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アプリで早期発見 認知症“5人に1人時代”
12月26日 13時19分

アプリで早期発見 認知症“5人に1人時代”
2025年には、高齢者の5人に1人がなるかもしれない認知症。親は、そして自分は大丈夫なのか、気になる人も多いと思います。今、最新の認知症研究を基にITを活用して、その兆候を早期に発見するための新たなサービスが次々と登場、注目されています。

アプリで家族がチェック

アプリで家族がチェック
スマートフォンが急速に普及するなか、認知症の疑いがないかチェックすることができるアプリがたくさん登場しています。その多くが、臨床の現場で広く使われている検査を基に自分でチェックする仕組みです。しかし、認知症の人は自分が認知症である事実を認めたくないために、検査を嫌がる傾向があると指摘されています。
そこで登場したのが、家族など周りの人が簡単にチェックすることができるアプリです。その1つ「認知症に備えるアプリ」は、ことし8月から配信を始め約2万人がダウンロードしました。対象になる人のふだんの様子から、次の4つの行動ができているかどうか質問に答えると判定してくれます。質問はイラストを使って具体的な行動がイメージできるようになっています。

1、複数の仕事や作業を並行してできるか。
2、お金などの計算ができるか。
3、季節にあった服を選べるか。
4、同じものを何度も買っていないか。

このアプリは、東京・大田区の3つの医師会と東京大学大学院のグループの研究を基に作られました。医師会などが300人近い認知症の患者を詳しく調べた結果、4つの行動が認知症と深く関わっていることが分かりました。さらに、年齢と性別のデータを組み合わせることで、約90%の正確さで認知症の疑いがあるかどうか判定できるということです。
研究グループの1人でNPO法人「オレンジアクト」の高瀬義昌医師は「家族だけでなく、高齢者と接する機会が多い薬剤師やケアマネージャー、それに交番勤務の警察官など周りの人が認知症に早く気付くことができれば、その後の適切な対応につなげることが、できるようになるのではないか」と話しています。

認知症700万人へ 早期発見が課題

厚生労働省の研究班によりますと、認知症の高齢者は10年後の2025年には700万人前後に上り、65歳以上の人の5人に1人に達すると推計されています。これに予備群と言われるMCI(=軽度認知障害)の人を加えると、その数は2倍近くに増えるとみられています。認知症の治療薬はまだありませんが、進行を遅らせる薬や認知機能を向上させる運動療法などがあります。いずれも十分な効果を挙げるには、早期発見が重要だと言います。

認知症の兆候 ことばでキャッチ

認知症の兆候 ことばでキャッチ
認知症予備軍のMCIを、ITを活用して発見しようという研究も始まっています。奈良先端科学技術大学院大学と和歌山大学が開発したシステムは、パソコンの画面に表示される質問に口頭で答える仕組みです。
質問は「学生時代に頑張ったことは何ですか」「最近楽しかったことは何ですか」などの3つで、それぞれ3分間以上、話してもらいます。そして、コンピューターの音声認識と言語処理の技術を使って、話の中に含まれる語彙の量を計り、判定します。画面右下のメーターで示される語彙量の合計が、認知症ではない人の平均値の7000を大きく下回ると、MCIの疑いがあるということです。
奈良先端科学技術大学院大学の荒牧英治特任准教授は、1300人余りのデータを基に、使っていることばの量や話すスピードなどが、認知症の程度によってどのよに変化するかを調べました。その結果、認知機能の衰えと語彙の減少に相関関係があることが分かったということです。荒牧准教授は「約70%の正確さで判定することができる」と話しています。
現在、ウェブ版(http://sociocom.jp/talk/start.html)とアプリが試験的に公開されています。
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荒牧准教授は「研究では、認知症が発症するはるか前からMCIなどによる語彙量の減少が始まっていることも分かりました。話の内容が具体的かどうかなど認知症との関係が疑われるほかの指標も組み合わせることで、もっと精度を上げられると考えています。ことばに着目することでより早い発見につなげていきたい」と話しています。
現在、京都大学医学部附属病院と共同で臨床実験が進められていて、来年春にも完成版のアプリを公開する予定です。

備えることの大切さ

備えることの大切さ
認知症の兆候を早期発見するためのアプリやウェブサイトですが、大切なのは「疑いあり」の判定が出たあとの対応です。速やかに医療機関で詳しい検査を受け、進行を抑えたり、認知機能の向上を図るための治療などを受けなければなりません。
最初に紹介した「認知症に備えるアプリ」では、事前に名前や住所などを入力しておくと、「疑いあり」の判定が出た場合、近くにある専門病院や自治体が設置する支援センターを紹介する画面が自動で表れます。現在、こうした情報を提供できるのは東京都内の一部地域だけですが、アプリを開発したNPOでは、10年以内に全国の100自治体に広げたいとしています。
NPOの高瀬医師は「振り込め詐欺や契約トラブル、それに高齢者の交通事故なども認知症との関連が疑われていて、認知症であることに早く気が付けば、事件や事故を減らすことができるかもしれません。認知症から逃げるのではなく社会全体として前向きに取り組むべき病気です。備えることの大切さをアプリを通じて広めていきたい」と話しています。
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