今回紹介する『憎悪の広告』は、今のところ日本のベストセラーリストには入っていない。今後時間がたってもベストセラー入りはしないだろう。
それでもぜひ紹介したい理由は、日本社会が今どこへ向かっているのか、正確に解剖しているからだ。哲学者の能川元一と作家の早川タダノリがこの本を書いた。
同書は「SAPIO」を含め日本の人たちがよく買い求める3種類の大衆誌を対象に、これらの雑誌が1994年から2004年にかけて新聞に出した広告を分析した。
各誌は90年代、「南京大虐殺をどう読むか」というように過去の歴史に対し注意深くアプローチしていた。最近では、逆に韓国と中国をとがめている。「日本の歴史認識を問う前に自らの偽りを改めるべき…中国・韓国の恥ずかしい歴史教科書」というように。
中でも韓国に対する姿勢が以前とは大きく変わった。93年、安倍晋三衆院議員(当時)も出席した韓日議員座談会の記事には「反日・嫌韓を克服できるか?」というタイトルが付けられた。その時点で日本は、韓日関係を当然向上させるべきと考えていたのだ。ところが今は「いつまで謝罪しなければならないのか」という謝罪疲れに満ちている。
これらの雑誌が社会に及ぼす影響は、発行部数よりもずっと大きい。雑誌自体は見なくとも、その広告は多くの人が見るからだ。