■南極の氷、温暖化の中でなぜ増えてるの?
スーちゃん 地球温暖化が進んでいるのに南極の氷は増えているの? そんな話があるって聞いたよ。北極の氷は減っているんでしょ。なんでそんなことが起きるのかな。南極は温暖化していないの?
■発生した水蒸気が高い山で冷やされるんだ
森羅万象博士より 米航空宇宙局(NASA(ナサ))が11月に人工衛星が観測した情報を分析した結果を発表した。それによると南極は氷が増えている。
南極の氷といっても陸地にある氷と、海がこおった氷がある。人工衛星の画像をみると、南極大陸のまわりの海には氷が広がっている。南極大陸の氷は厚さが平均で3000メートルくらいある。氷の大部分は陸地にあるんだ。
北極には陸地がないから海の氷だ。1970年代から続く人工衛星の観測で、北極の氷は減り続けているとわかっている。2012年9月には氷の面積が最小になった。
南極大陸はオーストラリア大陸よりもずっと大きい。かなり広いから、場所によって氷の様子がちがう。例えば、S字の形に細長く伸びた南極半島や西側の西南極では氷が減っている。陸地から海に向かってせり出す巨大な氷がくずれる様子をニュースで見たことがないかな。これは主に西南極で起きているんだ。
これに対して、南極点や日本の昭和基地がある東南極では氷が増えているんだ。NASAのチームは西側の減少分よりも東側の増加分が多く、全体としては増えたと結論づけた。1992~2001年の平均で年に1120億トンずつ増え、03~08年では毎年820億トン増えた計算だ。
南極では温暖化が止まったのかな。そうではない。実は温暖化しているから、氷が増えたといえるんだ。
海の水温が上がると、雲のもとになる水蒸気がたくさんできるようになる。水蒸気を含む空気は軽いから上空にのぼる。それが南極大陸へ流されると、とても寒いから雪になって降る。雪が積み重なって圧縮されて氷になるんだ。
でも北極では同じことは起きていない。南極の方がより寒いからだ。
南極の氷は海からの高さが3000メートルくらいある。しかし、北極の氷の厚さは10メートルくらいしかない。高い山の方が気温が低いことは知っているよね。もうひとつは南極は大陸で、海よりも冷たくなりやすいんだ。
南極では、雪はしんしんとは降らない。空気中の水蒸気はこおって小さな氷のつぶになって地上に落ちてくる。晴れて日の光が当たるとキラキラと光るから「ダイヤモンドダスト」と呼ばれている。
雪は暴風雪になることもある。これが「ブリザード」で、風は秒速50メートルを超すような大型台風並みになる。沿岸部でよく発生して、雪を内陸の奥深くへ送り込む。
実は、南極では陸地だけでなく海の氷も増えている。日本の南極観測船「しらせ」は12年と13年に分厚い海の氷にじゃまされて昭和基地の沿岸にたどりつけなかった。人工衛星の観測で、14年9月には最も氷の面積が大きくなった。南極の海の氷が増える仕組みはよくわかっていない。
ただ、陸地の氷の増加ペースはにぶっていて、この先も増え続けるのかはわからない。そのうち減少に転じるかもしれないんだ。
■海面上昇、体積増加も原因
博士からひとこと 地球温暖化によって海面が上がると心配されていることは知っているかな。国連機関の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、世界の海面は1971~2010年に平均で8センチメートル上がった。
陸地の氷がとけることが原因のひとつといわれている。グリーンランドの氷やヒマラヤのような高い山にある氷河は気温が上がって大きく減っているからね。
でも、最も大きな要因は温度が上がって海水そのものの体積が増えることなんだ。IPCCの専門家はこの40年間に海面が上がった8センチメートルのうち4割が海水の体積が増えたためだと分析しているよ。
(取材協力=藤田秀二・国立極地研究所准教授)
[日経プラスワン2015年12月26日付]
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【問題】
1辺が8センチメートルの正方形ABCDがあります。図のようにそれぞれの辺の上に点E、F、G、Hをとり、HとFを結びました。次にHとFを結んだ線の上に点Pをとり、PとE、Gを結ぶと、四角形AE…続き (12/29)