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【格闘技】

八重樫東、壮絶打ち合いで3階級

2015年12月30日 紙面から

12回を終え、勝利を確信してガッツポーズする八重樫=有明コロシアムで(七森祐也撮影)

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◇ボクシング IBF世界ライトフライ級戦

 ▽29日▽東京・有明コロシアム▽観衆7000人

 八重樫東(32)=大橋=が死闘の末、世界3階級制覇を成し遂げた。IBF世界ライトフライ級王座に挑戦した八重樫は、積極的に打ち合う試合を展開。3−0の判定で新王者になった。ミニマム級、フライ級に続く世界王座で、3階級制覇は亀田興毅、井岡一翔に続き日本人3人目。昨年末にKO負けし、一時は引退も頭をよぎったが、丸1年がかりで悲願を果たした。WBO世界スーパーフライ級王者井上尚弥(22)=大橋=は同級1位の挑戦者に2回TKO勝ちし、初防衛に成功。1年ぶりのリングであらためて怪物ぶりを見せつけた。

 涙が止まらない。勝利の勝ち名乗りを受けた八重樫が、リング上で号泣した。

 幼い3人の子どももリングに上げ、八重樫劇場で始まりだ。

 「やりました。すいません。泣いてしまいました。(昨年の)年末にボクシングやめようと思ったけど、家族とみなさんの“ボクシング見たい”という声に後押しされて、世界のリングに戻って来られました。まだまだ、強いお父ちゃんを見せていきます!」

 リング上で大みそかが誕生日の愛妻にチャンピオンベルトを渡した。

 いつもと違うトリッキーなボクシングだった。両手を下げたスタイルで自在にパンチを繰り出し、何度も王者をぐらつかせた。最終回終了間際には、連打でほとんどKOに追い込んだ。顔はいつものようにはれ上がったが、内容的には完勝だ。

 雪辱戦だった。昨年の12月30日、WBC世界ライトフライ級王座決定戦でペドロ・ゲバラ(メキシコ)の左ボディー一発でもん絶KO負け。屈辱的な敗戦に、引退を真剣に考えた。だが、幼い3人の子どもの「お父ちゃんの試合をまだ見たい」という言葉に背中を押され、現役続行を決めた。

 減量が苦しかったこともあって、当初はフライ級かスーパーフライ級での世界挑戦を目指すかと思われていたが、あえて同じライトフライ級での再挑戦を直訴した。それは、自分自身に打ち勝ちたいとの思いが込められていた。

 これまで、イーグル京和にあごの骨を折られ、井岡一翔とは顔面を変形させながら戦った。誰もが恐れる怪物ローマン・ゴンザレス(ニカラグア)の挑戦を敢然と受け、逃げない姿勢を貫いた。いずれの試合も敗れたが、その生き様はファンの心を激しく揺さぶった。

 そしてこの日、勝って男を上げた。「3階級はおまけ。強い選手と戦うのが喜びです」と言い放ち、さらに万雷の拍手を浴びた。次なる夢は、国内初の世界4階級制覇だ。 (竹下陽二)

 

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