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誰かの妄想・はてな版

2012-05-21

従軍慰安婦数の推定

別に真新しくもないですが、パリセーズパーク市に設置された従軍慰安婦記念碑の「20万」という数字についての根拠となる資料です。

 一体どれほどの女性たちが日本軍慰安所に集められたのか、朝鮮人慰安婦の比率はどの程度であったのか、どれほどの人々が戦場から帰らなかったのかというような点については、今日でも確実な答をえるような調査ができていません。

 まず慰安婦の総数を知りうるような総括的な資料は存在していません。総数についてのさまざまな意見はすべて研究者の推算です。

 推算の仕方は、日本軍の兵員総数をとり、慰安婦一人あたり兵員数のパラメーターで、これを除して、慰安婦数を推計するやり方があります。この場合に交代率、帰還による入れ替りの度合いが考慮に入れられます。

研究者たちの推算 

研究者表年兵総数パラメータ交代率慰安婦
秦郁彦  1993  300万人兵50人に1人 1.5   9万人 
吉見義明 1995  300万人兵100人に1人 1.5   4万5000人
(同)  -   -    兵30人に1人 2   20万人  
蘇智良  1999  300万人兵30人に1人 3.5  36万人  
(同)  -   -    -      4   41万人  
秦郁彦  1999  250万人兵150人に1人 1.5   2万人  

参考文献:

 吉見義明 『従軍慰安婦岩波新書、1995年

 秦郁彦昭和史の謎を追う』下、文藝春秋1993年。『慰安婦と戦場の性』新潮社、1999年

 蘇智良 『慰安婦研究』上海書店出版社、1999年

 問題はパラメーターと交代率の取り方であることは明らかです。「兵100人女1名慰安隊ヲ輸入」という言葉が金原メモに見える昭和14年4月の上海第21軍軍医部長の報告にあります(上海第21軍軍医部長報告 金原節三資料摘録より)。この数字を基準に考えれば、兵士100人当たり慰安婦1人ということは、兵士が毎月1回慰安所にいくとしたら、慰安婦は日に5人を相手にして、月平均10日は休んでいるという状態です。

http://www.awf.or.jp/1/facts-07.html

もちろん日本軍政府従軍慰安婦の数について正確な資料を残していないため、部分的な資料からパラメーターや交代率を推定し全体数を推計しているわけですが、歴史研究の手法として珍しいものでもなく、記念碑に記載する数値として「20万人」は不適切でも何でもありません。

数字に文句をつける人たちは、「対案」となる数字を示してみてはいかがかと思います。


それと、虚偽の内容による勧誘や借金による強制、官憲など公権力による圧力で連れ去られ、故郷に帰ることもできない土地に監禁され、売春せざるを得ない状況に追い込んで売春させることは、一般的に見て「性奴隷」と呼んで差し支えないのでいちいち説明不要でしょう*1


追記1

id:s-ryoo 「性奴隷」に関しては慰安婦の約2割居たと言われる志願して慰安婦になった女性達には当てはまらないのでは?彼女らは元々公娼であり「自分のような者でもお国の役に立つならば」との思いで慰安婦に志願したという。 2012/05/22

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/scopedog/20120521/1337621423

うーん、志願して慰安婦になったものの予想以上に過酷な状況を強いられ、しかも帰るに帰れない状況だったという話もありますので、なかなかそうも言い切れません。

廃業の自由が保証されていなかった以上、志願した慰安婦や元公娼であっても「性奴隷」と呼んで差し支えないと私は思います。

あと、何らかの条件をつけて犠牲者から除外しようとする行為は、被害者・被害国からはもちろん、他の海外諸国からも好意的には見られないと思います。

例えば、沖縄戦での犠牲者の何割かは勝手に自殺したのだから、犠牲者数から除外せよと言われてもほとんどの日本人は納得しないでしょう。


追記2

Apemanさんのところにも書いたのですが、abductedと言う言葉で国際離婚で日本人親が子供を日本に連れ帰ってくる行為にも使われる言葉です。日本人親が子供を連れ去るほとんどの場合、直接的に強制するわけではありませんので、虚偽やあるいは他方の親に会えなくてもいいと子供に思わせる行為*2などで日本国内から相手国に戻らせない行為を含めてabductedと呼んでいます。

なので「虚偽の内容による勧誘や借金による強制、官憲など公権力による圧力で連れ去られ、故郷に帰ることもできない土地に監禁され、売春せざるを得ない状況に追い込んで売春させること」を、abductedと呼んでも少なくとも英語圏の人が違和感を覚えることはないと思います。


追記3

このレベルの推定値であれば、歴史上の事件における被害者数の提示として問題はありません。

ネトウヨが好んで言及する大躍進や文革犠牲者数などは、これより荒い推定値ですが特に問題とはされていません。第二次大戦における日本戦没者中の餓死者の割合なども推定値ですが、これもやはりほとんど問題とはされません。

従軍慰安婦数や南京事件犠牲者数のような推定値の場合だけ問題とされるのは問題にしている当人の政治的イデオロギーが偏っているからに過ぎません。

s-ryoos-ryoo 2012/05/24 05:44 問題は志願して慰安婦になった女性達が「志願したのだから自業自得」という論理で慰安婦の支援対象からも除外されて来た事だと思うのですが。
つまり彼女らは二重に見棄てられたのです。

そして強制連行や性奴隷という面に重心を置くとどうしてもそうなってしまいます。

私は慰安婦問題の本当の悲惨さはむしろ戦争終結後にあったと思います。

彼女らが居たから日本軍は南京大虐殺のような大規模な陵辱殺害事件を繰り返さずに済んだのですから、慰安婦に感謝し国が責任持って彼女らの戦後の生活の面倒をみるべきでした。

ところが戦後間もなく政府は慰安婦の存在を否定したのです。(それでも朝鮮人慰安婦などの一部は連合軍に保護を求めたので連合軍は早い時期から慰安婦の存在を把握していました)

このために慰安婦の多くが引揚船への乗船も拒否され東南アジアの各地に置き去りにされてしまいました。
この点に関しては志願した慰安婦だろうと強制連行された慰安婦だろうと違いは無かったのです。

戦後の棄民こそが本当に追及されるべき問題だと思うのですが。

rawan60rawan60 2012/05/24 15:06 s-ryooさん

>慰安婦に感謝し国が責任持って彼女らの戦後の生活の面倒をみるべきでした。

論理的にはそれはもっともだと思うのですが、そもそも論として「「大規模な陵辱殺害事件を繰り返さ」ないように宜しくお願いした」のではなく、「「大規模な陵辱殺害事件を繰り返さ」ないようにするために、軍レベルにおいて女性を大規模に拘束して性処理をさせるという選択を取っていることに問題があります。つまり占領民に対する蔑視観および女性という存在をどう見ているかというジェンダー観ですね。
極論すれば、強姦した人が相手に対して「強姦させていただいて有難うございます」とはならないわけで、それを否認する上においては行為自体の犯罪性は理解できているわけです。この「犯罪者の矛盾」こそが現在までも続いている「否定論」に他ならないのだと思いまし、「棄民」もそれゆえなんだと思いますね。

mizuki-yumizuki-yu 2012/05/24 23:22 >彼女らが居たから日本軍は南京大虐殺のような大規模な陵辱殺害事件を繰り返さずに済んだのですから、慰安婦に感謝し国が責任持って彼女らの戦後の生活の面倒をみるべきでした。

 ・・・・・・・・・・・・あの、すいません、いったい何を言っているんですか・・・・・・・・・?

scopedogscopedog 2012/05/25 00:49 >s-ryooさん
慰安婦の問題は、終戦直後及び戦後の日本政府の対応も含めて非難されています。
なので、きっかけが志願だったかどうかだけで慰安婦を分類すべきではないと思います。

慰安婦問題の実態を述べていく上で、様々な形態があったことを示す事には意味があると思いますし、そういったことは千田氏の著作の時点で既になされています。何れの形態であっても、過酷な条件での売春を強要されたことに違いはなく、戦時性暴力問題であることに変りはありません。
それにはs-ryooさんの言われる戦後の日本政府の対応の問題も含まれていますよ。


あと、mizuki-yu さんのコメントに補足する形で指摘しますと、慰安所を設置しても日本軍による陵辱殺害事件が減ったとは言えず、三光作戦などで強姦・殺害が頻発しています。日本政府が形式的にでも、慰安婦に感謝という形で生活補償をすべきだった、という点には同意できますが、「彼女らが居たから日本軍は南京大虐殺のような大規模な陵辱殺害事件を繰り返さずに済んだ」というのは形式的感謝表明時の修辞表現以上のものではなく、事実とは言いがたいと思います。

zzzzzzzzzz 2012/05/26 01:35 「軍レベルにおいて女性を大規模に拘束して」
とありますが、その根拠がわかりません。
証言も当事者以外の証言ならまだわかりますが、利害関係をもつ元慰安婦の証言を信用するのは問題があります。
当事者である元慰安婦の証言はあまり重要ではないのですが、彼女らの証言は信用する・しない以前に矛盾もあります。
たとえば、韓国挺身隊問題対策協議会が出版した「証言・強制連行された朝鮮人軍慰安婦たち」 に記載された元慰安婦19人のうち
軍人・軍属が強制連行したと主張したのは4人いましたが、そのうち2人が連行された主張した場所に
軍の慰安所は存在せず民間の売春宿があり、残りの2人は裁判で強制連行とは異なる証言をしています。
また、ご承知のように組織的な強制連行を裏付ける物的証拠はみつかっていません。
逆に、慰安婦は飲酒した軍人は客として断ることができるとか、軍人がいくらの料金を払っていたかの看板などの物証は見つかっています。
どういう理由で、帰されることがなかったといえるのか根拠を示してください。

rawan60rawan60 2012/05/26 13:01
>その根拠がわかりません。

専門領域の成果を無視するのなら、8万人とも20万人とも言われる「慰安婦」の人たちをアジア各地へ派遣し、軍人専用の慰安所を設営するという大規模かつ超法規的行為が、当時の権力の中枢であった軍の主導なしで可能であったという根拠の一端でもまず示してください。

>当事者である元慰安婦の証言はあまり重要ではないのですが、

当事者の証言が重要でないとするあなたの思考はもはや異常です。

>残りの2人は裁判で強制連行とは異なる証言をしています。

何度も繰り返されていますが、慰安婦になるまでの過程は一様ではありません。暴力拉致だけが問題と勝手な規定をして話をされても単なる「裸踊り」ですよ。
日本軍による「従軍慰安婦」「戦時性暴力」の被害者は「元慰安婦19人」だけではないのですし、瑣末な証言不一致や記憶違いなどをあげつらうことで否定しようがないことぐらいいいかげんに認識してください。

>ご承知のように組織的な強制連行を裏付ける物的証拠はみつかっていません。

一般論として、犯罪者は自分の犯罪証拠をわざわざ用意してばら撒いたりしません。

>慰安婦は飲酒した軍人は客として断ることができるとか、軍人がいくらの料金を払っていたかの看板などの

そういう規定のあることが「軍レベル」であったことのひとつの証明じゃないですか。内を言ってるのですか?

ブログ主さんも書かれていましたが吉見義明教授の「従軍慰安婦」くらい読んでください。
また、以下のサイトはよくまとまっているので、リンク先の資料ともども読んでみてください。

http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%BE%B7%B3%B0%D6%B0%C2%C9%D8

聞こえ大君聞こえ大君 2012/05/30 19:37 >>当事者である元慰安婦の証言はあまり重要ではないのですが、
?>当事者の証言が重要でないとするあなたの思考はもはや異常です。
>>ご承知のように組織的な強制連行を裏付ける物的証拠はみつかっていません。
?>一般論として、犯罪者は自分の犯罪証拠をわざわざ用意してばら撒いたりしません

?、?の言葉は意味がありません。証拠が見つかっていないと言っている事になりますが?
裁判や議論において、一般的な見解は基本的に無意味です。
証拠はないのですか?
ここのブログは素晴らしい、皆さん議論に熱心だ。私は慰安婦はいたと思っていますし、強制もあったと思っています。

聞こえ大君聞こえ大君 2012/05/31 01:39 >ブログ主さんも書かれていましたが吉見義明教授の「従軍慰安婦」くらい読んでください
いろいろ調べましたが、吉見教授自身も『証拠は見つからなかった』と公言している事が分かりました。
証拠もないのに、吉見義明教授の「従軍慰安婦」を読む事にどのような意味があるのでしょうか?
誰か、証拠を示してください。このままでは、強制に関しては議論の対象にならないと思います。

rawan60rawan60 2012/06/04 02:15 >いろいろ調べましたが、吉見教授自身も『証拠は見つからなかった』と公言している事が分かりました。

公言なんてしていません。
それが「「従軍慰安婦」くらい読んでください」の答えになっているとでも思ってるの?
提示サイトも読んでいませんね。ほんとにいいかげんな人だ。

聞こえ大君聞こえ大君 2012/07/15 14:16 rawan60さん
あなたの言われるとおり吉見教授は軍の関与を述べていました。
吉見教授は、『陸支密大日記』の「軍慰安所従業婦等募集に関する件」で軍の関与を示す証拠を発見していました。中身は
「内地にて民間業者が誘拐まがいの方法で慰安婦を募集することの疑いで官警の取調べを受けたり、みだりに軍の名を使って慰安婦募集をする民間業者がいるので、そういうことのないよう軍と地元官警でしっかり管理するように」
で、確かに軍が関与していました。私は軍は全く関与していないものとおもっていました。軍は関与してたんですね!
どうもありがとうございます。

さらし狼さらし狼 2012/09/01 03:05 rawan60さん
あなたの論理は循環しているなぁ〜
自分のことを吟味できない人には議論は向いてないと思いますよ?

rawan60rawan60 2012/09/01 23:32 「循環」ってのは、基本書一冊読まず、事実関係の認識も出来ておらず、国際的評価も踏まえず、論証も出来ず、私的な願望や妄想で20年前から同じことばかり繰り返すことだよ。
ちなみに「自分のことが吟味」出来ているらしい「さらし狼」くんはどんな理路整然とした議論が展開できるのかやってみてもらえるかな?

最近の大学でありがちな光景最近の大学でありがちな光景 2012/09/02 07:01 rawan60君、それは国語の問題なのですよ。
近頃では、「色々調べる」=「ネットでテキトーに検索してみる」ということになっているのです。
「先生、ネットで検索しても答えが見付からなかったので、課題が提出できませんでした!」
これが通用すると思っている若者も少なくないのです。
逆を言えば、ネットで見付からなければ存在しないことと同じとみなされるのです。
古今東西、ありとあらゆる知識がネット上に置かれていると信じ切っているのです。

rawan60rawan60 2012/09/02 18:29 最近の大学でありがちな光景 くん

>rawan60君、それは国語の問題なのですよ。

「国語」という言葉でどこへ逃げ込みたいのか知りませんが、批判していることをそのまま肯定してバックれるというのはまさに幼児的「循環」ですな(笑

>古今東西、ありとあらゆる知識がネット上に置かれていると信じ切っているのです。

いや、根本的な問題は、自分に都合のいい情報だけを選択し、無根拠に信用する姿勢でしょう。ちゃんとまともな情報源を提示されても見ないんですから、そんな言い訳は通用しませんよ。

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