原発賠償は終わりにしよう
「賠償金でパチンコ、高級車」。よく耳にするこんな話だけでは本質は捉えられない。移住しようとしても帰還しようとしても、賠償金の格差が人々を曇らせてきた。損害賠償では未来は作れない。
大江紀洋の視線
避難区域にたびたび通ってきた人間として、そこに盛り込んでもらいたいことが一つある。それは「損害賠償の打ち切り」だ。
ある程度の期間分を算定して一括で前払いする、弱者への対応は別途用意するなど、細やかな制度設計は必要だろうが、震災後5年というこのタイミングで、避難区分などによらず、全域における「打ち切り」という方向性を打ち出していくことが、福島の未来のために必要ではないだろうか。 一定額をまとめて支払うというやり方は突飛なことではなく、既に一部で実施されている。放射線量が最も高い帰還困難区域では、当初解除の見込みがない事故後6年強について精神的損害賠償が支払われていたが、2013年12月の中間指針第4次指針を受けて、長期間の故郷喪失に伴う慰謝料として700万円が一括で追加支払された(合計1人あたり1450万円)。
初めから一括金がよかった
原発賠償を終わらせよう
もちろん、賠償の継続や増額を求める声はある。しかし、一方で、賠償金の有無や多寡をめぐって、たくさんの軋轢が起きていることも事実である。とくに、避難者と、賠償を受けていないもともとの住民が混在している南相馬市やいわき市では、「賠償金をもらいすぎだ」という声も多く耳にする。

いわき市では、避難者が賠償金を使って立てた新居に対し「賠償御殿」と揶揄する声も出ている。道路も病院も混雑し、3月18日発表の公示地価では、なんといわき市が住宅地の上昇率で全国トップ10を独占した。アパートを借りるのもままならない状況に、もともとの住民のストレスは高まっている。
現状、支払われている賠償金は不十分なのだろうか? 実は、これまで合意に達して支払われた賠償金の平均額はきちんと開示されている。最新の資料は、2014年12月末時点でのもので、原子力損害賠償紛争審査会の配布資料として公開されている。
これによれば、4人世帯の場合、詳細は表のとおりだが、個人賠償(精神的損害賠償、避難費用、就労不能損害等の計)は4人合計で約4000万円、宅地・建物で約4000万円、家財で約500万円、田畑・山林で約500~1000万円、住宅確保損害で約2000万円が支払われている。
これらの各項目ごとの平均額は、それぞれ母集団が異なる(全てを請求しているとは限らないし、持家や田畑は所有している人といない人がいる)ため、足し上げることには注意を要するが、単純合計すれば、帰還困難区域で1億5318万円、居住制限区域で1億503万円、避難指示解除準備区域で1億351万円となる。
賠償金がどの程度であれば適切かという判断は非常に難しいが、政治のリーダーシップでそろそろ区切りを示していくことが欠かせないのではないだろうか。
(Wedge編集長 大江紀洋)
現状、支払われている賠償金は不十分なのだろうか? 実は、これまで合意に達して支払われた賠償金の平均額はきちんと開示されている。最新の資料は、2014年12月末時点でのもので、原子力損害賠償紛争審査会の配布資料として公開されている。
これによれば、4人世帯の場合、詳細は表のとおりだが、個人賠償(精神的損害賠償、避難費用、就労不能損害等の計)は4人合計で約4000万円、宅地・建物で約4000万円、家財で約500万円、田畑・山林で約500~1000万円、住宅確保損害で約2000万円が支払われている。
これらの各項目ごとの平均額は、それぞれ母集団が異なる(全てを請求しているとは限らないし、持家や田畑は所有している人といない人がいる)ため、足し上げることには注意を要するが、単純合計すれば、帰還困難区域で1億5318万円、居住制限区域で1億503万円、避難指示解除準備区域で1億351万円となる。
賠償金がどの程度であれば適切かという判断は非常に難しいが、政治のリーダーシップでそろそろ区切りを示していくことが欠かせないのではないだろうか。
(Wedge編集長 大江紀洋)
生活再建のステージへ
賠償金 国債9兆円回収は30年後
東電支援の新たな総合特別事業計画(再建計画)は、国が機構に交付する国債の限度額を5兆円から9兆円に引き上げた。検査院は9兆円を全額交付し、回収の際に東電が支払う特別負担金を再建計画で仮に設定されている500億円とするなどして試算。さらに機構が持つ東電株1兆円の売却益が1兆5千億円にとどまるとした場合、全額回収は30年後で、利息は約1264億円とはじき出した。
宅街。一本の通りを挟んで対照的な景色が続く=福島・いわきニュータウン
■首相、夏までに集中復興期間後の支援枠組み策定を明言 安倍晋三首相は3月10日夜、首相官邸で記者会見し、集中復興期間が終了する平成28年度以降の復興事業について、今夏までに次の5年間の新たな支援の枠組みを策定すると明言。財源については「地方負担のあり方を含め、被災地に耳を傾けつつ丁寧に検討する」と説明した。(産経ニュース 2015.3.10)
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