<科学の森>113番元素命名権、近く結論 発見認定 理研か、米露チームか
理化学研究所、米国・ロシアチームがそれぞれ「発見した」と主張している新元素(原子番号113)について、国際学会が近くどちらを発見者と認めるかの結論を出す見通しになった。理研が認められれば初の「日本生まれの元素」として周期表に掲載される。【斎藤広子】
元素周期表は、化学的な性質が似た元素同士が規則的に並ぶように配置した表だ。原子番号(陽子の数)が1の水素から始まり、2のヘリウム、3のリチウム……と順に並べられている。自然界で安定的に存在できる元素は限られている。原子番号92のウランより重い元素は全て人工的に合成され、未確定を含めて118番まで発見の報告がある。
元素の名前を提案する権利は、発見したと認定されたチームに与えられる。審査は国際純正・応用化学連合(IUPAC)と国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)の合同作業部会が実施。IUPACは8月中旬、韓国・釜山で開かれた会合で、未確定となっている113番、115番、117番、118番の元素について、合同作業部会が審査結果をすでに論文にまとめたことを明らかにした。近く公表されるとみられる。
113番元素を巡っては、森田浩介・理研グループディレクター(58)のチームが、亜鉛の原子核(陽子30個)を加速器で光速の10%まで加速して重金属ビスマスの原子核(陽子83個)に衝突させて核融合を起こす実験を繰り返し、2004年7月と05年4月、12年8月の計3回、合成に成功したと発表した。
一方、米露の共同研究チームは04年2月、アメリシウム(陽子95個)にカルシウム(陽子20個)を衝突させて115番元素を作り、崩壊の過程で113番元素を確認したと論文発表している。
長く合同作業部会の委員を務めた中原弘道・東京都立大(現首都大学東京)名誉教授(78)によると、新元素の認定には、崩壊を繰り返した後に既知の原子核になると確認されることが発見の証拠として重視されるという。理研チームは113番元素が4回崩壊してドブニウム(陽子105個)に変化したことを確認しており、この点では有利だ。一方、米露チームは既知の原子核への変化を確認していないものの、「先に報告した」と優先権を主張している。
最近認定された114番(フレロビウム)と116番(リバモリウム)では、既知の原子核への変化より、実験の再現性などが重視された。中原さんは「新元素の合成はどんどん難しくなっており、従来のように既知の原子核へのつながりだけを重視していると、この先の発見の広がりに期待が持てなくなるという委員の認識があった」と明かす。113番元素ではどのように認定されるのか、理研関係者も気をもんでいる。
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