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<福岡高裁支部>強姦罪で1審実刑の被告保釈 DNAで別人

毎日新聞 12月30日(水)7時46分配信

 鹿児島市で2012年、当時17歳だった女性に暴行したとして強姦(ごうかん)罪に問われた男(23)の控訴審で、福岡高裁宮崎支部が実施したDNA型鑑定の結果、女性の体内に残された精液から男とは別人の型が検出され、男が今年3月に保釈されていたことが分かった。控訴審判決は来年1月12日に言い渡され、懲役4年の実刑判決とした1審・鹿児島地裁判決(14年2月)が変更される公算が大きい。実刑判決を受けた被告が裁判中に保釈されるのは異例だ。

 事件は12年10月7日午前2時過ぎ、鹿児島市の路上で発生し、同10日、女性が同市で男を見かけ、容疑者であるとして警察に110番。翌月15日、容疑が固まったとして鹿児島県警が逮捕した。男は捜査段階から「酒に酔っていて記憶がない」と無罪を主張している。

 裁判では(1)女性の胸に付着した唾液のような液体(2)女性の体内に残された体液--の二つのDNA型鑑定が焦点になった。鹿児島県警の捜査段階の鑑定は(1)から男と一致するDNA型が検出され(2)から精液は確認されたものの、抽出されたDNAが微量だったため、型の鑑定はできなかった、との結果だった。

 1審判決はこれらの鑑定を重視。(2)について「精液の検出は男から暴行されたとの女性の供述を強く裏付けている」と判断し実刑を言い渡した。

 控訴審では、弁護側の請求を認め、高裁宮崎支部が再鑑定を実施。複数の関係者によると、今年2月に出た鑑定結果で、(2)から男とは別人の第三者のDNA型が抽出され、女性が当時はいていたショートパンツから検出されたDNA型とも一致した。高裁宮崎支部は翌月、男を保釈した。【鈴木一生、志村一也】

 ◇鹿児島県警、鑑定メモ廃棄

 鹿児島市で女性に暴行したとして強姦罪に問われた男の控訴審では、弁護側は鹿児島県警のDNA型鑑定を激しく批判している。精液について「DNA型の特定は不可能」とした捜査段階の鑑定が、福岡高裁宮崎支部依頼の鑑定人によって覆ったからだ。来月の判決が鑑定の妥当性をどう判断するか注目される。

 「簡単に(DNAが)出たのでびっくりした」。2審の鑑定人(大学名誉教授)はこう表現した。県警は型の鑑定ができなかった理由を「DNAが微量だったため」としていたが十分な量があったという。弁護側は「県警の技術は拙劣だ」と批判し、検察側は「県警は女性の体液と精液を極力分離する作業を行っており、鑑定の経過が異なる」と反論した。

 県警の鑑定を担当した職員が、過程を記したメモを廃棄した点も焦点の一つだ。鑑定人は証人尋問で「ノートに一部始終を記録(メモ)するのが普通で明らかに異様」と強く批判。検察側は「(鑑定人のような)研究者と(警察職員では)立場が異なる」と主張し、メモの廃棄は問題ないとの立場だ。【鈴木一生】

最終更新:12月30日(水)7時46分

毎日新聞