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進まぬデフレ脱却…金融緩和、効果に陰り

安倍晋三首相=徳野仁子撮影

 安倍政権が26日、発足3年を迎えた。この間、大規模な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略の「三本の矢」からなるアベノミクスを推進。円高は是正され、海外に展開する輸出系企業を中心に業績が改善、株価も今年2万円の大台に到達した。一方、昨年4月の消費増税や円安に伴う物価上昇などが家計を圧迫しており、政権の課題であるデフレ脱却は道半ばにある。【三沢耕平】

     「三本の矢によって日本経済は完全に復活を遂げた」「デフレ脱却まであと一息というところまで来た」。安倍晋三首相は24日、経団連での会合でこうあいさつし、アベノミクスの成果を強調した。

     政権が発足した2012年末に1万円程度だった日経平均株価は一時2万円前後まで回復した。為替相場も1ドル=85円前後から120円台まで下落。「市場の景色を一変させた」(大手アナリスト)ことで輸出企業の収益改善に大きく貢献した。

     背景にあるのが、1本目の矢である金融政策だ。日銀は13年3月に黒田東彦総裁が就任すると翌4月に「量的・質的金融緩和」を導入。国債購入によって大量のお金を市場に供給した。三井住友アセットマネジメントの木村司マーケット情報部長は「デフレ脱却の方向性に向いており、前向きに評価できる」と話す。

     ただ、14年度がマイナス成長となるなど、民間活力を引き出す成長戦略については「期待はずれ」との評価が多い。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「スタートダッシュの金融緩和で予想以上に企業収益のプラスをもたらしたことで、成長戦略への期待感が高まったが、完全に色あせてしまった」と話す。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストも「農業や医療、介護、労働など既得権益の強い分野の岩盤規制に切り込めていない」と指摘する。

     頼みの金融政策にも陰りが見え始めている。日銀の黒田総裁は就任当初、市場に供給するお金の量(マネタリーベース)を「2倍」にし、物価上昇率を「2%」にする目標を「2年」程度で実現すると宣言。しかし、マネタリーベースこそ2倍以上に膨らんだものの、物価上昇率は0%近辺のまま。目標達成時期の想定も「16年度後半ごろ」まで後ずれしている。政府の借金でもある国債を大量に購入することで成り立つ金融緩和は、財政規律の緩みや将来の金利上昇(国債価格の下落)など副作用を伴う。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「政権発足から3年。そろそろ今の金融政策を取りやめるなり、見直す時期に来ている」と指摘する。

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