米「日韓協調は国益」 中国の増長けん制
乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】：米「日韓協調は国益」 中国の増長けん制
【ワシントン＝吉野直也】オバマ米政権は日韓両国の懸案だった旧日本軍による従軍慰安婦問題が決着したことを受け「歓迎」声明を発表する方針だ。慰 安婦問題を巡っては軍事、経済で台頭する中国への抑止をにらむ米側が同盟国である日韓両国に歩み寄りを促してきた経緯があるからだ。
※(写真)：オバマ大統領（右）は10月に訪米した朴大統領に中国への非難を求めた＝ロイター
慰安婦問題合意のシナリオは日米韓３カ国が周到に打ち合わせてきた成果でもある。米政府で日韓両国を担当する高官は11月下旬から12月上旬にかけてワシントンを離れ、東京とソウルで調整を進めた。両国と詳細に擦り合わせるためだ。
米側がここまで関与したのは慰安婦問題がトゲとなって日韓関係がこれ以上、停滞すれば、米国が脅威と位置づける中国の一段の増長を招きかねないという懸念からだ。アジアで中国優位のパワーバランスの変化を招き、米国の国益を損なうとの判断が背景にあった。
現実に日本と関係が悪化したままの韓国は中国に接近した。日米欧首脳がそろって式典への参加を見送った９月に中国が北京で開いた「抗日戦勝70周 年記念式典」。韓国の朴槿恵（パク・クネ）大統領は式典に参加しただけでなく軍事パレードも参観した。韓国は南シナ海で人工島を造成して領有権を主張する 中国に対し、おもてだった批判をなお控えている。
オバマ大統領は10月に米国を訪問した朴氏との会談で、南シナ海での中国の人工島造成な どを非難するよう求めたが、韓国側がそれを実行に移した様子はない。米政府内では、中韓関係の蜜月は慰安婦問題を巡る日韓関係の悪化が一端で、両国の関係 改善に米側も努力すべきだとの機運が高まった。
日米韓３カ国の水面下の話し合いを知る米政府高官は26日に取材した際「これから日韓の間で起こることについては、この言葉に尽きる」と断ったうえでこう強調した。「日韓関係の改善は日韓両国の国益であり、米国の国益である」
日本側が要請した慰安婦問題を巡る米側の「歓迎」声明のモデルは、安倍晋三首相の戦後70年談話だ。当時、米側が即座に「歓迎」声明を出したことで、韓国 も安倍氏の談話を評価せざるを得なくなったとの認識がある。米国の意向が韓国政府の政治判断に影響を与えるという事実を逆手にとった発想だ。
実際、今回の慰安婦問題でもそのことを織り込んだシナリオが日米で練られた。米側にとって最も困る展開は日韓が合意したにもかかわらず、両国の政権がかわるたびに慰安婦問題が蒸し返されることだったからだ。
米側でこの問題を主導したラッセル米国務次官補は11月、日本経済新聞と韓国・中央日報の共同インタビューで慰安婦問題について「歴史的な突破口をつくる 絶好の機会だ」と言明。「（日韓が）まとまった場合、日本側には恒久的な合意との確信が必要で、永遠に再発する試練があってはならない」と述べ、韓国側が 蒸し返さないようにする方策を探るべきだとの考えを示していた。
元稿：日本経済新聞社 主要ニュース 国際 アジア 【アジアニュース・韓国】 ２０１５年１２月２８日 ２３：１８：００ これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。