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講演中の論者。於:横浜市開港記念会館大講堂。

内閣府の調査によれば、平成26年中における自殺者の総数は25,427人と公表されています。減少傾向にあるともいわれていますが、年間に約3万人が自ら命を絶つという現実がそこには存在します。

3万人と仮定すれば、毎日80人弱が自らの命を絶っていることになります。予備軍を含めたら数倍になるでしょう。これらを予防する目的として導入されたストレスチェックには大きな社会的意義があると考えられます。多くのビジネスパーソンがストレスチェックの仕組みについて理解する必要性があります。

●いまさらですがストレスチェックとは

ストレスチェックとは従業員50人以上の企業に年1回のストレスチェックが義務化されるものです。一般的には厚労省が策定した57項目の質問表に則ってストレスの有無を判定し、高ストレスの場合は、ストレス解消のための施策を講じるというものです。

結果については、医師や保健師が判定し、結果は本人にのみ通知されます。原則的には人事権のある上司や人事部が結果を見ることはできないとされています。また本人が希望すれば医師の指導を受けることができます。医師の指導や本人の希望によってジョブサイズの変更や異動などの措置がとられます。

ところが、ストレスチェック判定の受験が促進されないとか、結果が不適切につかわれるのではないかといった懸念があります。つまり、ストレスチェックがメンタル予防のためではなく、メンタル不調者を抽出して不利益な処遇をするのではないかという不安です。例えば、メンタル不調者を休職に追いやって、復職時には産業医がハードルの高い診察をおこない事実上の退職に追い込むということも仕組み上では可能です。

ストレスチェックは試験ではありません。スコアの高低によって成績がつけられるわけではありません。あくまでも受験者が回答することで導き出されるメンタルの状況を把握するものです。結果は受験者の人格や性格を規定するような性質のものでもありません。ただし、このあたりの運用については、各社の状況が分からないことには不安や疑心が消えることはないでしょう。

●すでに対策を講じている企業事例を参考に

ストレスチェックに関しては、施行前から対策を講じている企業が多数存在します。まずは先行事例としてそれらの企業の対策方法を入手したら良いと思われます。専門誌やネット記事にストレスチェックの対策方法として散見することが多いので、情報の入手自体は難しくはありません。

そのなかでも導入が容易である方法を紹介したいと思います。1つは午後に間食の時間を設定するものです。規定時刻(例:15時)になるとチャイムが鳴り、社員は一斉に休憩室に向かいます。そこには、パン、ベーグル、おにぎり、デザート、アイスクリームなど軽食類が所狭しと置いてあります。コーヒー、お茶類がはいったポットが置かれていて、すべて無料で振舞われます。

もう1つは昼寝の時間をとるというものです。通常、昼休みは12時〜13時の1時間に設定されることが多いと思いますが、これらの会社の昼休みは少々長めに設定されています。昼休み時には照明も落とされ、リラックスルーム(マッサージ機なども置いてあります)も常設されているのでリラックスして昼寝をとることができます。

どちらのケースも会社は「疲労は蓄積し易いので休憩時間を定期的にとって習慣つけることでストレス軽減につながれば」というものです。休憩は仕事にメリハリをつけるため一見すれば効率は上がりそうです。

今回、取材を通じて、多くの企業担当者や現場から話を伺いました。しかしストレスチェックの解釈には温度差があり、義務化には至ったものの戸惑いが感じられます。解決すべき課題は未だ山積しています。

尾藤克之
経営コンサルタント/ジャーナリスト

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