あさがおさん観察日記 '15

2015年12月28日(月) 21:19

日本のTCGに深く静かに忍び寄る本当の危機

 今から表題の件でお話を進めるんですけど、以下の内容には日本のTCGに深く関わりがあればあるほど、またTCGというゲームにご自身の人生を依存されていればいるほど、読み進めると背筋が凍り付く内容が含まれておりますので覚悟を決めてお進みください。

 最近 Twitter の方で日本のTCG考的なお話をつらつらと書かせて頂いています。それで何回かに分けて書いた内容と、それに対して頂いた反応などを振り返って、私の中に1つある素朴な疑問が浮かんできました。はっきり言いますけど、これTCGに深く傾倒されている心臓の弱い方には非常に劇薬を含む内容ですので、ここで再度予告しておきます。宜しいでしょうか。ではその疑問を書きます。


ぶっちゃけ言って最近日本で
子供達はTCGを遊んでるの?


 いや、これ考えれば考えるほど答えが「NO」になる状況証拠しか出てこないんですよ。日本で一番売れてるTCGは間違いなく遊戯王でしょうけど、遊戯王は1999年の発売から間もなく18年が経とうとしています。そういうゲームを今も現役の子供達が$泊スい趣味趣向の中から選んで遊んでるんですかね?だって普通に考えれば昔から遊戯王を遊んできてカード資産も経験も豊富な大人に勝てるわけがない訳で、何かの弾みで興味を持って手を出しても途中で心折れるでしょう。それこそ Magic の Legacy 環境辺りを考えてみれば明白な話です。これは2002年に発売されたデュエル・マスターズにしても状況は似たようなものでしょう。

# ポケモンTCGは今でも子供向けっぽいですけど日本での市場規模は大したことないですし。

 そして更に。最近子供向けに発売されているキッズTCGの代表格というと多分バディファイトなんですけど、バディファイトが今の子供達にうけて浸透しているとしたら、最近出てきているデータのような市場規模(シェア)で留まってるわけがないんですよ。(この部分は木谷社長に読まれたらめっちゃ怒られそうだけどなあ。 (^_^; )昔からのキッズTCGは今や大人の遊びになっていて、最近のキッズTCGはさほど子供達に浸透していない。じゃあ今の子供達はどこで何を遊んでるのか。そう考えると「多くの子供達の遊びからTCGという選択そのものが外れている」という可能性を見るしかないのです。

 皆様は最近になって日本のプロ野球やサッカーの世界が起こしている様々な動きや施策をご覧になっていますでしょうか。そういう世界では以前から「子供達が野球やサッカーを遊ばなくなっている」という話が言われていて、関係者が明確な危機感を持って事を起こしています。子供達が野球やサッカーに興味を持たなくなるというのは、短期的にはTV中継の視聴率や試合の観客動員数に影響しますけど、更に中長期的に見ると野球やサッカーの人気を支えてくれる有力な選手やスタッフの確保が出来なくなることを意味します。つまり野球やサッカーのプロ組織が維持できなくなるのです。そのためプロ野球やサッカーは10年20年後を見据えて様々な工夫をしていますし、もっと言うとその近未来に対して物凄い危機感を持っています。

 じゃあTCGはどうなんだということです。おそらく日本のTCGが現役の子供達の興味を引けなくなっているという状況は既に数年前には始まっていると考えられます。そしてTCGの世界でそういう状況に対して明確な対策を打ったのはブシロードというかバディファイトだけで、ただし実際にはそのバディファイトも必ずしもうまく行ったとは言えない状況にあります。そうなると日本の子供達のTCG離れがどういう状況にあるのかは想像が付かないですし、実は我々が思っている以上に深刻な状態かもしれません。本来そういう状況はまずTCGの販売低迷という形で現れるのですけど、今はどういう訳か大人がその分を買い支えてしまっていて表に出ていないのです。ただし半分は投機目的なんですけどね。だから発売から数ヶ月程しか経っていない現行で使えるカードがめっちゃ値上がりしちゃってたりするわけで、そう見ると今起こっている現象に一定の説明が付きます。子供がパックを買って開けないから人気のあるシングルカードが意図も簡単に高騰するのです。

 もっと言うとこんな状況はこの先10年は続きません。続けられないと言った方が正確でしょうか。今の子供世代からTCGにプレイヤーが供給されていないということは、今の大人が諸事情でTCGからドロップアウトしていく分を補えないことを意味するからです。更に20年も経ったら日本にはTCGを作れる人間も売る人間もイベントをやる人間もいなくなります。そうなったらTCGというジャンルの存続は不可能でしょう。あれだけの人気稼業である野球もサッカーもこの状況に恐怖して策を講じていて、しかしそれでも将来を楽観できる状況にはありません。それで何もしていないTCGがどうにかなるとは思えないですし、世の中はそんなに甘くはないです。物凄く平たく言ってしまいますけど、このまま行けば多分20年後には日本のTCGは滅びます。そしてそれは販売低迷なんて分かりやすい理由ではなく、作る人も売る人もイベントやる人もいなくなる事による自然消滅です。おそらくこの滅びは深く静かに進行し、多分誰にも話題にされることなくその時を迎えると思います。例えばシューゲーとか格ゲーといったアーケードゲームがそうなったようにです。

 ではそういうTCGの自然消滅を防ぐ方法はないのか。これは全くないわけでもありません。これはおそらく北米で今実際に起こっている状況なんですけど、北米のTCGというかCCG市場は「実質的にすべてのリソースが Magic:the Gathering に集約することで生き残ろうとしている」と思われます。これって日本の状況からは信じられないですし、私も自分で書いてて信じられないんですが(笑)。ただ北米のCCG界隈は、TCGを作りたい人も売りたい人もイベントやりたい人も、そしてもちろん遊びたい人達も、ほぼ全部が全部 Magic に集まっているから生き残れちゃったりしてるんですよ。日本でもなんだかんだ言って遊戯王界隈は賑やかで残ってるじゃないですか。あれのもっとかなり極端な状況が起こっている感じです。何しろ今や北米のCCG販売店は実質的に Magic で食ってますからね。

# ただし念押ししておきますけど北米のCCG市場は必ずしも成功した市場ではありません。実際問題としてその全体の規模は日本より小さいのです。その市場の Magic への集約率が今や半端ない感じではありますが。皆が Magic に集まれば Magic を始めたばかりの初心者が自分と同じレベルのプレイヤーを探すのも簡単なので続けやすくなるのです。

 ただ北米での Magic の安定感に比べて、遊戯王は・・・コナミが・・・コナミが・・・(以下自主規制)。 (^_^; もっと言うと木谷社長はこんな話にはとうの昔に気が付いてて、それ故ブシロードブランドが遊戯王の代わりに日本のTCG界隈を集約する役割を担えるように育てようとしているわけです。私が自分であまり遊んでもいないブシロードに注目して応援している理由もこれです。でもやっぱりジャンプの連載マンガやアニメを起爆剤にしたブームを経験した遊戯王は強いというかしぶといですよねえ。個人的にはブシロードにあれの再現を是非やって欲しいですし、逆に出来ないと日本のTCGの先行きが本気で心配になります。果たして忍び寄る消滅の危機に間に合うのかどうか。間に合ってくれないと色々な人達が困るというか路頭に迷ったりするのですが。

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