陶芸家×植栽家、新感覚の「盆栽」
球形ランプの中に植えたコケや樹木に陶片を組み合わせた新しい感覚の「盆栽」が、陶芸家清水志郎さん(36)=京都市左京区=と、「Replanter」の名前で活動する植栽家村瀬貴昭さん(35)=同=のコラボ作品として生まれた。京都の伝統工芸から生まれた陶片が、LEDの光で育つ植物の生育の一端を担う。古くからの技と最先端の技術の絶妙なバランスの中で生きる盆栽の魅力を、清水さんと村瀬さんの2人に聞いた。
「スペースコロニー」と名付けた独自の盆栽は、村瀬さんが2012年頃から手がけている。LED照明をともしたガラス製ランプの内部に、水と光、酸素といった植物の生育に必要な環境が整うデザインと仕組みで、中に植え込む木は桜やケヤキといった広葉樹のほか、常緑樹やかんきつ類などさまざまある。
「日当たりのよくない場所でも育てられ、かつ忙しい人でも継続して植物と関わることのできる方法を考えたかった」と村瀬さん。従来のスペースコロニーに清水さんの陶片を組み合わせた作品は、今月上旬に中京区のギャラリー「YDS」で開いた展示で発表した。
清水さんは人間国宝だった故清水卯一さんの孫で、幼いころから土に触れて育ち、現在は自身の工房で茶道具や食器などを中心に制作している。7年ほど前までオブジェを中心に焼いていた時期があったといい、スペースコロニーのために当時の作品を提供した。
直径20センチほどのガラス球の中に植物と一緒に入れるためには作品を細かく砕かなければならず、自分の作品を割っている村瀬さんの姿を見た清水さんは、過去の作品に新たな命を吹き込もうとする様子について、「僕の作品で一生懸命遊んでくれている感じがしてうれしかった」と表現する。
一方、村瀬さんはオブジェに込められたエネルギーに強く引かれたといい、「陶片のイメージに引っ張られるように植え込む木が決まり、全体の作品もできていった」と振り返る。
ガラス球の中の陶片には真っ白なものから赤っぽいものまでさまざまな色味があり、LEDの光を浴びて樹木の根元で輝きを放っている。また、見た目の美しさだけでなく、微細な穴が多数空いた陶片は植物の成長も助ける。「多孔(たこう)質なので、植物の成長に必要なバクテリアが繁殖しやすく、水質を安定させて土や水が腐るのも防いでくれる」と村瀬さん。
2人は、内部が空洞になった土玉を清水さんが焼き、そこに村瀬さんが植栽する合作にも取り組んでいて、「これからも一緒に何かを生み出すことができたら」と話す。
「スペースコロニー」の問い合わせは、「Replanter」のホームページhttp://www.replanter.comから。
【 2015年12月29日 20時00分 】