ノルウェー移民局によると、難民申請者は今年で約3万人以上。南部では難民申請者は当初は首都オスロにあるトイエン地区の警察に殺到していたが、移民局が対応しきれなくなり、国内最大級1000人収容可能の登録施設をローデ町に設けた。
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欧州で起きている未曾有の事態のため、誰もが満足できる施設環境を整えることは不可能だろう。だが、各施設での問題は課題として認識しておく必要はある。そのひとつが食事環境だ。
10月後半からノルウェー国内の報道で目立っていた案件のひとつが、「施設での食事が悪く、難民申請者が抗議している」というものだ。
報道内容の例はこのようなものだ。10月28日付けのモス新聞(地方紙)によると、
「施設での食事は非常にひどい。多くの人は外食せざるをえない」(シリアからの難民申請者)。
それに対し、ローデの施設の責任者は「滞在者が苦情を届けるほどではない」と反論。
11月8日付けのアフテンポステン紙では、中部にあるコルスタド難民受け入れ施設で、「約50人の難民申請者が、食事環境が悪い、食事の量が少ないと、町で約2時間のデモ抗議」。
これに対してノルウェーの難民申請者のための団体NOASの事務総長アン・アウステノー氏は、「フラストレーションがたまっている難民申請者たちの立場も理解する必要がある」としながらも、「食事において抗議することは賢いとはいえない」と同紙にコメント。
コルスタド施設の責任者シャルグ・スンドビー氏は「食事環境はそこまでひどくはなく、ここはホテルではない」と同じく同紙に意見を寄せる。
実際の食事の写真は?
他にもこのような報道記事が目立っていたのだが、施設での献立の写真が実際に掲載されていることがほとんどなかった。先日、ローデにある施設を訪問する機会に恵まれたので、食事についてスタッフに聞いた。
「ノルウェー料理です」と施設の副リーダーのマナール・シャヒーン氏に即答されたので、ノルウェーサーモンやジャガイモかと思ったが、「サラダやパンのバゲットなどの簡単なもの」だという。想像しにくかったので、昼食時間に食堂を訪れさせてもらった。
施設の外には大型テントが貼られており、内部が食堂となっている。難民申請者のための台所はないので、施設内で自炊することは禁止されており、提供される食事をいただくか、自己負担で外食するか、スーパーなどで購入したできたての食事を持ち込んで食べるかということになる。
1日4食のシンプルなノルウェー(?)料理
朝食8:30はおかゆ、昼食12:00はスープ、夕食前の軽食16:00はバゲット、20:00夕食にチリコンカーンなどの煮込み料理。おかわり自由だ。スープの具材は野菜やチキン、バゲットはハムやチーズだったりなど、具材は多少変わることもあるが、毎日の基本の献立に大きな変化はないという。
一部の滞在者が不満に思うのは、滞在期間が長くなった場合に、毎日大きな変化のない献立が連続することかと想像される。
食堂にいたスタッフに、滞在者からの反応を聞いたところ、「満足している人もいますが、不満がることもあります」と微笑みながら答えた。様々な反応があることは仕方ないと捉えているようだった。
難民政策に厳しい政党からは批判
ノルウェーの政党で最も移民・難民政策に厳しい進歩党の党員からは、メディアや個人のFacebookを通して、これらの難民申請者による抗議活動を批判し、残念がる声が目立つ。
ノルウェー首相「もう少し感謝して、辛抱してほしい」
10月28日、アーナ・ソールバルグ首相(保守党)は、アフテンポステン紙に、50人の難民申請者が抗議デモをしたことに対し、ノルウェーも助けようと努力しており、「もう少し感謝して、辛抱してほしい」とコメントした。
しかし、施設関係者からは、生活環境についてクレームされたからといって、即座に「恩知らずの難民申請者は国から出て行け」という反応は得策ではないという声もある。
「恩知らずだ」、「文句を言うなら帰れ」、「できる限りのことをしようとしているのに残念だ」という読者からのコメントがノルウェーの各記事では目立つ。
モス地方紙をはじめとする一部のメディアでは、記事掲載後にコメント欄が「議論としてはふさわしくない投稿」で埋まるため(一部はヘイトスピーチ)、途中でコメント欄を閉じるなどの対応を迫られた。
Photo&Text:Asaki Abumi