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32歳女性アナ、母を介護する日々「一緒に幸せになりたい」

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公園を訪れた母・桂子さん(左)と岩佐まりさん=神奈川県、仙波理撮影 | 朝日新聞社
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諦めない、仕事も恋も母も シングル介護の若者たち



32歳女性アナ、介護の日

午後9時過ぎ、フリーアナウンサーの岩佐まりさん(32)は仕事を終え、母が待つデイサービス事業所への道を急いでいた。呼び鈴を押すと、男性職員に手を引かれ、母桂子さん(67)が姿を見せた。「お母ちゃん、帰ろっ」。この日は、5時間延長して預かってもらっていた。

1人で働きながらの介護は20代後半で始まり、3年近くになる。

大阪府内の実家で暮らしていた母に物忘れが始まったのは、まりさんが20歳のときだ。舞台女優をめざして上京していた。母は50代半ば。軽度認知障害(MCI)を経て60歳でアルツハイマー病と診断された。病院からの帰り、母娘は一緒に路上で号泣した。

父(74)が母をみていたが限界を迎え、まりさんが神奈川県の賃貸マンションに引き取った。29歳のときだった。

仕事は不規則だ。母の送り出しが早朝、迎えは午後11時になる日もあるため、宿泊や夜間延長ができる事業所を利用する。母の障害年金と給料で介護費用と家賃・生活費をまかなうが、家計は楽ではない。

母は早朝や入浴介助の時に機嫌が悪くなる。着がえさせようとして「バカヤロー」と罵声を浴びる日もある。トイレの失敗も増えてきた。「なんなの、この病気」。深夜にトイレの床を拭いていると、涙がこぼれる。

何かを犠牲にしているつもりはない。「選んだのは私」

一方で、わかったこともある。「支えがあれば、母は日常を普通に生きられる」。休日は一緒にショッピングを楽しみ、お好み焼きを食べ、カラオケで歌う。秋にはハロウィーンの仮装をして笑い、今月は部屋にクリスマスツリーを飾った。

こうした日々の出来事や感情をブログに書いている。楽しいことも苦しいことも、笑顔の母も不機嫌な母も、ありのままに描く。読者は1万5千人を超えた。コメント欄の書き込みに励まされる。トイレのにおいを消す方法や、失禁対策のシーツの情報なども読者が教えてくれた。

介護を始めて人間関係も変わった。好きなミュージシャンのライブに足を運ぶ回数が減り、飲み会の誘いを断る日も増えた。合コンで知り合った男性と2人で会い、「母を介護している」と伝えた瞬間、態度が変わったこともある。

近所の同世代の友人とは夜、自宅前で悩みを語り合うようになった。この時間が息抜きになっている。

あるとき、まりさんが体調を崩し、「おなか痛いの」と母につぶやくと、おなかをさすってくれた。せきをすると、「かぜひいたんか?」と声をかけてくれた。「認知症でも母は母」という思いが介護の支えだ。

(朝日新聞デジタル 2015年12月27日05時46分)

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(朝日新聞社提供)