路上禁煙条例 「煙なしでアウト」の理屈とは
名古屋や大阪は罰則対象外 千代田区や横浜は禁止対象
全国の自治体で路上喫煙を禁止する条例の制定が進んでいるが、煙や灰が出ないことを売りにする新型たばこへの対応が分かれている。名古屋市や大阪市は「やけどのおそれがない」などとして罰則の対象外だが、東京都千代田区や横浜市は、紙巻きたばこと同様に禁止対象だ。自治体で対応が異なる、火を使わない新型たばこは、新たな“火だね”になるかもしれない。
新型たばこは専用容器に入れたタバコ葉を電気で加熱し、ニコチンを含んだ蒸気を吸う。日本たばこ産業(JT)は2013年に「プルーム」を発売。フィリップモリス・ジャパン(PM)は名古屋市での試験販売を経て今年9月、東京、神奈川、大阪など12都道府県で「IQOS(アイコス)」を売り出した。PM社は「煙、灰が出ず、臭いも少ない」とPRする。
一方の路上喫煙禁止条例は、指定区域での喫煙に1000〜2000円の過料を徴収している。喫煙について、名古屋市は「やけどのおそれや被服を焦がすなど危険な行為」、大阪市は「火のついたたばこの所持」と定義する。新型たばこはこれに当てはまらない、との解釈だ。
逆に、横浜市や全国初の条例を制定した千代田区は、新型たばこもタバコ葉を使っていること、たばこ税が課税されていることを理由に過料対象としている。吸い殻にあたるごみも出ることから、千代田区安全生活課は「ポイ捨て禁止の観点からも紙巻きたばこ同様と判断した」と話す。
店内禁煙の飲食店の一部でアイコスの利用を認めるなど新型たばこの認知度は上がっている。大阪市事業管理課は「条例制定時には想定しえない状況になってきた。今後、利用者が増えれば、対応を改める必要があるかもしれない」と話した。
国内外の喫煙対策に詳しい産業医科大の大和浩教授は「受動喫煙の恐れもある。条例の精神からすれば、紙巻きたばこの類似品は一律に過料対象とすべきだ」と指摘。「喫煙習慣を続けてしまう商品に、自治体がお墨付きを与えるのはおかしい」として、名古屋市などの判断に疑問を投げかけた。都市間で扱いが違うことについて販売2社は「行政や施設管理者の判断すること。利用者は(自治体などの)指示に従ってほしい」などとコメントした。【山口朋辰】