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在宅医療の高齢者、48%に「不適切」薬…副作用も
副作用の恐れがあるため高齢者に「不適切」とされる薬が、在宅医療を受ける高齢患者の48%に処方され、うち8%の患者に薬の副作用が出ていたという大規模調査結果を、厚生労働省の研究班がまとめた。高齢者の在宅医療で処方の実態が全国規模で明らかになるのは初めてという。同省では高齢者に広く不適切な処方が行われている可能性があると見て、来年の診療報酬改定で薬の適正使用を促す枠組み作りに乗り出す方針だ。
高齢者は薬の代謝機能が衰えるため副作用が出やすい。近年欧米では高齢化に伴って社会問題になり、学会などが高齢者には避けるべき薬のリストを作っている。日本にも同様の基準はあるが医療現場には浸透しておらず、高齢者に深刻な副作用が出たとの報告が相次いでいる。
厚労省研究班は2013年、高齢患者の飲む薬の全容を把握するため、通院が困難な患者を医師が訪問する在宅医療に着目。医師と連携した薬剤師が訪問業務を行う全国3321薬局に調査を実施した。1890薬局が回答し、在宅医療を受ける65歳以上の患者4243人の処方薬を把握した。同研究班がこのデータを米国で高齢者の処方指針とされるビアーズ基準の日本版に基づき分類すると、2053人(48・4%)に「不適切」とされる薬が処方されていた。
このうち165人(8%)に副作用が認められた。複数の薬の副作用が出ている例もあった。最も多かったのはベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬で、ふらつき、眠気、転倒、記憶障害の他、妄想や幻覚などの副作用が出た患者もいた。心不全に使うジゴキシンは食欲不振や中毒、胃潰瘍や精神症状の改善に使われるスルピリドでは震えやこわばりなどの副作用があった。
研究代表者の今井博久・国立保健医療科学院統括研究官は「副作用の少ない代替薬があるので、不適切な処方を漫然と続けるべきではない。医師と薬剤師が連携して処方内容を見直す体制作りが必要だ」と話している。
(2015年12月28日 読売新聞)
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