慰安婦合意:「最終的かつ不可逆的」明言、韓国は対日カード失う懸念も

 さらに大きな問題は、日本の「責任」に関する言及から慰安婦動員の「強制性」が脱落したことだ。岸田外相は「軍の関与」とだけ語った。外交筋は「日本の国家的、法的責任が問題となるのは、慰安婦の強制動員にもかかわらず、その部分が不十分だ。日本が痛感する責任が結局は『道徳的』な見地だと言っても反論できなくなるのではないか」と指摘した。安倍首相が表明した「おわびと反省」も過去の日本の内閣談話や慰安婦被害者に送ったおわびの書簡の内容と同じで、前進したと評価するのは難しそうだ。韓国政府筋は「右翼傾向の安倍政権を相手にこれだけの表現を引き出したことは評価に値する」と述べた。

■日本政府の予算で支援財団

韓国側の要求貫徹、岸田外相「賠償はない」発言が論議

 岸田外相は同日の会見で、「日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が元慰安婦の方々の名誉と尊厳を回復し、心の癒しのための事業を行う」と表明した。韓国政府が創設・運営するが、財源は日本政府が約10億円規模で負担する慰安婦支援財団を設けるという話だ。

 これはアジア女性基金の失敗を教訓にしたアイデアだ。日本が慰安婦被害者支援のために95年に設立したアジア女性基金は、日本政府の予算に日本国民の募金を加えて運営した。1人当たり300万円の医療・福祉支援金は日本政府の予算だが、200万円の慰労金は民間募金だった。特に慰労金の名称である「償い金」をめぐっては、慰安婦被害者関連団体が「日本が法的賠償義務を回避するために手段だ」として強く反発した。

 新たに創設される財団は日本政府の予算でのみ運営されるという点でアジア女性基金の限界を克服したと評される。しかし、慰労金の名称がまだ決まらず、論議の余地が残されている。韓国外交部周辺からは暫定的に「慰安婦被害者の名誉・尊厳回復および心の傷の治癒金」という表現が浮上している。しかし、慰安婦被害者の関連団体は既に「賠償金とは言えない」として反発の動きを見せている。法律的には賠償は不法行為によって生じた損害に対して支払うもので、補償は過ちはないが、単純に損失を生じさせた際に支払うものだ。また、償い金とは法的な概念なしで使われ、「慰労金」と似た表現だ。

李竜洙(イ・ヨンス)記者
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