めて5兆円を超えました。島しょ防衛を強化するため、新型輸送機オスプレイや機動戦闘車を導入する経費などが計上されました。
また、ODA=政府開発援助も、中東やアフリカ地域のテロ対策の技術協力などに重点的に取り組むため、今年度より1.8%多い5519億円が計上され、平成11年度以来、17年ぶりの増加となりました。
一方、地方自治体に配分する「地方交付税」は1.6%、金額で2547億円減って15兆2811億円となりました。リーマンショックのあと、地方の税収不足を補うため上乗せしてきた「別枠加算」を廃止することなどによるものです。
このほか、国債の償還や利払いに充てる「国債費」は、過去に発行した国債の残高が増えていることから、1614億円増え23兆6121億円となりました。
こうした結果、「社会保障費」、「地方交付税」、「国債費」の3つの経費を合わせた額が歳出全体に占める割合は73.3%となり、当初予算として7年連続で70%を超え、ほかの政策への予算配分が制約される「財政の硬直化」が続いています。

国民1人当たり664万円の借金

政府が、来年度・平成28年度に発行する国債の総額は、過去に発行した国債の借り換え分も合わせて162兆円余りに上り、依然として高い水準が続きます。
政府が来年度予算案の編成に合わせてまとめた「国債発行計画」によりますと、来年度、新たに発行する国債は34兆4320億円で、今年度当初より2兆4310億円減ります。
また、過去の経済対策などで大量に発行した国債の償還に充てるために発行する「借換債」は7兆円余り減りますが、109兆1144億円となります。
これらを合わせた来年度の国債の発行総額は、今年度当初より7兆8212億円少ない162兆2028億円となり、2年連続で前の年度を下回りますが、依然として高い水準が続きます。
一方、国債の発行残高は、今年度末の812兆円程度が来年度末には838兆円程度に膨らむ見通しです。
これは、来年度に見込まれる税収のおよそ15年分に相当し、国債だけで国民1人当たりおよそ664万円の借金を抱えている計算となります。

「赤字国債」特例法 5年間にわたり延長

政府は特別な法律が必要な「赤字国債」について、来年度から5年間にわたって発行できるようにする法案を、24日決定した来年度予算案と合わせて年明けの通常国会に提出する方針です。
歳入不足を穴埋めするため発行される「赤字国債」は、いわば国の借金であるため財政規律を維持する観点から財政法で禁止され、発行するには特別の法律が必要です。
平成24年に成立した現在の特例法は今年度で期限を迎えますが、来年度予算案でも国の歳出が税収を大幅に上回り新たな国債の発行が必要なことなどから、政府は「赤字国債」の特例法を事実上、延長させることにしました。
法案では、来年度・平成28年度から平成32年度まで5年間にわたって「赤字国債」を発行できることとし、政府は来年度予算案とともに年明けの通常国会に提出する方針です。
しかし、国の借金が1000兆円を超えて膨らむ中、「赤字国債」の発行をさらに5年にわたって法律で担保すれば財政規律が緩みかねないという批判もあり、今後、論議を呼びそうです。

財政の健全化は進んだのか

政府は、社会保障や防衛、公共事業など「政策にあてる経費」を「税収」や「税外収入」でどれだけ賄えているかを示す『基礎的財政収支』を財政健全化の指標としています。
国の一般会計の『基礎的財政収支』は、今年度当初予算では13兆4000億円の赤字でしたが、来年度予算案では税収が増えることなどから10兆8000億円と赤字幅が2兆6000億円縮小する見込みです。
政府はことし6月に策定した「経済・財政再生計画」で、国そして地方も合わせた『基礎的財政収支』を2020年度までに黒字化することを財政健全化の目標としています。
ただ、ことし7月時点の内閣府の試算では、再来年4月に消費税率を10%に引き上げても2020年度の『基礎的財政収支』は国と地方を合わせて6兆2000億円の赤字が残り、このままでは目標を達成できないという厳しい見通しとなっています。
さらに、来年度の税制改正大綱で再来年4月、消費税率の10%への引き上げと同時に導入される軽減税率で新たにおよそ1兆円の財源が必要となり財政健全化目標のハードルはより高くなっています。
このため政府は計画で掲げた、実質2%、名目3%の高い経済成長率を確実に実現し税収をさらに増やすとともに、歳出を抑える大胆な改革に乗り出すなど『基礎的財政収支』の黒字化を実現するための道筋を明確に示すことが急がれています。

大規模緩和で日銀納付金が減少

来年度予算案では、「歳入」のうち税外収入に計上される日銀からの納付金が大幅に減ります。日銀は大規模な金融緩和策として大量の国債を買い入れていますが、今後、日本経済がデフレから脱却して金利が上昇すると保有する国債の価格が下落し赤字に陥るおそれがあるとしています。
このため日銀は、国債から得られる利息収入の一部を引当金として積み立てる制度を新たに設け、その影響で来年度予算案では日銀の納付金が今年度より2854億円少ない5351億円となる見込みだとしています。
この減少幅はリーマンショックの後の急激な円高で日銀が保有する外貨資産が大幅に目減りする見込みになったことを受けて納付金が3409億円、減少した平成22年度の当初予算以来です。

麻生副総理「財政健全化に沿う予算」

来年度予算案について麻生副総理兼財務大臣は記者会見で、「財政再建をしつつ経済の成長も目指しているが、その両方に配慮した予算になっていると思う。財政健全化の方向に沿っていることは確かで、政府の『経済・財政再生計画』の初年度にふさわしい予算案になったと考えている」と述べました。

加藤一億総活躍担当大臣は臨時閣議の後の記者会見で、「財政再建を図りながらの予算編成の中で、一億総活躍の緊急対策に盛り込んだ施策を進めていくのに必要な予算を確保できた。施策の充実を図りながら、全体としてのバランスを見ながら作ることができた。予算案を踏まえ、まず緊急にやるべき項目について加速化して取り組んでいきたい」と述べました。

河野・行政改革担当大臣は臨時閣議のあと記者団に対し、「2020年度のプライマリーバランス=基礎的財政収支の黒字化に向けて、しっかり取り組んでいかないといけないが、大前提となる経済の成長を踏まえた予算案になっていると思う」と述べました。そのうえで、河野大臣は、記者団が「各府省の事業にむだがないかを検証した『行政事業レビュー』の結果は反映されているか」と質問したのに対し、「しっかり反映されていると思っている。1月に計数を確認して報告したい」と述べました。

民主党の岡田代表は、記者会見で、「消費税の軽減税率について、財源の裏付けのないまま予算案を出してきたことは極めて無責任だ。安倍総理大臣の言う、希望出生率1.8や、介護離職ゼロなどの新しい3本の矢の中身も極めて小粒で、非常にメリハリのない予算案だ。税収が予想より増えれば、それを有効に使いながら、財政再建のためにも国債の発行を抑えていくべきだが、あるものは全部使ってしまえという考え方が、補正予算案にも来年度予算案にも適用されている」と述べました。

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