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 産経新聞前ソウル支局長が記事で韓国の朴槿恵(パククネ)大統領の名誉を傷つけたとして罪に問われた裁判で、韓国外交省が日本の善処要請に配慮するよう裁判所に異例の要請をしたのは、判決の2日前だった。慰安婦問題の妥結に向けて日本の政治決断を促す環境を整備したい思惑があったが、司法の独立を尊重する立場とのバランスに腐心していた。

 複数の日韓関係筋によれば、外交省は今月17日の判決公判の2日前、韓国法務省に文書で要請を伝えた。在韓日本大使館も同じ時期に情報を得ていた。

 韓国政府関係者は、行政府としては「有罪判決を覚悟していた」と明かす。

 裁判は10月19日に結審していた。判決文は言い渡し2日前の時点で完成していたとみられ、判決理由の論理を組み立て直す時間はなかったとみられる。被告弁護士も17日の記者会見で同様の考えを示した。

 この関係者は、それでも異例の要請を行った理由を「韓日関係を改善するために最善の努力をしている、という姿勢を日本側に示したかった」と語る。

 一方で、韓国側はこうした要請が「司法への介入」と受け取られることを懸念していた。要請が判決自体の内容に影響しにくい直前の時期になったのもそのためだ。日本政府関係者は「早い段階で訴えれば、判決に影響しかねない。外部に漏れて騒ぎになることも考えられた」と指摘する。